多くの並行世界の聖杯戦争では高いレベルのものから低いレベルのものまである。
これは数多の並行世界の中でも熾烈を極めた聖杯戦争である。
【セイバー陣営】
「貴方が私を召喚したマスターか?」
彼はさわやかに言った。
羽織を着た彼の額には日本一と書かれた鉢巻が巻いてあった。腰には刀。
(コイツ……アーサー王ではない!?)
切嗣は驚愕した。
鞘を使った触媒で全然違う英霊を呼び出してしまった。
アイリは不安そうに切嗣を見た。
「君は……何の英霊だ?」
見たところ日本の英霊だ。
「私か……かつて、日ノ本を蹂躙する鬼を退治したもの。日本一の武者……」
紡いだ言葉をいったん切ってから、切嗣と目を合わせる。
「桃太郎だ」
【鬼退治の英雄 桃太郎】
【ランサー陣営】
「な、なんだ貴様は!?」
ケイネスは驚愕する。
そして召喚した英霊のみすぼらした格好に絶望した。
(くそ! この神童と言われた私が、こんなわけもわからない下賤な英霊を召喚するなど!)
ケイネスは心の中でサーヴァントを罵倒した。
それを知ってか知らずか口上をあげるサーヴァント。
「おらは槍兵の位で召喚に応じた。おめぇが主か」
「な、貴様……サーヴァント風情がマスターをおめぇ呼ばわりだと!?」
ケイネスは怒り出す。例え英霊であっても己のプライドを優先する。
しかし、ランサーはどこ吹く風。
「ふん。おめぇがどこの誰かなんぞ知るか。こんな暗い所でおらを呼び出しやがって、これだから気位の高い輩は……」
「貴様~~~~、名乗れ、どこの下賤な英霊だ!」
「おらは力太郎だ」
【剛力の英雄 力太郎】
【ライダー陣営】
「わしを呼び出すとはなぁ……負けるぞ?」
最初に放った言葉はこれだった。
しかし、ウェイバーは俄然やる気が出た。
弱いサーヴァント? それがどうした。それこそ自分の力を示すチャンスではないか。
見たところイスカンダルではない。
汚い着物を着た英霊だった。
本当にサーヴァントか? と疑ったがステータスを見ることができた。
弱いなぁ……
素直にそう思った。
「まぁ、安心せい。これは決闘ではなく戦争なのだろう。槍働きなどしたことはないが、殿様のように優雅な時を過ごしたことはある。人生とは不公平だ。ほんの少しの善意で幸せにも不幸にもなる。わしの小さな力でもやりようはある」
「……あんた……名前は?」
「浦島太郎」
【幸せの絶頂と孤独を知る英雄 浦島太郎】
【パーサーカー陣営】
「きえええええええええええい!!!」
その英霊は果敢にも老人に突進した。
だが老人はその様子を笑いながら見やる。
槍が老人を突き刺すと老人は大量の蟲と化した。
老人の名は間桐 臓硯。間桐家の当主である。
「ははははっはははッ!!! このような者がサーヴァントだと、勝ち目などありえぬな!」
間桐臓硯は蟲となって地下から消えた。
雁夜は憎々しげ地下の天井を睨む。
「む、あの魔物。私に恐れをなして逃げたな」
一瞬、言葉を失った。
何を言っているんだ。こいつは?
しかもパーサーカーを呼び出したはずなのに喋っているだと?
「む、貴公が私のマスターだな?」
パーサーカーが雁夜に気付いて近づくと、忠誠の騎士の様に頭を垂れた。
「パーサーカーの位を得て、召喚にはせ参じた。私は騎士の中の騎士、英雄の中の英雄。ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ である。貴公には勝利を奉げるとここに誓う」
まるで誉れ高き騎士の様に……純粋な目で雁夜に忠誠を誓った。
【狂気の英雄 ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ】
【キャスター陣営】
「クールだぜ。姐御!」
龍之介はテンションを高くした。
悪魔さんは自分と同じく子供が好きでコレクションにしていた。
「いいぞいいぞ。あんたは思うように作品を作るがいいさ」
子供を鍋で溶かしながら愉快そうに笑う老婆。
側には檻にいれられた子供が震えていた。
「ひーひっひっひ」
鍋のモノを皿に盛って子供たちの前に差し出す。
「食べな」
子供たちは震えながらも嫌々と首を振る。
「わがままいうんじゃない!!! 食べろ!!!」
老婆は怒りながら皿の上にあったモノを浮かべて子供の口の中に押し込んだ。
「うええええええ!!!」
子供はできるだけモノを吐き出す。
老婆は不愉快そうに見ながら鍋の方へ戻っていった。
子供の泣き声と叫び声が、闇の中に響いた。
【『ヘンゼルとグレーテル』の魔女】
【アーチャー陣営】
時臣は優雅にワインを飲んだ。
予定とは違うサーヴァントではあるがある意味最強の英霊だろう。
もしかしたら聖杯を使うよりもこっちの方が根源に辿り着くのが楽かもしれない。
しかし、失敗したのならば目も当てられない。
実験として令呪を使ったら増えた。
本当に追い詰められたとき、残り一枚になったらこれで根源を目指そう。
「ふふふ」
時臣はだいぶ心に余裕を持ちながらワインを楽しんだ。
【三枚のお札で逃げ切った英雄 名も無き小僧】
【アサシン陣営】
「おのれ狸」
「愉悦」
【復讐の英雄 かちかち山の兎】
英雄たちは戦う。
どのような運命が待ち受けようとも戦う。
一人は日ノ本を護るために
一人は苦しむ弱者のために
一人は主を死なせぬために
一人は民を守る騎士として
一人は己の欲を満たすため
一人は子供らしい夢のため
一人は凶敵を成敗するため
それぞれの理由で聖杯戦争は始まる。
次はギャグにするかも……