ソードアート・オンライン プログレッシブ【月光夜桜】 作:(よくエタる)月見乃夜桜
三月分です。
プロローグ「はじまり」
―――この日俺達の、死とは
by桐ヶ谷和人
―――死と隣り合わせの世界が俺達の日常となった―――
byキリト
×××
《
自らの体を動かし戦うというナーヴギアのシステムを最大限体感させるべく魔法の要素を排し、《ソードスキル》という必殺技とそれを扱うための無数の武器類が設定されている。また戦闘用以外のスキルも多数用意され、ゲーム内で文字通り《生活》することができる。ナーヴギア発売当初からこじんまりとした世界のパッとしない作品――つまりハードの性能を活かせていない作品ばかりに不満を募らせていたユーザ達は、この発表に興奮し、熱狂した。
二0二二年十月三一日にゲームメーカー《アーガス》より発売し、上記の理由により期待は非常に高く、価格が一ヵ月無料券付き三万九八00円という値段ながら、初期出荷分一万本は瞬時に完売した。
そして今日――二0二二年十一月六日、日曜日。新しい世界が幕を開ける。そう、ある者にとっては楽園の、またある者にとっては地獄の世界が幕を開ける。
×××
SAOにログインし、懐かしき最初の街、《はじまりの街》に再び降り立った俺は、入り組んだ裏道にある安売り武器屋に足を向け歩き出す。
「あいつがインするのは三時頃だから、それまでレベル上げでもするか」
この後の予定を確認しながら歩いていれば、あっという間に裏道を抜けた。すると安売り武器屋には先客がおり、こちらに気づいて話しかけてきた。
「よお。あんたもここで買うんだな」
「まぁな」
「なんだ、キリト。知り合いか?」
俺に挨拶をしてきた勇者然とした顔の人物――キリトに、頭に巻いたバンダナが特徴の若侍然とした顔の男が話しかけた。
「ああ。彼は、えーっと、キャラネーム変えて無いよな?」
「ああ。同じだ」
SAOでは基本的にキャラクターネームは相手に表示されない。これはネームバレによるメールなどでの嫌がらせを防止するためらしい。そのためキリトも一応確認を入れて来たのだろう。
「クライン、彼は
キリトに紹介された男――クラインは一歩前に出て手を差し出して来た。
「クラインだ。よろしくな!」
「ジャック・ハウゼンだ。機会があればよろしく」
クラインの手を握り、握手をする。
「なあ、ジャック。俺たちこれからフィールド出るんだが一緒にどうだ?」
「いや、俺はいい」
握手を終えた俺にキリトが提案するが、この後の事も考えて断る。
キリトとクラインは既に装備を買い終わっていたらしくそのまま去って行った。
「らっしゃい。何にするね?」
武器屋に入ると店主が出迎える。
店に並べてある物は片手直剣や短剣、曲刀などの初期カテゴリーの装備が並んでいる。
そこで俺はカテゴリー片手直剣の《スモール・ソード》と曲刀の《スモール・カトラス》あとは投擲カテゴリーの《スローイング・ナイフ》を数本買った。そうすると初期配布された
「まだ時間があるな」
時間を確認してみれば、INしてから一時間ほど経っており、メニューのデジタル時計は14:05を示していた。
その為、約束の十五時まで時間を潰すためにフィールドに足を向ける。
その間にステータス画面を開き、先程買った武器を装備していく。
右腰に直剣、左腰に曲刀、両肩に投擲剣を数本ずつ装備した。
城門に向かっている途中でプレイヤーから奇異の目を向けられる。
その理由としてはジャックが複数のメイン武器を装備しているからだろう。
SAOにはスキルスロットというモノがあり、装備できるスキルに限界がある。そしてソードスキルを使うためには武器スキルが必要にな上に、各スキルは熟練度があり上げねば技は増えない。つまりいくら武器を持っていても、その武器スキルを取らなければソードスキルは使えず、更には戦闘系スキルや生産系スキルなどにもスロットは消費する。例えスロットを武器スキルで埋めたとしてもその全ての熟練度を上げるとなると膨大な時間がかかる。
そして初期のスロット数は二個。はたから見れば確かに完全に非合理かつ非効率に見えるだろう。
だが、ジャックは気にせず目的地を目指す。
いや気にする必要が無いのだ。なぜなら他とジャックでは見ているモノが違うのだから。
×××
フィールドに着けば、見渡す限りの草原と其処ら中に青いイノシシのモンスター《フレンジー・ボア》がいた。
フレンジーボアは
周りを見渡せばプレイヤーはおらず、誰にも自身の手の内を見せずに戦える状況だ。
そこで百メートルほど離れたフレンジー・ボアに向け駆け出す。そして駆け出すと共に両腰に佩いた《スモール・ソード》と《スモール・カトラス》を抜剣する。
すると視界の端に“非適正装備状態によるソードスキルの使用不可”と表示される。これはメイン武器を二本装備している事によるものだ。もしかしたら二刀流のスキルがあれば解除されるかもしれない。在るかどうかは知らないが。
