今回は少し長くなりました。
今回も士郎sideと和哉sideです。主人公まだ出てきません。
それではどうぞ!
士郎side―
「最近はどうだ?二人とも」
「おう、最近だと東京タワー見に行ったぞ」
「すごく高かった」
「そうか、よかったな」
私は二人に近況を聞くと二人とも楽しそうに答えた。
二人と出会ったのは私が単独で施設を潰していた時だった。助ける為に牢屋に向かうと、囚われていた目に光のないミッテルトと彼女を守るように立ち塞がるフリードがいたのが始まりだ。
二人に聞くと、その施設は聖剣計画と神器の埋め込みを行う実験を同日並行して行われており、フリードは聖剣計画の被験者、ミッテルトは聖剣計画によって瀕死になっていた被験者が持っていた神器を埋め込む被験者として10年前に誘拐・実験されていた。助かったものの、その実験によってミッテルトは誘拐前の記憶を失い、感情表現が乏しくなっていた。その為、ずっと支えていたフリードにミッテルトは依存したらしい。
助かった後、フリードは体調が回復すると直ぐにプログラムや経営学等を独学で勉強し、私達の住む町の住人から同士を集めて電子機器を取り扱う会社を立ち上げ、1年後にはCMが放送されるくらいの大企業となった。立ち上げた当初は残党が暗殺しに来ていたようだがそれを悉く潰していた。そして最近はその片鱗すら見られなくなったそうだ。なので、ある程度危険がなくなったと考えたのか彼の養子兼助手になったミッテルトを連れて去年から旅行しており、つい先週帰国したため私に連絡し、逢いに来てくれたのだ。
お互いの近況を語り合い、しばらくしてから私は話しを切り出した。因みに、ミッテルトは暇なのか携帯ゲームをやっている。
「話は変わるが、つい最近駒王町にある廃棄されていた教会にシスターが赴任してきたという噂を聞いたが、何か知らないか?」
「と言っても先週日本に着いたばかりだから知らないなぁ。だが、ちょっとおかしいな」
フリードの返答に私はいかぶしげに見る。
「どういうことだ?」
「廃棄されていたってことは取り潰される前ってことだろ?そこに普通、わざわざ赴任してくるか?それも未熟っぽいシスター一人だけ」
「普通はないな」
廃棄されていたっていうことはその土地の持ち主がそこを放棄している事に等しい。例え新たに使用する人が存在するのなら、その人が快適に使用出来るように掃除をするなどの準備が必要になるはず。だが、その形跡が今まであったかと言われると噂にもなっていない。それどころか、未熟ではあってもシスターが赴任してきたというのに教会を利用しようという話しも聞こえてこない。そして、未熟なら教師かそれに準ずる存在が着くはずなのにそれも存在しない。
明らかに人外が関わっている案件だ。
「だろ?だから体のいい厄介払いをされたんじゃね?そのシスター。それかそいつ使って何かやろうとしてるか、もしくはその両方か」
「何かとはなんだ」
「何かは何かだよ。これ以上は俺たちからしたら厄介事に変わりねーから突っ込まねぇ」
「平穏、大事」
「そうか」
確かに、ミッテルトの為とはいえ今までの環境を考えればフリードは生き急いでいるように見えた。そんなフリードをミッテルトとフリードの部下が気付いてストッパーとなり、フリード本人もきちんと止まる事が出来たのは僥倖だ。少し心配していたが、これなら大丈夫だろう。
少々そこのシスターが気になるが、恐らく拓斗の言っていた原作に関係している。今のマスターが関わらないと決めた以上、私が直接関わってはこちらに危害が加わる可能性があるため、関わるのは得策ではない。仕方ないが、放置するしか無いだろう。
私が彼らを微笑ましく見ていると、フリードは照れたのか「見んな」と言って顔を赤く染めつつ顔を背けジトリと私を睨んだ。ミッテルトも顔に出さないようにゲームをしているようだが、耳が赤くなっている。
その後、フリード達に予定があるということで喫茶店から出た。その別れ際に何か思い出したのかフリードが私に言った。
「あ、そういえば旅行中こんな噂を聞いたな。今駒王町にいる悪魔払いの事なんだけど、“神父姿の魔女には気をつけろ”って噂知らない?」
「なんだそれは」
「まあ、言葉通りさ。俺も詳しくは聞いてないんだが、水色の髪をした悪魔払いの女が悪魔もしくは悪魔と友好関係を築いている人間、特に高校生くらいの女を殺し回っているらしい。殺した後、そいつをどっかに磔にして隣に《悪魔に魂売りやがった馬鹿共》って書き残すんだと」
「それを見た人、“あいつは魔女だ”って言ってたって」
「なんで高校生くらいの女を重点的に狙ってるのかは分からないが、たしか士郎の家族も高校生だろ?悪魔とは関わらないようにしているとはいえ、巻き込まれる可能性もあるから一応言っておいた方がいいと思ってな」
「ふむ」
フリードとミッテルトの話からすると、原作のフリードの代わりのような存在がいるということか。だが、拓斗からはその狂っているフリードが“高校生くらいの女を重点的に狙う”ということは話していなかった。それは拓斗の言うイレギュラーゆえか?それとも何かを探すために行っているのか?いずれにしろ情報が少なすぎる。結論は分かっているが、漆達と情報を共有するのが先か。
「分かった。私達もそいつに関わらないよう気をつけておくとしよう。それで、そいつの名前は何と言うんだ?」
えーと、と思い出しながら続けられた魔女と呼ばれている者の名前を告げられる。その名前を記憶しながらフリードに礼を言い、私達はその場で別れた。
和哉side―
「きゃはははは!」
「ちっ」
いきなり不気味な刀を片手にこっちに向けて振るってきたのを横に躱すが、そこから斜め上に向かって切り上げてきたのを見て慌ててさらに離れた。ガラ空きになると思っていた懐に潜り込もうとすると、左足で蹴り上げられて後ろに飛ばされた。体勢を整えて何とか応戦していったたが、乱雑に刀を振り回す女に近付くことができない。それどころか、刀を避けても距離が近ければ、刀が振るわれた事によって起こる風圧で体中に軽い切り傷が出来ていた。
「あっれー?どうしたの?弱いよ?」
「うるさい」
挑発してくる女に対して苛つき、右腕を振るうがそれすらも軽く避ける。なんで、当たらない!俺が主人公のはずなのに、何故だ!!
「あー、まじで弱いんだけど。もしかしてー、悪魔になってから修業ーして無かったとかかなー?」
「?!」
なんで俺が転生悪魔だって事知ってんだよ?!なんで俺が修業してないの知ってんだよ?!そんな事しなくても俺は強い筈なのになんで勝てねーんだよ!!
俺の肩が跳ねたのを見て、面白かったのか首を傾がせた。
「あ、図星?」
うるさい、と思いのままに女に向かって殴りかかるが、それをヒョイっと躱される。
「あはっ、全然当たんないよー?」
「君の攻撃も当たってないけど?」
「あれ?気付いてないんだー。刀の能力、無いわけないじゃん」
挑発仕返した俺に対し女が不思議そうに言うと、刀に血色の波紋が浮かび上がり、刀身が仄かに赤い光を帯びる。やっぱり何か力隠してやがった。
「じゃ、期待に応えて、いっきまーす!」
気を抜き過ぎたのか目の前に女の顔が近づいたのに驚き慌てて赤龍帝の籠手で防いだ。ガンっという金属音が鳴ったのと同時に俺の行動に対して女はニヤリと嗤った。
「なっ……?!」
刀が当たる筈のない場所である左の太股に血の筋が走った。