憑き者の日記
∀月α日
最悪だ。そうとしか言い様がない。どうも俺はレイナーレに憑依してしまったらしい。
しかも体の主導権はレイナーレが優先で、彼女の意識がはっきりしているときは俺は体を自由に動かせない。ちなみにこの日記はレイナーレが寝たあとに書いている。
一応、数十秒くらいなら主導権を彼女が握っていても体の動きを止めたり、ちょっとしたことなら喋れるみたいだ。
今日は丁度イッセーが殺される日だったらしく、どうにかイッセーが殺されないようにあいつに「逃げろ」とも言ったんだが、主導権を奪い返したレイナーレに回り込まれ、そのまま殺されてしまった。
精神がレイナーレに引っ張られてるのか、それともアニメで死んだ瞬間を見た事があったからなのかは分からないが、それほどショックは受けなかった。
むしろ、自分が人の死に直面してショックを受けてなかった事にショックを受けた。
しかし、どうするべきなんだろう? このままでは俺は数日後には消滅してしまう。
レイナーレの方にも語り掛けてみたけど相手にされなかった。
アーシアが来たらこっそりアーシアを逃がすとか?
……すぐ他の三人に捕まりそう。
出来ればあいつらも一緒に救ってやりたいけど、流石に自分の命を優先させてもらおう。心苦しいけどね。
とりあえず今日一日レイナーレに憑依してみてわかった事はここに居る堕天使は頭がお花畑だってことだけだ。
あいつら本当に能天気なんだもん。もう作戦が成功した気でいる。
なんで上級悪魔二人+αに勝てると思ってるんだお前ら……
頼れる仲間はみんな目が死んでるって言うけど、仲間が頼りなさ過ぎて俺の目が死にそうだよ。
明後日頃にはきっと俺の目はDHA豊富そうな死んだ魚の目をしている事だろう。目、ないんだけどな。
……死にたくねぇよぉ。
∀月χ日
今日レイナーレが報告書なる物を書いていた。イッセー殺害は本当に任務だったらしい。
アザゼルって確か和平に持ち込もうとしてたはずだから、アザゼルとは他の派閥の命令なんだろうか? やっぱり堕天使も一枚岩じゃないのね。
ただ、嘘の報告書を書いていたからやっぱりアーシアから神器を奪うつもりみたいだ。
まぁ、それはわかっていたからいいんだ。問題はコイツらが何の準備もしてない事だ。
もうコイツら完璧に無能集団じゃないですか! やだー!
女子力もとてつもなく低いしよぉ……
唯一男のドーナシークしか料理できないってどういうことなの?
レイナーレはそこはかとなく残念美人だし、ミッテルトはアホの子だし、カラワーナはただのアル中だし……
そんな面子の中で掃除洗濯炊事までこなすドーナシークマジでオカン!
∀月δ日
今日もオカンなドーナシークに生活を支えられながらはぐれ悪魔祓いを集めるだけで一日が終わった。
そんなに人数は集まらなかったけど、あの『フリード・セルゼン』がやって来た。頭が狂ってる上に、やっぱり家庭的な能力はゼロの模様。
今日はアル中に絡まれるし、フリードにセクハラされるし最悪だった。
もうこの組織で頼れるのはドーナシーク、お前しかいない!
がんばれ、ドーナシーク!
負けるな、ドーナシーク!
∀月β日
ついにこの日が来てしまった。
今日、ドーナシークがリアス・グレモリーと接触したらしいのだ。
これで悪魔側に俺達がこの町にいる事がバレてしまった。
早く死なない方法を考えなきゃ本当に危ない。
どうすれば死なないだろうか?
きっとイッセーに反省している態度を示し、命乞いをすればアイツなら許してくれそうだけど、そもそもその条件ですらクリアできるとは思えない。
それに、せめてドーナシークくらいは助けてやりたい。
ドーナシークには本当に助けてもらってるんだよ、主に生活面で。
……はぁ、本当にどうしようかな。
∀月γ日
そういえば、レイナーレは犬が好きみたいだ。
頼りないアホの子とアル中に代わり買い物に出かけた時の話だ。
……ん? ドーナシーク? 家事で忙しくて買い物になんて出られるわけないだろ。
まぁ、とにかく買い物に出かけたんだよ。
そしたら途中で捨て犬を見つけてな。
レイナーレは買い物そっちのけで犬を撫でながら愚痴り始めてしまった。
余りにも長い時間撫でてる物だから飼わないのかと聞いたら
「あんな弱くて脆い生物飼うわけないでしょ」って言われた。
……犬ってそういう観点で飼うものだったっけ?
