IS~空を舞う蒼き鋼~   作:ぬっく~

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ニコニコにイラストを投稿したぜ。

たまにはいいかもな……


第19話

 ――バチィッ!!

 

「――っ!?」

 

 突然。

 

 シュヴァルツェア・レーゲンから、凄まじい電撃が放たれた。

 

「何よ!?」

 

 私は咄嗟にクライン・フィールドを展開する。

 

 だが――。

 

 強制拘束に回していたクライン・フィールドが、電撃を受けた瞬間に防御モードへと切り替わった。

 

 反動で、私は大きく弾き飛ばされる。

 

「くっ……!」

 

 空中で姿勢を立て直し、私は再びラウラの方を見る。

 

「…………なに、これ」

 

 そこにあったのは、もうシュヴァルツェア・レーゲンと呼べるものではなかった。

 

 装甲が赤熱し、溶け出している。

 

 金属がまるで液体のように崩れ、どろどろと形を変えていく。

 

 そして、その中心にいたラウラまでもが――。

 

「ラウラ!?」

 

 溶けた装甲に飲み込まれていく。

 

 彼女の姿が黒い機体の内部へ沈んでいく。

 

 それを見た瞬間。

 

 アリーナ中に非常警報が鳴り響いた。

 

『試合中止。全生徒は速やかに避難をしてください』

 

『繰り返します。試合中止――』

 

「厄介な物を持ち込んできましたわね」

 

「天羽さん!?」

 

 振り向く。

 

 観客席にいたはずの天羽さんが、いつの間にか私たちの後ろまで来ていた。

 

 その後ろからは、IS学園の職員たちが続々とアリーナへ入ってくる。

 

「危険です! すぐに避難を――」

 

「いえ」

 

 天羽さんは、職員の言葉を遮った。

 

「大丈夫でしょう」

 

「……え?」

 

 天羽さんが指差す。

 

 私はそちらを見る。

 

 そして――絶句した。

 

「……嘘でしょ」

 

 そこに立っていたのは。

 

 黒い装甲に身を包んだ異形。

 

 だが、その姿には見覚えがあった。

 

 かつて千冬姉が使っていたIS。

 

「……暮桜」

 

 シュヴァルツェア・レーゲンだったものは。

 

 千冬姉の専用機――暮桜へと姿を変えていた。

 

「VTシステム……」

 

 簪が呟く。

 

「VTシステム?」

 

「うん……違法システム」

 

「…………」

 

 私は呆れて、思わずため息を吐いた。

 

「……霧に対抗するためでしょうけど」

 

 雪片弐型を構える。

 

「ここまで馬鹿なことをするとは思わなかったわ」

 

 人間が霧に対抗する。

 

 それ自体は別に構わない。

 

 だけど。

 

 そのために違法なシステムを作り、挙句の果てに人間をISそのものに取り込むなんて。

 

「面倒事を増やさないでちょうだいよ……」

 

 このまま放置しても、いずれ教員たちが処理するだろう。

 

 ただし――。

 

 その場合。

 

 中にいるラウラごと処理される可能性がある。

 

「…………」

 

 それは、さすがに寝覚めが悪い。

 

「天羽さん」

 

「なに?」

 

「許可は下りましたか?」

 

「もう少し待ちなさい」

 

 天羽さんはそう言うと、どこかへ通信を繋いだ。

 

 数秒。

 

 短いやり取りを終える。

 

 そして――。

 

「……いいわよ」

 

 天羽さんは親指を立てた。

 

「許可は取ったわ」

 

「了解」

 

 私は雪片弐型を握り直す。

 

「では――」

 

 踏み込む。

 

「終わらせる」

 

 暮桜がこちらへ向かってくる。

 

 その動きは、人間が操っているとは思えないほど機械的だった。

 

 私はクライン・フィールドを展開。

 

 両腕。

 

 両足。

 

 四肢を完全に固定する。

 

「――っ!」

 

 暮桜が激しくもがく。

 

 しかし、動かない。

 

 クライン・フィールドは、単なる防御壁ではない。

 

 使い方次第では、対象そのものをその場へ縫い付けることもできる。

 

「悪いけど――」

 

 私は雪片弐型を構えた。

 

「少し眠ってて」

 

 単一能力――零落白夜。

 

 最大出力。

 

 雪片弐型が、白い光を纏う。

 

 そして。

 

 振り下ろす。

 

 ――ザンッ!!

 

 暮桜の装甲が、一刀のもとに切り裂かれた。

 

「…………!」

 

 次の瞬間。

 

 崩れ落ちる機体の中から、一人の少女が飛び出してくる。

 

「ラウラ!」

 

 私は咄嗟に手を伸ばした。

 

 倒れ込んできたラウラの身体を、そのまま受け止める。

 

「…………」

 

 ラウラは意識を失っていた。

 

 だが――。

 

 その顔には。

 

「……本当に、いい笑顔で気を失っちゃって」

 

 私は小さく笑う。

 

 そして、ようやく緊張が解けた。

 

「……はぁ」

 

 胸を撫で下ろす。

 

 どうやら、生きている。

 

 それだけで十分だった。

 

              ◇

 

 同じ頃。

 

 フランス――サン=マロ。

 

「デュノア社の見取り図は?」

 

「ここにある」

 

 ヤマトから調査の許可を得たズイカクは、402からデュノア社の見取り図を受け取った。

 

 人気のない海岸。

 

 ズイカクは釣り竿を片手に持ちながら、もう片方の手で見取り図を広げる。

 

「ここがメインコンピュータか……」

 

 施設内部の構造を確認し、赤いペンで印をつける。

 

「で、こっちが社長の自宅」

 

 もう一枚の見取り図を広げる。

 

「この敷地の構造から考えると――この辺りか?」

 

「ああ」

 

 402が頷く。

 

「そこだけ監視カメラが異常に多い。間違いないだろう」

 

「なるほどな」

 

 ズイカクは社長宅の見取り図にも赤い丸をつける。

 

「ヤマトからは、正体がばれなければ好きにしていいと言われている」

 

「それで?」

 

「決行は夜だな」

 

 ズイカクは402を見る。

 

「というわけだから、402は本社の方をよろしく」

 

「何故、私までやらなければならない」

 

「同時にやった方が警備を分散させられるだろ?」

 

「…………」

 

「どっかの映画で言ってた」

 

「映画を理由にするな」

 

「まあまあ」

 

 ズイカクは笑う。

 

「同時に動いた方が面白いだろ?」

 

「……分かった」

 

 402は渋々了承する。

 

「ただし、無理だと思ったら引き上げるからな」

 

「それでいいよ」

 

 ズイカクは見取り図を402へ渡す。

 

「その時は、その時で連絡してくれ」

 

「了解した」

 

 402は見取り図を持って、その場を離れていく。

 

 ズイカクはそれを見送ると――。

 

「……さて」

 

 何事もなかったように釣り竿を握り直した。

 

「もう少し釣るか」

 

 海岸には、穏やかな波の音だけが響いていた。

 

 だが。

 

 夜になれば――。

 

 フランスのデュノア社を巡り、霧の艦隊が動き出す。

 

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