まったく最悪だぜ!
夜遅くすみません!!!
多くの並行世界の聖杯戦争では高いレベルのものから低いレベルのものまである。
これは数多の並行世界の中でも類を見ない、不気味な聖杯戦争である。
【セイバー陣営】
衛宮切嗣が呼び出した英雄は不気味だった。
正規の英霊ではない。人の負の思念で形作られた英霊だ。
そのサーヴァントは使えるサーヴァントだった。
その準備期間のためにも、消耗品としての人間が必要だった。
日本。×県××市。
小学生の佐々木君は夜道を歩いていた。
「うう、怖いなぁ」
佐々木君は塾の帰りだった。
いつもと変わらない夜道ではあるが、佐々木君は小学生。暗いのは苦手である。
電柱の明りを頼りに夜道を歩く。
「~~~~~~♪」
後ろから突然、歌が聞こえた。
振り返り、その歌に耳をかたむける。
「トン、トン、トンカラ、トン」
変な歌だな。
その歌はだんだん近づいてくる。
「トン、トン、トンカラ、トン」
歌の主を見て佐々木君は恐怖した。
自転車に乗った。ミイラ男だった。
「―――ッひ! 不審者ッ!」
根源的な恐怖がそこにあった。
走って逃げようとしたが、足が震えて動かない。
ミイラ男は自転車から降りて、佐々木君の前に立つ。
「トンカラトンと言え」
「―――」
不審者と口をきいてはいけない。
親と学校から教わったことだ。
動け、動け、動けッ!
バックのキーホルダーとしてある。防犯ブザーに手をかけた瞬間。
「トンカラトンと言わなかったな」
バサリッ!
ミイラ男はどこからともなく日本刀を出して、佐々木君を斬り殺した。
「うわ――――!」
佐々木君の断末魔が響き渡る。
ミイラ男は佐々木君の死体を見下ろす。
数分経っただろうか、佐々木君の死体に包帯が現れる。その包帯はひとりでに佐々木君を巻きつけた。
シュルシュルシュルシュル。
佐々木君はミイラ男と同じ格好になりました。
「トンカラトンと言え」
「トン、トン、トンカラ、トン」
佐々木君だったモノはミイラ男の質問に淀みなく答える。
佐々木君はミイラ男と同じ存在になってしまいました。
「「トン、トン、トンカラ、トン」」
二人は歩き出します。
二人は冬木市を目指します。
ここにいるミイラ男だけじゃありません。
日本中から……世界中からミイラ男と同じ存在達が自分を増やしながら冬木市へと向かっています。
「トン、トン、トンカラ、トン」
【元ネタ 都市伝説 トンカラトン】
【ランサー陣営】
冬木市ではある怪奇現象が起きていた。
女性が夜ひとりで歩いていると彼はどこからともなく現れる。
爛々と光る目。口から炎を噴き、鋭い爪は女性の衣服を切り裂き、女性の乳房を掴む。
女性がたまらず叫び声を上げると、彼は素早く離れて、奇妙な甲高い笑い声を上げる。
「あきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!」
そして、バネのような足で跳んでいく。
女性の目の前から消え去る。
彼の噂は瞬くの間に広がり、冬木市の夜は老若男女全員が出歩くことはなくなった。
彼は何をしたかったのでしょうか?
女性を驚かすだけの愉快犯なのでしょうか?
もしかしたら……もしかしたら、本当の災厄から市民を守るために驚かしていたのでしょうか?
真実は彼しか知りません。
【元ネタ 都市伝説 バネ足ジャック もしくは「黒博物館スプリンガルド」 ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド】
【ライダー陣営】
ウェイバー・ベルベットが召喚した英霊は喋ることはなかった。
英霊に対していうのも何だが幽霊のような不気味な少女。
彼女は何も言わず何もしなかった。
これはもう駄目だ。
半ば諦めかけた。
そして、むしゃくしゃして対応が悪かったコンビニの店員を心の中で「死んでしまえ」と呪った。
彼女はいなくなった。
次の日、そのコンビニの店員がいなくなっていた。
他の店員に聞くと自宅で亡くなったらしい。
いつのまにか彼女がいた。
まさか、と思い。日本の新聞に載っていた、不倫で有名になっていた芸能人の男を「死んでしまえ」と呪った。
次の日、その芸能人は自宅で亡くなった。恐ろしいものを見たような形相で亡くなったらしい。
いつのまにか彼女がいた。
ウェイバー・ベルベットは彼女の使い方を知った。
僕の力を試すことができる。
希望ができた。
【元ネタ 都市伝説 メリーさんの電話】
【パーサーカー陣営】
間桐雁夜が召喚した英霊の彼女は文字通り狂っていた。
自分を助けなかった人を、人間を、全人類を憎んでいた。
だから殺す。絶対に殺す。確実に殺す。
召喚された瞬間、彼女は雁夜を殺そうとした。
雁夜は咄嗟に命呪を使って難を逃れた。
間桐臓硯は愉快だった。
正規の英霊とは程遠い英霊が召喚されたが、それでよし。このような面白い英霊が召喚されるとは……
ステータスも申し分ない。
「雁夜よ。此度の聖杯戦争。存分に足掻くが良い」
地下にいる雁夜と下半身のない英霊を残して臓硯は去っていった。
【元ネタ 都市伝説 テケテケ】
【キャスター陣営】