∀月◇日
レイナーレが寝静まってからドーナシークを呼び出した。
その理由はこのオカンに逃げてもらうためだ。
他二人は割とどうでもいいけど、ドーナシークは別だ。このオカンには生き延びてもらわなければ。
俺の存在を隠しても仕方ないので知ってる事を教えて逃げるように言った。
そしたら「私はレイナーレ様と共にある」とかなんとか言われた。やだ、このドーナシークイケメン……!
いやいや、そうじゃねぇよ! 逃げろよ。馬鹿なの?
食い下がって説得してみたもののやっぱり駄目だった。
もう仕方がないから、グレモリー眷属たちとは戦わない事を約束させた。
いざとなったら他バカ二人もドーナシークと一緒に逃げてくれるだろ。
あとは俺とレイナーレだけだ。俺に思いつくのは策とも呼べないようなものばかりだが、これでどうにもならなかったら待ってるのは消滅だけだ。
なんとしてでも俺は生き抜く。生き抜いてみせる!
∀月*日
ついにアーシアがこの教会にやって来た。
アーシアやっぱりいい子だわ。それなりに料理もできるし。
それでもドーナシークには及ばないんだけどね。ドーナシークマジオカン!
しかし、フリードは駄目だな。あいつは駄目だ。
あいつアーシアを連れて悪魔と契約している人間を狩りに行きやがった。
案の定アーシアは酷い顔して帰ってきたよ、可愛そうに。
でもそのおかげで仕事がしやすくなった。そういう意味ではフリードには感謝したい。
例の如くレイナーレが寝静まった後にアーシアの元を尋ね、逃げるように伝えた。
そうしたらなんか相談を受けた。
なんでもフリードの行動が理解できないらしい。
アーシアはホントいい子だわ。
あんな狂人の行動にも理由があると信じる事ができるんだから。
とりあえずあいつの事は気にしなくてもいいと伝えておいた。
ついでにイッセーと呑気にデートはせず、いざとなったらリアス・グレモリーに助けを求めろとも言っておいた。
……コレ、今気づいたけど自分で死亡フラグ立ててないか?
アーシアがリアスに助けを求めたら俺、絶対消されるよねぇ!?
うわぁああああ!! やっちまった!
逃げてくれ、アーシア。できればリアスの手は借りないで。
∀月Λ日
体中が痛い。でも、それ以上に心が痛い。
クソ、レイナーレめ。胸糞悪いもんを見せてくれやがって。
結局物語りはアーシアがイッセーとデートし、レイナーレに捕まり、儀式で死ぬという筋書きのままに進んだ。
リアスに助けを求めるように言ったのはいいけど、今日は平日だったからリアスは授業を受けていて頼れる状況ではなかったらしい。
そういえばこの体、強い思いはもう一人の意識にも伝播するみたいだ。
今日、レイナーレから伝わってきたのは周囲の堕天使への強い憎しみだけだった。
アザゼルやシェムハザへの愛なんて崇高な物は欠片もなかった。
哀れな女だ、堕天使レイナーレ。
嫉妬深くて高慢で、ホント救いようも無い位にクズだけど、それでもこの悪役染みた思考回路の形成もやっぱり理由があっての事らしい。
レイナーレは堕天使としては落ちこぼれなのだ。
ただ、一瞬の内に脳に直接延々と周囲の堕天使に苛められ続ける映像を流すのは正直キツかった。
特に可愛がってた犬を目の前で嬲り殺しにされたときは狂いそうになったよ。
あいつがイッセーに感情的に叫んでたのは過去の自分と重なったからなのだろう。
ちなみに今日助かったのはアーシアがイッセーにレイナーレを殺さないで欲しいと死ぬ前に頼んでくれていたからなんだと。
アーシアちゃんマジ天使だわ。
オカンドーナシークに引き続き、大天使アーシア降臨。もう悪魔に転生してるんだけどさ。
ちなみにドーナシークたちは無事に逃げる事ができたらしい。
レイナーレはリアスに捕虜として捕まってしまったからもうしばらく会う事はないと思うけど元気でいて欲しいね。特にオカンには。
∀月λ日
レイナーレの意識が浮上してこない。
あの後ドーナシークは無事に逃げたと伝えたらなんか裏切られたと勘違いしたらしく、意識の奥底に閉じこもって出てこなくなってしまった。
なんてめんどくさい女なんだ……!
あ、ちなみに俺は今度から天野夕麻を名乗る事にした。
前世の名前も一応あるけどバリバリ男の名前だから使えないんだわ。
今日から駒王学園に転入です。
アーシアたちとは違うクラスだけど、それもやむなしである。
だってイッセー、俺の姿見ると毎回『ビクッ』ってなるんだもん。
まぁ、トラウマだから仕方ないといえば仕方ないんだけどさ。