第二回モンド・グロッソは千冬姉が優勝したが、何故かその後現役を引退してしまった。
私の捜索にドイツ側の協力の貸で千冬姉は一年間ドイツで教官を務めるとこになる。
帰国してからも私の周りが少し変わった。
鈴、弾、蘭、数馬……そこまでは変わらないのだが、ここにもう一人。
「何でアンタがいるのよ!」
「あら? 私がいてはいけないのですか?」
そう、天羽琴乃が新しく私たちの中に入って来たのだ。
鈴は何故か天羽さんの事を毛嫌いしている。大方予想は分かっているけれど、ここではあえて言わないでおこう。
話を戻すが今まで関わり合い無かった私たちに天羽さんが入って来たのだ。
「まあまあ……」
「む……一夏の顔に免じて今日は見逃してあげるわ!」
「それ、負けセリフだぞ。鈴」
弾は鈴のローキックを腹に喰らう。確かに今のは弾が悪い。その風景は私たちにとってはいつものことであるが、天羽さんにとってはこれがどう見えるのかが心配で私は天羽さんの方に振り向く。だが、その必要はなかった。
微笑む形で天羽さんは鈴と弾の戯れを眺めていた。
「天羽さんはどうして私たちの中に入って来たのですか?」
「う~ん。そうですね……」
「天羽さんには……ほら」
私はちらっと後ろに視線を向けると、数人の女子たちがグループを作って小声で何か言っていた。
そのグループはいつも天羽さんの周りにいた女子たちなのだ。
「ああ、あまり気にしていないですから」
「で、でも……」
「今の私が興味があるのは一夏さんですから」
「え……?」
そう言って天羽さんは私の顔に両手を置く。天羽さんは私より身長が高いので丁度私が下から上を見る片になった。それを見た女子達は……
「きゃああああああ!!」
女子達の叫び声が教室の中で響く。中にはハンカチを食いちぎる勢いで泣きながら引っ張っている者が数名いた。
「お、お姉様が……お姉様がぁ!!」
「あんな地味な奴にぃ!!」
「なんであいつなのよぉ!!」
完全に他の女子達を敵に回してしまっただろう。
夜道は気を付けよう。まじで後ろからサクと刺されかねないだろうし……。
◇
帰り道も何故か天羽さんも一緒だった。
弾と数馬はいつも以上にテンションが上がり、蘭も嬉しそうだった。
まあ、鈴は相変わらず天羽さんを敵視しているが私がいるので大人しくしている。
「あっ! 俺たちはここまでだ」
弾の一言で鈴と蘭、数馬は別の道へと別れる。
「一夏、またな」
「う、うん……またね、弾」
私は弾たちを見送る。
弾たちの姿が見えなくなったことを確認するかのように天羽さんが私に話しかけてくる。
「一夏ちゃんは今日は一人?」
「えっ? う、うん……そうだよ」
千冬姉が今ドイツにいるので私は家には誰もいない。一人で食べることが多いので弾や鈴の家でよく食べに行っていた。今日もそのつもりだったのだが天羽さんの一言でそれが大きく変わった。
「じゃあ、一緒に食べに行きませんか?」
「え……?」
私は天羽さんの一言が一瞬、理解出来なかった。
少しして天羽さんが私と一緒に食べに行かないかだとわかり、私はどう返しらいいか分からなかった。
天羽さんはそんな私を見て笑い、何処かに電話を掛ける。
「少ししたら迎えが来るから」
そう言って数分後、一台の車が私たちの前に止まった。
天羽はお構いなくその車に乗り込む。
「どうしたの?」
「え、え、え……」
驚きの連発に私の頭は追い付かなかった。
仕方ないと天羽は一夏を無理矢理乗車させる。
「あ、あの……」
「着いてからのお楽しみだよ」
車が走り出してか数分で人通りの多い街に出て来たので私は天羽さんに目的地を聞くも、お楽しみとしか答えてくれなかった。
そう言って車はとある建物の前に止まった。
「ここって……」
「こっちだよ」
連れてこられた先が何とあの“テレシア”だったのだ。
私が驚いている中、天羽さんはせっせと先に進む。
私と天羽さんが向かった先に待っていたのは、複数のドレスが並んだ場所だった。
「さて、おめかししましょうか」
「え?」
ここに来ても私は驚く。と言うより今日で何回驚いたことだか……。
そう言っている内に天羽さんは何着かドレスを持って来て私に試着させる。
「ん~。これも悪くないわね……」
様々なドレスを試着させ、ようやく決まる。
「うん。これだね♪」
選ばれたドレスは青のドレスで某作品の青セイバーが着ているのと同じものだった。
サテンドレスと言うらしく背中と肩部が空いたウエディングドレスの近いドレスを私は着ている。
天羽さんは着なれた手つきでドレスを選ぶ。
選ばれたドレスは私と同じくウエディングドレスの近いドレスで白だった。
「さあ、行きましょうか♪」
「う、うん……」
私は天羽さんに引っ張られ、テレシアの最上階に連れてかれた。
最上階には誰もいない。あるのは一つだけある席だった。
私たちはその席に座り、料理がくるを待つが……
「あ、あの……」
「ん?」
「ここって、あの……テレシアですよね……?」
そう、ここテレシアはなんと豪華一流ホテルで有名な所なのだ。
しかも予約がいっぱいで今すぐに席を取るなんてとても無理なホテルに天羽さんは私を連れて来たのだ。
「そうだよ♪ ここのオーナーは私の仲間だから無理言って席を取ったのよ」
「は、はぁ~」
もう天羽さんの言う事になれてしまい、私は驚きを感じなかった。