IS~空を舞う蒼き鋼~   作:ぬっく~

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第15話

問題なく、全クラスの試合が終了した。

 

そして――

 

次の試合が始まろうとしていた。

 

最初の試合は、一組対四組。

 

つまり――

 

私と簪の試合だ。

 

アリーナ中央。

 

私は白式改を展開し、簪も打鉄弐式改を展開している。

 

互いに武器を構え、試合開始のブザーを待つ。

 

「本気で行くよ。一夏」

 

簪が静かに言った。

 

「来なさい」

 

私は雪片弐型を構える。

 

「全力で応えてあげる」

 

互いに、自分が最も使いやすい武器を手に取る。

 

そして――

 

ピィィィィィィッ!!

 

試合開始のブザーが鳴り響いた。

 

「「はぁああああああっ!!」」

 

同時に地面を蹴る。

 

――瞬時加速《イグニッション・ブースト》。

 

一瞬で距離が消えた。

 

ガキィィィン!!

 

雪片弐型と夢現が激突する。

 

「っ!」

 

簪が歯を食いしばる。

 

薙刀を扱う簪にとって、今の私の猛攻を受け続けるのは容易ではない。

 

一振り。

 

そう見えた。

 

しかし――

 

実際には三回。

 

私の剣は、常人の目では一度振ったようにしか見えない速度で、三度も振り抜かれていた。

 

「くっ……!」

 

簪は強引に距離を取る。

 

そして態勢を立て直すと、すぐさま反撃。

 

「――はぁっ!」

 

瞬時加速《イグニッション・ブースト》。

 

簪が突っ込んでくる。

 

「来る!」

 

私も同時に加速した。

 

「「はぁああああああ!!」」

 

再び、二機が激突する。

 

激突。

 

離脱。

 

再加速。

 

そしてまた激突。

 

二人の動きは、観客席からでは完全に追えない領域に入っていた。

 

「な、何が起きてるの!?」

 

「速すぎる!」

 

観客たちがざわめく。

 

だが、私たちはそんなことを気にしている余裕などない。

 

一瞬でも判断を誤れば、負ける。

 

その時だった。

 

「――山嵐!!」

 

簪が叫んだ。

 

打鉄弐式改の肩部ウイング・スラスター。

 

そこに取り付けられていた六枚の板が左右へスライドする。

 

ガコンッ!

 

内部から姿を現したのは――

 

八連装ミサイルランチャー。

 

それが六箇所。

 

合計四十八発。

 

「いっけぇぇぇっ!!」

 

ドドドドドドドドドッ!!

 

凄まじい轟音とともに、無数のミサイルが一斉に発射された。

 

「――多い!」

 

四十八発ものミサイルが、空を埋め尽くす。

 

私は迫り来るミサイルを見つめ――

 

「クライン・フィールド!」

 

展開された不可視の障壁が、ミサイルを捕らえる。

 

そして――

 

ギギギギギギッ!!

 

まるで巨大な手に握り潰されたように、ミサイルが次々と圧壊していく。

 

爆発。

 

爆発。

 

爆発。

 

アリーナの空を爆炎が埋め尽くした。

 

「……ふぅ」

 

私は息を吐く。

 

だが――

 

「クライン・フィールドの消費率、三〇%……」

 

イオナから報告が入る。

 

「シールドエネルギーは?」

 

『残り二五八』

 

「……」

 

思った以上に減っている。

 

瞬時加速《イグニッション・ブースト》を多用した影響だ。

 

もちろん、簪も同じだろう。

 

このまま長引かせれば、お互いに不利になる。

 

「……そろそろ、決着をつけたいわね」

 

向こうを見る。

 

簪も同じことを考えているようだった。

 

「一夏」

 

「簪」

 

目が合う。

 

「この一撃で終わりにしましょう」

 

「うん……」

 

私は雪片弐型を構えた。

 

簪も夢現を構える。

 

互いに動かない。

 

静寂がアリーナを支配する。

 

観客たちも息を呑んでいた。

 

そして――

 

「「――行くよ!!」」

 

再び。

 

瞬時加速《イグニッション・ブースト》。

 

二人の距離が一瞬で消える。

 

「「はぁああああああ!!」」

 

互いの武器がぶつかる。

 

――その寸前。

 

ズドオオオオオオオオオオオンッ!!

 

轟音。

 

アリーナ全体が震えた。

 

「っ!?」

 

私たちの間に、強制的にクライン・フィールドが展開される。

 

そして――

 

その向こう側から。

 

一本の光が飛来した。

 

「――何!?」

 

セシリアのレーザーとは、比較にならない。

 

巨大なレーザーがアリーナを薙ぎ払う。

 

「くっ!」

 

私は咄嗟に回避する。

 

「簪!」

 

「分かってる!」

 

同時に距離を取った。

 

見ると、アリーナを覆っていた遮断シールドが――

 

破られている。

 

「そんな……」

 

誰かが、外部から攻撃してきた。

 

私は攻撃の飛んできた方向を見る。

 

そこにいたのは――

 

一機のIS。

 

全身を装甲で覆った、漆黒のIS。

 

顔すら見えない。

 

ただ、こちらを見ている。

 

