「あー……」
参った。これはマズイ。ダメ。ギブね。
「……………」
一限目のIS基礎理論授業が終わって今は昼休み。けれど、この教室内の異様な雰囲気はいかんともしがたい。
ちなみに、IS学園ではコマ限界までIS関連教育をするため、入学式当日から普通に授業がある。学内の案内? 地図を見ろってさ。
(だけど、どうにかならないのかなこれ……)
目当ては天羽 琴乃だと言う事。それはクラスだけではなく、学園全体がそうなのだ。
ちなみに『蒼き鋼』の創立者は彼女でとある噂が世界的にもニュースになったらしく、当然学園関係者から在校生までみんな彼女のことを知っている。
と言う訳で現在、廊下には他クラスの女子、二、三年の先輩らが詰めかけている。しかし誰一人として彼女に話しかけると言うことはしない。それはクラスの女子も同じで、『あなた話しかけなさいよ』という空気と『ちょっとまさか抜け駆けする気じゃないでしょうね』的な緊張感が満ちている。
ちなみにIS学園は世界で一カ所しかないのだが、ここに入学するための事前学習としてIS学習を授業に組み入れている学校は多い。
そしてその学校は100%女子校の上、海外から来る生徒は陸を通ってこの日本に来る状況かにある。
―――霧の戦艦に海と空を奪われた国は陸での生活を余儀なくされ、日本は一時危機的状況かに置かれた。
しかし、『蒼き鋼』はその危機的状況化の中、日本に物資を届ける手段に成功した事による功績が大きく、天羽さんが注目の的になる原因でもある。
(そして、今の状況なわけだが)
天羽さんは笑顔で廊下にいる生徒に手を振っていた。
(プラグインを切っているのか……)
この状況下でも慌てない所は流石、霧のメンタルモデルと言ったところだろう。
「……ちょっといいか」
「え?」
突然、話しかけられた。
「……箒ちゃん?」
「……………」
目の前にいたのは、六年ぶりの再会になる幼馴染だった。
篠ノ之 箒。私が昔通っていた剣術道場の子。髪型は今も昔も変わらずポニーテール。肩下まである黒い髪を結ったリボンが白色なのは、やっぱり神主の娘だからだろうか(篠ノ之道場は神社兼任)
身長は平均的な女子のそれだが、長年剣道で培った身体はどこか長身を思わせる。少し不機嫌そうに見える目は生まれつきと本人曰く。
「廊下でいいか?」
教室では話しにくいことなんだろうか。まあ、別に私にとってどうでもいいことなんだけど……。
「早くしろ」
「あ、うん」
すたすたと廊下に行ってしまう箒。そこに集まっていた女子がざあっと道を空ける。
「どう言うことだ……」
「え? 何が?」
教室からわずかに離れたところで箒は、私に問いかけて来る。
「何故、お前が『蒼き鋼』に所属している!」
「そのことね。スカウトされたのよ……天羽さん直々に」
半分嘘を交えながら箒の質問に答える。
しかし、箒はどうも納得がいかなかったようだ。
「あそこは……」
「箒ちゃんと言えど、『蒼き鋼』の皆を物辱するなら……私は許さないよ?」
「っ!」
私は今、人類の敵である霧の艦隊の仲間。
そして、この子も……。
キーンコーンカーンコーン。
どうやら、時間切れね。二時間目の開始を告げるチャイムで、全員自分のクラスに戻っていく。
「またね。箒ちゃん」
「……………」
そう言て私は、自分のクラスへと戻る。
その時、箒は私に聞こえない程度であることを呟いていた。
「私は認めない。あんな……」
『蒼き鋼』が何故、物資の搬入に成功した理由が箒を毛嫌いさせている理由でもあった。
「霧に眉を売った企業なんかに」
霧に勝てるのは同じ霧だけであることは誰もが知っていることだった。