自信作なので感想とかお願いします。
鉄と鉄が鳴り響く音。
両雄は己の武を持って強さを示す。
深紅の槍を持つランサー。
二つの剣を持つセイバー。
両者はともに競い合えることを心の中では喜悦している。
しかし、セイバーは少しだけ心の中に不満があった。
俺の真の主。衛宮切嗣の戦略だ。言葉を交わすのは少なかったが、彼の妻、アイリスフィール・フォン・アインツベルンが教えてくれた衛宮切嗣の願いは尊いものだと思う。
人類という種全体が抱える「闘争」全てを終わらせるための奇跡を求め、聖杯を望んだ衛宮切嗣。彼こそが聖杯を手に入れる相応しい人間だ。
セイバーは自身が忠義を全うしたい願いを忘却してしまうほど、衛宮切嗣が尊く見えた。
衛宮切嗣の戦略はサーヴァント同士が戦っている間に敵のマスターを暗殺することだ。最初は酷く最低な戦略だと思ったが、衛宮切嗣の願いと聖杯戦争が本当に戦争であることを知り、セイバーは衛宮切嗣の戦略に賛同した。
敵のマスターも魔術師なのだ。魔術師同士の戦いで敗北したのなら、認めるべきだ。例え、こちらが勝負に負けたとしても、
「勇気ある戦士こそ、私の好む可能性溢れる存在だ」
女傑は美しく―――笑った。
ランサーはセイバーが混じり気なしの真の英雄であることに喜んだ。
「力を見せるがよい。唯の戦士ではいけない。出来なければお前の命を貰うまで」
ランサーは初めて本気で槍を構えた。
―――瞬間。
―――恐怖した。
あの槍は狂気の槍。一度穿てばあらゆる生命を終わらせる存在。
「マスター。宝具の開帳の許可を」
守るべき仮の主……アイリスフィール・フォン・アインツベルンに求める。
「いいわ。セイバー。あなたの力を存分に振るいなさい」
アイリは自信をもって答えた。
セイバーは剣に巻かれてある一振り剣を解く。ついに宝具の真価が問われる。
ランサーは力いっぱいに槍に魔力を込める。
セイバーは迎撃しようと剣を構える。
一瞬の緊張。
―――刹那。
狂気が放たれた。守りが動いた。
「
「
ランサーは【心臓に槍が命中した】という結果をつくってから【槍を放つ】という原因を作る。つまり必殺必中の一撃を可能とする因果を逆転させる【原因の槍】を放った。
セイバーは生前に異父弟である耳と尾を持たない真性の魔物である大猪を殺した短剣をもって防いだ。その真価は【力の吸収】である。剣の部分が砕ける代わりに、吸収した分の力が柄に宿る。生前は大猪の力を吸収して刃を砕かせた代わりに柄で頭部を粉砕した。
セイバーは心臓を抉ろうとする槍の力を吸収した。しかし威力は尋常ではなく、背後に吹っ飛んだ。
「私を殺せる者は何処だ?」
挑発するようにランサーは言った。いや、その言葉はもう意味がない。狂気の槍を防いだ英雄はすでにランサーを殺し切る可能性がある。
「まさか、貴方に出会えるとは―――我らが英雄が伝説に伝え聞く太陽の御子を鍛え、育て上げた女王と刃を交えるとは」
「ふははははははははは、そういう貴様は彼のフィオナ騎士団が一番槍だな?」
互いに素性が知れ、聖杯戦争の冥利を楽しむ。
【セイバー陣営】 ディルムッド・オディナ
【ランサー陣営】 スカアハ
ランサーはもう一度槍を構えた。
セイバーは砕かれた短剣を構える。
両方とも因果を逆転させる一撃。その決着は――――
ライダーによって邪魔された。
「ハーーーーハハハッハハハハハハハハ!」
戦車。
巨大な馬を駆る大英雄がランサーとセイバーの戦場の到来した。
セイバーとランサーは避けた。巨馬が踏みしだいた大地はミサイルが着弾したかのように抉れた。
「ラ、ライダー……」
ライダーの主、ウェイバー・ベルベットが恐る恐る口を開いたがライダーはどこ吹く風である。
「ハッ! さすがは女王と一番槍。この程度ではくたばんねぇか」
ライダーの物言いにセイバーとランサーは怒りがこみ上げた。
「ライダー、貴様はこの戦いを邪魔しに来たのか!」
セイバーは怒った。しかし、ライダーは悪ガキのように笑った。
「ちゃんと理由はあるさ。決着をつけたらもったいないことになっいてたぞ」
ライダーの意味深な言葉にランサーは首を傾げた。
ライダーは息を吸って―――
「おおい! 出て来いよ相棒! 俺が、俺たちが貴様の気配を間違えるわけがねぇ! いるんだろ! 相棒!」
ライダーがある人物を呼んだ。
「ハハハハハハハハッ! お前も来ていたのかよ! まったく聖杯戦争様様だぜ!」
蒼き衣と深紅の槍を持つ英雄がポールの上に現れた。
その姿にランサーは喜悦した。
「弟子……馬鹿弟子よ! お前もか!」
「―――師匠!」
互いに、互いの尊敬すべき人物。
「―――クー・フーリン!」
【ライダー陣営】 レーグ
【アーチャー陣営】 クー・フーリン
セイバーは呟く、そしてライダーに心当たりがある。終生大英雄の従者を務めた王者。馬の王マッハと御者の王レーグ。
武者震いがした。
まさか、このような英雄たちと会えるとは……
同時に―――アレが現れた。
純白の髪を持つ英雄が現れた。
異常なまでの速さで―――セイバーを襲った。
ランサー、ライダー、アーチャーは面を喰らったが、セイバーだけは違った。
「ディル―――ムッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
剣が、剣がセイバーを殺しにかかる。
セイバーは目の前の人物の変わりように涙した。
生前と変わらない技量で、しかし、憎しみが剣を汚した。
どうして―――どうして―――
「そんなにも俺が憎いか―――フィン!」
【パーサーカー陣営】 フィン・マックール
水晶に映るのはランサーとアーチャー。己の人生を変えた二人が聖杯戦争に参加している。彼らの願いなどはどうせ、強敵たちとの死闘であろう。
「コンラ」
「母上」
「今度こそは貴方に勝利を与える。あの女の槍を奪い―――父を殺せ」
「はい」
「次こそは、誇りある人生を与えよう。受肉し、貴方にふさわしい英雄譚を紡がせる」
【キャスター陣営】 アイフェ
暗殺者のクラスを得て彼は招来した。
毒の舌をもって三人の英傑を争わせた策士。
此度は良い。
マスターは己のあり方に迷い。英雄たちは全て関係者。
争わせるには良いメンツである。
悪意をもって聖杯戦争を征しようか……
【アサシン陣営】 ブリクリウ
この聖杯戦争は他に類を見ない過激な戦争となった。愛憎入り混じり、悪意が溶け込む。正々堂々の戦争を超越し、一人の策士によって愉悦の場となった。
次は―――どうしよう。