IS~空を舞う蒼き鋼~   作:ぬっく~

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第12話

クラス対抗戦当日。

 

アリーナ前に張り出された対戦表を見れば、予想通りの組み合わせが記されていた。

 

――一年一組対一年二組。

 

――三組対四組。

 

そして。

 

「……やっぱり、鈴とだね」

 

私は白式改を展開する。

 

蒼い装甲が身体を包み、背後に展開された装備が静かに浮かび上がった。

 

正面には――

 

「待ってたわよ、一夏!」

 

鈴がいる。

 

彼女も専用IS――『甲龍』を纏っていた。

 

その両手には、二本の青竜刀。

 

構えを見るだけで分かる。

 

今日は、鈴も本気だ。

 

『それでは、両者とも指定された開始位置まで移動してください』

 

アナウンスに従い、私たちはそれぞれの位置へ移動する。

 

鈴が青竜刀を構える。

 

私は雪片弐型を展開した。

 

「……」

 

「……」

 

互いに相手を見据える。

 

そして。

 

『試合開始!』

 

ブザーが鳴った瞬間――

 

私たちは同時に地面を蹴った。

 

「チェイサー!!」

 

鈴が叫ぶ。

 

二本の青竜刀のうち、片方が猛烈な勢いで振り下ろされる。

 

「甘いよ!」

 

私は左腕を掲げた。

 

瞬間。

 

六角形の光が展開する。

 

クライン・フィールド。

 

ガキィンッ!

 

青竜刀が弾かれる。

 

その隙を逃さない。

 

「――そこ!」

 

雪片弐型を振り抜く。

 

「くっ!」

 

鈴が身体を捻って回避する。

 

そのまま距離を取り、再び突っ込んでくる。

 

「はああああっ!」

 

ガキン!

 

ガキィン!

 

青竜刀と雪片弐型が何度もぶつかる。

 

一進一退。

 

いや。

 

正確には――

 

私が押している。

 

けれど、決定打が入らない。

 

「やるね、鈴」

 

「当然でしょ!」

 

鈴は二年前。

 

まだ何も知らなかった少女から、わずか二年で中国代表候補生にまで上り詰めた。

 

その努力と実力は本物だ。

 

だからこそ――

 

「雪片弐型……」

 

鈴が距離を取る。

 

「一夏の試合、見せてもらったわ」

 

「……なるほど」

 

私は雪片弐型を構え直す。

 

「じゃあ、雪片の能力は知ってるわけね」

 

「もちろんよ」

 

鈴は青竜刀を構える。

 

「バリアー無効能力。一撃でも受ければ、その時点で勝負が決まる――」

 

そして。

 

「最強の剣ってことでしょ?」

 

「その通り」

 

私は頷く。

 

「でも――」

 

クライン・フィールドを展開する。

 

「鈴は、私にダメージを与えられない」

 

鈴の表情が変わった。

 

蒼き鋼が保有する技術。

 

霧の艦隊の防御技術。

 

クライン・フィールド。

 

これがある限り、通常のIS装備では私を傷つけることすら難しい。

 

「……なら」

 

鈴が笑う。

 

「それを証明してあげる!!」

 

「……!」

 

鈴が一気に加速した。

 

「はああああっ!」

 

青竜刀が突きの構えになる。

 

「そんな攻撃――」

 

私はクライン・フィールドを展開した。

 

「無駄だよ!」

 

ガギィィィンッ!!

 

青竜刀とクライン・フィールドが正面からぶつかる。

 

お互いに一歩も退かない。

 

フィールドが軋む。

 

青竜刀も悲鳴を上げる。

 

「くっ……!」

 

「どうしたの、鈴!」

 

「まだよ……!」

 

鈴は歯を食いしばる。

 

そして。

 

「――龍砲!」

 

甲龍の肩部に浮かんでいた装備が――

 

開く。

 

「最大出力!!」

 

ドンッ!!

 

何かが撃ち出された。

 

目には見えない。

 

けれど。

 

それは真っ直ぐに青竜刀へ命中した。

 

ガシャンッ!!

 

「――――!?」

 

私は目を疑った。

 

クライン・フィールドが――

 

揺らいだ。

 

「まさか……」

 

次の瞬間。

 

バキィィィン!!

 

六角形のフィールドが砕け散った。

 

「な……!?」

 

クライン・フィールドが。

 

突破された。

 

ISの装備程度では突破できないはずの防御が――

 

たった今。

 

破られた。

 

「――もらったぁっ!!」

 

青竜刀が迫る。

 

「くっ!」

 

避けられない。

 

ズガァンッ!!

