廃人トレーナーとポケモンワールド   作:白い人

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【昔の話】ワタルの驚愕

「ワタルさん、【最強のトレーナー】達の事を聞きたいんです」

 

 コトネは久しぶりに会ったワタルに出会ってすぐ、開口一番に聞いてみる事にした。

 先日、幼馴染のヒビキからあるトレーナーに負けた事、いつか勝ちたいから一緒に特訓しないか、という連絡を受けたばかりだ。

 勿論、そんなヒビキの話に肯いたが、コトネはまず情報を集める事にした。

 一緒に旅立って、同じように成長し、そして自分と彼を倒してポケモンリーグのチャンピオンになったヒビキですら負けた相手だ。

 情報を集めてから特訓するのも挑戦するのも悪くはない。

 そういう訳で、電話でワタルと連絡を取ってこうしてポケモンリーグの喫茶店へと足を運んだコトネであった。

 因みにヒビキはというと、もう一人特訓に誘った彼と共に既に特訓を開始しているらしい。コトネもワタルの話を聞いた後は、そちらに合流する手筈になっている。

 

「まぁ、そんな話だろうとは思ってたよ」

 

 呼び出されて、挨拶もなしにそんな事を言われたワタルではあるが特に気にした様子も見られない。

 コトネもここで漸く挨拶も何もしていない事に気づいて、慌てて頭を下げるがやはりワタルは気にする事もなく、座りなよと進めてくる。

 とりあえずコトネも席につくと、店員さんにアップルジュースを頼む事にした。

 

「すいません」

「何度も言ってるけど気にしなくていいよ。それより【最強のトレーナー】の事だったね」

「はい」

「そうだなぁ……」

 

 ワタルは思案するように首を傾げる。

 その姿は話したくないという様子ではなく何を話そうか迷っているようだ。

 1分程、考え込む間に頼んでおいたジュースが届くと同時にワタルもまたそうだ、と頷き出す。どうやら話してくれる内容が決まったらしい。

 

「そうだね、それじゃあ僕と彼等が一番最初に出会った時の話をしようか」

「それって……」

「うん。彼等がポケモンリーグに挑戦しにきた時さ」

 

 

 ●

 

 

 ――三年前

 

 ワタルは暇であった。いや色々とやるべき事はあるのだが、ポケモンリーグ四天王の一員としては限りなく暇であった。

 先代チャンピオンが引退してから数年。新たなチャンピオン候補はまったくと言っていい程に現れてないのが現状であった。

 いや、挑戦しに来る者はいるのだが誰もがワタルに辿り着く前に他の四天王に敗北している。

 氷使いのカンナ。

 闘使いのシバ。

 霊使いのキクコ。

 この三人の誰かに負け、挑戦を失敗している。

 つまり、最後の一人であるワタルは限りなく暇であったのだ。

 しかし、とは思う。つい先日、ロケット団が解散したという噂を聞いたのだ。そしてそれをなしたのはたった三人の少年少女だと言う。それと同時に再開した筈のトキワジムが再び閉鎖され、ジムリーダーがリーダ職を辞したのは特に関係のない話であろう。

 面白い、と思う。

 たった三人で、あの神出鬼没であるロケット団を潰すとは。

 どれ程の力を持ったポケモントレーナーなのだろうか? 彼等はこのポケモンリーグに来てくれるのだろうか?

 そんな事ばかりを思いながらワタルはここ数日を過ごしていたのだ。

 

「ワタル様、新しい挑戦者が現れました」

「そうか」

 

 新しい挑戦者。この挑戦者が噂の三人の誰かである事を望んでいる自分に気がついた。

 そしてそれはあっさりと叶う事になるのだが。

 挑戦者が現れた報告を受けた二十分後には、カンナが敗北したという知らせが。更に時間が立つとシバが敗北した知らせが。そしてキクコが敗北したという知らせが届いたのだ。

 この報告にさすがのワタルも驚いた。あの三人を倒すとは並大抵の事ではない事を自分がよく知っているからだ。

 そして挑戦者はこちらに向かっているという事も聞いて、ワタルは思いっきり立ち上がった。

 遂に来たのだ。カンナ達を倒せる程の実力者。

 噂の三人でなくとも相当な実力者である事には間違いないだろう。

 そんな実力者と戦える事をワタルは心待ちにしているのだ。

 そして……。

 

