シンオウ地方のチャンピオンであるシロナがジョウト地方にやってきたのはバカンスの為などではなく仕事である。
彼女の本業――考古学者の一環である。
研究テーマである神話とポケモンの関連性、そして人間とポケモンの歴史について研究している彼女はジョウト地方にあると言われているシント遺跡を探しに来たのだ。
シント遺跡はかつてシンオウからジョウトに住処を移した人々が残した遺跡、と言われている為だ。
しかしシント遺跡は発見者がいても、具体的に何処にあるのかが不明であり、存在はしていると分かっていても場所が誰にも分からない状態なのだ。
そういう事もあり、シロナは仕事の一環としてジョウト地方へとやってきた訳である。
「……まぁ、そう簡単に見つかる訳がないと思ってたけどねぇ」
ジョウト地方にやってきてから二週間。まったくもって成果が上がっていなかった。
色々な場所を探しては見たものの、やはり遺跡らしい遺跡は見つからない状態だ。
シンオウにいる知り合いに連絡を取って、資料を漁ってもらったもののやはり手がかりはなし。
完全解明されていないアルフのいせきを色々と調べてみたものの、やはりシント遺跡に繋がるてがかりは見つからなかった。
シロナも簡単には見つからないというのは分かっていたが、こう二週間も成果なしとなるとストレスも溜まってくる。
ここは一度、リフレッシュすべきか、と考えるとふと最近聞く噂の事を思い出していた。
「最強のポケモントレーナー……ねぇ」
ジョウトもしくはカントーにはどんなポケモントレーナーも上回る「最強のポケモントレーナー」がいる、という噂だ。
勿論、シロナはそんなものはまるで信じてはいない。
勝負は水物だし、シンオウチャンピオンである自分と同等のトレーナーはそれなりに知っている。
故に誰かが流した適当な噂だろう、と思っていた。ここジョウト地方に来るまでは。
しかし、最近耳にする噂が妙に具体的だった為にふと思い出したのだ。
何せ内容が
「カントーのジムリーダーが誰もが毎日のように挑戦しては敗北している」
「四天王や現チャンピオンも挑戦しては敗北している」
「最近はジョウト地方のジムリーダー達も挑戦しては敗北しているらしい」
というものだ。
これが全て本当だったらとんでもない話だ。
四天王であり、現チャンピオンであるワタルとはそれなりに親交があり、お互い実力を高めあえる程の実力者なのだ。
まさかそんな彼が一度も勝てないという事があるのだろうか?
ここまで考えると噂の真実が知りたくなってくる。
となれば
「ワタルに連絡するのが一番でしょ」
ジョウトに来て、二週間程の自分が噂を聞いているのだ。
こちらに住んでいるワタルがこの噂を知らないとは思えない。
まずは彼に連絡してみよう。そうすればはっきりする筈だ。
●
『ああ、うん。全部本当だよ』
「……へ?」
思い立ったら吉日、という事で早速、ホテルの一室からワタルに連絡を取ってみる事にしたシロナ。
噂の事を話、真実を聞いた結果が上のような返答であった。
さすがのシロナもこれには呆れるというよりは開いた口が塞がらない状態になってしまった。
いやいや、待て待て。あのワタルが一度も勝てないとかありえるのか?と言った感じである。
「……冗談でしょ?」
『冗談でこんな事は言わないよ、僕は』
「……」
そんなワタルの言葉に押し黙ってしまうシロナ。
ワタルの性格は熟知している。冗談を言わない、という事はないが少なくとも真面目な問答をしている時に冗談を言うような男ではない。
という事は先程言った通り、全て本当だというのか。
いや、しかし……
『まぁ、そうなるよね』
「……ええ、正直理解出来ないわ。あなた達が一度も勝てないなんて」
『でも事実だよ。先日、新チャンピオンが挑戦しに行ったけど返り討ちにあったぐらいさ』
ジョウト地方からやってきた新チャンピオンの噂も聞いている。
期待の新鋭。バランスのいい手持ちを駆使して戦う少年だと聞いている。
ワタルをやぶったという事はかなりの実力者だという事も理解できるが、そんな新チャンピオンも敗北するとは。
