『
真っ白な空間。どこまでも続く虚無の世界に、一夏はいた。
イオナの呼び声が聞こえる。
(早く……。早く……!!)
そしてまた、イオナの声が聞こえる。
『
その声は、何処か温もりに満ちている。
『
そんな事言われたら―――。
「起きない訳にはいかいね!」
私は全身に纏わりつく物を払う。
◇
「!? 南方から何かが福音戦闘地点へと接近中!!」
「なんだ!?」
「こ、これは!? ISの速度ではあり得ない加速です! でも、これは……!?」
真耶が叫ぶ隣で、教員は10パネルのキーボードに指を走らせていた。
「
壁を埋め尽くす巨大な電子壁画には、異様なものが映し出された。
「なにかの
それは、言うならば『
白い花弁が包み込んでいる、
真っ白な六枚の外核からは、螺旋状のエネルギー片が散らばっている。
それはまるで、雪の欠片のようで―――。
「識別コード、出ました! 『ホワイト・テイル』―――GX00-Iona!? びゃ『白式改』と判別可能! バイタル・サイン、織斑くんです!」
中央モニターには、福音のいる地点に到達し、役目を果たした外部装甲が四散する光景が映し出されていた。
そして、輝くスノウ・ホワイトのエネルギー翼を広げたのは、一夏だった。
その身に纏っているのは、『白式改』の
そして、一夏の見た目にも変化が表れていた。
額、頬から輝く紋章があり、髪も黒から水色へと変わっていたのだ。
◇
「足止めありがとう……箒」
「一夏……なのか? 一体その姿は……なんだ」
箒は変わり果てた一夏の姿を見て、戸惑っていた。
「説明は後にして」
福音は一夏を見るやいなか、脅威度を上げて来たのだ。
『《
両腕を左右一杯に広げ、さらに翼も自身から見て外側へと向ける。―――刹那、眩い程の光が爆ぜ、エネルギー弾の一斉射撃が始まった。
「《クラインフィールド》を展開―――敵の殲滅を開始する」
一夏を中心にクラインフィールドが形成され、《ホワイト・テイル》が羽ばたくと、その姿が霞のように消え去った。
次の瞬間、福音の頭上に一夏が現れ、手にしていたヴァールを振り抜く。
「!?」
間一髪。福音は一夏のヴァールを避けた。
福音も一夏の先程の速度には驚きを隠せなかったようだ。
「オマエヲ……コワス!!」
《ホワイト・テイル》のエネルギー・ウイングがさらに羽とばたき、一瞬にして福音の前にへと一夏は移動した。
福音は一夏から距離を取ろうとするが、一夏がそれをさせず、ずっと張り付く。一夏の猛攻は止まなかった。大剣クラスのヴァールを片手で左から、上から、下から、その場に残像を残すような速度で剣撃を繰り出す。そして、一夏は福音の片翼を奪う。
「シズメェエエエ!!」
片側だけの翼になりながら、それでも福音は一度崩した姿勢をすぐに立て直し、一夏の左腕へと回し蹴りを叩き込む。脚部スラスターで加速されたはずのそれは、クラインフィールドに防がれ、逆に福音の脚部を破壊してしまった。
「サヨウナラ」
一夏は福音の腹部にヴァールを押し付ける。そして、無慈悲にトリガーを引いた。
バラララ!!
零距離からの連射。
福音のシールドエネルギーをガッツリと奪い、崩れるように海面へと墜ちていった。
「はっ、はぁっ、はぁっ……!」
「無事か!?」
見ていることしか出来なかった箒の声を聞きながら、一夏は乱れた呼吸をゆっくりと落ち着けていく。
「ぐはっ!? ゲホッ、ゲホッ。……やっぱり、耐えきれなかったか」
一夏は口の中から血を吐く。
福音との戦闘で身体が追い付けず、一夏は内臓にダメージを負ってしまった。
(これで……)
一夏は「勝った」と思った瞬間、海面が強烈な光の珠によって吹き飛んだ。
「!?」
球状に蒸発した海の中心に青い雷を纏った『
「これは……!?」
「……いい加減にしてほしいよ」
無機質なバイザーに追われた顔からは何の表情も読み取れない。けれど、そこには確かな敵意を一夏は感じ取った。
『キアアアアアア……!!』
まるで獣の咆哮のような声を発し、福音は一夏へと飛びかかる。