今回の作者はAUO…#様です。
太陽が傾き、商店街に多くの未成年が溢れ会話に花を咲かせながらさまざまな店を物色する。
いつも通りの光景。
だがその光景に見慣れない少女がいた。
学ラン、セーラー服にブレザー等、学校指定の制服を着ている人の群れの中に一人だけ青いロングスカートに白のケープというコスプレに近い格好をした美しい少女が紛れていた。
少女を目にした人はその足を止める。
艶やかな金髪に女子学生は息を呑んだ。
整った顔立ちに男子生徒は呼吸を忘れた。
人形のような容姿のその少女は周囲の目を奪った。
少女はそんな周りの視線など気にも止めず、とある喫茶店の前で立ち止まり扉を開けた。
慌ただしいお昼の接客を終えて人がまばらになった店内で少し乱れた髪とスカートを整える。
ふと窓の外に目がいった。
通りには帰宅中の学生達が笑っている。
放課後の予定をネタに談笑しているんだろう。
下校時間だからか店内は学生が多い。
他にもサラリーマンなどの会社員も見受けられる。
店内にいるのは見知った顔の常連客ばかり。
お客様と雑談をして肩の力を抜く。
カランコロンカラン♪
お店の扉が開いた。
どうやらお客様がいらっしゃったようだ。
「いらっしゃいま……せ」
入店されたお客様を視界に捉えたとき私の思考は停止した。
少女だ。 私はその容姿に釘付けになった。
まるで精巧な西洋人形のような少女の美貌に同性ながら微かな興奮を覚える。
昔、両親に買ってもらった人形と瓜二つだ。
名前は忘れてしまったが……
私が動かなくなったことのを不審に思ったのか店内のお客様も入り口の少女に視線を向ける。
すべての目が少女に注がれた瞬間、騒がしかった店内は沈黙に包まれる。
見るものの目を奪った少女は訝しげな表情を浮かべた。
「…………あ!
い、いらっしゃいませ。
こ、こちらにどうぞ」
止まった思考を無理矢理動かし少女を窓際の席に案内する。
案内する際にどもってしまったが少女は気になっていないようでホッと安心する。
「ご注文がお決まりでしたらお声をおかけください」
「ええ」
「それでは、失礼します」
笑顔で浅く一礼してその場をあとにする。
レジの近くで足を止めて胸に手を当て息を吐く。
緊張で心拍が上がってる。
「ねえ、凄く綺麗な子を案内してたけど、なにか話した?」
ウェイトレスの先輩にレジから声をかけられた。
なにか、話したって……
「いえ、別に……
案内しただけですけど」
そう言うと先輩は私が話しかけなかったことが不満なのか口を尖らせた。
「本当に綺麗だったなあ。
今まで見たなかで一番……
抱きついたら、いい香りがするんだろうなあ…………」
悲しいことに私の貧困なボキャブラリーではあの少女を的確に言い表す言葉は出てこない。
考えるのを止めて、先輩を見ると顔をひきつらせていた。
え? なんで?
「そ、そうなの……
ひ、人の趣味嗜好はそれぞれだから…………
私は、その……お、応援するわ……」
少し後ずさりして私と目を合わせようとしない先輩。
もしかしてさっき考えたことが口に出てたのかな?
ってかそれぐらいしか心当たりがない。
「ち、違いますよ!! 私はノーマルです!
普通に男の子が好きなんですから!!!」
思わず声を張ってしまったが先輩との物理的距離は縮まらない。
このままでは私は同性愛者という非常に不名誉な認識をされてしまう。
少しずつ先輩に近づくが逆効果なのか同じだけ離れていく先輩。
どうしようかと考え始めたとき、
「コラッ、お客様が待ってるわよ?
遊ぶのはあとにして、早くいってらっしゃい」
後ろから軽く頭を叩かれた。
振り替えると店長が呆れ顔で窓際の席を差している。
ヤバイ、まったく気がつかなかった。
私が動くよりも先に先輩が注文を受けに行ってしまった。
少し早足なのをみて勘違いが解けてないのかと私は肩を落とした。
そんな私を見て店長は苦笑いしていた。
先輩が少女の注文を受けているのを遠くから眺めている。
何を頼んでいるのかはここからでは聞こえない。
注文にしては長い時間喋っているのでどうしたんだとじっくり見たらどうやら先輩と少女は会話しているようだった。
先輩の社交性の高さに戦慄する。
見習いたいがやっと最近、常連客に話しかけられるようになった私にはレベルが高い。
見知らぬ相手だと軽く返事をするだけで精一杯だ。
自分のコミュ力の低さに落ち込んだところで先輩が厨房に注文を通していた。
先輩は笑顔だ。
「どうしたんですか?
先輩、嬉しそうですけど」
「聞きたい?
あのお客様、アリスさんって言うんだけどね、話しやすくて良い子だったのよ。
あなたと気が合うんじゃないかしら?」
そう言うと先輩は他のお客様の注文をとりにいった。
去り際に「大丈夫、ちゃんとわかってるから」と残して……
不安しかない。
でも、よく名前を教えてくれなあ、と思い少女の方を見る。
なるほど、疲れたような顔をしている。
多分、名前を教えてとしつこく食い下がる先輩に根負けして教えてくれたんだろう。
でも憂いている表情もいいなあ。
多分、なにやっても絵になるんだろう。
生まれ変わったら私も美少女になりたい。
紅茶とショートケーキを少女の……アリスさんの席に運ぶ。
先輩が迷惑をかけただろうから謝罪しておこうかな?
お待たせしました、と声をかけようとしたが声が出なかった。
私はまたアリスさんに見惚れてしまったから。
アリスさんは本を読んでいた。
その姿がさまになっていて、差している西日もアリスさんをひきたたせていた。
まるで絵本の中から出てきたような幻想的な姿に見惚れていた。
あ! 目が合った……
「…………あ! お、お待たせしました。
紅茶とショートケーキです」
「ふふ、ありがと」
何度も見惚れていたのがバレてるんだろうかアリスさんはクスクスと笑う。
動作のひとつひとつが上品で素敵な人だなあ。
「どうかした? なにか変かしら?」
「い、いえ、そうじゃなくて……
あの……えっと…………先程は先輩が失礼しました」
とっさに先輩を話のタネにしてしまった。
ごめんなさい、先輩。
「大丈夫よ。少しビックリしただけだから」
アリスさんは気にしてないようだ。
良かった。
そのあと、短くたまに途切れるけどアリスさんと会話した。
時間を忘れてしまうくらい楽しくて、人見知りの私でも会話できたのが嬉しかった。
気がつくとアリスさんの紅茶は無くなっていた。
ケーキも。
傾きかけていた太陽は沈み始めている。
「そろそろ、帰るわ。
ありがとう。 楽しかったわ」
レジに移動して会計を済ませる。
アリスさんが背を向けて出ようとしたときだ。
「あの……また来てもらえますか?」
あの楽しい時間が1回だけなのが嫌で思わず聞いてしまった。
振り替えったアリスさんは少し面食らったような顔をしていたが、万人が見惚れるような笑顔を浮かべた。
「そうね、考えておくわ」
それだけ言い残して帰っていった。
次はいつ来てくれるだろうか?
別れたばかりなのにそんなことを考えていてなんだか自分が恋する乙女のように感じて笑ってしまった。
明日も会えるかな?