IS~空を舞う蒼き鋼~   作:ぬっく~

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第32話

日が沈みかけた第一アリーナに立つ二人。

 

「構えなさい」

 

簪はどうとも言えない気持ちだった。

姉を超える為に、今まで生きて来た。そして、それが今達成される。

 

(予想外な事態だったけど、ようやく夢が叶う……)

 

簪は腕にある蒼い腕輪に触れ、IS〈打鉄弐式改〉を展開させ、楯無もIS〈ミステリアス・レイディ〉を展開する。

 

「誰が何と言おうとも私が全てを終わらせる。だから、私は貴女の夢を壊す」

 

「だから、私は姉さんの目的を潰します」

 

もう、言葉は要らなかった。

勝者が全てを手に入れ、敗者は全てを失う……最後の戦いが幕を開ける。

 

 

 

 

「っ!」

 

戦いは10分以上続き、簪は押され始めた。

クラインフィールドで楯無のランスを弾き《夢現》を振るうが、楯無はランスの柄で防ぐ。

 

(やっぱり、強い!)

 

伊達に全学年最強を名乗っているだけあると簪は痛感した。

だけど、簪は負けるつもりはコレぽっちもなく。

 

「やっぱり、お姉ちゃんは強いや……」

 

「ようやく諦めてくれた? だったら―――」

 

「でも―――やっぱり、負けるつもりはないよ」

 

今の自分では勝てないだろう。

だったら、その上の階に行けばいいだけの事なのだから。

 

「《新たな世代への進化(リミット・オーバー・ブレイク)》……起動」

 

「っ!?」

 

簪は臨海学校の時、一夏が使用したシステムを起動させる。

新たな世代への進化(リミット・オーバー・ブレイク)

ISを強制的に形態(シフト)を上げさせる物だ。もちろん、このシステムの起動には代償は存在する。

簪もそれは承知の上であり、楯無に勝ちたいという思いで、この賭けに出た。

 

 

 

 

「あれは……」

 

IS学園に戻って来た一夏は天に上る光の柱を目にする。

あれは《新たな世代への進化(リミット・オーバー・ブレイク)》の起動に起こる物だと直ぐに解り、一夏は駆け出す。

新たな世代への進化(リミット・オーバー・ブレイク)》を搭載しているISは、この世に三機しか存在しない。

一夏の〈白式改〉は修理の為に今はなく、マドカはこの学園に来ている筈もなく、残るのは簪一人しか存在しなかった。

 

「緊急事態でしか使用してはいけない物を何で……」

 

新たな世代への進化(リミット・オーバー・ブレイク)》で強制的に形態を上げるとIS自体に大きな負荷がかかる。その為、緊急事態の時でしか、そのシステムを起動させることは許されていない。

そして、簪はそれを起動させた。

 

「一体何が―――!? これは……」

 

一夏がアリーナに到着すると、そこには―――無双する簪の姿があった。

 

 

 

 

強制的に形態変化した〈打鉄弐式改〉があった。

見た目は特に変わった様子はなく、変わった所と言えば存在していた《山嵐》、《夢現》がなくなっており。

 

「形成―――203mmSKC連装砲」

 

代わりに、203mmSKC連装砲を無か形成していた。

撃ち込まる砲弾を楯無は、アクア・ナノマシンで弾くが、簪は次から次へと装備を形成する。

 

「形成―――610mm四連装魚雷」

 

「ツ!!」

 

次第に立場が逆転する。

 

(ISのシステムポテンシャルが違い過ぎる!!)

 

第一形態の〈ミステリアス・レイディ〉では、第三形態の〈打鉄弐式改〉の処理速度が違い過ぎて、戦闘経験で補うほか楯無にはなかった。

 

(勝つには、この手を使うしかないか!)

 

楯無は残りのシールドエネルギーを見て、切り札を切るしかないと考える。

ランスに全てのナノマシンを集め、簪も大きいのが来ることを察した。

 

「クラインフィールドでは相殺出来ない。なら……形成」

 

今まで形成した装備をナノマテリアルに戻し、新たに作り出す。

 

「タカオ!!」

 

ナノマテリアルで出来た装備は急速に形成を始め、一隻の戦艦を作り出す。

形成されたのは、蒼い高雄型重巡洋艦一番艦の高雄だった。

 

「超重砲!!」

 

高雄が変形し、超重砲の発射形態になり、チャージを開始する。

その光景を見ていた一夏も、流石にこれはまずいと気付く。

ISに装備されている超重砲は威力が本来の物よりかなり抑えられている。しかし、今の簪が形成した超重砲からは本来の威力を誇っていた。

 

簪ちゃん! 撃ってはダメ!!

 

ミストルティンの槍!!

 

発射!!

 

お互いに一撃必殺が放たれようとし、一夏は叫ぶが既に遅かった。しかし、その言葉は届かないと―――思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【それはダメよ。カンザシ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どう言うこと……」

 

既に止めることが出来ない状況にあったにもかかわらず、二人の攻撃が完全に消失した。

いや、違う。I()S()()()()()()()()()()()

形を保てなくなったタカオは崩壊し、飛行出来なくなった楯無は墜落する。

 

「一体、何が起こったの……」

 

一夏は状況が飲み込めなかった。

お互いに如何やら無事だったようで、再びISを起動させようとするが、またったく起動することはなかった。

結局、試合続行不可能となり、この戦いは終わりを迎える。

 

 

 

 

「アドミラリティ・コード」

 

天羽は先程の信号の正体を知っていた。

長年探し続けていた物の一端が姿を現したのだ。

 

「再び始まるのですね。人類と霧との戦争が……」

 

そして、その信号は全てのメンタルモデルに発せられていた。

その正体に気付いた者もおれば、知らない者もよっぽどのことであることぐらいは察する。

 

「一度、招集する必要がありますね」

 

そう言って、天羽は部屋を出て行ってしまう。

楯無と簪の戦いが終了したと同時に全世界にあるISが全て停止したことは、のちに全世界に報道された。

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