完全に作者のオリジナルです。
多くの並行世界の聖杯戦争では高いレベルのものから低いレベルのものまである。
これは数多の並行世界の中でも類を見ない、神代の英雄の物語である。
【セイバー陣営】
切嗣が召喚した英雄は王の中の王。英雄の中の英雄だ。
だからこそ切嗣は彼が嫌いだ。傲慢で非情、彼は人間らしい英雄。
彼の行ったことでどれだけの人が被害をこうむったことか。
ステータスは十分強い・・・いや、破格と言えるだろう。
だが、切嗣の戦術では囮以外に使い道がない。
彼が囮でありながらサーヴァントを倒しても良いし、切嗣がサーヴァントが戦っている間にマスターを殺しても良い。
この戦術自体、召喚した彼は好ましく思っていた。
切嗣は機械のようにこの戦争を終わらせると誓う。
さぁ……召喚した英霊が港で戦い始める。
「……では、お手並み拝見だ。総大将アガメムノン」
【英霊 トロイア戦争におけるギリシア軍の総大将アガメムノン】
【ランサー陣営】
ケイネスは召喚した英霊に不満を持っていた。ステータスとしては自分の魔力によって十分強いが、決め手の宝具が貧弱だ。
元より、急ぎ用意した英霊だからこそ弱い。あまり名を残さないまま死んだからだ。
親譲りで足の速さだけは認めざる得ないが凡庸なサーヴァントには変わりがない。
本来なら大英雄と言える英霊を召喚する予定だったのに! くそ!
ケイネスは港の倉庫の上でサーヴァントの戦いを見ていた。
二人は知り合いらしく、互いに名で呼び合っていた。
「ハッハーッ!!! どうした! 総大将ッ! 足が止まっているぞ!」
「ぬう! 蠅のようにちょこまかと! 吾輩をなめるなよ。ネオプトレモス」
アキレウスの息子。ネオプトレモスは槍を手にし、アガメムノンを翻弄していた。
【英霊 アキレウスの息子 ネオプトレモス】
【ライダー陣営】
ウェイバーは遠く離れた場所にいた。
不安定で、
揺れて、
落ちたら死んでしまうだろう。
まぁ、落ちるわけがないけどね。
なにせ、海の上の船にいるのだから。
「オデュッセウス、見えるか?」
誰かに聞こえることはないので真名を言う。
トロイア戦争の英雄。知将オデュッセウス。
ケイネスから奪った触媒は破格の物だった。
ライダーにあるまじき高ステータス。最初はこんな強いサーヴァントだから勝って当たり前、自身が優秀であることの証明ができない。
そう思っていた。
しかし、ライダーは言った。
『戦場で使えるものを全部使って何が悪い。君は私を使って良いのだよ。優秀だから勝つのではない、勝つから優秀なのだ』
目から鱗だった。
ウェイバーはライダーの言葉を深く感激する。
「見えるな」
ライダーは港の方を見て、少しだけ不快そうに見る。
「二人とも知り合いだ。一筋縄ではいかないな」
そう言うとライダーは矢を構える。
「サーヴァントを絶対に倒せる自信はない。ならば近くにいる人間を全員殺す。四人ばかりいるがその中にマスターがいるだろう」
ライダーは矢を引き絞った。
しかし、なにかの気配を感じ後ろを振り返る。
そこには……闇がいた。
【トロイア戦争の英雄 知将オデュッセウス。】
【パーサーカー陣営】
雁夜は血反吐を吐いた。
なんてやっかいなサーヴァントだろうか。
元が強いから狂わせても逆にサーヴァントを弱体化させていた。
狂う逸話があるからふさわしいクラスともいえるが、それでも英霊としての格が高いことが雁夜を苦しめていた。
今現在、パーサーカーは彼らを見るや否や飛び出してしまった。
雁夜は薄れゆく意識の中で桜ちゃんを助けることを改めて誓った。
「オデュッセウスぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
船の上で闇とライダーは戦っていた。
闇はライダーに対して尋常ではない憎しみを放っていた。
剣と剣の音が響き渡る。
「ラ、ライダーッ! 」
ウェイバーは頭を抱えながらも少しずつ戦場から離れる。
闇とライダーの剣戟が激しくなっていく。
ライダーは険しい表情で叫ぶ。
「そんなに、そんなに私が憎いかッ! 答えろッ! 大アイアス!」
【アキレウスに次ぐ強さを誇る英雄 大アイアス】
【キャスター陣営】
キャスターは水晶でサーヴァントの攻防を見ていた。
なるほど、正攻法では敵わぬ。だか……絶対に聖杯を手に入れる。
召喚者はいかれた男だったがわしを現世にとどめる者は彼だけ。
だから生き人形にした。
幾つもの工房を作り出し、この町から少しずつ魔力を吸収する。
工房は難攻不落の要塞と化した。
深くいけばわしですら迷う迷宮の要塞。
「必ず……必ず甦らせてみるぞイカロス」
【伝説的な大工・職人ダイダロス】
【アーチャー陣営】
時臣は召喚した英霊に満足していた。
本当はヘラクレスを召喚する予定であったが、使った触媒を考えればどの英霊が召喚されても不思議はない。
彼はヘラクレスに勝るとも劣らない英霊であった。
ピロクテテス。
ヘラクレスの弓を所持し、一度は仲間に捨てられながらもトロイア戦争において勝利の鍵となった人物。
「マスター。港で彼らが戦っているが様子見で良いのだな?」
ピロクテテスが念話をしてくる。
「あぁ、よろしく頼む」
今回の聖杯戦争は僥倖だ。
だいたいの英霊の正体がわかったからだ。
時臣は優雅にワインを飲み干した。
【トロイアを陥落させることを予言された英雄 ピロクテテス】
【アサシン陣営】
綺礼は彼を見て心がざわついた。
彼の人生を知って何故か惹かれてしまった。
彼は復讐をやり遂げた英雄。
だからこそ、彼は殺せない。
「……父上」
オレステスは総大将アガメムノンの戦いぶりを見て呟いた。
苦悩するオレステスを見て、綺礼は心の奥底に何かが沸き起こるものを感じた。
………愉悦。
【復讐の英雄 オレステス】
複雑に絡み合う関係は聖杯戦争において重要な意味を持った。
情や憎しみが聖杯戦争を混沌化させた。
異なる時代、異なる英雄が覇を競うのが聖杯戦争の醍醐味。
しかし、同時代の英雄たちによる戦争はある意味二度目の生と変わらない。
純粋に闘いを楽しむことはなく、互いの心をぶつけ合う戦争。
過去の聖杯戦争とは違う。
奇跡の聖杯戦争が今始まる。
どうでしょうか?