∀月α日
もう信じられないわ!
上司の命令で兵藤一誠ってガキを殺しに来たんだけど、突然体が思うように動かなくなったのよ。
しかも口が勝手に「逃げろ! 逃げてくれなきゃ俺が困る!」とか言い出すし。
まぁ、たかが人間が逃げたところですぐに追いついて殺せるから全然問題なかったんだけどね。
それよりも問題はその後よ。
突然頭の中に声が響くの! 男の声が!
しかも「このままではお前は死ぬ! 早くこの町から離れろ!」だの「他人から奪える程度の力では誰も振り向いてもらえないぞ!」だのと上から目線で腹立つ事ばかり響いてくるのよ。
私はアーシアから力を奪うんじゃないの。取り除いてあげるの。
貧弱な人間が下手な神器を持ってたって迫害されるだけだわ。
そんな哀れな人生を歩むくらいなら死んだほうがマシでしょ?
だから私が取り除いてあげるの。命ごと神器をね。
そうして私は至高の堕天使に……
そういえば、アーシアを引き取ってくれって手紙を寄越してきた人は一体誰なのかしら?
一度、会ってお礼がしたいわ。
∀月χ日
昨日は報告書を書くのを忘れてたわ。
これを書かなきゃ私の素晴らしい計画が水の泡よ。
書くっていっても嘘の報告書なんだけどね。
こんな報告書真面目に書く奴なんて冥界にはいないわ。
大抵の堕天使は初日嘘の報告書を書いて提出して現世の娯楽を楽しむのよ。
私としてはこんなクソみたいな世界にいるよりアザゼル様とシェムハザ様の寵愛をいただいた方が絶対にいいのだけれど、カラワーナ達なんかは結構楽しんでるみたいね。
ミッテルトは人間の文化の『こすぷれ』ってヤツにハマったみたいだし、カラワーナは人間界の珍しいお酒に夢中で昼間から浴びるように飲んでたわ。
……経費ははぐれ悪魔祓いが出してくれたのかしら?
まだ二、三人しかいないのに結構金持ちなのね、悪魔祓いって。
そういえばドーナシークが「このままでは一週間持つかどうか……」って言ってたけどどういう意味なのかしらね?
あと昨日から頭に響くあの声! ホント失礼だわ!
私の作った料理を見て「お前もう台所に立つな!」って言ったのよ!
確かにドーナシークの作った料理の方が美味しいけどそんな言い方ないじゃない!
でもいいの。私は料理できなくったってこれから『聖母の微笑み』を手に入れて至高の堕天使となるのだから。
そしたらあいつらだって――(字が汚くて読めない)
∀月δ日
はぐれ悪魔祓いを募集してるのに全然集まらないわ。
今日集まった四人と合わせてまだ七人しかいない。
あと十人は欲しいところだけど、なんとかなるでしょ。
それよりも今日来たはぐれ悪魔祓いのフリード! あいつ最低ね!
この私相手にセクハラしてきたのよ!
カラワーナみたいな酒浸りにならわかるけど、この清楚系美少女レイナーレにセクハラなんて普通するかしら!?
あとカラワーナのアル中にも困った物だわ。
酔った勢いで私にキスしようとしてきたのよ。
同性といえどそんな簡単にファーストキスはあげられないわ。
その後も突然脱ぎ始めるし、フリードとか男共の目を潰すのが大変だったわよ。
まったく、困ったお姉さまよね。
私の『聖母の微笑』の次はカラワーナの為に誰かから神器を抜き取りましょうか。
∀月β日
今日、ドーナシークがリアス・グレモリーと遭遇したらしい。
なんでそんな悪魔がこんな地方にいるのかわからないけど、これは注意して計画を進めないと駄目かしら?
あと、あの一誠っていうクソガキ! あいつ悪魔に転生してやがった!
