勇ハブ ~TS転生したけどチーレム勇者のハーレム要員からハブられて悔しいです~   作:りじゅ

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第25話

 

 

 

「あぅ。あ……、い、い……イヤっ。イヤあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 おおおっと!

 露天風呂ですっ転んだオレは、勇者に見られた勢いでそのまま自分の声に驚いてしまう。

 

 おうおう、そんな恥ずかしそうな悲鳴を上げちゃってまあ……等と自分の事ながら驚いちまうオレ。可愛らしいねぇ。余りにもビックリして、表面であわあわしているオレと意識下でのオレに一瞬と言え分裂してしまった。どっちもオレなんだけどね。

 で、当然一瞬だけの変化なのですぐに元に戻り、頭の中は羞恥心でいっぱいに。

 あわわわわ。

 

 ずっと見られてるわけにはいかないので手で大事なところを隠してから足を一目散に閉じる。でもそれだけじゃ全然心許ない。そう思うと素早く胸とおまたをタオルで覆った。

 体には濡れそぼっているオレの長いクリーム色の髪が胸の辺りで纏わり付いていた。

 

 だ、大丈夫だよな? 隠れてるよな? もう見えてないよな?

 確認作業を終えてようやく一安心すると、目の前の勇者がおずおずと話しかけてきた。

 

「わ、悪い」

 

「い、い、いえ! わ、私がヘマをしただけですからレオ様は悪くないです! ええ、全然悪くないんです」

 

「そ、そう言うわけにはいかないだろ……ごめん。でも! でも大事なところは見てないから! ほ、本当だから!」

 

 絶対嘘だ! この体勢で正面から尻餅をついて見えてないわけがない!

 くっそー、なぜよりにもよって勇者に乙女(・・)の一番大事なところを!! うがぁぁあぁあああぁぁぁ。

 

「あうあう、ほ、本当ですか……?」

 

 でも証明とかそんな事が出来るはずもない。だから涙目でそれだけ言うのが精一杯。

 それに転んだのはホントにオレの不注意だから、この件に関しては全面的に勇者は悪くない。すっげー納得出来ないけど勇者に落ち度はないんだ。

 

「ああ、本当だよ。う、上は見えてしまったけど、下は見えなかった。女神カルマにかけて誓うよ!」

 

 な、ななな! 

 

「な、ななな!」

 

 くぅぅ、上は見たんかい! こ、このスケベビッチ・オンナスキーめ!!

 悔しいとか色々な感情でわなわなと握り拳を作って震えてると、騒ぎを聞きつけたラルガさんやら他のメンバーも集まってきた。

 みんな体にはバスタオルを巻いている。混浴と言ってもさすがに面と向かって男の人に自分の肌を見せるわけにはいかないからね。 

 

 

 

「どした?」

 

「いえ、お風呂から上がろうとここを通りかかったら足を滑らせて転んでしまっただけです」

 

 ラルガさんの質問に答えるようにオレは静かに答えた。恥ずかしいから早く戻りたくて手短にそのままの状態を淡々と述べる様に。

 

「レオ様。それホントですかー?」

 

「ほ、本当だ」

 

 騒ぎを聞きつけてラルガさんに一緒について来たルーデロータさんが勇者へと疑問を投げかける。でも勇者の返事は彼女を納得させるにはまだまだ言葉が足りない様子。

 

「えー? じゃあ、なんでミコが悲鳴なんて上げるんです?」

 

「そ、それはミコが転んだところを見てしまったから」 

 

「ああ、なるほどー。レオ様、ミコの裸見ちゃったんだー。なるほどなるほど」

 

 勇者の言葉に今度は納得するルーデロータさん。

 いやいや、ルーデロータさん、それで納得されるのも嫌なんですけど。

 

 

 

「へぇ……それではレオ様……。ミコさんの裸体を隅から隅まで目の当たりにしてしまったのですか!!? よりにもよってミコさんの!?」

 

 今度はシャーリン様ですか。って言うか『よりにもよって』とか言われてるんですけど。オレってそんなに悪い事したか? 転んだだけだよね。

 

「い、いや、シャーリン。そんなに言わなくとも……」

 

「いえ! これはとても重大な話です! 私やティルカ、アリアがいると言うのにも!」

 

 シャーリン様は勇者に向かって周りを憚らずに真っ赤な長髪を怒らせながら烈火の如く追求を始めた。よほどテンパっている様だなぁ。そりゃあそうかオレが四人目の肉体関係になっちゃあ面白くないもんな。

 でも安心してください。オレはこの勇者に恋心なんてこれっぽっちもありませんから!

 煮るなり焼くなりシャーリン様方にお任せです。

 

 なーんて思ってたらキッとこちらを振り向くシャーリン様。

 うああぁぁ、シャーリン様の目が『このドロボウ猫!』になってるんですけどー! お胸はペタンコなのに目が怖いんですけどー(関係ない)。

 

「ミコさん!」

 

「は、はいー!」

 

 反射的にビシっと『気をつけ』をするオレ。オレ何も悪くないよな? 裸見られてるんだから被害者だよな?

 って、またバスタオルが落ちそうに!