「どれだけ強いの、その噂のトレーナーは」
『噂通り「最強」かな。少なくとも彼等が身内内で戦った以外に敗北したっていう話は聞いた事がないね』
「隠してるっていう事は?」
『これだけ強いって言われてるトレーナーに勝てば、勝ったトレーナーが自慢してると思うよ。僕も間違いなく自慢して回るね』
OK、理解しよう。
噂は全て真実。そして噂のトレーナーはワタルや新チャンピオン達相手に無敗を誇る文字通り「最強」のトレーナーという事だ。
ならば
「私が勝てば新しい「最強のトレーナー」という事かしら?」
『挑戦する気かい?』
「ええ。当然でしょ。せっかくこっちに来てるのに、挑戦しないで帰るなんて論外だわ」
ここまで聞かされれば、何もせずに帰るなどありえないと言っていい。
それにそんなトレーナーに勝てば、シロナはあらゆる意味で数々のトレーナー達を上回れるという事だ。
つまり挑戦しない、という文字は既にシロナの頭の中から消えていた。ついでに言えばシント遺跡の捜索の事もすっきり忘れ去っていた。
『君ならそう言うだろうとは思ってたけどね。ならシロガネ山に行けばいいよ。君も立ち入り許可は持ってるだろう?』
「ええ」
『彼等はそこで挑戦者を待っている。ただし毎日ではないけどね』
そこは運次第かな、とワタル。
三人のうち誰がいるか分からないし、誰もいない事もある。
つまり本気で挑戦する気なら、数日がかりでシロガネ山に通う必要があるだろう。
「ふむ」
シロナがこちらにいる予定は三週間。つまり一週間通える、という事だ。
しかし三人が何時いるかなど分からない。一週間で確実に会える、と考えるのは楽天的な思考だろう。
だけど何もしないで帰るなんてありえない、と思っているシロナとしては一週間で会えなかった場合は数日延長してここに残る気持ちでいた。
それを成せるし、成す価値もあると判断したからだ。
「ありがとうワタル。私の勝利連絡を待っていなさい」
『ああ、君の悔しそうな敗北連絡を待っているよ』
シロナは思わず受話器を叩きつけてしまった。
●
次の日、さっそくシロガネ山へと向かったシロナではあるが、残念ながらその日は「最強のトレーナー」に出会える事はなかった。
仕方ないのでシント遺跡捜索に戻るシロナ。目的が変わりすぎである。
しかしシロナは気にしないとばかりに二日目、三日目、と続けてシロガネ山山頂へと向かうがやはり空振り。
ここまで連続して出会えないのは正直悔しい。
だが負けじと四日目、そして五日目。その人物をようやく見つける事が出来たのであった。
「……貴女かしら、噂に聞く「最強のトレーナー」は?」
「自称した事はないけど一応そう呼ばれてるわ。というか噂になってるんだ、やっぱり」
「ええ」
五日目。山頂に上ったシロナが目にしたのは一人の少女であった。
茶色の髪に青の服。歳で言えばまだまだ若いと言っていい少女だ。
少女の名前はブルー。最強の一角である。
「貴女に会うのに随分と時間がかかったわ」
「ごめんなさい。ちょっと色々と飛び回っていたから」
「ああ、気にしないで。中々会えなかった、自分の運を呪っていただけよ」
別にここはジムでもなんでもないのだ。目の前の少女に会えなかった事の恨み辛みを言うのは筋違いというものだろう。
彼女達はただここにいて、挑戦者がやってくるだけなのだから。
「それでポケモン勝負、受けてもらえるのかしら?」
「はい。手持ちは六体のポケモンリーグと同じルールで大丈夫ですよね」
「ええ、よくってよ」
手持ちの子からまずはどうするか考える。
相手は最強と呼ばれる程の実力者。切り札を使うには早すぎる。
となれば……
「行きなさい、ミカルゲ!」
「出番よ!ギャロップ!」
シロナが繰り出したのはふういんポケモン、ミカルゲ。
対してブルーが出したのはひのうまポケモン、ギャロップだ。
ミカルゲがギャロップに対して強いプレッシャーを与えているが、ギャロップの様子に変わりはない。
ふむ、と唸るシロナ。通常の相手ならミカルゲのプレッシャーで怯んだりするものなのだが……。
(随分としっかり鍛錬されてるのね、だけど私のミカルゲなら!)