「よっと、あんたが最後の一人かい?」

「ああ、ドラゴン使いのワタルだ」

 

 ワタルの目の前に現れたのはツンツン髪に緑色の服を着た少年であった。

 その名はグリーン。

 後に【最強のトレーナー】と呼ばれる一人である。

 

「……なんだ、あいつらはまだ来てないのか」

「誰の事を言っているかは分からないけど、先代チャンピオンが引退してから挑戦者がここに来たのは君が初めてだ」

「そいつはまた」

 

 どこか嬉しそうな様子を見せるグリーン。

 しかしその目には早く戦いたいという意思がしっかりと現れていた。

 

「つまらない話はここまでにして、早速やろうか。君もそれを望んでいるのだろう」

「当然。悪いがあんたは通過点なんだ。さっさと終わらせるぜ」

 

 

 ●

 

 

「行け!ギャラドス!」

「頼むぜ、ウインディ!」

 

 ワタルが繰り出したのはきょうあくポケモン、ギャラドス。

 グリーンが出したのはでんせつポケモン、ウインディだ。

 みずとほのお、ウインディにとって完全に相性が悪い。

 となると、交換するのが妥当だろう。ワタルが逆の立場なら間違いなくそうする。

 しかし。

 

「ウインディ、行くぞ!」

「っ!?このまま来る!ギャラドス、たきのぼりだ!」

 

 そのまま突撃してくるウインディに驚愕しながら、ワタルは即座にギャラドスに指示を与える。

 耐久力に自信があるのかもしれない。しかしそんな自信などすぐに粉砕出来る、とワタルは考えていた。

 しかし。

 

「なっ、ギャラドス!?」

 

 粉砕されたのはワタルの方であった。

 ギャラドスが攻撃を繰り出す前に放たれたウインディの突進は一撃でギャラドスを倒していたのだから。

 

「ば、馬鹿な……!」

「へへっ、驚いたかい?」

「……ああ、正直言って驚愕と言ってもいい。君は一体何をウインディに使わせたんだい?」

 

 ただのとっしんではギャラドスは倒せない。しかし生半可なほのお技ではダメージを与えられる事は無理だろう。

 では一体何を使ったというのだ。

 だが倒れ伏したギャラドスを見て、ワタルは一つの事に気づいた。

 【感電】しているのだ。

 

「まさか……!?」

「おっ、気がついたかい。今使ったのはでんき技の【ワイルドボルト】って技さ」

「かみなり技……!」

 

 みずとひこうの属性を持つギャラドスはでんき技に非常に弱い。

 だからでんき技には非常に気をつけているし、研究を怠った事はない。

 ウインディが使うとされている技は、噛み付いて雷を流すかみなりのキバぐらいだ。

 しかも威力は決して高くないし、噛みつかなければならないという点もあって命中率も低いとされている。

 だから使われる事はないだろう、と思っていたし、先程ウインディが行ったのはとっしんとしか思えない体当たりだったのだ。

 その結果がこれである。

 

「雷を纏って体当たりする技さ。おかげでとっしんとかと勘違いしてくれたおかげで、当てるのは楽だったぜ」

「君は……新しい技を開発したっていうのか……!?」

「いいや違うぜ。こいつは色々なポケモンが使える技さ」

 

 その言葉に嘘はないだろうとワタルは判断した。

 特に嘘をつく必要はないし、そんな様子もないからだ。

 だが不敵な笑みを浮かべるグリーン。

 

「甘くみすぎだぜ、四天王。俺様のウインディならギャラドスなんて一撃さ!」

「……そうだね。少しばかり甘く見すぎたかもしれない」

 

 戦いを楽しみたいと思いつつも、最近の挑戦者の少なさから慢心していたかもしれない。

 だがもう慢心などしない。

 相手は四天王の三人を倒してきた兵だ。

 ここからは心を入れ替える。

 彼がチャンピンと同等の力を持ったトレーナーと認識して倒すのだ。

 

「プテラ!」

 

 ワタルの手持ちはドラゴンポケモン。

 基本的に、ドラゴンポケモンはほのおポケモンに対しては非常に相性がいい。

 だがその中でも特に相性がいいプテラを展開したのは、ウインディの速さを警戒してだ。

 ギャラドスはワタルの手持ちの中では決して速い方ではないが、それでも十分に速いと自負していた。

 それを上回ってきたという事はウインディの速さは相当なものだろう。

 先程と同じように、こちらが知らない何かを持っているかもしれない以上、それ以上の速さを望むのは当然と言えた。

 実際、プテラを出されてグリーンは非常に嫌そうな顔をしているあたり効果は思った以上にありそうだ。

 

