さて、現在私、日向漆と同居人である御影拓斗、拾ってきた子供(兵藤一誠らしい)と三人でリビングにいる。子供の目の前には食べ終えた雑炊が入っていた器とコップが置かれている。拓斗は私を呆れたように見ており、子供はビクビク震えながらオロオロと私達を見回している。私か?拾ってきた事に関して一発食らった拳骨のせいで痛い頭を抑えてるが?全面的に私が悪いのは判るがもう少し加減して欲しい。
「いい加減、拾ってきた過程を教えてくれないか?」
「ん?教えてなかったか?」
「お前なら散歩して連れて来たって言うんだったらただ家に連れて来ただけって言えばいいだろ?だが、お前は拾ってきたって言った。つまり、散歩していて見つけた
さすが拓斗。あの説明で分かってくれたか。
「そうだ。で、家族にしていいか?」
「だ、か、ら、そうなった過程を先に教えろ!」
ふむ。
「それもそうだな。分かった」
だから私をジトーッとした目で睨むな。偉そうに話すな、と目で訴えるな。
―――回想・3時間前・―――
私は黒いパーカーに青のジーパン、黒の運動靴というラフな格好に赤い大きなヘッドフォンをつけて黒い音楽プレーヤーから曲を流しながら町を散歩していた。私が散歩するのは何か新しい小さな発見を見つけるのと想定外の事態の時に道に迷わない為だ。普通に歩いていて少し道から外れただけで迷いかける私にとって大問題だからな。
そういうわけで今日もいろんな通りをのんびり歩き、そろそろ疲れたため近所の人が殆ど来ない公園で一休みしようと思っていた。
「もう少しであの公園だな…………ん?」
公園のベンチに誰か寝転がってる。人がいるなんて珍しいな。にしても……小さくないか?
私は音楽プレーヤーの電源を落とし、興味本位で寝転がってる人に近付いてみたが、起きる気配が無い。私より背が小さいし、子供だろう。だが、服はボロボロで体には至る所に痣や傷が目立つ。これは虐待か?
「面倒だが、見逃せないな」
そう呟き、辺りに他に誰もいないことを確認して、携帯からソロモン王の鍵を開く。開くマップは英知の泉。使う紋章はフォラス。
「とりあえず、回復か。【キュアオール】」
言うと同時に携帯に表示されたフォラスが光り、私の魔力を使って子供の痣や傷を一気に直した。その光りが眩しかったのか、子供が目を覚ました。ソロモン王の鍵を閉じておく。
「う、あ、……………ん?」
「あ、目覚めたか?」
「!!……??……?!」
子供が私が目の前にいることに驚いて起き上がり、痛みがないことに首をかしげ、体を見回したり動かしたりして痣や傷が無いことに驚いている。表情がクルクル変わって忙しそうだな。原因は私だが。
「痣や傷のことか?見つけた為見逃せなくてな、勝手に治させて貰った。おかしな所はないか?」
そう言うとビックリしたのか私を凝視した。私は珍獣では無い。まあ、いつの間にか治っていて驚かないというのが無理な話か。そんな科学技術私も聞いたことないし。使ったのは魔法だからな。
「あ、ありがとう………ござい、ます」
子供らしい笑顔だな。私も子供だが純粋さは無い。
「気にするな。私の為に私の勝手でやったことだからな」
「そう……です、か」
ん?何故か一気に顔が暗くなったな。分かってはいたが、かなりの訳ありのようだ。面倒だが、ここで別れて倒れられたほうが私の精神的につらい。
「ならば、何故こんな廃れた公園で寝ていたか教えてくれないか?傷とかがあるのも原因の一因のように思えるのだが?」
そう私が言うと、体をビクッと震わせ、おずおず私を見てきた。何か言われると思ったのか?
「私が気になるだけだ。お前を叱ろうなどとは思ってない」
子供とは別の方向を見ながら言うと、暫くしてポツポツと子供が理由を話した。
子供は四人家族で両親と双子の兄がいること。兄は自分より天才でいつも褒められているが、自分には見向きもされないこと。兄は自分は主人公だから引き立て役になれ、と言って自分をパシリに使っていたこと。兄が何もしてないのに変態やら出来損ないやら色々な事を周りの人たちに吹き込み、それを殆どの人間が信じたこと。それによって、周囲から嫌悪の目で見られ、暴力を振るわれたり、物を壊されたり、どんな些細な事も自分が元凶のように扱われたりされていたこと。そして、昨日ついに家から戸籍を消された後無理矢理追い出されて、町から逃げてフラフラ歩いていたらこの町のこの公園に来ていたこと。そのまま疲れきってここで寝ていたこと。別れたらそのまま当てもなくどこかに行こうと思っていること。
最初に思ったのはこの子供の兄がたちの悪い転生者である事実が高いということだ。私はそこまでこの世界の話を詳しく知らないが生死に関わる危険性が高いことは重々承知している。なのにそこに自分から組み込まれようとするとは……自殺志願者なのか?まあ、些細な事だ。
それよりもこの子供は災難すぎだ。虐待どころでは無い。生きているという事実すら消されたようなものだ。普通そこまで迫害するか?その転生者には周りを狂わす能力でもあるのか?
