桜並木の青春   作:青山五月

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第4話

 

 

 9月の第2日曜日に、清蘭中の運動会が開かれた。

 チーム分けは1学期の終わりにされたが、期待とは裏腹に、私は翔くんと別のチームになってしまった。

「一緒のチームがよかったな・・・・・・」

 それでも本番では、応援をしながら翔くんの活躍が見られたので、競技で仲間にはなれなかったけど、楽しかった。

 

 

 

 毎年、チーム対抗の競技が終わると、フォークダンスをすることになっている。

 今年の運動会でも、男女がそれぞれ1列ずつに並び、入場。そして、音楽がかかる。

 清蘭中では、同じ曲を2回かけ、いろいろな人と踊ることになっていた。

 練習のときは1曲ずつしか踊らなかったので、翔くんとは会えなかった。

 でも今日は長く踊れる。

(今日こそは、一緒におどれるかな・・・・・・)

 淡い期待を抱き、隣のクラスの男子から順に回っていく。

 1曲目が終わった。少し周りを見回してみるが、翔くんがいるかどうかはよく分からない。

 2回目の音楽が始まる。

(お願い、来て・・・・・・)

 でも、彼の姿はなかなか見えない。

 曲は終盤に入っていく。

(今年はだめか・・・・・・)

 私は半ば諦めていた。

 

 

 

「あっ、凛だ」

 思わずどきっとした。

 下に向けていた顔を上げると、目の前に翔くんがいた。

「あっ・・・・・・!」

 最後の最後で、一緒に踊れる。

 このちょっとした偶然も、そのときの私には、奇跡に思えた。

 翔くんの手が、優しく私の手を包む。

 彼の手の温もりと、自分の鼓動の高まりを感じながら、ステップを踏む。

 そこでちょうど、2曲目が終わった。

 ゆっくりと翔くんの手が離れていく。

 もう少し、もう少しだけ、手を握っていたかった。

 少しだけ寂しさを感じる。

 

 

 

 最後に成績発表が行われた。

 翔くんがいるチームが優勝、私たちは準優勝だった。

 翔くんは仲間とともに大喜び。

 私もそれを遠目に見ながら、うれしくなった。

 

 

 

 10月に入り、暑さがだいぶおさまってきた。

 文化祭の準備が始まる時期。

 清蘭中の文化祭でも、合唱コンクールをする。

 私はその伴奏者に選ばれた。

 校内の装飾や劇、有志による発表の練習はもうそろそろ始まるが、合唱は早くから準備をしていた。

 

 

 

 文化祭まであと1週間。

 どのクラスも気合いが入っている。

 私たちのクラスも、先生が熱心な人で、朝や放課後に合唱練習をすることに決まった。

 今日も朝から音楽室での練習がある。

「静かにしてー! まずは1回通してみよー」

 全員がそろい、指揮者の松本さんが呼び掛ける。

 クラスのほとんどが声を出すのを止めたが、一部の男子はまだ騒いでいる。

「ちょっと男子、静かにして」

 松本さんがまた注意する。

「えー」

 何人かは黙ったが、3人の男子はまた文句を言った。

 この藤田くん、渡部くん、坂本くんは大抵3人でつるんでいる。休み時間などに教室でふざけているのをよく見かける。

「朝から練習とか面倒じゃね? 別にそこまでしなくてもいいじゃん」

 3人組の中の坂本くんは、真面目ではないところはあるが、クラスの中では人気がある方だ。

 ここで、松本さんの味方の真面目な女子と、坂本くん派の少数の男子が言い合いを始めた。中間にいる私たちはどうしたらいいか分からない。

 そのとき、この中間の生徒の中から声が上がった。

「お前ら、いい加減静かにしろよー」

 声がした方を振り向く。

 男子たちに注意をしたのは・・・・・・、翔くんだ。

「中学生になって最初の合唱コンクールだぜー。男子だって、俺も含めて声出てないじゃん。もうちょっと真面目にしようぜ」

 翔くんの説得は上手い。確か、小学校の高学年になったときも、けんかしていた下の学年の子たちに仲直りをさせたことがあった。

 翔くんは、自分のこともまだまだだと言い、騒がしい男子たちを見事に納得させている。

「・・・・・・分かったよ。ちゃんとやる」

 坂本くんが少しうつむき、素直に言った。

「翔太くんすごい。あの坂本くんたちに真面目に練習させるなんて」

 ピアノの近くにいた女子がこそこそと話している。

「うん! ちょっと格好いいかも・・・・・・」

(あれ、翔くんって結構モテる・・・・・・?)

 胸の奥が、少しもやもやする。

 そんな私をよそに、松本さんがもう一度声をかけ、合唱練習は始まろうとしていた・・・・・・。

 

 

 

 文化祭当日。

 合唱コンクールの前に10分間の休憩があるので、各クラスごとに円陣をくんだ。

「思いっきり声出して、楽しんでいこーぜ!」

 学級委員の海斗くんが大きな声を出し、私たちは心を一つにして、舞台へと向かった。

 

 

 

 私たちの出番が終わった。

 初めての中学校での合唱で、みんなが緊張していたし、体育館では声が響きにくいけど、よく頑張っていた。

 私も間違えないように頑張った。

 今まで歌ってきた中で、一番の合唱だったと思う。

 全クラスの合唱が終わり、昼食のバザーが始まる時間。

 私の近くにいた指揮者の松本さんのところに、坂本くんたちが集まった。

「松本、練習のときふざけてごめん。松本がしっかり指導してくれたから、さっきみたいないい合唱ができたんだと思う。」

「えっ、いいよ、そんなこと。あれから真面目にしてくれたし」

 松本さんは、不真面目だった男子からの急な謝罪に驚いていた。私もびっくりした。

「翔太も、あのとき注意してくれてありがとう」

「おう・・・・・・」

 翔くんも少し戸惑っている。でも、私が見ていることに気づくと、にっと笑った。

 私はその笑顔に心を打ち抜かれたようだった。

(かっこいい・・・・・・)

 やっぱり翔くんはすごい。

 そして私は、そんな翔くんが好きなんだ。

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