では、今回先に謝らせて頂きたいのですが、今回は穂乃果ちゃん達の登場は少なめです……正也君のあの飛び箱事件の決着がどうついたか……の内容になっています。
それでもいいと言って下さる方は是非よろしければ見てくれると嬉しいです。
では、ご覧下さい。
例の大騒動が起きてから一週間がたった。
「よし、次は
「はい!」
僕にとって待ちに待った体育の飛び箱の時間。
先生が僕にそう言ってエールをくれる。
「お~い!織部~!失敗すんのはいいけど怪我して泣くのだけはやめてくれよな~!」
前回も僕をからかってきたガキ大将がニヤついた笑顔を浮かべながらそう言った。
……またあんなこと言ってるよあのガキ大将……
どうやらアイツは僕の失敗を心待ちにしているらしいが、僕は今回は飛べるっていう確かな自信があった。
僕は座っている穂乃果ちゃん達の方に目を向ける。そこにはまるで自分の事のように緊張した顔をしてこっちを見ている三人の姿が見えた。
うん……応援してくれるみんなの為にしっかり飛ばないとね!
そして先生の吹く笛の音がして僕は助走を始める。
『織部君はどうしても飛び箱の踏み切り板の前で一瞬止まっちゃうのよね、だから充分にジャンプできないのよ。思い切って飛ぶイメージでやってみて!』
この前先生がくれたアドバイスが頭に浮かぶ。
前は確かに飛ぶの怖かったかもしれないけど……今はあの時ほどじゃない!
僕はしっかり飛び箱の踏み切り板の前でしっかり踏み込み、そして見事に飛び箱を飛ぶことに成功した。
「……やったーー!正ちゃんやったーー!!」
真っ先に喜びの声を上げたのは穂乃果ちゃんだった。ことりちゃんと海未ちゃんも穂乃果ちゃんと同じように僕の飛び箱の成功を喜んでいる。
「うん……!やったよみんなーー!!」
そして僕はそんな三人に応えるようにしてそう言った。
「おおーー!やったじゃん織部ーー!」
「まぁ、当たり前だけど出来てよかったな織部!前は笑ってごめんなー!」
他の男の子からも拍手が起こる。僕は見返してやったという気分で満足だった。
「……ちっ…」
ガキ大将は面白くないと言った風に舌を打つ。僕を見つめるその表情は明らかなイラつきが見える。
……なんでアイツは僕の事をここまで目の敵にしてるんだ……?
僕なにかしたっけ……?
こうして、疑問は少し残ったが僕のリベンジは終了した。
しかし、これが新たな事件のきっかけになると思わなかったんだ……
■ ■ ■ ■ ■
「……よう織部、ちょっとこっち来いよ…」
「え……?」
「いいから来いって言ってんだよ!」
この日の放課後、日直の仕事があったので、先に穂乃果ちゃん達に帰ってもらっていた僕に、ガキ大将がそう言って僕に話しかけてきて強引に僕を引っ張って行った。
「ここだ」
「な、何なの!?」
そうして連れてこられたのは人気の無い体育館裏だった。
一体何のためにここに……?
するとガキ大将は僕に怒りのこもった表情を向け、こう言い放った。
「やっぱりよ……お前の事初めて見た時から思ってたんだけどよ……お前見てたらイライラするんだよ……いっつもいっつも女とばっか仲良くしてやがって……俺はな!お前みたいにナヨナヨした男は大っ嫌いなんだよ!!」
「は……?」
「だから黙って殴らせろ!」
そうして理不尽な理論を並べていきなり殴りかかってくるガキ大将……でも不思議と僕は怖くは無かった。
むしろ……
「取り消してよ……」
「……なんだよ」
ガキ大将の拳が止まる。
「ナヨナヨした男って言葉……取り消せ!!」
……僕は一歩も引けなかった。
穂乃果ちゃん達を助けることが出来て、やっと自分にほんの少しだけど自信が持てたところだったんだ……だから……こんなところで負けるわけにはいかない!