「行くぞ!プテラ!いわなだれだ!!」

「チッ、さすがに下がるしかないな。戻れウインディ!」

 

 繰り出される岩の雨を避けるようにウインディを戻す。

 素早い決断力と判断である。

 

「次はこいつだ!頼むぜ、カイリキー!」

「何……!?」

 

 ワタルは驚愕の声を漏らす。

 グリーンが出してきた新しいポケモンはかいりきポケモンであるカイリキー。

 四天王の一人であるシバもまた手持ちのポケモンなので、それはよく知った存在である。

 だが、とも思う。

 かくとうタイプの弱点の一つにひこうタイプがあるのだ。

 つまりひこうタイプのプテラ相手に出すべきポケモンではないという事。

 しかしそんな驚愕の気持ちを一瞬で切り捨てる。

 何せ相手はギャラドスをほのおタイプのポケモンで沈めてきた相手。

 どんな技を使ってくるか分かったものではない。

 

「プテラ!つばさをうつだ!」

 

 神速のごとくカイリキーの背後に回ったプテラがその翼でカイリキーを切り裂いて行く。

 カイリキーもその4本の腕で反撃するも、一瞬にして離脱されてしまい空振りに終わってしまう。

 

(いける……!)

 

 声には出さないが、ワタルは確信した。

 こちらのプテラの動きについていけていない。

 つばさをうつは威力が低い技ではあるが、弱点である以上、ダメージ量は低いとは思えない。

 その素早さを生かしていけば確実に倒せる。

 だが。

 

「カイリキー!」

 

 その考えが通用したのはこの瞬間までであった。

 

「バレットパンチ!!」

 

 次の瞬間、ワタルのプテラの動きすら上回る素早さで放たれたカイリキーの一撃がプテラに直撃した。

 

「なっ!プテラ!?」

 

 神速のストレートパンチが直撃したプテラは頭を振って体勢を立て直そうとするが、体に力が入らないとばかりに地面に落ちて行く。

 戦闘、不能である。

 プテラをボールに戻しながらワタルは驚愕の表情に満ち溢れていた。

 

「あれは……先制技……?」

 

 先制技はポケモンが使う技の一種で、一瞬だけ相手よりも早く動いて攻撃する事が出来るとされている技である。

 勿論、その事はワタルも知っている。

 コラッタやポッポなんかが使うでんこうせっかもその一つだし、見慣れたものである。

 驚いたのはカイリキーが先制技を使った事である。

 仲間であるシバのカイリキーの事はよく知っている。そしてカイリキーが先制技を使えない、という話を聞いていたのだ。

 実際、今までワタルが出会ったカイリキーは先制技を使った事は一度もないのだ。

 これが驚いた事の一つ。

 もう一つはその威力である。

 

(プテラは耐久性に乏しいからと言って一撃でなんて……!)

 

 早さを持っているからこそ防御が低い。そんなポケモンがプテラなのだ。

 しかしワタルは生半可な育成はしていないし、先制技は早いのが長所であるが火力がないのが欠点とされている。

 その一撃で倒されるとは思ってもいなかったのだ。

 

「一つ教えてやるよ。今の技ははがねタイプなんだぜ」

「なんと……」

 

 もう驚きの声もでない。

 一体、彼はどんな風にポケモンを育てたのか気になってしまう。

 

「それは内緒だぜ。さぁ、もうちょっと本気を出してくれよ」

「……」

 

 グリーンのその言葉にワタルは目を瞑り呼吸を整える。

 二体。ワタルのポケモンはグリーンのポケモン一体で二体も倒されていた。

 最初は慢心だったかもしれないが、これは予想外だ。

 いや、それでもワタルは嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 こんなにも素晴らしい強敵がいたのが!こんなにも心躍る相手がいるとは!

 もはや四天王などの肩書きなど不要!

 一人のトレーナーとして己よりも強いトレーナーと勝負出来る喜び!

