「―――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ―――」
すらすらと教科書を読んでいく山田先生。
周りの生徒は時々頷きながらノートを取っている。
ちなみに私は、伊400と402に教えてもらったから殆ど分かっていた。
◇
「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」
一、二時間目とは違って、山田先生ではなく千冬姉が教壇に立っている。よっぽど大事なことなのか、山田先生までノートに手に持っていた。
「ああ、その前に再来週行なわれるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」
ふと、思い出したように千冬姉が言う。
「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点の各クラスの実力推移を計るものだ。今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」
ざわざわと教室が色めき立つ。
「はいっ。天羽様を推薦します!」
―――まあ、予想通りだね。
「私もそれが良いと思いますー」
確かに天羽さんがクラス長になれば色々といいからね。
「では候補者は天羽 琴乃……他にはいないか? 自薦他薦は問わないぞ」
しかし、そこに一人の生徒が立ち上がる。
「では、私は織斑 一夏さんを推薦しますわ」
「へ?」
私は思わず驚く、いきなり抱きしめられればそうなる。
「ど、どう言うことですか!? 天羽さん!」
「うふふふ……」
天羽さんのお得意の笑いで誤魔化されてしまう。
しかし突如甲高い声が遮った。
「待ってください! 納得がいきませんわ!」
バンッと机を叩いて立ち上がったのは、金髪の子だった。
「そのような選出は認められません! 大体、あの『蒼き鋼』の者がクラス代表なんていい恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
ああ……この子、あの噂を知っているのね。
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを……」
「黙れ……」
「っ!?」
この瞬間、教室の室温が一気に下がった。
「実力? 霧に足元も及ばなかった弱者がいい気になるなよ……小娘がぁ!!」
「なぁ!?」
私が最も嫌うのは『蒼き鋼』の皆を侮辱することと自分の実力の分からない女どもに他いない。
そして、このクラスにも一人いた。
「こ、ここ、小娘ですって……」
「そうよ」
セシリアが顔を真っ赤にして怒りを露わにしていた。
「決闘ですわ!」
バンッと叩くセシリア。
「ええ。いいわ。四の五の言うよりわかりやすい」
「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い―――いえ、奴隷にしますわよ」
「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」
「そう? 何にせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」
流れとはいえ勝負することなってしまった。しかし、天羽さんはこの展開を予想していたのか、満面の笑顔を浮かべていた。
「さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑とオルコットはそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める」
ぱんっと手を打って千冬姉が話を締める。
◇
「ここだね……」
私は部屋番号を確認して、ドアに鍵を差し込む。
ガチャ。
部屋に入ると、まず目に入ったのは大きめのベット。それが二つ並んでいる。そこいらのビジネスホテルより遥かにいい代物なのは間違いない。こう、見ているだけでふわふわ感が晒し出されている。
荷物をとりあえず床にやって、私は早速ベットに跳び込む。
「誰か……いるの?」
突然、奥の方から声が聞こえた。ドア越しなんだろう、声に独特の曇りがある。そういえば全室にシャワーがあるって言ってたっね。
「やあ。簪ちゃん」
「い、一夏!?」
シャワー室から出てきたのは、『蒼き鋼』の専属パイロットの更識 簪だった。
今し方までシャワーを使っていた。そしてシャワー室から出てきた。どうやら脱衣場は洗面所と兼ねているタイプだ。そして、簪はバスタオル一枚を巻いただけの姿だった。
「そっか。同室は簪ちゃんなんだね」
「う、うん」
ちなみに簪ちゃんとは打鉄弐式を買い取った時に一緒にこちらに転属させた。
もちろん、私たちが霧の仲間であることも知っている。その上―――
「
「う、うん。元気にしている」
簪は自分の専用機『
最初は指輪型だったのを私たちと同じくブレスレット型に変更し、色は青にしてある。
「
「気を付けてね」
「大丈夫。
私たちは軽く言葉を交わすと誰かがコン、コンっとノックする。
「……誰ですか?」
簪ちゃんと私は手持ちの銃を取り出し、ドアに張り付く。
一応、私たちは企業所属と言う事で防衛術は学んでいる。
「私よ」
「!? 天羽さん!?」
ノックの主は天羽さんだった。
私は銃の安全装置を下ろし、銃を仕舞う。
「どうしたのですか?」
周りを確認してから天羽さんを室内入れ、鍵を厳重にかけた。
「仕事よ♪」
「……わかりました。簪ちゃん」
「うん。了解」
私たちは天羽さんの口から仕事っと言われた瞬間、今までの雰囲気とは別に変える。
バックからは銀色の砂が詰まった瓶を取り出す。
「デコイは私が作ってあげるから、先に砂浜に行ってなさい」
「「了解!」」
天羽さんはその銀色の砂から簪と一夏を作り、本人たちはベランダから外へと出る。
「イオナ、お願い」
私は腕についているブレスレット。白式改ことイオナに命じる。
外に付けられている防犯機器はたちまち乗っ取られ、私たちは一直線に砂浜に向かう。
「お待ちしていました」
「402!」
砂浜には伊402のメンタルモデルがいた。
その後ろに本体である潜水艦もある。
「コトノ様」
「402、予定のルートに進みますわよ」
「はい」
私たちの後から天羽さんが到着し、私たちは402に乗り込む。
その後、誰にも気づかれずIS学園を出た。