この美少女レイナーレ様が夕暮れ時にロマンチックに殺してあげたのによりにもよってリアス・グレモリーの眷属になっているらしい。
結局はあいつも私の事なんて肉欲的な目でしか見てなかったと言う事だ。最低だ。
少しでもあいつの事を可哀相だなんて思った私が馬鹿だったわ。
それにしてもどうしてリアス・グレモリーは一誠なんて才能の欠片も無さそうな子を眷属にしたのかしら?
魔力もそんなに感じなかったし、やっぱり神器かしら?
∀月γ日
ミッテルトとカラワーナが頼りないから私に買い物を頼むなんて、ドーナシークも結構いい度胸してるわ。
でも、買い物の途中で見つけた捨て犬可愛かったわ。まだ小さい仔犬だった。
……あの子も出会った時はこれくらいの大きさだったかしら?
あんなに私に懐いてくれていたのに――(文字が滲んで読めない)
気づいたら一時間近く仔犬を撫でていた。
そうしたら例のあの声が「飼わないのか」と聞いてきた。
飼わないわよ。人間界の犬は貧弱ですぐ死んでしまう。もうあんな思いをするのはごめんよ。
……あの子を守れなかった分、私に付いて来てくれている仲間たちは絶対に守り抜いてみせるわ。
∀月◇日
はぐれ悪魔祓い達がどんどん集まって来てるわ。これなら儀式も問題なく執り行う事ができると思う。
楽しみだわ。これで私はアザゼル様に愛をいただき、あいつらを見返す事ができる。
私は落ちこぼれじゃないんだって証明できる。
あいつらはどんな風に手の平を反すのだろう?
泣いて許しを請うのかしら?
それとも媚びへつらいながら擦り寄ってくるのかしら?
どっちにしても無様でいい気味だわ。
∀月*日
ついにこの計画におけるキーパーソン、アーシアがやってきたわ。
哀れな子よ。信じる神の贈り物によって運命を狂わされ、信じていた者達にも裏切られて。
それなのにこの子の優しさは一切穢れを知らない。
優しさというのもここまで来ると気味が悪いわね。
アーシアは今日アシスタントとしてフリードについていったんだけど、そしたらあの子青い顔して泣いてたのよ。
その時私は確信したわ。こんな優しい子がこの酷い世界で生きて行ける訳がないってね。
安心なさい、アーシア。穢れる前に私があなたを殺してあげる。そうしたらきっとあなたはあなたの信じる神の元へ行けるわ。
∀月Λ日
兵藤一誠、どれだけ私を苛立たせれば気が済むのかしら?
何が「友達」よ、何が「アーシアは俺が守る」よ、虫唾が走るわ。
想いの強さで誰かを守れるなら、私だって――(文字が汚くて読めない)
それなのに「アーシアを返せ」だとか叫んで馬鹿みたい。
神滅具なんて大層な神器を宿してるみたいだけど、あんなガキが使ったって宝の持ち腐れだわ。
……まぁ、それでも中級堕天使の私に勝つくらいだから相当強力な神器なのは間違いないけれど。
結局アーシアは悪魔に転生する事で新たな生を得たわ。
ホント馬鹿な子達よ、アンタ達は。
特にアーシア。あそこで死んでいれば神の元へ行けたのに。……ホント馬鹿。
しかも私の事まで庇って一体何のつもりなのかしら?
アーシア、いずれこの借りは必ず返すわ。
弱いあなたは私が守る。だから安心して兵藤とイチャイチャしてなさい。
∀月λ日
あの男、随分私の知らない所でいろいろやってくれたみたいね。
でもあの男のおかげでミッテルト達は死ななくて済んだみたい。それだけは感謝しておかないとね。
そういえばあの男は気づいてないみたいだけど、意識の奥底でなら擬似的な戦闘訓練が積めるみたい。
しかもかなり実戦に近い形だから、ここでならきっと私は他人から力を奪わなくても強くなれると思う。
待ってなさい、アーシア。私はここで強くなってあなたを守る。
……兵藤もオマケで守ってあげてもいいわ。
アイツみたいな馬鹿でもいなくなればアーシアが泣いてしまうもの。
レイナーレェ……どうしてこうなった?
ちなみに主人公はレイナーレの日記を見ないようにしてます。