奇妙な甲高い笑い声を上げる彼のせいで夜道を歩く人は少なくなった。
それでも0じゃない。
最近では子供の失踪事件が起きている。
「最高にクールだぜ旦那!」
その犯人を召喚したマスター雨生龍之介は喜んでいた。
自分の好きな子供で好きなだけ遊べる。これほど愉快なことはない。
しかも旦那の殺し方も斬新だ。
子供二人に「赤いマントと青いマント、どっちが欲しい?」と言うように質問する。
子供が赤いマントを選ぶとナイフを刺して血祭りにし、青いマントを選ぶと注射器で血液を抜く。
どれもゆっくりで死が実感できてしまう。その時の子供の表情にクルものがある。
お、子供二人組が旦那に質問されている。
一人は青いマントを選んだらしく、血を抜かれて真っ青になって死んでいた。
虚ろな目は少女の方を見ていた。
「赤いマントと青いマント、どっちが欲しい?」
「あ……あか……」
少女がか細く呟いた。
旦那は無言でナイフを取り出し、少女の手の平を壁に突き刺した。
「いたああああああああぁぁぁぁい!!!」
少女の絶叫に龍之介は目を輝かした。
旦那は少女の絶叫に気分を良くし、壁に突き刺さる手の平の指を一本一本切り取る。
「たすけて! ゆるして! やめて! おねがい! イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ痛いッ! ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
この世の者とは思えない叫び声が響き渡る。
龍之介と旦那にとっては名曲を聴くような気分だった。
五本の指を切り取られた少女は気を失ってしまった。
旦那はもう一方の手の平を同じようにナイフで壁に突き刺す。
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
その痛みで少女は覚醒する。
夢であればいいのにと心の中で叫ぶ。
「ゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるして」
何度も、何度も何度も少女は懇願する。
けれど少女の祈りも虚しく、旦那は少女の指にナイフを近づける。
少女は絶望した。
もう何も言えなかった。
痛みが届く前に、小学校で仲が良い友達の顔が浮かんだ。
「……凛ちゃん」
友達の顔をはっきりと思いだす前に、コトネの指は痛みの熱が広がって、浮かび上がりかけた友だちの顔は霧散した。
【元ネタ 都市伝説 赤マント】
【アーチャー陣営】
遠坂時臣は優雅に紅茶を楽しんでいた。
召喚した英霊は相手の位置を知ることによって真価を発揮するサーヴァントだ。
自分の弟子の言峰綺礼に諜報活動を行わせている。
彼は本当に優秀な男だ。
さて、自分のサーヴァントの様子を見ようか。
「アーチャー」
「……なに?」
不機嫌そうに彼女が現れた。
「もうすぐ聖杯戦争が始まる。調子はどうだ?」
「問題はないわ」
彼女の返事に満足する。
彼女は霊体化した。
彼女は殺す英霊ではない。しかし、欠損に特化した英霊である。サポート用と考えたら良いサーヴァントだ。相手を欠損させたら弟子の綺礼のサーヴァントに殺させる。
完璧な作戦だ。
【元ネタ 都市伝説 カシマさん 】
【アサシン陣営】
言峰綺礼の召喚した英霊は厄介な存在だった。
英霊は最初、黒い煙のような存在だったが、すぐに形を変えた。
召喚主の言峰綺礼と同じ姿になったのだ。
なぜ、私に? そう聞くと彼は答えた。
「私は私ではない。私は誰でもあるし誰でもない。人の願いによって生み出された幻影だ。私は人の望む私になろう。【私】は【私】を望みを知りたいのだろう。私を客観的に見て【私】の在り方を知るがいい」
世界で有名で曖昧な存在に自分が空虚であることを悟られた。
そのことにむかっぱらを立てるが、まぁいい。
自分を客観的に見る良い機会だ。
私と【私】は夜の冬木市を走り回った。
【元ネタ 都市伝説 切り裂きジャック】
類を見ない、不気味な聖杯戦争は絶望を振りまき、悪性を肯定した。
この戦争の最後は善と悪が戦った。
同郷である彼らが戦った。
存在が曖昧な彼と存在が不思議な彼が戦った。
殺人鬼の彼と悪戯好きの彼が戦った。
聖杯戦争最後の闘い。ナイフとバネの闘いが始まり……その結末は誰も知らない。
解説。
セイバーのトンカラトンの宝具の設定はトンカラトンを増やす……増殖宝具の設定です。
ランサーはこの聖杯戦争の唯一の良心で主人公にもなれる存在として漫画を原作とする彼が召喚される可能性もあることとして書きました。
つまりケイネスが主人公。
アサシンの切り裂きジャック。原作のfateでも色々な設定の彼が召喚されています。
この切り裂きジャックは人々が望んだ形になる切り裂きジャック。
犯人に興味がある召喚者だと彼は史実における容疑者の誰かになる。もしくは召喚者の望む犯人になる。
今回の切り裂きジャックは召喚者自身が自身を知りたいということなので召喚者になりました。
なお変身能力を解除するとナイフを持った黒い人型の煙となる。むしろ正体がコレ。
感想や意見などをお待ちしております。