皆さんこんにちは!
作者の戌眞呂☆と申します。
今回、思い付きによって書きはじめた新作を投稿いたしました。
女の子が主人公なのは初めて書くので心情の表現や関わり方など、これで良いか不安なところがあります。「こんなの絶対違う」という個所も出てくるかもしれません。しかし、最初に言っておきます。
この書き方のまま突っ走るのでよろしくお願いいたします!!
では、元気な鬼の女の子が奮闘する物語、ぜひお楽しみください!
※オススメ※
途中に主人公が歌うお店の宣伝歌が出てきます。
初めての作詞のため多少無理がありますが、
その時はぜひ原曲の「華のさかづき大江山」を聞きながら読んでください。
歌いだしは15秒くらいからです。
「ん…うう……ふぁぁぁぁぁ~」
重い瞼を開け大きな欠伸を一つ。涙でかすむ目を擦り、よっこらせっと上体を起こした。
「朝か…」
そう呟いてはみたものの、ベッドの周りには時計が無いから今の時間を知ることはできない。ましてや、太陽の光が届かないここ地底世界では朝も昼も夜もない。窓の外を見れば洞窟の岩壁と薄闇が広がるだけ。ここで生活するには、自分の体内時計のみが頼りだ。まあ、うちの体内時計の正確さには自信があるんだけどねー。今は午前の10時。って寝過ぎた!?
「あちゃー…。昨日張り切りすぎたか」
後悔の波にのまれ、項垂れる。今日の事が楽しみで昨晩夜遅くまで食材の準備や屋台のメンテナンスをしたり、メニューの最終確認をしたり、自作の和服や手ぬぐいを合わせて鏡の前で様々なポーズをとってみたりとはしゃぎ過ぎてしまった。でも、ここで悔やんだって時間が戻るわけでもないし、さっさと着替えるか。
寝巻のボタンをはずし、着ている物をすべて脱いだ。その状態のままタオルを肩にかけ浴室に向かう。浴室と言っても洞窟をくりぬき、シャワーを設置しただけの簡単なつくりではあるのだが、まあ今まで不便を感じたことは無い。
「気持ちいい~」
頭上から降り注ぐ優しく温かいお湯を身体全身で受け止め、手で髪をなでる。上機嫌に鼻歌を歌いながら体の隅々まで入念に洗い、角も丁寧に洗う。温かいシャワーを浴びたことですっきりと目を覚ます事が出来た。
体に付く水滴を拭い取り寝室に戻ると、ハンガーにかかっていた着物を取りそでを通す。自分で作った薄いあずき色の着物は丈も大きさもバッチリと合っており自然と顔がほころぶ。あれ?でも胸がきつい…。えっ、ちゃんと測ったはずなのにどうして?…仕方ない、さらしを巻くか。着物を脱ぎ、さらしを取り出して胸に巻き付ける。この胸を圧迫された様な感じが好きじゃないのよね。息が詰まりそう。ぶつぶつと文句を言いながらさらしを巻き終わり、再び着物に袖を通す。よし、今度はちょうどよくなった。袴を改造して作ったスカートを穿き、帯を巻いてこれまた自作の前掛けをつける。最後に手拭いを頭にかぶれば…
「よしっと!うちの女将姿似合ってるやろ~」
この部屋にはうち以外誰もいないのに、見せびらかすように鏡の前でくるくると回り、何度もポーズを決める。自分の姿を見て気分が高揚するのを感じる。さあ、そろそろ出発しよう。何年もかけてコツコツと掘り進めたこの洞窟ハウスともお別れだ。もう戻ってくることは無いだろう。必要なものも集めた、食材も保存した、大量のお酒も備蓄した。今日を迎えるまでの準備は万全だ。
ドアを開け、家の外に出る。目の前は相変わらず薄闇に包まれているが、この辺りの地形は大方頭に入っている。大丈夫だろう。
「さあ。今日からずっと、よろしく頼むよ」
家のわきに置かれた移動式屋台に笑顔を向けた。今日からずっと一緒に旅をする相棒だ。もちろんこれも自作。縦が4m、横が2.5m、高さが2.5mの大きめのサイズで4つの車輪が付いている。そして
なぜこのような設備があるのかと言うと、屋台で居酒屋を開くからだ。普通に旅をするのもつまらないから、多くの人と関わるために何か商売をやったらどうかという考えに辿り着いた。そこで思いついたのが居酒屋だ。うちはもちろんお酒は大好きだが、幻想郷に住む妖怪にはうちら鬼よりもお酒が好きな妖怪がいるかもしれない。そんな妖怪と出会い、仲良くなるために移動屋台式居酒屋「栗々亭」を開くことにした。
「さて、と。行きますか」
「栗々亭」と書かれた提灯に明かりをつけ、屋台を引っ張りながら目の前の道に足を踏み出した。もう、当分この家には帰ってこないだろう。こんな真っ暗闇の中での生活にはもう飽きた。これからうちは太陽の光のもとで生きる。
