兵藤一誠改め日向遥輝を拾って家族にして半年経った。遥輝は体調が良くなると、家の家事を手伝うようになった。何でも、拾ってくれた恩を返したいのだとか。別に気にするなと言いはしたが、自分がやりたいのだと聞かない為、諦めて任せている。褒めたら喜んでくれるしな。だが、面倒くさがってご飯を食べなかったら無理矢理食べさせに来るのは止めてくれ。さすがに恥ずかしすぎる。
後は、私と遥輝の修業に付き合うようになったな。私はフュージョンという私の中にあるソウルと融合して悪魔の力を行使する為、その力をコントロール出来るように、拓斗はインテリジェントデバイスという魔法を使うための道具(道具とは言ってもルナは家族だと認識しているが)を使い慣れる為に、お互いを相手として戦っているところを見られてから遥輝も強く為るために修業するようになった。元々、鍛えるつもりだったからちょうどよかった。
初めてフュージョンを行った私の姿を見て唖然としていたが。そういえば、拓斗が初めて見た時もこんな感じだったな。あの時はもっと大変だったが。今回は間違って襲われなくて何よりだ。
遥輝を鍛えていると、どうやら遥輝は努力型のようで、努力すればするほど伸びていくらしい。さらに、虐待されていた時に自身を空気のように居ない存在にしようとし過ぎた為か自力で影を薄く出来ること、何故か判らないが自身の力を16倍まで倍加出来るという不思議な能力があること、魔力がとても少ないこと、が判明した。これは、鍛えたら暗殺者っぽい格闘家になりそうだ。
そして、今日は私との模擬戦で初めて攻撃を一発当てたという記念でケーキを買いに遥輝と二人で町に出かけるつもりでいた。
本当にそのつもりだったんだ。事実だぞ?目の前で面倒な事が起きてなければ行ってたんだ。面倒事?それは
「いつフラグを私は立てたし」
「ね、姉さん?」
遥輝を見つけた公園に遥輝と同じようにボロボロな状態で寝転がってる遥輝と同じくらいの年の子供がいることだ。あそこのベンチは行き倒れの特等席か?
遥輝もあの子供を見てオロオロと私を見ている。自分と同じような存在だと感じているみたいだな。で、助けたいけど私に助けられた存在であるため言い出しにくい、と。別に気にしないでいいんだが。
私は遥輝の頭をくしゃりと撫で、一人でその子供に近付いた。子供は意識があったのかキッッと私を睨んだ。
「おーおー、威勢がいいなお前は」
「俺を、殺しに来たのか?」
「殺し?何故そうなる。私は公園に見慣れないやつがボロボロの状態で寝ていたから何かあったのかと思って見に来ただけだ」
「そう言って俺を殺すんだろ?」
「だからどうしてそうなる?」
駄目だ。話が通じない。
ハァっと溜息をつくと、クイッと服を引っ張られた。そちらを向くと、遥輝が両腕でバツをつくっている。成る程。誰も来てないということか。助かる。
私は遥輝に右手の親指を立てると、遥輝が輝かんばかりに喜んだ。よかったな。だが、そんなに喜ぶことか?
遥輝からOKがでたから携帯からソロモン王の鍵を開く。マップも紋章も魔法も前と同じ。私が右手を子供に向けるとビクッと体が震えたが無視だ。
「【キュアオール】」
魔法が発動して子供の怪我が一気に治る。治った体を見て子供は驚いているようだ。よし、パッと見て今回も異常は無さそうだ。確認した後、ソロモン王の鍵を閉じる。
「お前、『
「違うが?そもそも『
そう言うと、呆れた目で見られた。何故だ。
あれか?魔法使えるなら裏も知っているはずとか思われているのか?残念ながら、生まれてこのかた化け物に会ったことはあっても、拓斗から聞いている天使やら堕天使やら悪魔やらに会ったことがないぞ。
「知らないならいい。感謝する」
「感謝するくらいなら何故狙われているのか教えろ」
「お前には関係ない」
強情だな、この子供。
「興味本位だ。もしかしたら助けれるぞ?」
「自殺志願者か?」
「違うが…………ああもう、面倒だ!いいから教えろ!出来るかどうかは私が決める!」
ジトーッとした目で見られたが無視だ。この問答が本当に面倒だったんだ。
やがて諦めたように話した。どうやらこの子供は生まれてすぐに売られて実験施設で神器という物を埋め込まれ、神器の実験をさせられてきたらしい。そして、本能でこれ以上の実験は耐えられないと感じ、実験施設を爆発させて逃げてきたそうだ。因みに埋め込まれたのは『
成る程な。放り投げたらまた後味が悪い状況だな。後ろを見ると遥輝が涙目になっているし。……まあ、こういうのも何かの縁か。面倒だが、仕方ない。
「遥輝、帰ってから留守番頼めるか?」
「え、俺ついて行っちゃダメか?」
お前なぁ。
「私に一発当てたくらいだろ?実戦には早過ぎる。今回は大人しく待っとくこと。」
「うぅ………分かった。」
「よろしい。」
遥輝が無理矢理納得したのを見て、子供の方を向く。子供はまるで信じられない物を見ているかのように私を見ている。
「というわけで、私達は家に一時帰宅し次第、お前のいた実験施設に特攻…じゃなくて強襲しに行くことになったから案内よろしく頼む。」
「は?お前バカか?というか特攻も強襲も大体同じだ!」
「バカとはなんだバカとは!「おい、スルーするな」意見は聞かんぞ、面倒だからな」
「おいっ」
唖然とする子供を引っ張りながら遥輝を連れて家に帰る道へ歩く。ケーキを買えなかったが、まあ仕方ない。ケーキは今度にしよう。
遥輝はニコニコ笑いながら子供に話しかけ、子供はオドオドしながら答えている。なんか仲いい友達になりそうだ。
「俺、日向遥輝って言うんだ。5才だよ。名前、何て言うんだ?」
「………ヴァーリ。ヴァーリ・ルシファー。俺も5才だ」
「ヴァーリっていうのか!よろしくな!」
「あ、ああ」
ヴァーリと言うのか、あの子供。と言うか、ルシファーって悪魔の名前じゃないか?厨二病を少し患ってるのか?
にしても、ヴァーリ、ヴァーリ…………聞いたことがある名前な気がするな……。どこでだ?帰ったら拓斗に聞いてみるか。はぁ、今回も拳骨落とされるな。本当に面倒だ。