 

「行くぞ少年!僕は君に勝つ!」

「はっ!目の色が変わったなドラゴン使い!だけど勝つのは俺様だ!」

「ならば行くぞハクリュー!」

 

 白い鱗を持つ美しいドラゴン。ハクリュー。

 ワタルが三手目に出したのは先程の二体とは違い、生粋のドラゴンポケモンだ。

 かくとうタイプにとりわけ強いという訳ではないのだが、切り札を残しておきたいというのもあるが一つ気づいた事があった。

 

(あのカイリキー、既にやけどを負っている)

 

 気がついたのはついさっきだ。

 最初はやけどを負っていなかったのに、今は何故か傷を負っているのだ。

 だから気づいた。

 これこそがあの威力の高さの一因だと。

 しかし代償は確実にある。

 やけどを負った状態で、長期戦ができる訳ないのだ。

 

「相手は弱っているぞハクリュー!ドラゴンダイブだ!」

「チッ!やらせるか!クロスチョップだ!」

 

 急降下ダイブを仕掛けてきたハクリューを迎撃するように、4本腕からクロスするようなチョップを放つ。

 それはまさに断頭台を思わせるような早さと威力を持った一撃。

 まともに当たれば強固な竜の鱗であろうと貫き通すだろう。

 だが見た目以上に素早いハクリューはその死の一撃を交わすと、その角を突き立てるようにカイリキーの胸板に必殺の一撃を叩き込んだのだ。

 プテラの攻撃にやけど、そしてハクリューの一撃。

 それは確実にカイリキーを倒した、と思った所で。

 

「なぁっ!?」

 

 カイリキーは最後の力とばかりに自分にぶつかってきたハクリューをチョップで叩き潰したのだ。

 ワタルと同じく倒したと判断して油断してしまったハクリューは無残にも断頭台の一撃を叩き込まれてしまう。

 両者戦闘不能。

 相打ちという結果で終わってしまったのだ。

 

「なんて凄まじい……!」

 

 威力もそうだが、あの状況下で反撃したカイリキーの根性もまた凄まじい。

 戦闘不能に陥ったカイリキーをグリーンは見ると。

 

「お疲れ様……助かったぜ」

 

 静かに微笑みながらボールへと戻していった。 

 そんなグリーンとは逆にワタルの表情は険しいままだ。

 こちらは三体も戦闘不能になっているというのにグリーンは未だにカイリキーのみ。

 最後の四天王は確実に追い詰められていた。

 しかし。

 

「まだだ!まだ終わらない!」

 

 ワタルの目からは光は消えていない。

 不利は承知。

 だがここから逆転するのが四天王なのだから。

 そんなワタルを見てグリーンも闘争心むき出しの表情を浮かべる。

 

「そうだな!まだ終わりじゃないぜ!」

「ああ、行くぞ!リザードン!」

「ドサイドン!」

「な、何!?」

 

 ワタルが繰り出したのはリザードン。

 対してグリーンはドサイドンと呼ばれるポケモンだ。しかしワタルはそんなポケモンを知らなかった。

 いや、サイドンは知っているしまたその面影は残っている。とすれば……。

 

「サイドンが進化したというのか……」

「ああ、驚いただろ」

「さっきから君には驚かされっぱなしで心臓に悪いな」

「はっ!そんな事を言ってていいのかよ!ドサイドン、ストーンエッジだ!」

「くっ、リザードン!シャドークローだ!」

 

 いわタイプ――だと思われる――ドサイドン相手にはほのお、ひこう技では通用しないと思いシャドークローを指示する。

 リザードンは素早い動きでドサイドンに接近して斬りつけるが、やはり思った以上にダメージはないようだ。

 逆にどっしりと攻撃準備をしていたドサイドンから放たれる岩――ストーンエッジがリザードンに容赦なくつき刺さっていく。

 ほのお、ひこうの二タイプをもつリザードンはいわタイプには滅法弱いのだ。

 だがこのままでは終わらないとばかりに、リザードンはその口から炎を纏った破壊の一撃を放つ。

 はかいこうせん。

 その必殺の一撃は放たれた岩達を砕き、粉砕してドサイドンに直撃した。

 全てを飲み込まんとする一撃を受けて、ドサイドンは溜まらず防御体勢を取る。

 いわタイプである為、破壊の一撃は十全な威力を発揮している訳ではないが強力な事に変わりないのだ。

 

「このまま押し切れリザードン!」

 

 確実に、着実にドサイドンを押し込んで行くリザードンの一撃。

 このまま押し切れるか、そう思われた。

 

「吹っ飛ばせよ!ドサイドン!」

 

 だがやはりドサイドンは耐え切った。

 耐え切ったのだ。

 そして次の瞬間、再び放たれる岩の刃。

 数秒後、岩が突き刺さったリザードンは戦闘不能になっていた。

 これでワタルの手持ちは残り二体。

 敗北のカウントダウンが点灯してきたが、逆にワタルは酷く冷静であった。

 

(ドサイドンの属性が分からないが、あの姿ならサイドンと大きな差はない筈だ……!)