「いってきまーす!今までありがとーなー!」
今まで住んでいた家に手を振り、意気揚々と家を後にした。
家を後にして数時間。のんびりと足を進めながらやってきたのは旧地獄街道。ここは昔地獄の一部だったのだが、地獄のスリム化とか意味の分からない理由で閻魔さんがここを地獄から切り離してしまった。まあ結果的に言えばそのおかげでうちら鬼の楽園ができたわけだから感謝しているのだけどね。にしても…。
「客が来ない…」
どうした?客っていうか、街道に人っ子一人…いや鬼っ子一人いないぞ。もっと賑やかなはずなんだけどなぁ。もしかして宣伝しないと来てくれないとか?よしっ、ここはうちの美声でも響かせちゃおうかな。こんな時のためにと考え出した宣伝歌があるんだよね。
「んっ!あーあー…よしっ!」
喉の調子を確かめ、肺一杯に空気を吸い込む。そして鼻歌で出だしを歌いながら宣伝歌の歌詞を口にした。
「さ~あおいでよ居酒屋へ~、さ~あおいでよ揚げ物屋~、美味しい~料理にお酒、そうここは栗々亭~、みんなで酒を飲み~、みんなで笑い会えば~、笑顔の華が咲き乱れ、華やぐそこは栗~々亭~♪」
宣伝歌を歌いながら街道を練り歩く。やっぱり歌を歌うのは気分爽快になるし、歌につられてお客が集まってくれば一石二鳥だね。
「おい」
気分よく宣伝歌の2番に行こうとしたところで何者かに呼び止められ、歩みを止めた。声のした方を見ると、そこには金髪のロングヘアで着物姿の女性がこちらをじっと見つめていた。その女性の額には、赤く鋭い一本の角が生えている。この人は、もしかして…。自然と表情に喜びが満ち溢れ、その女性の胸に飛び込んだ。
「姉さん!姉さんだよね!」
「その声、そしてとぐろを巻いた角…もしかして心音か!?」
「うん!心音だよ!覚えていてくれたんだー!」
「忘れる訳無いだろう!今までどこに行ってたんだ?いきなりいなくなったから心配していたんだぞ!」
再会を喜び、2人は熱い抱擁を交わす。まさかこんなところで勇儀姉さんに会うなんて思ってもみなかった。姉さんは小さい頃とある事件をきっかけに自暴自棄になって落ち込んでいた自分を支えてくれたことがある。その後も常にうちの事を気にかけ力になってくれた大恩人なんだ。悲しくなると今みたいにぎゅっと抱きしめてくれる。昔からちっとも変らないこの力加減と胸の感触に包まれていると本当に安らぎと安心感でいっぱいだ。
「それにしても、しばらく見ない間にずいぶん大きくなったな。さっきの歌声とその根元でぐるぐるととぐろを巻いた角が無ければ気付かなかったよ」
「えへへ、今までずっと一人で暮らしていたからね。そう言う姉さんはちっとも変ってないね」
「そうかい?それで、一人でって今までどこに行ってたんだい?300年近く姿を見なかったから心配していたよ」
「ごめんなさい、いきなり姿を消して迷惑かけちゃって。うちは強くなるために奈落でずっと修行をしていたのさ」
そう言った途端、勇儀姉さんは驚きの表情を浮かべる。
「奈落!?それって地底の端にあるという無法地帯のことか?」
勇儀姉さんが驚くのも無理はない。奈落と言う場所はここ旧都から北西にずーっと行ったところにある遠く離れた辺境の地の事だ。そこは旧都を追われた荒くれ者の鬼たちが住み着いて無法地帯となっている地底の中でも非常に危険な場所だ。そんな危険地帯で、女の子1人で暮らすのは非常に危険なことだ。うちが家を作って住んでいたのは奈落を少し離れたところなのだが、ほかの鬼たちに見つかって襲われたことだってある。最初の内は全く敵わなかったが、修行として喧嘩を挑み続けるうちに自分の力を高める事が出来た。今ではみんなうちの友達だ。
「あ、そうだ!うちの店に寄ってってよ!立ち話もなんだし、それにお客が来なくて寂しかったところなんだー」
「お店?お店って、後ろのこれか?」
「うん!移動屋台式居酒屋、名前を栗々亭!そしてうちはこの居酒屋の女将なんだ」
「へぇ、居酒屋かぁ!心音の料理を食べれるのは何か楽しみだな。よし、じゃあごちそうになろうかな」
「ホント!?わぁい、ありがとう!!」
嬉しさを抑えきれず、勇儀姉さんの手を握ってピョンピョンと何度も飛び跳ねる。そうと決まればさっそく準備しないと。ポケットから直径8cmのリングを取り出した。今からうちのあっと驚く手品を見せてあげるよ!
