久々にホーム整理をしていたら、無償に書きたくなり、この度、新話を投稿します。
後、今までに投稿した話も、一部書き直しも行いました。
気まぐれ投稿ですみませんが、見ていってください。
――それから、さらに数日が過ぎた。
世界中で停止していたISは、ついに完全な復旧を果たした。
原因については、未だに明確な答えが出ていない。
しかし、少なくともISそのものに異常はなくなった。
IS学園でも、停止していた訓練用ISの再起動が確認され、ようやく通常の授業が再開されることとなった。
実技授業が戻ってきたことで、生徒たちは大いに喜んだ。
……もっとも。
「やっぱりISに乗れるっていいわね!」
「ここ最近ずっと座学だったからなぁ」
「もうテストは勘弁してほしい……」
先日の抜き打ちテストを思い出し、苦い顔をする生徒も多かった。
そして――。
日常が戻ってきたことで、もう一つのイベントも近づいていた。
――学園祭。
IS学園の学園祭は、一般的な学校とは少し違う。
世界各国から注目される特殊な学校ということもあり、完全な一般公開ではない。
基本的には招待制。
そのため、生徒たちは自分が招待したい人物を一人だけ、学園祭へ招くことができる。
そんな学園祭を目前に控え――。
「では、そろそろクラスの出し物を決めるぞ」
教室では、クラス委員を中心に話し合いが始まっていた。
「何かやりたいものがある人!」
「はい!」
「じゃあ、セシリア」
「劇などはいかがでしょう?」
「うーん……準備が大変じゃない?」
「では喫茶店などは?」
「普通すぎるだろ」
「お化け屋敷!」
「それも定番ね」
次々と意見が飛び交う。
一夏は頬杖をつきながら、その様子を眺めていた。
(学園祭かぁ……)
こういう普通の学校行事は、何となく新鮮だった。
霧の艦艇たちと関わるようになってからというもの、戦闘や事件に巻き込まれることの方が多かった。
だからこそ。
こうした何気ない日常が、少しだけ嬉しい。
そんなことを考えていると――。
「ならば、メイド喫茶はどうだ?」
「……え?」
唐突な提案だった。
声の主は――。
「ラウラ?」
ラウラ・ボーデヴィッヒ。
彼女は真剣な顔で腕を組んでいた。
「メイド喫茶だ」
「なんで!?」
一夏が思わず聞き返す。
「何か問題があるのか?」
「いや、問題というか……」
思わずラウラを見る。
軍人として育てられた彼女が、まさかメイド喫茶を提案するとは思わなかった。
「以前、資料で見たことがある」
「資料……?」
「客に飲食物を提供し、店員はメイド服を着用する。非常に合理的な催しだ」
「どこが!?」
教室に笑いが起こる。
しかし――。
「面白そうじゃない?」
「普通の喫茶店より楽しそう!」
「メイド服なら衣装も統一できるし」
意外にも賛成意見が増えていく。
そして。
「多数決で決めよう」
結果――。
クラスの出し物は。
――メイド喫茶に決定した。
◇
「……メイド喫茶?」
職員室。
クラスの代表として報告に来た一夏は、担任である千冬の前に立っていた。
「はい。クラスで話し合った結果、そうなりました」
「誰の提案だ?」
「えっと……」
一夏は少しだけ言いにくそうにする。
「ラウラです」
「…………」
千冬の動きが止まった。
「……ラウラ?」
「はい」
「……あのラウラ・ボーデヴィッヒが?」
「そうです」
「…………」
千冬はしばらく黙っていた。
そして――。
「……そうか」
何とも言えない表情になった。
千冬はラウラの過去を知っている。
幼い頃から軍事施設で育てられ、兵士としての能力を求められてきた少女。
一般的な学校生活とは、ほとんど無縁だった。
そんなラウラが。
自分から学園祭の出し物を提案した。
しかも――メイド喫茶。