自分が負けるというイメージはもたない。
どんな相手だろうと倒すまでだ。
「ミカルゲ、あくのはどうよ!」
「ギャロップ!フレアドライブ!」
ミカルゲから放たれるおそろしいオーラ。しかしギャロップは気にしないと言わんばかりにほのおを纏って突撃してくる。
だがシロナには随分と余裕があった。ミカルゲは非常に耐久力が高いポケモンだ。
確かにフレアドライブは強力な技ではあるが、一発では倒れないだろうという自信もある。
だからこその余裕だ。
「なっ、ミカルゲ!?」
「よし!」
しかし現実は一発で倒されてしまったミカルゲの姿だ。
これにはショックを隠せないシロナである。チャンピオンとしての自信も同時に砕かれたような気がした。
だけど代償もそれなりに大きい。
(フレアドライブは自身にもダメージを与えてしまう諸刃の剣。どうも私の予想以上にダメージを受けてる気がするけど、これなら……)
ミカルゲが一撃倒されたのはショックだが、ここで立ち止まる訳にはいかない。
自分はシンオウ地方のチャンピオンなのだから。
「行きなさい、ミロカロス!」
「ふむ……」
シロナが選択した次の一手はほのおタイプに強いみずタイプであった。
念を入れてガブリアス、とも考えたがここは手堅くといった所だ。それに加えて切り札温存という事も含まれている。
しかしブルーの表情に焦りの色は一切ない。
余裕がある、ようには見えないが決してこの状況に困っている訳ではないようだ。
「ミロカロス!なみのり!」
「それならこっちはメガホーンよ!」
ミロカロスは大きな波を繰り出し、ギャロップを飲み込もうとする。
しかし逃げる所かブルーは逆に迎撃の指示を出す。実際、ギャロップの動きは素早くミロカロスのなみのりがギャロップを飲み込む前に、メガホーンを直撃させてきた。
耐えて!とシロナの思いが通じたのか、ミロカロスは直撃を受けてもしっかりと耐え切っていた。
そしてお返し!と言わんばかりにギャロップに大きな波をぶつけていった。
「ああ、無理かぁ……」
「……随分と余裕そうね」
「いいえ、それ程でもないけど、ね」
「……っ!」
ギャロップもまた倒れてはいなかった。弱点であるみずタイプの技を受けたのにも関わらずだ。
ミロカロスの力が足りなかったというのか。
しかし見た感じ、ギャロップはギリギリ立っているのが精一杯といった様子だ。
後、一撃でも攻撃を与える事が出来れば倒れるのは間違いない筈だ。
だが
(ごめんなさい、ミロカロス……)
「ギャロップ、メガホーン!」
悔しいがミロカロスもまたギリギリの所であったのだ。
そしてこちらにはギャロップのスピードを抜く事は出来ない。交換して相手のメガホーンを受け止める、という選択肢も考えたのだがあの威力だ。
どのポケモンを出したとしてももって二発。そして悲しいかな。あのギャロップを上回れるポケモンは残念ながらシロナの手持ちにはいなかった。
倒されてしまったミロカロスをボールに戻すと、再び気合を入れなおす。
(……負けたくないわね)
思うのはそれだけだ。
「トリトドン!」
ウミウシポケモン、トリトドン。
こちらもまたシロナが自慢するポケモンだ。
何よりミカルゲ程ではないが、耐久力に自信もある。
「ギャロップ、最後までお願い!メガホーン!!」
「これで終わりよ!じしん!」
今にも倒れそうな足を駆使し、軽快な動きで己の角をトリトドンに叩きつけるギャロップ。
しかしそこで終わり。耐え切ったトリトドンが起こすじしんによってギャロップは今度こそ力尽きたのであった。
「ありがとう、ギャロップ」
「凄いわね……貴女のポケモン」
「それは光栄ですわ、シンオウ地方のチャンピオン」
そんなブルーの言葉に苦笑するシロナ。
どうやら自分の正体は最初からばれていたらしい。まぁ、隠してなどいないから別に構わないのだが。
とは言え、自分がシンオウのチャンピオンだと知っていても怯む様子は一切なかった。
本当に彼女は敵なしだったのだろう。
ならば!
