泣き虫な僕が大切な友達の為にできること 【完結】   作:豚汁

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では、前回の続きから始まります。

正也君の物語……是非見ていただけると嬉しいです。



5話 絶望 希望 そして……

 

 僕と穂乃果ちゃんの判断は一瞬だった。

 

 

 木の枝が折れる前に必死で上の枝に向かって飛んで、上の枝にぶら下がることに成功する。

 

 海未ちゃんとことりちゃんも、木の幹側に近かったことが幸いしたのか、木の幹になんとかしがみついて無事だった。

 

 

 しかし、それでも死ぬような思いを味わった二人の心は無事という訳にはいかなかった。

 

 

「えーーーん!!いやっ…落ちちゃうーー!!」

 

「ひっ…うわぁーーん!!こわいよぉーー!!」

 

 

 ことりちゃんは完全に取り乱し、海未ちゃんは普段の丁寧な口調を忘れるほどのパニック状態に陥っていた。……二人ともこの状態から動くことはもう無理だろう。

 

 

 でも、二人は木の幹にしがみつけているだけまだ大丈夫な方だと僕は思う。

 

 

「う…うわっ……!ひっ…!」

 

 

 木の枝にぶら下がって、否が応でもはるか下の地面を意識せざるを得ない状況にある僕よりは。

 

 

 え…!?さっきここまで高かったっけ!?怖い怖い怖い怖い!!

 

 

 僕も口には出さなかったが、ひどいパニック状態に陥っていた。

 

 実際に落ちそうになってしまったからなのもあるが、さっき木の枝の上から見たときと、今この状態から見たときでは高さの感じ方が段違い過ぎる。さっきとは違って足場がないだけでこんなにも怖いなんて僕は思いもしなかった。

 

 この状況下でのせめてもの救いは、穂乃果ちゃんと僕がぶら下がっているこの木の枝は丈夫で、僕たち二人がぶら下がったぐらいじゃビクともしないぐらいの強度があり、少なくともこの枝が折れることはまずないと思えることだろう。

 

 

 早く上に上がらないと……!

 

 

 なんとかして今のこの状況から脱しようと、僕は腕に力を込めて木の枝をよじ登ろうとする。

 

 

 しかしその行動は、僕に更なる絶望を与える結果となる。

 

 

「嘘でしょ…?」

 

 

 体がほとんど持ち上がらない。

 

 

「ふぐぐぐっ……!!」

 

 

 さっきより力を込めても結果は同じ。

 こうなると自分の身体能力の無さを呪うしか無かった。

 

 

 もしかして僕……飛び箱だけじゃなくて懸垂もできないの……?

 

 

 これはマズイ。いつまでもぶら下がってはいられない、現に今でもう手が痺れ初めている。

 

 

 つまり……手に握力がなくなった瞬間……

 

 

「怖い……怖いよーー!!助けてーーー!!」

 

 

 僕は初めて死の恐怖を感じて涙目でそう叫ぶ。

 頭の中は怖いという単語だけでいっぱいだった。

 

 ことりちゃんと海未ちゃんの泣き声と、必死で助けを呼ぶ僕の声が響く……そんな絶望的な状況の中

 

 

 

 

「み、みんな大丈夫!穂乃果にまかせて!」

 

 

 

 

 響く穂乃果ちゃんの声がまるで救いの光のように僕には感じられた。

 

 

「「「……穂乃果(ちゃん)……」」」

 

 

 穂乃果ちゃんの声に僕たちはパニック状態から立ち直る。

 

 

 そうだ……忘れていた。穂乃果ちゃんが居るんだった。

 

 穂乃果ちゃんはいつだって頼りになる。

 そして、どんな困難だって何とかしてしまう不思議な力を持った僕の友達。

 きっとそんな穂乃果ちゃんならこんな状況も何とかしてしまうはずだ!

 

 

 

「まっててね……今なんとかするから……大丈夫だよ!怖くなんてないんだよ!」

 

 

 

 こんな今にも落ちそうな状況なのに怖くないなんて……

 穂乃果ちゃんはやっぱりすごい……僕もきっといつか強くなるから、ちゃんと飛び箱も飛べるようになるし、これからちゃんと体だって鍛えるから

 

 

 

「怖くないよ……怖くなんて……ないよ……だってさっきは怖くなかったもん……大丈夫…」

 

 

 

 そう、僕は『カッコいい男』になるんだ

 穂乃果ちゃんの友達として恥ずかしくないような……まるで主人公みたいにすごい穂乃果ちゃんの……!

 

 

 

「こわくな…………怖いよ……ふぇぇ……!うぇーーーん!!おとーさん!おかーさん!たすけてーー!!」

 

 

 

 

 そうやって僕は穂乃果ちゃんが震えて泣き始めるまで……そんな人任せな馬鹿な事を考えていたんだ。

 

 

 

 こんなことに今まで気づかないなんて僕も本当に馬鹿だと思う。

 

 

 

 最初から穂乃果ちゃんは、特別なすごい存在でもなければ、絵本や物語に出てくるような主人公みたいに、なんでも一人で何とかしてしまう存在でもなかった。

 

 

 

 

 好きな事には一生懸命で友達思いな……普通の女の子だったんだ。

 

 

 

 

「穂乃果ちゃん……ヒック……えーん!!」

 

 

 穂乃果ちゃんが泣き出すのを見て、最後の望みが絶たれたかのように泣き出すことりちゃん。

 

 

「ほの……か……?」

 

 

 それとは対照に、海未ちゃんは何か信じられないものを見るかのように穂乃果ちゃんを見つめていた。

 

 

「みんな……ごめんね!むりだよぉーーー!!うごけないよぉー!!」

 

 

 そう言って一向に泣き止まない穂乃果ちゃん。

 

 

 

 

 

 状況は何も変わっていない。むしろさっきよりも絶望的と言ってもいい

 

 

 

 

 

 でも変わったことがひとつだけあった。

 

 

 

 

 

 ……穂乃果ちゃんは……僕の思ってるようなすごい子じゃなかった……でも!

 

 

 

 

 

――――正ちゃんをいじめるな!

 

 

 

――――だったら頑張るのは当然だよ!だって穂乃果達は友達だからね!

 

 

 

 

 

 

 それでも僕の大切な友達だ!!

 

 

 

 

 

 友達に助けられてばかりだった泣き虫で情けない僕の中の何かが、この瞬間確かに変わった。

 

 

 

 今度は僕が穂乃果ちゃんを……みんなを助ける番だ!

 

 

 

 

 

 




ここまで読んで下さりありがとうございます!

次回で最終回にしたい予定なんですが、なぜか好きな音楽に合わせて勢いで書いてたら、ちょっと量的に一話にまとめるのがしんどいかもしれない感じになったので、もしかしたら2話連続投稿と言った形になるかもしれないということをここにお詫びさせて下さい。

あと、またこの話が終わった後も少しエピローグ的なものを書こうと思っています。

では、次回もまた見て下さると嬉しいです。
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