亮二は相変わらず帰ってきては鬱憤を晴らすかの如く俺達家族に手をあげる。
俺はこんな日常から抜け出したかった。
せっかく一姫が無事に帰ってきたのに。
一姫が悪いわけじゃないのに。
今日はいつも以上に怒りが溜まっているのか一姫を自分のもとに呼び出して
声を荒げた。
「俺は、お前に期待していた、全てを託した。それなのに、記憶を失った?絵が描けない?どうしろって言うんだ!」
「欲しくもない期待をされて、挙句の果てに切り捨てる。そんな考え間違っているわ……」
「黙れ!俺はお前の父親だぞ。子どもが父親に刃向うな!」
パンッ
一姫の頭が揺れる。立ったまま平手打ちをされて足ががくがくさせている。
「姉ちゃんは悪くない!」
「お前もか!」
パンッッ
なぜだかいつもより痛い。いつもは無感情に受けてきた父の暴力だった。
だが一姫が殴られるということもあり、心身共に大きな打撃を受けた。
母が止めに来る。ここで俯いていちゃいつも通りだ。
ここで引いたら一姫への暴力は続く。
父が死ぬまでなんて耐えられるはずがない。
「姉ちゃんは悪くない!」
「あ?」
「姉ちゃんは悪くない!」
「何だ雄二?殴られたいのか?お前はいつもみたいに黙ってればいいんだ!」
「悪いのは父さんだ!子供をおもちゃみたいに扱ってそんなの間違ってる!」
パァンッッ
「黙れ。できそこないが父親に口をきくな!」
俺はその場に倒れこんだ。亮二の酒の匂いが鼻をつく。
「はぁ……今日は疲れた。もう寝る。」
そう言って亮二は風呂にも入らず千鳥足で寝室へと向かった。
「ゆう……ゆうじ……雄二!」
肩を揺すられ、はっと目を覚ます。
ちらりと見えた時計の針はどちらも左半分に無かった。
横を振り向くと薄暗い照明に照らされた母がいた。
「ん……どうしたの?」
再度眠りに就くのを必死にこらえて質問する。
母は何度も後ろを気にしてひそひそと耳元に囁いてきた。
「雄二、時間が無いから単刀直入に言うわね。一緒に家を出ましょう。」
「え?」
母の言葉とは思えないものだった。あの臆病者がこんなことを口にできるのかとまで思ってしまった。
「詳しい話はまた後で。来るわよね?」
「……う、うん」
下のベッドで眠っている一姫を見た。
亮二に殴られて意識を失ったのをベッドに運んだのだ。
「勿論一姫も一緒よ。」
心配げな眼差しを察してくれたのか母はそう言葉を添えた。
母が運転する車に揺られながら俺は遠くを眺めてボーっとしていた。
隣には一姫が寝ている。
(これでやっと解放される。俺たちは自由になったんだ。)
ここから俺たちの2つ目の人生が始まった気がした。
亮二のいない日常。
きっと幸せな毎日が過ごせるのだろう……
皆さんどうもRosalbaです。雄二視点から見ても苦悩してるという事を意識しています。雄二の心情の変化も原作と違っているところがあるので、私でも書いてるとワクワクしていることがあります(^◇^)それでは第四話でお会いしましょう(*'ω'*)