「見てて」
勇儀姉さんにそう言い残し、リングに妖力を集中させる。するとリングの中が虹色に光り出す。その直後、思いっきりリングの中に腕を挿し込んだ。
「ええっ!?腕がリングの中に消えた?ど、どうなっているんだい!?」
勇儀姉さんの言うとおり、うちの腕がリングの中に消えていった。リングに腕を通したから、普通は反対側から腕が出てくるはずである。しかし、まるで異空間に飛ばされたかのように腕はリングの中に消えている。
「ふふっ、それは企業秘密ってやつよ。そしてこの腕を引っ張れば…」
勢いよく腕をリングから引き抜く。すると、リングの中から大きなベンチが引き出された。勇儀姉さんは驚きのあまり目を大きく見開き、リングとベンチとうちへとせわしなく目線を動かしている。その反応があまりにも面白くてクスッと笑みが漏れる。
「まさかこれって心音の能力なのか?少し見ない間にこんな能力を手にしていたなんてな!」
「ううん、ちょっと違うよ。うちの能力はこれじゃないんだ。まあ座って座って。能力も見せてあげるからね!」
驚きのあまり呆然と立ち尽くす勇儀姉さんを促し、屋台の前に置いたベンチに座らせた。さあ、栗々亭開店の時だ!腕が鳴るよ!お冷を提供した後、ガスコンロに油がたくさん入った揚げ物用の鍋を乗せる。
「今から油を温めるからもう少し待っててね。じゃ、能力を使うよ!」
右手の手のひらを上に向け、そこに妖力を集中させる。すると、手のひらにぼぉっと現れたのはメラメラと燃え上る灼熱の炎だった。
「もしかして、心音の能力は…」
「そう!火炎を操る程度の能力、だよ!」
手のひらに灯した炎を人差し指の指先に移動させ、ガスコンロに火をつけた。
「へぇ、すごいな!そう言えば心音は昔から魔術のようなことをするのが得意だったね。毎回驚かされてばかりだったよ」
「うん!その代り力は弱かったけどね。それにしても、久しぶりに会えてうれしいよ。そう言えばさぁ…」
再会の嬉しさから会話が弾み、2人で笑いあいながら語り合った。そのうちに油も適温に温まったようだ。着物の袖をまくり、笑顔で勇儀姉さんに言った。
「さあ、準備は整ったよ。ご注文をお伺いします!」
ん?
おや、いらっしゃい!
読書で疲れたろう。うちの店で飲んでいかないかい?
え、うちは誰かって?
うーん、ちゃんと読んでくれたかなぁ。
よし!じゃあ自己紹介と行こうかね!
うちの名前は栗夢心音。読みは「くりむこ
こ
種族は鬼。頭の両側から生える、根元でとぐろを巻いた角が特徴さ。どうしてこの形になったかって?それはうちも分からないんだよね。物心ついたころからこうなっていたんだ。髪は絹のように真っ白で、右目を隠している。ちょっと昔色々あってね。
うん、うちの……
って何悲しい話しているんだろう。ごめんね、お客の前で。
話を続けるよ。うちの能力は『火炎を操る程度の能力』さ。料理に使う小さな炎から辺りを焼き尽くす地獄の業火までいろいろな火炎を操る事が出来る。
次はうちの相棒の紹介だ。
自分で作ったお気に入りの移動屋台式居酒屋、その名も「栗々亭」!どう、可愛い名前でしょ?このお店ではお酒を飲みながらいろんな料理を食べる事が出来る。特に揚げ物がおすすめ!
え、お腹すいたって?
じゃあ食べていきなよ!ほらほら、おいで!お酒もどうぞ!
あ、そうそう!実はこの前戌眞呂☆ってやつに似顔絵を描いてもらったんだ。え、見たいの?うーん、恥ずかしいけど今日は特別に見せちゃおうかな。
これだよ。
【挿絵表示】
えへへ、似てないだろ?うちはもっとこうおしとやかで可憐な…
え、か、可愛い!?
そ、そうか?恥ずかしいこと言ってくれるな。えへへ、えへへへへ…
ああ、ごめんごめん!一人でしゃべりすぎてた。
じゃあ一緒に飲むとしようか。鬼のうちついてこれるかな?
さあ、乾杯!