『織斑さん! 更識さん!』

 

山田先生の声が、プライベート・チャンネルから響く。

 

『今すぐアリーナから脱出してください!』

 

「そうしたいところですが……」

 

私は敵ISを見た。

 

「――そうもいかないみたいです」

 

『え?』

 

イオナから報告が入る。

 

『敵ISに捕捉されています』

 

同時に。

 

『こっちも捕捉されているわ』

 

タカオからも通信が入る。

 

逃げることはできない。

 

敵は明確にこちらを狙っている。

 

そして――

 

戦う意思も満々だ。

 

「……簪」

 

「うん」

 

「もしかすると――アレを使うかもしれないから」

 

簪が一瞬だけ目を見開く。

 

そして頷いた。

 

「そうだよね」

 

「……」

 

「うん。分かった」

 

次の瞬間。

 

敵ISが再び攻撃してきた。

 

「来る!」

 

私たちは同時に飛び出した。

 

「ヒュウガ」

 

観客席。

 

天羽さんは、パニックになっている会場を見ながら通信を繋ぐ。

 

「アレは使えるの?」

 

『簪の方は問題ない』

 

ヒュウガの声が返ってくる。

 

『ただ、一夏の方がちょっとまずいね』

 

「やっぱり?」

 

『簪の方には元々タカオがいるからね』

 

ヒュウガが説明する。

 

『でも一夏の方は後付けだから、まだ完全じゃない』

 

「……一発撃てればいいわ」

 

『そのくらいなら大丈夫だけど……』

 

「なら、使わせるよ」

 

『了解』

 

観客席には緊急時用の防壁が展開され、アリーナの様子が見えなくなる。

 

天羽さんはプライベート・チャンネルを開く。

 

『一夏ちゃん、簪ちゃん。聞こえる?』

 

『聞こえます』

 

『聞こえてます』

 

『許可が下りたから――アレを使いなさい』

 

『『分かりました』』

 

通信は、それだけだった。

 

そして――

 

ズドオオオオオオオオオオオンッ!!

 

防壁の向こうから、凄まじい轟音が響き渡った。

 

「許可が下りたし――始めるよ」

 

私は白式改を見た。

 

「イオナ」

 

『了解』

 

白式改のシステムが一斉に切り替わる。

 

『《ヴァール》を展開』

 

次の瞬間。

 

私の手元に、一振りの武装が展開された。

 

――《ヴァール》。

 

通常の剣でもない。

 

通常の銃でもない。

 

その両方を思わせる特殊兵装。

 

「オールリミッターを解除」

 

『了解』

 

「……」

 

白式改の出力が跳ね上がる。

 

『《超重力砲》の発動を確認』

 

ヴァールが変形する。

 

銃口が展開される。

 

それに合わせるように、簪の打鉄弐式改も変化していく。

 

『《超重力砲》、発射準備完了』

 

敵ISがこちらを見る。

 

そして――

 

動きが止まった。

 

「ロック完了」

 

逃げられない。

 

避けられない。

 

二つの超重力砲が、敵ISを完全に捉えている。

 

「「私たちの試合に――」」

 

私と簪の声が重なる。

 

「「水を差した罪よ!!」」

 

発射。

 

――――ズドォォォォォォォンッ!!

 

二つの超重力砲が同時に放たれた。

 

巨大な力が敵ISを飲み込む。

 

「――――ッ!!」

 

敵ISは何もできない。

 

防御することも。

 

逃げることも。

 

反撃することも。

 

できない。

 

次の瞬間。

 

敵ISは――

 

光の中へ消滅した。

 

「…………」

 

私はヴァールを見る。

 

「……終わった」

 

『……一夏』

 

イオナの声が少しだけ困ったように響く。

 

「どうしたの?」

 

『《ヴァール》、使用不能』

 

「……でしょうね」

 

一発撃っただけ。

 

それだけでヴァールは完全に壊れていた。

 

「ヒュウガの超重力砲だから、威力があるわね」

 

『そういう問題ではないと思うけど……』

 

私は苦笑する。

 

敵ISが消滅したことで、ようやく教員たちがアリーナへと入ってくる。

 

そして――

 

クラス対抗戦は、謎のISによる襲撃事件を受けて、中止となった。

 

その日の夜。

 

寮の部屋。

 

私はベッドに寝転がりながら、雑誌を眺めていた。

 

「また、ヒュウガにお世話になるわね」

 

『ヴァールのこともだけど』

 

イオナが答える。

 

『一度、本艦へ戻る必要がある』

 

「……そうなるよね」

 

私はため息を吐く。

 

ヴァールの修復。

 

白式改の調整。

 

そして――

 

今日、襲撃してきた謎のIS。

 

考えなければならないことは、いくらでもある。

 

だけど。

 

今はもう――

 

「……考えるの、疲れた」

 

『同感』

 

「寝よう」

 

『うん』

 

今日一日の疲労が、一気に押し寄せてくる。

 

私は雑誌を閉じた。

 

そして、私たちは早々に眠りについた。

 

――この時の私は、まだ知らなかった。

 

今日の襲撃が。

 

これから始まる、大きな戦いの――

 

最初の一歩だったことを。

 

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