 

青竜刀が私の左腕へ直撃した。

 

「――――っ!!」

 

衝撃。

 

白式改の左腕装甲が大きく砕ける。

 

そして。

 

露出したのは――

 

何もない空間だった。

 

いや。

 

正確には、袖だけが残っている。

 

その袖から――

 

ぽた。

 

ぽた。

 

赤い雫が落ちる。

 

「……」

 

私は自分の左腕を見る。

 

絶対防御が発動している。

 

それでも。

 

ダメージを受けた。

 

つまり――

 

今の一撃は、ISの絶対防御すら貫いた。

 

「ふー……」

 

鈴が荒い息を吐く。

 

「ふー……ふー……」

 

そして。

 

「どうよ!!」

 

もう一本の青竜刀を私へ向ける。

 

勝ち誇った顔。

 

けれど。

 

私はその顔を見て――

 

ゆっくりと笑った。

 

「……なるほど」

 

これは、面白い。

 

鈴は――

 

私のクライン・フィールドを破った。

 

なら。

 

「これじゃあ……」

 

私は白式改の内部へ手を伸ばす。

 

「本気で行かなくちゃね」

 

「……え?」

 

鈴の表情が変わる。

 

私は、白式改から一つの武装を取り出した。

 

それは剣ではない。

 

ブレードでもない。

 

銃身とブレード。

 

その二つを一体化させた特殊武装。

 

――《ヴァール》。

 

私の、本当の切り札。

 

「……それ、何よ?」

 

「教えてあげる」

 

私は《ヴァール》を構える。

 

「私の本気」

 

「……!」

 

右腕の銀色のアクセサリーが輝いた。

 

「リミッター解除を申請」

 

『認証』

 

「コード――『******』」

 

『リミッターの解除を受託』

 

イオナの声が響く。

 

『《ヴァール》――解放』

 

ヴァァァン――。

 

《ヴァール》から、低い起動音が響いた。

 

「……!」

 

鈴が息を呑む。

 

私は銃口を向ける。

 

そして――

 

引き金を引いた。

 

ドンッ!!

 

「!?」

 

鈴は咄嗟に防御姿勢へ移ろうとした。

 

しかし。

 

「……!」

 

次の瞬間。

 

横へ飛ぶ。

 

弾――いや。

 

攻撃そのものが、鈴の横を通り過ぎた。

 

「……!」

 

私は追撃する。

 

次弾を装填。

 

「いい勘してるね……鈴」

 

「一夏……!」

 

再び狙いを定める。

 

「――!」

 

発射。

 

鈴は回避。

 

さらに発射。

 

また回避。

 

鈴は完全に回避行動へ徹している。

 

「くっ……!」

 

「逃げてばかりじゃ、勝てないよ!」

 

「だったら――!」

 

鈴が叫ぶ。

 

「次はこれよ!!」

 

《ヴァール》の内部から光が集束する。

 

そして。

 

発射されたのは――

 

弾丸ではなかった。

 

「レーザー……!?」

 

巨大な光線が一直線に伸びる。

 

「――!」

 

私はそれを操作する。

 

直線だったレーザーが、無理やり軌道を変えた。

 

鈴の逃げた方向へ。

 

「くっ!!」

 

鈴がさらに加速する。

 

背後から迫る巨大なレーザー。

 

「なら……!」

 

鈴が振り返る。

 

私がいるはずの方向へ視線を向け――

 

「……え?」

 

そこに。

 

私はいなかった。

 

「一夏……!?」

 

どこへ消えた?

 

その瞬間。

 

「――ガチャ」

 

鈴の耳に、小さな金属音が届いた。

 

「……!」

 

鈴が振り返る。

 

そこには。

 

いつの間にか目の前まで接近していた私。

 

そして。

 

《ヴァール》を構えている。

 

「……一夏」

 

私は笑った。

 

「楽しかったよ、鈴」

 

「――っ!」

 

トリガーを引く。

 

ドンッ!!

 

放たれた攻撃が、鈴の腹部を正確に捉えた。

 

「ぐっ――!?」

 

甲龍ごと吹き飛ばされる。

 

鈴の身体が猛烈な勢いで後方へ飛び――

 

ドガァァン!!

 

アリーナの壁へ激突した。

 

「……」

 

静寂。

 

数秒後。

 

『試合終了』

 

『勝者――一年一組、織斑一夏』

 

アナウンスが響き渡る。

 

同時に。

 

甲龍のシールドエネルギーが――

 

ゼロになった。

 

試合終了を告げるブザーが、アリーナ全体へ響き渡る。

 

私はゆっくりと《ヴァール》を下ろした。

 

「……鈴」

 

壁際を見る。

 

そこには、敗北した幼馴染がいた。

 

けれど。

 

その顔に、悔しさだけはなかった。

 

むしろ――

 

どこか楽しそうだった。

 

まるで。

 

次の戦いを、もう考えているような顔だった。

 




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