 

 冷静な目でドサイドンの事を観察していく。

 一つ日倒して行く事が必要なのだから。

 

「行くぞハクリュー!これで落とす!ふぶきだ!」

 

 二体目の白竜から放たれたのは氷の嵐だ。

 その暴風はドサイドンへと容赦なく襲い掛かっていった。

 

「ちっ、ドサイドン!避けつつストーンエッジだ!」

「そんな中途半端な避け方ではな!」

 

 グリーンの指示のもとドサイドンは鈍足な動きで必死に回避しようとしているが、攻撃準備もしながらの回避では完全に回避など出来る筈もない。

 そもそもドサイドンは元より回避をするようなポケモンでないからだ。

 回避が間に合わずふぶきに飲み込まれていくドサイドン。

 だがワタルは警戒をハクリューに伝える。

 あれで終わる訳がない、そしてあれで終わっていてほしいという気持ちを持ちながら。

 しかし予想通り、次の瞬間には氷の檻を突き破りドサイドンが咆哮を上げる。

 グリーンが指示を出すよりも早くストーンエッジをハクリューへと放って行く。

 氷の暴風を突き抜けて、ストーンエッジが次々とハクリューに襲い掛かっていった。ワタルも回避を指示するが攻撃態勢を取っていたハクリューに次々と岩の直撃を受けていった。

 そして先程の予想通り、ストーンエッジの直撃を受けたハクリューは一撃で倒されてしまったのだ。

 

「参ったね。あれで倒せたんだと思ったんだけど」

「甘いぜ。俺様のドサイドンの特性はハードロック、効果抜群の技のダメージが3/4……いや軽減されるやつを持ってるからな。二倍ぐらいのダメージじゃ倒しきれないぜ」

「なるほど。それは知らなかったよ」

「ああ、それにDに結構ふってるしな」

「でぃー?」

「ああ、いやこっちの話だ」

 

 グリーンの聞きなれない言葉に首を傾げるワタル。

 しかしグリーンは気にすんな、とだけ言って説明する気はないようだ。

 ワタルもすぐに興味を失くした。今はそれよりもバトルの方に集中すべきだからだ。

 

「さて最後だぜ」

「ああ、そうだね。でも諦める気はないよ!」

「当然!」

「なら行くよ!カイリュー!」

 

 自分がもっとも信頼するパートナーであるドラゴンポケモン、カイリュー。

 勝利を信じて、その空に飛翔した。

 しかし悲しいかな、先程のハクリューと違いドサイドンに対する決定的な技を持っていない。

 ならば今、カイリューが使えるもっとも強力な技を放つしかない!

 

「カイリュー、はかいこうせん!」

「やっぱりそれか!」

 

 カイリューの口から放たれる凶悪な光線がドサイドンに容赦なく襲い掛かる。

 対してドサイドンは先程と同じようにストーンエッジの準備をしている。

 

「ドサイドン!これで最後にしてやれ!ストーンエッジ!」

「負けるなカイリュー!このまま押し切れ!」

 

 破壊の光線と鋭い岩の攻防。

 衝撃と閃光。

 全てが終わったそこには……力尽きたように倒れるカイリューと、ボロボロだが力強く咆哮をあげるドサイドンの姿であった。

 

 

 ●

 

 

「……参ったなぁ」

 

 ワタルにとって先代チャンピオンと戦って以来の完敗だ。

 本当にここまで敗北するのは衝撃的だったし予想外だ。先代チャンピオン相手にの方がもっと検討出来ただろう。

 

「……おめでとう、グリーン君。君が新チャンピオンだ」

「あー、いや。まだです」

「へ?」

「まだ来てない奴がいるんで、まだチャンピオンにはなれません」

 

 それだけ言うとグリーンは自分のポケモン達に治療を施していく。

 先程の言葉は一体どういう事だろうか?

