さて、今回の最終話ですが、な、何とか一話に収めることが出来ました……いつもより長いかもしれませんがご容赦下さい……
では、正也君の物語を是非ご覧ください。
考えろ僕……どうすればいい……?
さっきまであった高さへの恐怖は不思議と感じなくなっていた。
僕は必死でみんなを助ける方法を考える。
まず、このまま急いで木の幹を伝って降りて、誰かを呼んでくるのはダメだ。
木の幹を伝って降りようとしたら海未ちゃんとことりちゃんが居るから危険だし、それにこんな泣いている状態で、いつまでも穂乃果ちゃんがぶら下がっていられるとも限らないから時間的にもダメ。
だったらもっと大声で叫んで助けを呼ぶ……?いや、これもダメだ。
大人が来てくれる保証もないし、それにやっぱり穂乃果ちゃんの事を考えると時間的にもダメ。
…………となるとやっぱり…
僕は上を見上げる。
この木の枝をよじ登って、穂乃果ちゃんを引き上げて助けてから大人が来るのを待つしかない!
「ふんぐぐぐぐぐ………!!!!」
僕は腕にありったけの力を込めて木の枝をよじ登ろうとする。
それでも僕の体は持ち上がってはくれない。
「ああっ!」
「あっ…!穂乃果ぁ!」
「……えっ…穂乃果ちゃんっ!?」
三人の緊迫した声を聞いて慌てて穂乃果ちゃんの方を見ると、そこには恐れていた事態が発生していた。
穂乃果ちゃんの片手が木の枝から離れている。
「あ…ああっ……」
穂乃果ちゃんは泣くことすら出来なくなっていた。このままじゃ落ちてしまうのは時間の問題だ。
それだけは……それだけは絶対にさせない!!
僕は覚悟を決めて叫ぶ。
「穂乃果ちゃん待っててっ!!今助けるからぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっっ!!!」
「……正…ちゃん…?」
もうたとえ手が折れたってかまわない!
僕は全力以上の力を振り絞る。
わかってるんだ、僕がこの枝をよじ登る力が足りないことぐらいわかってる……
手も痺れて力が出なくなってきてるし、握力も限界に近い
……でもそれが
―――――……正也なら絶対にできます。がんばって下さい
たとえ泣き虫だって…
―――――正ちゃん、大丈夫!ことりも応援してるよ!
みっともなくったって…
―――――ぜったい正ちゃんならできるよ!だって穂乃果達が味方だもん!がんばって…ううん、ファイトだよ!
『カッコいい男』でもなくったって!!!
みんなを助けたいんだ……大切な友達を助けたいんだ!!
だから
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!」
僕の必死の想いに応えるように体が少しずつ持ち上がっていく。
「あと………もう……少し……っっ!!」
そしてついに木の枝の上に頭を出せるところまで腕を引き上げた。
必死に木の枝を足にひっかけ、全身でしがみつくかのように木の枝の上に強引によじ登った。
……やった!やった僕!って……今はそうじゃない!急げ!
「穂乃果ちゃん!つかまって!!」
僕は必死に穂乃果ちゃんに向かって手を伸ばす。
手を伸ばされた穂乃果ちゃんは、最初は涙目で一瞬ビックリしたような表情をしていた。
だけど、すぐに安心したような笑顔になって……
「…………うんっ!」
そう言って僕の手を嬉しそうに掴んだ。
こうして僕は穂乃果ちゃんのピンチをギリギリで助けることが出来たんだ。
これでほんの少しは『カッコいい男』に近づけたかな……
そしてその後、海未ちゃんとことりちゃんもいつまでも木の幹にしがみつけるわけがないので、僕が必死に励ましながら一番近い木の枝に移動させた。
「正ちゃん!?ほ、本当に大丈夫なの~!?」
「大丈夫ことりちゃん!そのまま足をゆっくりおろして!そう、その調子!海未ちゃんも大丈夫!?」
「……は、はい……大丈夫です……」
予想外にも二人ともパニックを起こしていた割にはスムーズに幹から枝に移ることに成功する。
きっと僕がみっともなく叫んじゃってたから冷静になったんだろうなぁ……もっとスマートにみんなを助けられるようにならないと『カッコいい男』って言えないかな……先はまだまだ長いみたいだ。
……それにしてもさっきから海未ちゃんがジッとこっちを見ているのが気になる。
そ、そこまで見られるほどみっともなかったかな僕……?
