例えば、己の一生がすべて定められていたとしたらどうだろう?
己の意思に関係無く、ただ決められた道を歩かされているだけだとしたらどうだろう?
それだけではなく、この世の在りとあらゆることが始まる前から規定されていたとしたらどうだろう?
例えば、困難の果てに愛する姫と結ばれた騎士。友情と勇気を持ってして、巨悪を打ち倒した英雄たち。はたまた世界を呪い、世界を戦乱の渦に引き摺り落とした復讐者。そして戦乱の中で血を吐き、泥に塗れながらも自らの国を守り抜いた優しき王。
これら全ての行動と感情が、定められた脚本の通りに動かされているだけだとしたら。
ならば、どのような行動にも意味など無く、どのような感情にも価値など無い。
問うが、諸君らこのような現状を良しとするのか?
否、断じて否。
それを知った上で笑えるものなど、脳にウジ虫が湧いた愚か者ども。人としての自覚を失った畜生だろう。
この法則を呪うのならば、この既知感(ゲットー)を破壊したいのならば、戦え。
たとえ力が無かろうと、たとえどのような絶望がその前に立ち塞がろうと、勝つまで戦い続けるがよい。
百度戦って勝てぬなら、千度戦えば良い。
千度戦って勝てぬなら、万度戦えば良い。
それが出来る覚悟があるならば、諸君らが獣の血肉の一部となることを許可しよう。
この永劫を破壊したその先の地平で、私は魔王として諸君らを待ちうける。
私に抗い、立ち向かおうとする英傑達よその命が放つ輝きを、その魂の叫びを聴かせてくれ。
私はその全てを礼賛しよう。未来永劫その輝きを慈しみ、尊び、守り抜きたい。その輝きが人形劇のように安易に扱われる世界の存在など許されることではない。
だからこそ私は魔王として降臨し、人々に試練を与えよう。絶望的な困難のなかでこそ、人はその魂を輝かせることが出来るのだから。
――ゆえに、諸君らよ。私の歌劇にご参加あれ。
その筋書きはありきたりだが役者が良い。至高と信じる。
彼等ならば、その魂の輝きを私に届かせられると信じている。
舞台は日本、諏訪原市。
主役は私の息子である日常を尊び、その刹那を愛する超越する人の理(ツァラトゥストラ)。
その隣に寄り添うは聖遺物に宿る麗しき黄昏の女神。人類最悪にして最美の魂、その輝きが外に流れ出ることを願っているよ。
そして彼らの前に立ちはだかるは、破壊と愛に溢れる愛すべからざる光――黄金の獣とその爪牙達。
いずれも今の彼らでは到底敵わない者たちだろう。だが、彼らならばその困難を打ち倒し、成長してくれることだろう。
さぁ、ここに舞台は整い役者は揃った。
理想の結末を迎えるためにこの世界を何万、何億回も繰り返した。この既知に満ちた世界を終わらせるための勝負に私は一度も勝利することが出来なかった。
だが今回こそは、彼等であればこの世界を終わらせられると信じているよ。
さあ、英雄達よ。死力を尽くして私を越え、この地に黄昏の地平をもたらしてくれたまえ。
そして願わくば、喉が枯れ果てるほどに人間讃歌を歌えんことを。
――――では、今宵の恐怖劇(グランギニョル)を始めよう
ここの水銀はニートとか呼ばれずに人間讃歌のために動き回ってそう。
……自分で考えておいてなんだがアマッカスの精神強度を持った水銀とか最悪すぎるわ!