 まだ来てない奴とは一体?

 

「ワタルさんも治療しておいた方がいいですよ。どうせ後、二戦やると思いますし」

「……?」

 

 随分と具体的な数字だ。

 グリーンの言葉が正しければ、後二人挑戦者が勝ち抜いてここまで来るという事になる。お目当ての人物の事だろうか?

 

「俺様と同じぐらい強いですからね。せいぜい簡単に負けないでくださいよ」

「むっ!」

 

 先程の完敗を思い出して唸るワタル。

 自分を負かしたグリーンと同じぐらい強いトレーナーが後二人も来ると聞くと驚愕と嬉しさがこみ上げてくる。

 

「……君が――いや、君達が噂のロケット団を潰したトレーナーかい?」

「さぁ?」

「ふぅん……」

「まっ、そんな事より来たようですよ」

 

 ワタルがそんなグリーンの言葉につられて、出入り口を見るとそこには一人の少女が立っていた。

 茶色がかかった髪に青色の服を着た少女だ。

 

「あっ、グリーン」

「ようブルー。遅かったな」

「グリーンが早すぎなのよ」

 

 グリーンとブルー。やはり旧知の仲のようだ。

 となると、この少女もまた噂のトレーナーの一人なのだろう。

 

「さてグリーンは?」

「勿論、ばっちり」

「なら私も負けてられないわね」

 

 ブルーがグリーンからワタルの方へと体を向ける。

 手にモンスターボールを握っているあたりやる気満々のようだ。

 

「最後の四天王さん、私の挑戦を受けてもらえるかしら」

「……ああ!当然だ!」

 

 既に手持ちのポケモン達は治療が終わっている。

 戦うには問題ない。

 

「行くぞ!」

 

 

 ●

 

 

 そして今。

 

「えっと、それでどうなったんですか?」

「残念ながら負けたよ。その後にやってきたレッド君にもね」

 

 コトネはやはり衝撃を改めて受けていた。

 なんとなく話の流れから察してはいたが、改めてワタルの口から負けた、という言葉を聞くとその重みが変わってくる。

 

「その後は?」

「僕に勝った三人で対戦が始まってね。正直、凄い戦いだったよ」

 

 僕だけじゃなくて他の四天王も観戦しに来たしね、とワタルは言う。

 因みにその日のポケモンリーグの営業は終了したらしい。何やってんだ。

 

「で、総当り戦を何回かやった結果、レッド君がチャンピオンになったんだ」

 

 更に言えばその数分後にはグリーンがレッドをやぶり新チャンピオンになり、更にその数分後にはブルーがグリーンをやぶり、またまたレッドがブルーをやぶりと。

 ポケモンリーグが壊れるんじゃないかと言わんばかりに大暴れした三人であった。

 

「……話を聞く限り、本当に凄い人達なんですね」

「うん。結局、彼等がチャンピオンをやっていたのは一ヶ月も満たなかったんだけどね」

 

 より強い相手を求めてシロガネ山へ。

 しかし結局、相手になりそうなのはあの三人という事でいつも彼等は自分と対等に戦える相手を待っているのだ。

 

「これがヒビキ君――いや、君達だけじゃない。僕達を含めたあらゆるトレーナーが超えたいと願う【最強のトレーナー】と出会った時の話さ」

 

 参考になったかな、というワタルの言葉に頷くコトネ。

 実際に戦った事がない自分では完全に彼等の強さを理解している訳ではないが、それでも凄まじくありえない程の力を持ったトレーナーという事は理解出来た。

 それが分かっただけども十分に話を聞いた価値はある。

 

「今日は話をしてくれてありがとうございました」

「参考になったら何よりだよ。ヒビキ君によろしく」

「はい!」

 

 コトネはもう一度、ワタルに礼をするとヒビキと合流すべく外へと飛び出して行った。

 

「……さて僕もまた修行しようかな。久しぶりにイブキと修行するのもいいかもしれないな」

 

 あの妹分に連絡をしよう。

 そしてまた鍛えなおそう。再び彼等に挑戦するのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●

 

 

「こっちでもプロテクターが手に入るのは嬉しかったな」

「ゲームと違うのがよく分かるなぁ……」

「とりあえずお望みのポケモンはゲットしたわよ」

「んじゃ例の計画も進めないとな」

「ああ」

「ええ!」

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