 危ねー危ねー。

 

「…………」

 

 無言でシャーリン様に睨まれる。美人に睨まれるってすっげー怖いんですけど。

 怖いよー怖いよー。

 

「はぁー……。レオはとても女好きなのですからミコさんももう少しそっち方面に防御力を持ちなさいな」

 

 勇者の事を諦めているのか、溜息をひとつするとシャーリン様はそんな事を言ってきた。

 ひゃあ、怒られるのかと思っちゃったよ。

 

「は、はい。以後気をつけます!」

 

 って言うか、なんでオレが卑屈になってるのか? なんて思ってたらシャーリン様が耳元でボソッと一言言ってきた。

 

「今回は不注意と言う事にしておきます。でも次はありませんよ。レオ様を横から掻っ攫ったりしたら……。判ってますね?」

 

「あうあう……はい。承知いたしました……」

 

 オレの喉がごくりと鳴る。シャーリン様のその声はとても静かでささやく様なソレだったんだけど。何だか背筋がゾクっとするくらいな声色だった。

 彼女には逆らわない方がいい。あれは本気だ。本気の忠告だ。恋路を邪魔したらオレ消されるかも……。それだけ本気で勇者の事を想ってるのが伝わってきた。

 これはもしかするとシャーリン様達三人で正妻の座を巡って争う日がくるんじゃないのか? そのくらいのパワーをシャーリン様からは感じ取れた。

 

 

 

「それではみなさん、湯から上がって随分と経ちます。もう一度湯に浸かって温まってから出ましょうか?」

 

 半ば呆然としたオレの横でシャーリン様はにっこりと笑顔でパーティーメンバーに言うのだった。

 

 この人、ヤンデレがちょっと入ってたりするのか?

 

 

 

 

 

 

 お風呂から上がって今は宴会場。畳二十畳な部屋でみなさんホテルに備え付けの浴衣を着ての酒盛り中。とりあえず先程の事はけりが付いたので今は普通にしています。

 

 んぐんぐ。現在、隣に居るエルセリアさんから()いでもらったり注いであげたりしながらエールを飲んでいますよ。やっぱりエールだよなー。うんまいわー。

 お、このお皿は牛肉の網焼きじゃあないですか! 

 ひょいとその牛肉を口に入れる。

 うはー! 口に入れて噛めば噛むほどお肉の中で待ち構えていた肉汁が広がるー。広がっていくー! んまーい。

 

「んー、んまーい!」 

 

 あむあむ。もしゃもしゃ。んまーい。

 牛肉とエールさえあればあとは何もいらないよなー。

 

「あらあら、ミコったら酔っ払っちゃって」

 

「そうは言いますけどエルセリアさん。この牛肉の網焼きは絶品ですよ! 私の作った料理なんか足元に及びません!」

 

「そんな事ないわ。私を含めて、ミコの料理はみんないつも美味しい美味しいって食べてますからね」

 

 嬉しいんだけど。オレの料理を褒めてくれるから嬉しいんだけど、どう考えてもこの牛肉の方が美味いんだよなー。まあ、いっかー。謙遜も過ぎれば嫌味になるかもしれませんし。

 

「そうですかー? 有難うございます。私。なんだか自信が沸いてきましたよエルセリアさん」

 

 だからにっこりと笑顔で答えてみました。可愛く言えたかな?

 

 

 

 

 

 

 エルセリアさんに料理を褒められてから一時間程が過ぎた。縁はもうすでにたけなわで、コロンちゃんなんかすでに眠っている始末。それの反対にとても元気な人達もいる。その元気な人達のひとり、ラルガさんは現在宴会場に設置されているステージでアナスタシアさんと飲み比べ中。

 もの静かなアナスタシアさんの元気も有り余ってるんだねー。

 

 

 

「ときにお客さん? こちらへは旅行ですか?」

 

 途中、給仕のおばちゃんがお膳にある食べ終わったお皿を片付けのついでなのか、オレにニコニコと世間話を話しかけてきた。

 

「はい。じつは最近魔物が増えたでしょ? それの討伐の途中なんですよー」

 

 あ、これって言ってよかったんだっけ? まあ、魔物や魔王の討伐ですし良いんじゃないかなぁ。隣のエルセリアさんを伺ってもそんなに気にもしていない様だし秘密って事でもないみたい。

 

「はへぇー。魔物を! そりゃ凄い。街の周りでは聞かないけれど他ではまだ魔物が多いんだろうかねー」

 

 おばちゃんはだいぶ驚いているみたい。なるほど。この街の近くにはいないみたいだね。

 そう言えば王都からここまで魔物の大群なんて見かけなかったもんね。たまに数匹の魔物や単独なのはいたけれどね……。あれれ? おかしいなぁ? 魔物って本当に増えてるのか?

 

「どうしたのミコ? ぼーっとして。まだまだエールも料理もたくさんありますよ」

 

「あ、いえちょっと考え事を……って、おっとっと、もうい、もうい、こぼれますって!」

 

 横に居たエルセリアさんが酔っ払った目で大瓶のエールをオレのコップへと注いでくれる。でも酔ってるからなのか目分量で入れてるからなのかコップから溢れそうになるくらい注いでもらってるんだ。って、おおい! こぼれるってエルセリアさん! こぼれちゃうー!

 

 

 

 しかし、魔王が復活したのに全然魔物見ないなー。

 王都ではあんなに魔物の被害とか聞いたのに。なんだか不思議だなぁ。

 

 

 






※心が分裂するような特殊能力があるわけじゃないです。比喩表現って事で。
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