多くの並行世界の聖杯戦争では高いレベルのものから低いレベルのものまである。
これは数多の並行世界の中でも類を見ない、野性的な聖杯戦争である。
【セイバー陣営】
召喚した英霊は勇敢であり、知恵者であり、優しい、セイバーの名にふさわしい英霊だった。
その英霊は今、イリヤと一緒にドングリを探していた。
「ドングリみつけたニャ」
「ぶ~。セイバー、見つけるの早い~」
イリヤは不満そうに言うが口調だけであり、その表情は穏やかだ。
衛宮切嗣が召喚した英霊は猫の英霊。アイルーだ。
はるか太古の昔。人と神の距離が近しく、魔力が芳醇だった時代。
幻想種が大地を闊歩していた時代。
人は矮小の身でありながらも自然と向き合っていた。
その時代においてハンターと呼ばれる英雄に協力する者たちがいた。
オトモアイルー。
伝承として記述は少ないが確かに彼らはいた。
ハンターたちと一緒に幻想種と勇敢に戦い。討伐した人語を解する猫の英雄。
アハト翁はハンターを召喚しようとしたが、触媒にした鎧がオトモアイルー用だったらしく、彼を呼んでしまった。
アハト翁は怒り狂ったが切嗣は内心喜んでいた。
最良の名に相応しい、可愛らしい剣の英霊。
彼は歴代のサーヴァントと比較して弱い部類。歴代のセイバーと比較し最弱であるがそれでいい。
元より切嗣はマスター殺しをするつもりだ。
歴代最弱のセイバーであるが、それは強さに関してだ。囮、補佐役としてはサーヴァント最高の英霊だろう。
彼には英霊らしく戦ってもらう。それこそが彼を十全に使う方法だ。
「お母様~!」
イリヤはセイバーを抱きかかえながらアイリの元へかけていく。
切嗣は目を細めながら幸せそうな三人を見ていた。
【元ネタ 「モンスターハンター」 オトモアイルー】
【ランサー陣営】
「――――――――ッ!!!!」
この世のすべてを喰らう。それほどの叫び声が響き渡る。
ケイネス・エルメロイ・アーチボルトはその凶悪な英霊の手綱を握っていた。
仮の話ではあるがケイネスが召喚した英霊を制御しきれるとすれば、彼のほかには遠坂時臣以外ありえないだろう。
それほどまでに凶悪な英霊。だからこそ強い。
英霊に名はない。無銘と言えるだろう。概念とも言えるだろう。
……シャトゥーン。
日本では穴持たずと呼ぶ。
冬籠りに失敗して雪山を徘徊するヒグマのことだ。
雪山では食料がないため飢えて……次第に狂暴化する。家畜を襲い、ついには人を襲う。一度でも人を襲ったヒグマは……際限なく人を襲い続ける。
サーヴァントの尋常ではない様子を見て、ケイネスはサーヴァントがシャトゥーンの熊の概念、集合体のような存在だと結論付けた。
「ふふふふふふ」
ケイネスは笑う。
呼び出した英霊は制御しづらい。故にマスターである自分の実力が試される。
六騎全てのサーヴァントを屠り、私の輝ける人生の経歴の一つにしよう。
【元ネタ シャトゥーン ヒグマの森】
【ライダー陣営】
ウェイバー・ベルベットが英霊を召喚して数日後、彼は死んでしまった。
では英霊はどうか?
英霊は増殖し続けた。
肉を喰らい、増える。
生物としての根源的欲求を願いにし行動している。
人の理解ではないが、聖杯の力で英霊は己の願いをかなえることができることだけを理解した。
英霊の願いは生前と変わらず、動物として「生きて、食べて、増える」それだけ。
生物を食って魔力に変換し、増やす。その工程を数えきれないほどしていた。
冬木市に敵がいようといなかろうと、することは同じだ。
【元ネタ 「モンキーピープル」 肉食・殺人コオロギ】
【パーサーカー陣営】
その英霊は狂っていた。
誰もが不可能だと信じていた。
流水が上から下へと流れるような……自然の絶対の法則。
しかし、その英霊は絶対の法則を壊した。
この星は驚愕した。
この星ははるか昔、人と神の関係を保つため、人でも神でもない存在を生み出し、人と神の楔にしようとした。しかし、その存在はあろうことか神の……星の楔とならず、この星と神と人との関係に終止符を打った。
それ以降、人でも神でもない存在意外にこの星を驚愕させる存在はいなかった。
星は人間以上に規格外の存在は今後現れないと思っていた。星自らが抑止力として生み出すならともかく、自然に生まれることはない……はずだった。
しかし、現れた。
狂った英霊。
その英霊と、その英霊と同じ種、シマウマは食物連鎖からの脱却を目指した。
まさに革命。
人以外の種が食物連鎖から外れる行為。
それは抑止力が動かずとも、肉食の動物が許さない。
それでも彼は自然の摂理を壊そうとした。
草食動物が肉食動物に勝利する。その不条理を持って革命を成し遂げる。
彼は最終的に革命を成し遂げた。
彼の死後、この星は彼を英霊の座に引き入れた。
彼を座に留めて置かなければならなかった。
そうでもしなければ彼は、この星でさえ制御しきれない、人でも神でもない存在の再来になるであろう。その直感がした。
故に彼を英霊という存在に留めようとした。
英霊を超えた信仰を持って、神にならないよう。
人ではなく、草食動物たちの……弱き者たちの神にならないよう、英霊の座に留めようとする。
今後どうなるかわからない。星の力をもってしても彼の存在を押し上げられるのを止められないかもしれない。
それほどの存在が……聖杯戦争に召喚された。
【元ネタ 『真・異種格闘大戦』 チェ・ゼブラ】
【キャスター陣営】
雨生龍之介は英霊を呼び出した時点で死んだ。子供だ。
英霊は自信がしたいように行動した。
聖杯の力によって願いをかなえることを理解できた。
殺した相手から魔力を得ることができるが、それでも無駄は避けたい。
森の中で霊体化し、機が熟すのをひたすら待っていた。
英霊はフクロウであった。
英霊の力は強大であった。
単純で絶対の力。
見たものを殺す魔眼。
それだけの強大な力。
英霊は番が欲しかった。子供が欲しかった。
だから、聖杯戦争に参加した。
存在そのものが自然の摂理から外れた存在は、心だけは普通の存在だった。
【元ネタ 「邪眼は月輪に飛ぶ」 魔のモノ・フクロウ≪ミネルヴァ≫】
【アーチャー陣営】
「メルメルメ~」
「……………………………」
落ち着け。遠坂家は狼狽えない。そうだ。さて一緒に召喚された本を読もう。
この本魔力を感じるぞ。
シュドルク …か。
時臣は召喚した英霊を見る。
「メルメルメ~」
「はははははは、何言ってるかわかんねーや」
「メルメルメ~~~~~~!!!!」
「ぎゃあああああああああああ」
……手を噛まれました。
【元ネタ 『金色のガッシュ!!』 ウマゴン 本名はシュナイダー】
【アサシン陣営】
言峰綺礼が召喚した英霊は仕事をしてくれない。
しかも、しかもだ。髪を毟ってくる。
宥めるためにコーヒーガムを餌にしなければならない。
だが、強い英霊だ。分身のようなものを召喚する英霊だったのだ。
砂の分身。
単純故に強い。
良いサーヴァントだ。
【元ネタ 「ジョジョの奇妙な冒険」 イギー】
この聖杯戦争が過去に例を類を見ない、荒々しい獣の聖杯戦争になった。
よく考えたら喋れるのセイバーだけぇ!