IS~空を舞う蒼き鋼~   作:ぬっく~

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お久しぶりです。
久々にホーム整理をしていたら、無償に書きたくなり、この度、新話を投稿します。
後、今までに投稿した話も、一部書き直しも行いました。
気まぐれ投稿ですみませんが、見ていってください。


第34話

 ――それから、さらに数日が過ぎた。

 

 世界中で停止していたISは、ついに完全な復旧を果たした。

 

 原因については、未だに明確な答えが出ていない。

 

 しかし、少なくともISそのものに異常はなくなった。

 

 IS学園でも、停止していた訓練用ISの再起動が確認され、ようやく通常の授業が再開されることとなった。

 

 実技授業が戻ってきたことで、生徒たちは大いに喜んだ。

 

 ……もっとも。

 

「やっぱりISに乗れるっていいわね!」

 

「ここ最近ずっと座学だったからなぁ」

 

「もうテストは勘弁してほしい……」

 

 先日の抜き打ちテストを思い出し、苦い顔をする生徒も多かった。

 

 そして――。

 

 日常が戻ってきたことで、もう一つのイベントも近づいていた。

 

 ――学園祭。

 

 IS学園の学園祭は、一般的な学校とは少し違う。

 

 世界各国から注目される特殊な学校ということもあり、完全な一般公開ではない。

 

 基本的には招待制。

 

 そのため、生徒たちは自分が招待したい人物を一人だけ、学園祭へ招くことができる。

 

 そんな学園祭を目前に控え――。

 

「では、そろそろクラスの出し物を決めるぞ」

 

 教室では、クラス委員を中心に話し合いが始まっていた。

 

「何かやりたいものがある人!」

 

「はい!」

 

「じゃあ、セシリア」

 

「劇などはいかがでしょう?」

 

「うーん……準備が大変じゃない?」

 

「では喫茶店などは?」

 

「普通すぎるだろ」

 

「お化け屋敷!」

 

「それも定番ね」

 

 次々と意見が飛び交う。

 

 一夏は頬杖をつきながら、その様子を眺めていた。

 

(学園祭かぁ……)

 

 こういう普通の学校行事は、何となく新鮮だった。

 

 霧の艦艇たちと関わるようになってからというもの、戦闘や事件に巻き込まれることの方が多かった。

 

 だからこそ。

 

 こうした何気ない日常が、少しだけ嬉しい。

 

 そんなことを考えていると――。

 

「ならば、メイド喫茶はどうだ?」

 

「……え?」

 

 唐突な提案だった。

 

 声の主は――。

 

「ラウラ?」

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 

 彼女は真剣な顔で腕を組んでいた。

 

「メイド喫茶だ」

 

「なんで!?」

 

 一夏が思わず聞き返す。

 

「何か問題があるのか?」

 

「いや、問題というか……」

 

 思わずラウラを見る。

 

 軍人として育てられた彼女が、まさかメイド喫茶を提案するとは思わなかった。

 

「以前、資料で見たことがある」

 

「資料……?」

 

「客に飲食物を提供し、店員はメイド服を着用する。非常に合理的な催しだ」

 

「どこが!?」

 

 教室に笑いが起こる。

 

 しかし――。

 

「面白そうじゃない?」

 

「普通の喫茶店より楽しそう!」

 

「メイド服なら衣装も統一できるし」

 

 意外にも賛成意見が増えていく。

 

 そして。

 

「多数決で決めよう」

 

 結果――。

 

 クラスの出し物は。

 

 ――メイド喫茶に決定した。

 

 

「……メイド喫茶?」

 

 職員室。

 

 クラスの代表として報告に来た一夏は、担任である千冬の前に立っていた。

 

「はい。クラスで話し合った結果、そうなりました」

 

「誰の提案だ?」

 

「えっと……」

 

 一夏は少しだけ言いにくそうにする。

 

「ラウラです」

 

「…………」

 

 千冬の動きが止まった。

 

「……ラウラ?」

 

「はい」

 

「……あのラウラ・ボーデヴィッヒが?」

 

「そうです」

 

「…………」

 

 千冬はしばらく黙っていた。

 

 そして――。

 

「……そうか」

 

 何とも言えない表情になった。

 

 千冬はラウラの過去を知っている。

 

 幼い頃から軍事施設で育てられ、兵士としての能力を求められてきた少女。

 

 一般的な学校生活とは、ほとんど無縁だった。

 

 そんなラウラが。

 

 自分から学園祭の出し物を提案した。

 

 しかも――メイド喫茶。

 

「……ふっ」

 

「千冬姉?」

 

「いや、何でもない」

 

 千冬は僅かに口元を緩める。

 

「好きにやらせてやれ」

 