そして海未ちゃんとことりちゃんの木の枝への避難が完全に終わるころには、夕日はすっかり沈んでしまい、木の上から見える景色は
僕はそんな景色をみんなと眺めながら、みんなを助けることが出来た達成感と安心感に包まれていた。
「みんな……ごめんね……穂乃果のせいで…」
穂乃果ちゃんは普段の様子とは打って変わって、しょげた様子で僕たちに謝った。
きっと自分のせいでみんなを危険な目に合わせてしまったと思い込んでるのだろう。だとしたらそれは間違いだ。だってこの事件が起こった最初のきっかけは……
「大丈夫だよ、穂乃果ちゃんは僕を元気づけるためにここまで連れてきてくれたんでしょ?だったら僕のせいだよ……僕のせいだ、穂乃果ちゃんは悪くないよ」
そう、そもそも僕がダメダメだったからこんなことが起こったんだ。
最後にはギリギリ何とかなったけど、もしみんなを助けることが出来なかったら……そう考えると震えが止まらない。
「穂乃果ちゃんも正ちゃんも悪くないよ……ことりがちゃんといやだってハッキリ言えたら良かったの…」
「……それだったら私が悪いです……危ないってわかっていたのにみんなを止められなかった……だから私が…」
海未ちゃんとことりちゃんも僕に続いてそう謝る。
その後は、「みんな何言ってるの?穂乃果が…」「いや、僕が…」「違うの、ことりが…」「いいえ、私が…」と僕たちは口々に自分の責任だと言い合った……そして
「もうこんなんじゃいつまでたっても終わんないよ!」
僕はついに我慢できずにそう言った。
「みんな……悪かったってことでどうですか?」
「うん、ことりも賛成」
「うーん……なんか納得できない……」
と、どこか不満そうな穂乃果ちゃんに僕はこう告げる。
「それでいいんだよ!だって……穂乃果ちゃんは僕たちにこんなにきれいな景色があるって教えてくれたでしょ、ありがとう穂乃果ちゃん!」
海未ちゃんとことりちゃんも僕のその言葉に同意するように頷く。
そう、確かに今日はまた穂乃果ちゃんの思い付きで散々な目にあったかもしれない。
でも僕は後悔はしていない。いや、僕だけじゃなくて、海未ちゃんもことりちゃんも後悔はしていないだろうという確信がある……そうじゃなかったらきっと僕たちはここまで仲良しでは居られなかったはずだから。
「正ちゃん……ことりちゃん……海未ちゃん……」
穂乃果ちゃんの表情にやっと少し元気が戻る。
そしてこのまま僕は、今日決意したことをみんなの前で言ってしまおうと思った。
僕は強い意志を瞳に灯す。
「僕は……決めたんだ!これからはみんなに助けられる僕じゃなくて、みんなを助けられる僕になりたい!」
それは弱かったさっきまでの自分への別れ。
「そして今は泣き虫な僕だけど……きっとこれから強くなって……みんなの友達でいて恥ずかしくないような『カッコいい男』になるんだ!」
そして未来の自分への誓い。
僕はそんな思いを言葉に乗せ、みんなにそう宣言した。
「………もうなってるよ、正ちゃん」
「え……?穂乃果ちゃん今なんて……?」
「な、なんでもない!何でもないから……!」
僕の問いに穂乃果ちゃんは慌ててむこうを向いてしまった。
様子が変だな……穂乃果ちゃんはどうしちゃったんだろう……?
でも、考えてもわかりそうになかったので僕は気にしないことにした。
「もしかしたら……また迷惑かけちゃう事もあるかもだけど……みんな!これからもよろしくね!」
そして僕は最後にみんなにそう言って宣言を締めくくった。
「……うん!これからもよろしく!正ちゃん!」
「もちろん、ことりの方こそよろしくね正ちゃん!」
「……はい、よろしくお願いします…正也」
三者三様、みんなの暖かい返事が黄昏色に染まる木の上に響く。
もしかしたら僕は今、本当の意味で穂乃果ちゃん達の友達になれたのかもしれない……そう思えるぐらいに僕の心はすっきりしていた。
結局この後僕たちは、帰りが遅いのを心配して探しに来てくれたお父さんやお母さんたちによって助けて貰い、その後こっ酷く叱られることになって見事に全員一週間ほどの学校以外の外出禁止令をもらうこととなった。
……こうして僕の身を襲った大事件から始まった今回の大騒動は、僕の穂乃果ちゃんに対する間違った憧れを正し、僕の中の何かをいい方向に変える結果になった。
きっと今が目標を最初から勘違いしていた僕のスタートラインなんだろう。
ほんの少しだけど、『カッコいい男』に本当の意味でなる方法が少しだけ見えた気がするんだ。
だから、とりあえずは穂乃果ちゃん達をこれからも助けられるような強い自分を目指そう。
それが……泣き虫な僕が大切な友達の為にできることなのだから。
以上で正也君の物語は最終話とさせて頂きます。
本編の時系列に入らないようなこんな作品を今までご覧くださった方々に心からの感謝を……
この後はエピローグ的なものを今までの投稿ペースとは少し遅れるかもしれませんが、少しずつ投稿していこうと考えています。
では誤字脱字、意見や感想などがございましたら、是非ともお気軽に感想欄にお願いします。