ディルムッドは興奮を禁じ得なかった。
目の前の敵、セイバーの強さに武者震いが出る。
自分の時代にいた馬を超える、限りなく神馬に近い風格の黒い巨馬にまたがる英霊。
その英霊も尋常ではない体格だ。己の体格をはるかに超える巨躯、その手には朱槍を手にしている。
ディルムッドは彼をライダーと予測している。馬に乗っているからこそライダーと考える。槍を構えてはいるがディルムッド自身がランサー故に彼をライダーと予測した。
二槍と一槍・・・・・・その槍の突き合いが始まった。
ライダーはランサーの異様な構えと戦闘手段に面を喰らっていたがすぐに立て直した。この程度は驚愕に値しないというつもりか?
ランサーの工夫に工夫を重ねた燕をも切る槍技。
ライダーの獣じみた強烈な槍技。
槍と剣、どちらが強いと言ったら槍だろう。しかし、それは一般論、ただの兵士の話だった場合だ。
武者であろうと槍をもった農民に殺される。だが一対一の話だ。
剣を持つ者の技量が槍を持つ者の上の場合、さらに一対一の場合は剣を持つものが有利だ。
動きやすさ。矛の部分の差を鑑みると槍の優位性は距離しかない。その距離の優位性すらセイバーが詰めればなくなる。
ランサーの槍技がライダーの槍技に対し防御に回ってしまう。
例えランサーが剣を持っていても敗北するかもしれない。それほどまでにライダーの槍技は冴えていた。
悔しいが、槍の英霊として召喚されたランサー以上の槍技をライダーは持っていた。
「ランサー、敵は難敵だ。宝具の開帳を許す」
「はッ」
ランサーは包帯を巻いた一槍を解く。
「―――ッ、ライダー! わかった! ランサーの真名は輝く貌のディルムッド―――フィオナ騎士団の戦士ディルムッドオディナだ!」
小男に背負られた少年が近くに来た。まさか正体がばれるとは・・・・・・
「なるほど、勇猛で名をはせた騎士と会いまみえるとはな。これも聖杯戦争の醍醐味といったところか」
ライダーはランサーの正体を知って、さらに笑みを浮かべた。
「・・・・・・まさか、君が聖杯戦争に参加するとは、私の聖遺物を簒奪しながらも、征服王を呼べず、どこの誰ともわからない雑魚を呼ぶとはな」
ランサーは口では言わないが静かに怒る。今の戦闘でライダーの強さを見たはずなのに・・・・・・
「ランサー。全力でライダーを殺せ」
「はッ!」
ばってん、主は主。生前に行えなかった騎士としての忠義を必ずや・・・・・・
「ライダー気をつけろ。ランサーの宝具は魔力を打ち消す槍と傷を癒さぬ槍を持っている」
ライダーは笑みを消さないが同時に警戒心を募る。
「いくぞ! ライダーーーー!!!」
「参られい! ランサーーー!!!」
ランサーは走り、ライダーは馬で走る。
その結果は―――ライダーの勝利だ。
槍そのものの長さはライダーの方が上だ。
さらに馬の速さを利用し、突進力を上げた。
結果、槍の柄の部分に当たり、ランサーは吹き飛んだ。
「―――ガハッ!」
ランサーのマスターはすぐさまランサーを治癒する。
追撃があると思ったらライダーは追撃はしなかった。
「―――何故だ!?」
ランサーは激昂に近い問いを投げた。
「俺はなぁ、三度の飯より戦が好きな戦人だ。こんな戦いを一度だけで終わらせるなんてもったいないではないか」
彼は屈託のない顔で笑った。
ランサーは燃えた。目の前の難敵、強敵の真名を知りたくなった。
「貴方の名を知りたい。誇りある英雄なら教えてくれ! 貴方は一体―――?」
ライダーは笑う。少年は不味いといった表情になった。
「今宵、騎兵の位で召喚に応じた俺は傾奇者。天下御免の傾奇者なり、風流を愛し、戦を愛す。根っからの戦人。俺の名は――――」
「前田慶次郎利益―――前田慶次!」
【元ネタ 花の慶次 -雲のかなたに-】
次は誰かな?