ミーティアート・オンライン   作:I love ?

1 / 3
短いのはプロローグ……というか、八幡語り部の設定だから、ということにしてください。


第1話

突然だが、俺、比企谷八幡はSAOサバイバーである。SAOサバイバーとは、世界初のVRMMORPGである『ソードアート・オンライン』を生き延びた人達のことを指すネット用語だ。

四千人もの命を奪った未曾有の大事件を引き起こした茅場晶彦が造り上げたナーヴギア、及び『ソードアート・オンライン』というゲームでは、ゲームオーバー……つまりHPの全損=死という絶対的なルール……いや、ペナルティがあった。

しかし、そんなデスゲームを《黒の剣士》と呼ばれていたプレイヤー名キリト――本名桐ヶ谷和人がクリアして、俺含む生存者約六千人は無事にログアウトした。

そのあと、リハビリを終えた時くらいに、アルヴヘイムオンライン、現実世界の生活が安定してきた時にガンゲイルオンラインという仮想世界でも色々あり……いや、本当に色々あったわ。その結果キリトハーレムが拡大したのだが、桐ヶ谷には既に本命がいるらしい(ただしいっちゃ悪いがヘタレなため、未だ想いを伝えることはできていないらしい)。

その本命とは、俺と同い年の幼馴染みであり、レクトという会社のCEO結城彰三氏の娘である結城明日奈だ。

かつて結城はアインクラッドで《閃光》の異名をとるほどの凄腕細剣使いプレイヤーで、SAO最強ギルドである《血盟騎士団》副団長で、SAOのアイドル的存在だったが、男性プレイヤーにとっては高嶺の花どころかアルプスの花だったそうで、(システム的にだが)結婚を申し込まれたこともあるそうだが、潜水艦の如く全員沈没。まさに攻略不可能の無理ゲーだったらしい。

結城の友達である、アインクラッド内では俺も世話になった鍛治屋を営んでいたプレイヤー名リズベット……本名篠崎里香によると、既に想い人がいるらしい。なんで俺に言ったのかは、未だ謎だ。ちなみに篠崎はキリトに好意を寄せているハーレムの一員だ(本人に言っても頑なに認めないが、態度でバレバレなのである)。

ここで、何故一般ピーポーの俺と、お嬢様と言っても過言ではない結城が関わりがあるかを説明すると、昔住んでいた家の近くの幼稚園に俺は通っていて、結城もそこに通っていたのだ。

俺が三歳か四歳の頃に通っていた幼稚園で、立派な家柄ゆえに纏われていた空気のせいか、結城は全くと言っていいほど周りと馴染めなかった。あの頃の俺も、さすが俺というべきか、結城と同じかそれ以上に周りに馴染めなかった。

それでもあの頃の俺はまだ純粋な心を持っていたため、同じように孤立していた結城に一緒に遊ぼうと声を掛けたのだ。最初は拒絶されたが、あの頃の俺は一人で遊ぶ方法を思い付く程の発想力はなかったため、何度も何度も結城を遊びに誘った。

やがて幾度の誘いに「一度だけね」と折れた結城は俺と遊び始めた。思いの外楽しかったのか、その日を境に毎日のように俺達は遊んだ。鬼ごっこ、かくれんぼから泥団子作りまで、様々な遊びをした。

しかし俺は一つ思い違いをしていた。確かに結城が馴染めなかったのは家柄のせいでもあるが、男子にとっては高嶺の花、女子にとっては疎ましい存在だったのだ。

俺は男子からはさも遊びの延長かのように砂を投げられたり、酷いときには石を投げられたり、直接殴られたりした。

それだけならまだよかったが、ある日見てしまった。――結城が、他の女子達に殴られているところを。

カッとなった俺は女子達を思いっきり殴ってしまい、女子達は大泣き。俺は一躍組の悪者になった。ことは親を呼んでの話し合いになってしまった。

不幸中の幸いと言うべきか、幸い結城へのイジメはなくなったが、それだけの悪意に当時の俺は耐えられず、次第に幼稚園に行かなくなり、通わなくなるくらいならばと俺達一家は逃げるように千葉に越してきた、という訳だ。

そんな出来事があってから約十三、四年後の現在の俺の環境を説明すると、十八歳の男、東京都内に一人暮らし、脳やVR技術に少し興味があるだけのSAO生還者のために建てられた学校の高校三年生(クラスはなんの因果か結城と同じ)だ。

なぜ一人暮らしなのかは単純明快。学校が遠いから近いところに住んだ方がいい……という建前で、親父が二年も会っていなかった分俺にベッタリな小町から俺を引き離したいから一人暮らしをさせられている。当然俺は抵抗したが、その学校しか受け入れて貰えないだろ?という言葉に弾丸のように完全に論破された。

小町は現在実家から、千葉市立総武高等学校というなかなかレベルの高い進学校に通っているらしい。

それでも週一、少なくとも月一くらいで部屋に来て飯を作ってくれるのは、八幡的にポイント高い。カンストするくらいだ。

今年は受験生の俺だが、アルヴヘイムオンラインという自分達が妖精になって空を飛んだり、魔法を放ったり、五月のアップデートでソードスキルを放ったりして遊べるゲームをしている。種族は影妖精(インプ)。顔は現実と変わらないが、髪型はアホ毛以外の癖ッ毛が切られている。

 

「さて……そろそろ行くか……」

 

ナーヴギアの後継機であるアミュスフィアを頭に被り、固い感触のベッドに敷かれている敷布団に仰向けで寝る。

 

「リンクスタート」

 

三年前は俺達の意識を二年も閉じ込めた言葉だが、今は違う。何の躊躇いもなく俺は仮想世界へとフルダイブする魔法の言葉を唱えた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。