「……貴女に私の名前を刻み込んであげるわ!」
「やれるものなら!行くわよ、ニドキング!!」
ドリルポケモン、ニドキング。
非常に豊富な技を覚える事から育てる人物は多い。とは言え、ニドキングに進化する為に必要なつきのいしが非常に高価な為、そこまで多い訳ではないが。
とは言え、シロナは先程のギャロップよりは脅威として感じてはいなかった。
確かにニドキングは技の種類が豊富であり、さまざまなタイプに臨機応変に対応可能という特徴を持っている。だがそれだけだ。
威力も素早さも中途半端。火力だけならば先程のギャロップの方があった筈だ。
シロナは自分のトリトドンに目を向ければ、ギャロップの攻撃を受けたがまだまだ元気そうな様子。これならば後、一発トリトドンなら耐えてくれる筈だ。
「ニドキング、だいちのちから!」
「トリトドン、じしんよ!」
放たれる大地を揺るがす攻撃。
トリトドンは足が遅い。先手は譲ってしまうが耐久力にならば自信が――
「くうっ!?」
しかし一撃。ギャロップの攻撃を受けても平然とした様子ではあった為、ニドキングの攻撃ならば耐えてくれるだろうと思っていたが、どうやら判断ミスのようだ。
いや、バトルが始まってからずっと判断ミスだらけだ。
今までの経験がまるで役に立たないと言わんばかりにこちらの予想を平気で上回ってくる。
(あのニドキング、ダメージを受けている……?)
じしんが届く前にトリトドンを倒した為、ダメージは一切受けてない筈だがニドキングは微かにだがダメージを受けている様子であった。
勿論、だいちのちからは反動で自分にダメージくるという事はない。
となれば他にカラクリがあるという事だろう。
もしかすると自分にダメージが入るかわりに攻撃力をあげる持ち物か何かを持っているのだろうか?
いや、今はそれを調べている余裕はない。まずは目の前のニドキングを倒さなければ。
(こっちの残りは三体。さすがに辛いわね)
こちらが手持ち三体を倒されているのにも関わらず、ブルーはまだ二体目だ。
しかも二体目のニドキングには反動によるダメージ程度しか受けていない始末だ。
だが手がない訳ではない。
「行きなさい、ロズレイド!」
ブーケポケモン、ロズレイド。
くさタイプとはいえ、どくタイプも持っているニドキングに対して相性がとてもいいという訳ではない。
だがシロナにはしっかりとした勝算があった。
「ロズレイド、じんつうりき!」
「ああ!?ニドキング、だいもんじ!」
じんつうりきはどくタイプに強いエスパー技だ。
ロズレイドが使える事をすっかり忘れてたと言わんばかりに慌てるブルー。
慌ててニドキングにだいもんじの迎撃を命じるが、大技故に避けやすい。シロナは慌てずにロズレイドに回避を指示し見事に回避成功。
じんつうりきをニドキングに叩き込んだのであった。
だがそれでも倒れない。
「随分と頑丈ね!」
「そりゃあ鍛えてますから!ニドキング、慌てずにもう一発よ!!」
「ロズレイド、回避してじんつうりきよ!!」
シロナは再び回避指示を出すが今度はしっかりと命中。
弱点であるほのおタイプの技を受けたロズレイドはやはり一撃で倒されてしまった。
「だけどニドキングも限界ね!ルカリオ!しんそくよ!」
「ニドキング、だいちのちから!」
ニドキングがじめんを揺り動かす攻撃を放つがその前にルカリオの神速の動きがニドキングに直撃。
弱点であるじんつうりきを受けたダメージもあってか、完全に力尽きたようだ。
それを見たブルー。優しくニドキングを撫でるとお疲れ様、と言ってボールへと戻した。
「むぅ、久々に二体もやられちゃった」
「久々……ね」
「ええ。三体目を出すなんて久々よ、本当に」
そんなブルーは何処か嬉しそうな様子である。
「さて、行くわよカブトプス!」
こうらポケモン、カブトプス。
三年前にとある研究所で復活した化石ポケモンだ。現在は復帰したカブトプスが一部のトレーナーに育てられていると聞くがブルーもその一人だったとは。
予想外、ではない。ブルー程の実力者ならば任せられてもおかしくはない。
「凄いわね」
