桜並木の青春   作:青山五月

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第2話

 清崎市総合体育大会が始まった。

 吹奏楽部は試合があるわけでもないので、学校に残り、野球部の決勝進出に備えて練習をしていた。

「テニスの団体戦、初戦突破だって」

 顧問の北島先生の元に、各部からの連絡が入ってくる。

 友達の勝敗の結果を聞いた部員たちは、練習しながらも一喜一憂している。

 私はサックスを吹きながら、クラスのみんなや翔くんのことを、ぼんやり考えていた。

 午後になり、パートごとの練習が終わる頃、その連絡は入ってきた。

「野球部が二回戦も勝ったって!」

 あちこちで小さな歓声が上がる。この吹奏楽部にも野球部のファンは多い。

「やった! 明日応援に行けるよ!」

 美咲も部活帰りに声を弾ませていた。

 私も素直にうれしかった。

 

 

 

 次の日、野球の決勝戦。

 相手の城崎中も、なかなかの強豪校のようだ。

 吹奏楽部も野球部についてきて、応援歌を演奏し、声援を送る。

 どちらも序盤から苦労している。

 両者一歩も譲らず、0対0のまま、六回の裏が終わった。

 

 

 

 七回の表、城崎中の攻撃。

 清蘭中のキャプテンでピッチャーの佐藤先輩が、二人をアウトにし、3人目のバッターからストライクを二つ取った。

 あと一つ・・・・・・。

 しかし、次のボールを打たれてしまった。

 打球はどんどん伸びていく。ホームラン。

 城崎中に1点入ってしまった。

 清蘭中側からは落胆の声と、「次頑張ろう!」という声援。

 佐藤先輩は次のバッターから、なんとか三振を取った。

 

 

 

 七回裏、清蘭中の攻撃。

 二年の河野先輩が、二球目を打ってヒットを出した。ファーストへ走る。

 次のバッターは、翔くんだった。

 1球目、2球目を見送り、ボール一つとストライク一つ。

 3球目でバットを振ったが、惜しくも空振りだった。

(お願い、打って・・・・・・)

 私は声をだすのも忘れて祈る。多分ここにいる誰もが、そう思っているはず。

 相手のピッチャーが投げる。

 翔くんがバットを振る。

(・・・・・・!)

 ボールは勢いよく飛び、バウンドし、相手のショートの横をあっという間に通り抜けた。

 翔くんはすぐにダッシュし、セカンドまで行って止まった。

 続いて二年の井上先輩。先輩はバッターボックスに立つや、初球を思い切り打った。

 ボールはやや高めに飛んでいく。

 1回地面についたボールを、城崎中のレフトが取った。そのままショートへ、そしてショートはホームにいるキャッチャーへ、投げた。

 翔くんもサードを走り抜け、ホームベースへ。

 土煙が上がる。ほぼ同時だった。

「・・・・・・セーフ!」

 一気に清蘭中側から歓声が上がった。

 ホームベースに滑り込んだ翔くんに、チームのみんなが駆け寄った。

 みんなにもみくちゃにされながら、笑顔になる翔くん。

(かっこいい・・・・・・!)

 思わず口に出してしまいそうになった。そんな自分に動揺する。

(何で・・・・・・?)

 勝手に胸が高鳴る。顔が熱くなる。

 家が近くて、昔から一緒に遊んだり話したりしている、ただの幼なじみ。

 いつもと違うその真剣な姿とキラキラした笑顔が私をこんな気持ちにさせる。

 翔くんのこんな姿、見たことがなかった。

(もしかして私、翔くんが好きなの・・・・・・?)

 

 

 

 城崎中はその後、無得点に終わり、清蘭中が優勝した。

 私は帰りのバスの中で、美咲に話しかけられるまで、無言だった。

「海斗くんも翔太くんも、すごかったねー!」

「あ、うん・・・・・・」

 初めて味わったふわふわした気持で、心の中がいっぱいだった。

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