「いいぜ……こいよ!」
ガキ大将は僕の事を見下したような目で一瞬見て、そして挑戦的に笑いながらそう言った。
「うりゃぁぁぁぁーーーー!!!」
こうして僕とガキ大将のケンカは始まった。
しかし、どうしても体格差のせいか僕が圧倒的に不利だった。何回も跳ね飛ばされ、ガキ大将のパンチを何発もくらってしまう。
でも何度跳ね飛ばされたって殴られたって僕は諦めない、何度でも立ち上がる。
そして、そんな僕に根負けするように、だんだんとガキ大将の体力が無くなってきてこっちの攻撃が当たるようになってからは泥仕合。
ボロボロになるまで僕たちはお互いに殴り合った。
「……いつも……いつも……女に囲まれてヘラヘラしやがって……男として恥ずかしくねぇのかよお前は……!」
「僕は……穂乃果ちゃんたちと友たちでいて恥ずかしいなんて思ったことはないっ!!」
お互いの意地と根性がぶつかり合う。
感情を剥き出しにしながら殴り合う僕たちの口からは、自然と本音が漏れていた。
「そっちこそ……いつもいつも気に入らないやつをこうやって殴っていって……自分の思い通りにして!……お前に教室で本当の友達なんか誰一人いないじゃないか!!」
「うるせぇ!!俺はお前が……!」
「こっちこそ!僕はお前が……!」
「「大嫌いだ!」」
そして僕たちは互いに全力を振り絞った一撃を互いの顔面に叩き付けた。
■ ■ ■ ■ ■
「はぁ……はぁ……案外……根性あるやつじゃんかよ……ここまで俺に張り合ったの……お前が初めてだぜ……」
「はぁ……はぁ……そっちこそ……パンチ強すぎ……」
気づいたら僕たちはお互い仰向けになって倒れていた。
全力を尽くした戦いだった。お互いもう一歩も動けないだろう。
僕はさっきまであったガキ大将への怒りが不思議とスッと引いていくのを感じていた。
「俺さ……幼稚園の時からこんな太っててよ……周りの奴からいっつも笑われてたんだ……」
すると、倒れたまま唐突にガキ大将が話し出した。
「だから、そんな気に入らないやつを俺は片っ端から殴ってきて……!そうやって気が付いたらいつの間にかみんな……俺の事をまるで腫れ物を扱うみたいに気を使ってきやがるようになったんだ……!くそっ!どうして俺は……」
きっとコイツも本当は変わりたいって悩んでるんだ……本当は友達が欲しいのに今の自分のままじゃできない、だからそんな自分を変えたいと思ってるんだ……
まるで『カッコいい男』になる為に自分を変えたいと思ったあの時の僕みたいに……
僕はガキ大将の話を聞いていて、そう思うようになっていた。
だから僕は直感でこう思ったんだ……コイツとは仲良くなれるかもしれないって。
「ねぇ……名前……なんて言ったっけ?」
僕はそう言って名前を問う。
別に苗字だけなら覚えているんだけど、僕はしっかりコイツの口から名前を聞きたい気分だった。
「……ひいらぎ……
ひいらぎ…たけし……か、いいなぁ……強そうな名前だなぁ……
「じゃあさ……良かったら僕と友達にならない?」
「良いのかよ……お前……こんなめんどくさい奴が友達で……」
「もちろん!」
僕は即答した。僕だって男の子の友達は初めてだからお互い初めて同士だ、仲良くやろうよ……タケシ。
「はははははっ……お前、変な奴だな!」
「うるさい!友達作るのが不器用な奴に言われたくないよーだ!」
その後、僕たちはボロボロの姿のまま笑いあった。
みんな……僕、初めての男友達が出来たよ。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
さて、次回でエピローグは最終話なんですが、内容は短編エピソード2~3話を時系列飛び飛び(と言っても数か月ぐらいの範囲)で詰め合わせることになりそうです。
なので少しいつもより更新遅れるかもしれない事をここにお詫び申し上げます。
では誤字脱字、意見や感想などがございましたら、是非ともお気軽に感想欄にお願いします。