「そうでもないわよ。食べる物とか色々気を使うから大変よ」
まぁ、遥か昔のポケモンだ。色々と情報も足りないから当然とは言えば当然だろう。
気を抜けば、せっかく現代に復活したポケモンが死んでしまう可能性が高い。
しかしこうして元気そうにこちらを威嚇しているカブトプスを見れば、ブルーはしっかりと手を抜かずに育て上げたのだろう。
「ルカリオ、じしんよ!」
「カブトプス、つるぎのまい!」
ルカリオが起こすじしんを気にせずに、己の力を高めるべく剣の舞を行うカブトプス。
確かに己の力を高めはしたが、代償は大きいようだ。
シロナの目から見ても、カブトプスはかなりのダメージを受けている。何せその背中の甲羅が一部くだけているのだ。
とは言え、残念ながらしんそくでは落とせそうもない。ならばもう1度弱点をつく攻撃を当てれば確実に倒せばいい。
「ならとどめよ。ルカリオ、はどうだ――……え?」
ルカリオがとどめとしてはどうだんを放つ準備をしようとした瞬間。
カブトプスが水の流れを利用した――たきのぼりがルカリオに直撃していた。
「う、うそ……!?」
「よし、一撃!」
つるぎのまいで強化されたカブトプスの攻撃はルカリオを一撃で倒しきっていた。
一撃で倒されたのは納得出来る。しかしカブトプスの動きはルカリオよりも遅かったのにも関わらず、突然に素早くなっていた。
一体何が起こったのかシロナにはまったく理解出来なかった。
「……さてラストですよ」
「そうね……。行くわよガブリアス!」
シロナの切り札。マッハポケモン、ガブリアス。
ドラゴンポケモンの中でも一、二を争う素早さを持つポケモンだ。
このポケモンならばルカリオよりも早く攻撃する事が出来る。
だけど
「ガブリアス、じしんを!」
「申し訳ありませんが」
既に時遅く
「これで終わりです!カブトプス、たきのぼり!」
ガブリアスすら上回る素早さで攻撃準備を完了させたカブトプスがルカリオを屠った同じ技、たきのぼりがガブリアスに直撃されていた。
つるぎのまいで強化された力はガブリアスの強固の防御力すら貫き、先程のルカリオと同じように一撃で倒していた。
「……」
残った手持ちはいない。
シロナはこうしてブルーに敗北したのであった。
●
暫く呆然としていたシロナではあるが、ガブリアスをボールに戻した後、ブルーの方に向き直った。
先程まで力を失っていた瞳にはしっかりと力が宿っている。
「完敗よ。でもどうしてカブトプスはルカリオやガブリアスより速く動けたの?」
少なくとも最初にルカリオがじしんを放った時は、カブトプスの動きは遅かった。
しかしつるぎのまいを行った後は段違いの素早さでルカリオとガブリアスすら上回った動きを見せたのにはシロナには理解出来ないでいた。
「ああ。あれはカブトプスのとくせい「くだけるよろい」です」
「くだけるよろい……?」
「はい。物理攻撃を受けた時、防御力を下げて素早さをあげるとくせいです」
「素早さをあげる……。なるほどね……だからルカリオやガブリアスを上回る動きを見せれたのね」
なるほど。シロナがあの時に見たくだけた甲羅はこのとくせいのせいだったのだろう。
だけどまだ謎が残っている。
「でもカブトプスのとくせいは「すいすい」か「カブトアーマー」じゃなかったかしら?」
そうなのだ。ポケモンがもつとくせいは同じポケモンでも二つだった筈。
ブルーの言葉なら三つ目が存在するという事になる。そして何より、一体彼女は何処からそれを見つけてきたというのだろうか?
「うーん、そうですね」
禁則事項です、と可愛らしく呟いたブルーを見たシロナは呆れた後に思わず苦笑するしかなかったのであった。
●
因みにその日の晩、ワタルがまだ三体目までひっぱり出した事がないという情報を聞いたシロナが自慢するようにワタルに連絡したのだが。
「でも負けたんだろう?」
という言葉に落ち込む事になったのではあるが。
●
「シロナさんマジ美人」
「写真は?」
「動画は?」
「忘れた、てへぺろ(・ω<)」
「(´・ω・`)」
「(´・ω・`)」
持ち物が被ってるよって前に投稿した時に言われたゲーム世界じゃないので……。