「……ふっ」
「千冬姉?」
「いや、何でもない」
千冬は僅かに口元を緩める。
「好きにやらせてやれ」
「はい」
「ただし、騒ぎを起こすなよ」
「分かってます」
報告を終え、一夏は職員室を後にした。
その背中を見送りながら――。
「……変わったものだな」
千冬は小さく呟いた。
かつて戦うことしか知らなかった少女が。
今では学園祭でメイド喫茶をやろうとしている。
それはきっと――。
ラウラが少しずつ、普通の少女としての時間を取り戻している証なのかもしれない。
◇
報告を終えた一夏は、次の仕事に取り掛かった。
――学園祭の招待券。
IS学園は特殊な学校だ。
そのため、学園祭も一般公開ではない。
生徒一人につき、外部から一人だけ招待することができる。
当然。
全員に招待したい相手がいるわけではない。
「……余ってる招待券、結構あるな」
クラスメイトたちに確認して回る。
「私、家族を呼ぶから」
「俺は両親かな」
「私は友達を呼ぶつもり」
そんな中。
「私は特にいないかな」
「俺も」
招待する相手がいない生徒もいた。
一夏は、その生徒たちに声を掛ける。
「だったら、その招待券……私に譲ってくれない?」
「一夏ちゃんが?」
「うん」
「別にいいけど……誰を呼ぶの?」
一夏は少しだけ笑った。
「友達」
「友達?」
「うん。ちょっと遠いところにいるけどね」
――霧の者たち。
蒼き鋼として活動している彼女たちを、学園祭へ招待する。
それが一夏の考えだった。
普段は戦いや仕事ばかり。
ならば――。
たまには普通の学園祭を楽しんでもらってもいいだろう。
「これで……何人呼べるかな」
一夏は集まった招待券を確認する。
人数には限りがある。
全員を呼ぶことはできない。
だからこそ――。
(誰を呼ぼうかな……)
少しだけ悩む。
すると。
「一夏」
「ん?」
後ろから声を掛けられた。
振り返る。
そこには――。
「私も手伝おう」
箒が立っていた。
「ありがとう、箒」
「礼などいらん。それより……」
箒は一夏が持っている招待券を見る。
「誰を呼ぶつもりなのだ?」
「それは……当日のお楽しみ」
「……?」
箒は首を傾げる。
一夏は笑って誤魔化した。
――そして。
時間は、ゆっくりと流れていった。
授業。
訓練。
学園祭の準備。
メイド喫茶の衣装合わせ。
店内の装飾。
メニューの作成。
そして――。
いつの間にか。
学園祭当日を迎えていた。
◇
――朝。
IS学園は、普段とは全く違う姿へと変貌していた。
校舎には色とりどりの装飾。
廊下には案内板。
あちらこちらから聞こえてくる、生徒たちの楽しそうな声。
そして。
「いらっしゃいませー!」
校内には、普段では絶対に聞けない声が響き渡っていた。
一夏は自分のクラスの教室を見渡す。
机は綺麗に並べ替えられ。
壁には装飾が施され。
入口には大きな看板。
そして――。
メイド服姿のクラスメイトたち。
「…………」
一夏はしばらく固まった。
「どうした、一夏?」
「いや……」
目の前にいるラウラを見る。
銀髪。
赤い瞳。
そして――。
黒と白を基調としたメイド服。
「……似合ってる」
「そうか?」
「ああ」
ラウラは満足そうに頷いた。
「ならば問題ない」
「……うん」
そんなラウラを見ながら、一夏は思う。
戦場でしか生きてこなかった少女が。
今はこうして。
仲間たちと一緒に学園祭を楽しんでいる。
それだけで――。
少し嬉しかった。
そして。
今日はもう一つ。
一夏には楽しみにしていることがある。
――招待客。
霧の者たちが、この学園祭にやって来る。
「……みんな、楽しんでくれるかな」
そんなことを考えながら。
一夏は校門の方へ視線を向ける。
学園祭は、始まったばかりだった。