「はい」

 

「ただし、騒ぎを起こすなよ」

 

「分かってます」

 

 報告を終え、一夏は職員室を後にした。

 

 その背中を見送りながら――。

 

「……変わったものだな」

 

 千冬は小さく呟いた。

 

 かつて戦うことしか知らなかった少女が。

 

 今では学園祭でメイド喫茶をやろうとしている。

 

 それはきっと――。

 

 ラウラが少しずつ、普通の少女としての時間を取り戻している証なのかもしれない。

 

 

 報告を終えた一夏は、次の仕事に取り掛かった。

 

 ――学園祭の招待券。

 

 IS学園は特殊な学校だ。

 

 そのため、学園祭も一般公開ではない。

 

 生徒一人につき、外部から一人だけ招待することができる。

 

 当然。

 

 全員に招待したい相手がいるわけではない。

 

「……余ってる招待券、結構あるな」

 

 クラスメイトたちに確認して回る。

 

「私、家族を呼ぶから」

 

「俺は両親かな」

 

「私は友達を呼ぶつもり」

 

 そんな中。

 

「私は特にいないかな」

 

「俺も」

 

 招待する相手がいない生徒もいた。

 

 一夏は、その生徒たちに声を掛ける。

 

「だったら、その招待券……私に譲ってくれない?」

 

「一夏ちゃんが?」

 

「うん」

 

「別にいいけど……誰を呼ぶの?」

 

 一夏は少しだけ笑った。

 

「友達」

 

「友達?」

 

「うん。ちょっと遠いところにいるけどね」

 

 ――霧の者たち。

 

 蒼き鋼として活動している彼女たちを、学園祭へ招待する。

 

 それが一夏の考えだった。

 

 普段は戦いや仕事ばかり。

 

 ならば――。

 

 たまには普通の学園祭を楽しんでもらってもいいだろう。

 

「これで……何人呼べるかな」

 

 一夏は集まった招待券を確認する。

 

 人数には限りがある。

 

 全員を呼ぶことはできない。

 

 だからこそ――。

 

(誰を呼ぼうかな……)

 

 少しだけ悩む。

 

 すると。

 

「一夏」

 

「ん?」

 

 後ろから声を掛けられた。

 

 振り返る。

 

 そこには――。

 

「私も手伝おう」

 

 箒が立っていた。

 

「ありがとう、箒」

 

「礼などいらん。それより……」

 

 箒は一夏が持っている招待券を見る。

 

「誰を呼ぶつもりなのだ?」

 

「それは……当日のお楽しみ」

 

「……?」

 

 箒は首を傾げる。

 

 一夏は笑って誤魔化した。

 

 ――そして。

 

 時間は、ゆっくりと流れていった。

 

 授業。

 

 訓練。

 

 学園祭の準備。

 

 メイド喫茶の衣装合わせ。

 

 店内の装飾。

 

 メニューの作成。

 

 そして――。

 

 いつの間にか。

 

 学園祭当日を迎えていた。

 

 

 ――朝。

 

 IS学園は、普段とは全く違う姿へと変貌していた。

 

 校舎には色とりどりの装飾。

 

 廊下には案内板。

 

 あちらこちらから聞こえてくる、生徒たちの楽しそうな声。

 

 そして。

 

「いらっしゃいませー!」

 

 校内には、普段では絶対に聞けない声が響き渡っていた。

 

 一夏は自分のクラスの教室を見渡す。

 

 机は綺麗に並べ替えられ。

 

 壁には装飾が施され。

 

 入口には大きな看板。

 

 そして――。

 

 メイド服姿のクラスメイトたち。

 

「…………」

 

 一夏はしばらく固まった。

 

「どうした、一夏?」

 

「いや……」

 

 目の前にいるラウラを見る。

 

 銀髪。

 

 赤い瞳。

 

 そして――。

 

 黒と白を基調としたメイド服。

 

「……似合ってる」

 

「そうか?」

 

「ああ」

 

 ラウラは満足そうに頷いた。

 

「ならば問題ない」

 

「……うん」

 

 そんなラウラを見ながら、一夏は思う。

 

 戦場でしか生きてこなかった少女が。

 

 今はこうして。

 

 仲間たちと一緒に学園祭を楽しんでいる。

 

 それだけで――。

 

 少し嬉しかった。

 

 そして。

 

 今日はもう一つ。

 

 一夏には楽しみにしていることがある。

 

 ――招待客。

 

 霧の者たちが、この学園祭にやって来る。

 

「……みんな、楽しんでくれるかな」

 

 そんなことを考えながら。

 

 一夏は校門の方へ視線を向ける。

 

 学園祭は、始まったばかりだった。

 

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