結論として、この子供に帰る場所が無く、生きる意味もあまり無く彷徨ってたということだな。これでは体を治したとはいえ、別れた後の後味が悪すぎる。よし、
「お前、よければ家族になるか?」
「は?」
いきなりすぎたか?口がポカンと開いてるぞ?まあ、ずっと黙っていた所に話がぶっ飛んだからな。仕方ないか。
「お前がよければの話だ。ああ、私のことは気にしなくていい。一緒に暮らす分のお金はあるし、家族も両親は他界してるし同居人が一人と一機…でいいのか?いるくらいだ。家主は私だし、呆れつつも許してくれるだろ。おっと、家族と言っても、お前の両親達とは違って虐待なんぞしないし、優しくしたり悪いことがあればキチンと叱る普通の家族だ。まあ、暮らすに当たって力をつけて貰うとは思うが、それはそれだ」
呆然としている子供に対してそう言うと、子供が涙を流した。
「いいんですか?迷惑かけますよ?」
「どんどんかけろ。家族になるのなら支え合うのは当たり前だ」
「出来損ないですよ?」
「完璧な人間なんぞ存在しない」
「要らない存在ですよ?」
「要らない存在なんて者はいないさ。それを決めるのは自分自身だ。私なんか自分が化け物であることも自分の一部だと認めたぞ?それとも私の家族になるのは嫌か?」
「そんなこと……そんなわけ、無い!俺よりずっと優しいです!」
「そう言わせる気はなかったんだが……。で、どうする?なるならこの手を取れ」
そう言うと私は子供の目の前に右手を差し出した。子供は一瞬戸惑ったが、覚悟を決めたのかしっかりとその手をとった。
「よし、なら、今日から家族だ。同居人に報告した後戸籍を取りに行かないとな」
とった手を握りながら引っ張り上げつつ優しく笑うと、子供も嬉しそうに笑った。うむ、子供は笑顔が一番だ。私は論外として。
「そういえば、何才だ?」
「えと、…………5才」
「人生の転機が5才とは……何の因果だ?」
私と同じか。一瞬思い出して慌てて頭の中から掻き消す。その程度で思い出すとは、ままならない物だな。2年前の事は去年けりをつけたはずだ。
「?」
「ああ、気にするな。些細な事だ。私は7才だから姉という事になるな」
言った途端隣からグゥっとお腹の音が鳴った。見れば子供が顔を真っ赤にしている。今まで十分にご飯を食べれてなかったのだろうな。仕方ないことだし、お腹が鳴るということは体調が改善していっている証拠だ。
「先に帰ったらご飯にするか。さあ、行くぞ」
「うん!」
さて、子供を連れて帰るか。拓斗なら許してくれるだろ。
―――回想終了―――
「そうして家に連れ帰って今に至ったということだ」
「成る程な」
そう説明すると拓斗は難しい顔をした。大方、子供の境遇を思ってのことだろう。気にしたって過去は変えられないのだから、今を大事にすればいい。
「で、家族にしていいか?」
「ん?俺は反対しない。むしろ歓迎するぞ?」
「!!いいの?」
「お、おう」
乗り出してきた子供に拓斗がたじろぎながら了承した。よし!全部クリアだ!
「じゃあ、改めてよろしく。私は日向漆。えっと、一誠だったか?名前」
「あってるぜ。おっと、俺は御影拓斗。年は漆と同じだ。よろしくな。そうだ、ついでにお前の元家族との縁を切るって事で名前変えちゃわね?」
「面白いッスね。やっちゃいましょうよ、三人とも!」
「!!十字架の宝石がしゃべった!」
「おいらはインテリジェントデバイスって機械に入っている人格のルナと言うッス。よろしくッス!!」
「うん!」
「漆、お前はどう思う?」
「いいんじゃないか、それは。お前もいいか?」
「う、うん。お願いします」
なんかくすぐったそうだな。こんな風に誰かと話すのが初めてのようだ。これからもっと構ってやるか。
その後、一誠の名前は
説明
・フォラスに入って魔法
キュアオール、レイズアップ
・キュアオール
原作:味方一人のHPを全回復
本編:味方一人の体力を全回復(傷とかを全て治 す)(瀕死の状態の者には使用出来ない)
・レイズアップ
原作:気絶者一人のHPを小回復
本編:瀕死の状態で意識の無い者一人の体力を小回復
です。