まあ今回の戦闘では、この世界で自分がどれだけ動けるか、つまりベータと正式の違いがあるかを確認する為なので問題は無い。
フレンジー・ボアの数メートル手前でジャンプをし、飛び越える。頭上を通る瞬間、回転しながらフレンジー・ボアの弱点である後ろ首に右手に持ったカトラスで斬りつける。見事弱点に当たりクリティカルを出すもレベル一のステータスかつ初期の武装で、空中での攻撃だった為に敵の体力は五分の四ほど残った。
フレンジー・ボアが攻撃された事により、俺を敵と認識して振り向こうとするが、弱点にクリティカルされたために怯み動きが鈍い。そして着地した俺は、すぐさま振り返るのと同時にフレンジー・ボアの頭上から、弱点に寸分たがわず左手に持った直剣を叩き付ける。
それによりフレンジー・ボアのHPが半分を切る。そこから間髪入れずにカトラスを下段から振り上げ喉を斬り裂く。これによりフレンジー・ボアのHPはレッドゾーンに入り残りは五%程になる。
フレンジー・ボアは攻撃をしようとこちらを向うとしているが、横から剣と曲刀で挟まれているため動けない。そしてジャックのプレイヤースキル《断ち斬り鋏》によって首を斬り離されると同時にポリゴンになって消滅した。
「ベータとは特に変わった所は無いな」
その後は移動時間も踏まえて約束の時間十分前まで狩りを続けた。
最初の一戦以外は、習得した武器スキルの片手直剣と曲刀を育てるために、それぞれ持ち替えてソードスキルを織り交ぜながら戦っていた。
そして狩りを切り上げた頃にはレベルも上がり二になった。
《はじまりの街》に戻ったジャックはさっきまでの狩りで手に入れた不要アイテムを売りコルに変える。他には鍛冶屋にて装備の修理を行った。
そして最初の広場へ近道の路地裏で向かう途中、武具屋のある商品に目が行った。それは布製で防具としてはまったく役に立たないだろう物。ただのファッション装備だろう物。
よく思い出してみれば、ベータ時代はここにこんな店は無かったはずなので、この商品も正式サービスと共に実装されたのだろう。
俺が注目したアイテムは黒いフード付き外套だ。その外套は裾がボロボロになっているデザインだ。しかしボロボロといってもみすぼらしい感じではなく、よく使いこまれた感じの。
時計を見てみると時間がかなり迫っていたので、俺はすぐにその外套を買い装備して広場に向かった。
広場に着いて辺りを見渡してみるがそれらしき人物が見当たらないので、広場のモニュメントに背中を預けて寄りかかる。この“モニュメントに寄りかかる”というのが、俺だという目印だ。
「あのー、すみません」
十五時を少し過ぎた所で俺に話しかけてくるプレイヤーがいた。
そのプレイヤーのアバターは濃紺の長髪が特徴の少女だった。そして待ち人でもあった。
「なんだ。お前リアルと同じ顔のままか」
「ほっ。うんそうなんだ。なんか自分と違う顔とか慣れそうに無かったからさ」
少女は俺が目当ての人物で合っていたためか安堵の息を吐いた。
「じゃあ、自己紹介だ。俺のこのゲームでの名前はジャック・ハウゼンだ」
「ボクはユウキ。よろしくね、ジャック!」
「ああ、よろしく。それにしても名前もか」
「別にいいでしょ!」
こうして俺、ジャック・ハウゼンこと修羅道 龍夜と、ユウキこと紺野 木綿季の冒険が始まる。
・ジャック・ハウゼンの装備。
・武器
・片手直剣:ショートソード【スモール・ソード】:右腰
・曲刀:カットラス【スモール・カットラス】:左腰
・投擲:投擲剣【スローイング・ナイフ】:肩
・防具
・ヘッド:裾がボロボロの黒いフード。
・アウター:裾がボロボロの黒いフード付き外套。
・インナー:初期の黒シャツ。初期の黒いジャケット。
・ボトム:初期の黒ズボン。
・レッグ:初期の黒ブーツ。
『補足』
・装備について。※ご指摘いただき追加しました。
装備の仕方については、キリトが二本背負えてたのでメイン武器の複数装備は可能かな?と思い可能としました。
また74層のボス戦後にクラインが言った「見たことない」というのを“二刀流でスキルを使った事”と解釈し、“装備はできてもスキルが使えない”のでは無いかと思いこう設定しました。
腰とかに装備してる時はスキル干渉はしない、手に二本同時に持ってたりすると干渉する。
・【ジャック・ハウゼン】
龍夜の偽名というか本名の一つ。
西洋や欧州で活動していた際の名前。
・【裾がボロボロの黒いフード付き外套】
イメージは銀魂の次郎長が最後花畑で羽織っていた外套にフードを付けてボロくした感じ。
「次郎長 銀魂」でググると画像出てくる。
・【断ち斬り鋏】
龍夜の流派「天地我流」の武器技。二刀・双剣専用技。
刀剣を鋏に見立ててチョンパする。
・【天地我流】
龍夜が興した実戦流派。
意味は「この天地に立つは、我独り也」。
元々は龍夜が生き残るために、実戦《ころしあい》の中で築き上げて来た我流の技術。それに世界中のあらゆる武術の技や合理等を選別して取り入れ、それを更に実戦《ころしあい》の中で変化させ、磨き上げて出来たのが“天地我流”。