問題児が異世界で白夜叉とラブコメするそうですよ?   作:竜葵 時雨

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第16話

「白亜さん、お願いします! 一緒にあの問題児様方を捕まえてください!」

 

「ハク、頼む」

 

 十六夜たちからの手紙を見たあと、すぐにあいつらを追うため、大急ぎで支度をしていた黒ウサギたち一行。

 

 どうやら、自分だけでは捕まえるのは――特に十六夜――難しいと思ったのだろう。

 

 出発前に黒ウサギとレティシアは俺にそう持ちかけてきた。

 

 もちろん、断る理由もないので了承した。それを聞き、『ありがとうございますっ!』と喜びを見せた。

 

 そして、いざあいつらを追おうとしたところでとある問題が生じた。

 

 それは、どうやってそこまで行くかである。

 

 今回の〝火龍誕生祭〟が行われるのは箱庭の北側。ここ箱庭はとても広く、恒星級の表面積を持つ。そんな馬鹿でかい箱庭ではここ東側から真反対の北側までおよそ980000kmもの距離がある。太陽系唯一の恒星である太陽の平均半径が約700000kmといえば、そのその凄さを簡単に想像できるだろう。

 

「で、でも、それは十六夜さんたちだって同じです! 今からでも十分間に合うかと」

 

「あのな、あいつらだってなにも考えずに行くと思うか? 多分何か考えがあるんだろう」

 

「とはいっても・・・・・・何かありますか?」

 

「んー。あ、俺だったら白夜叉に頼むな」

 

「・・・・・・あー、なるほどです」

 

 俺の答えに黒ウサギは納得する。招待状を出したのが白夜叉なので、無償で北の境界壁まで送り届ける可能性がある。というか、十中八九そうに違いない。

 

 そうなると、十六夜たちが出発したのは随分前。今から〝サウザンドアイズ〟の支店へ行ってももう間に合わないだろう。

 

 ――――となると、残す手段はこれしかない。

 

「じゃあ、行くか。二人とも手を離すなよ?」

 

「「へ?」」

 

 俺は、黒ウサギとレティシアの腕を左右それぞれ掴む。

 

 そして、俺は右足を踏み込み、思い切り跳躍する。

 

「「!?」」

 

 一瞬にして先程までいた〝ノーネーム〟の拠点が米粒ほどの大きさに見える。

 

 ――――残された手段、それは北側まで直で行くこと。

 

 現在、俺は、とてつもないスピードで北側へ向かっている。そんなスピードを出したら常人は無事ではすまないが、片や、箱庭の貴族。片や、箱庭の騎士。・・・・・・うん、大丈夫だろう。

 

「あ、そうだ。桜たちに先に〝火竜誕生祭〟に向かうって伝えなきゃな」

 

 俺は、移動しながらギフトを使い、神霊を召喚した。すると、眼前に小さな光の塊が現れ一瞬、視界が真っ白になったと思ったら、そこには体長10センチくらいの小さな女の子が現れた。橙色のセミロングの髪にワンピースのような黄色い服。一番特徴的なのは背中から生えている半透明の羽だろう。

 

 彼女は閉じていた瞳をゆっくりと開き、俺の姿を確認すると目を見開き、瞳を潤ませる。

 

「ハ、ハク? ハク! い、一体どこをほっつき歩いていたのよ!?」

 

「久しぶりだなセレーネ。なに、ちょっと長めの散歩をな。というか、心配してくれてたのか?」

 

「そ、そんな、し、心配なんてするわけないじゃない! ただ・・・・・・その・・・・・・あ、あんたで遊べなかったから暇だっただけよ!」

 

 彼女――セレーネは俺の言葉に、目をごしごしと拭うと、腕を組みそっぽを向く。

 

 セレーネはこの通り、少々ツンデレの気がある。まぁ、本人そのことを言ったら『わ、私がツンデレですって!? そ、そんなわけないじゃない!』と否定されたが。

 

 まぁ、ともあれ再会のあいさつも済んだところで召喚した本題に入る。

 

「それで、セレーネ。突然で悪いんだが、桜たちに伝言を頼めるか?」

 

「えー」

 

「えーじゃねぇよ。・・・・・・ったく、お礼に今回の祭典で何かおごってやるから」

 

「はぁ、分かったわよ。・・・・・・まったく、相変わらず人使いの荒いやつ」

 

「お前は人じゃなくて神霊だろ」

 

「ふふ、いいわ。約束忘れるんじゃないわよ!」

 

 セレーネはそういうと、光の残滓を残し消える。

 消えるのを確認したところで、スパートをかけるべくスピードを上げる。この調子でいけば、あと数分で着くだろう。

 

 そういえば、北側には昔何度か訪れたことがあったっけ。・・・・・・まぁ、ほとんど覚えてないけど。

 

「ま、楽しみだな」

 

 

 ◇◇◇

 

 

「さてと、到着~」

 

「「やっと着いたぁ・・・・・・」」

 

 割と本気で飛ばしたため、予想よりも早く北側に到着した。

 

「あぁ、そういえばこんな景色だったなぁ」

 

 眼前に広がる鉱石で彫像されたモニュメントに、ゴシック調の尖塔群のアーチと、遠目からでも分かるほどに色彩鮮やかなカットガラスで飾られた歩廊。そして、キャンドルスタンドが二足歩行で街中を闊歩している様を見て、おぼろげだった記憶が鮮明になってくる。

 

 結構時間が経ったため、所々変わっている所もあるが、それでも街の雰囲気などが懐かしく感じる。

 

 そんな事を思っていると、すぐ隣から不穏な雰囲気を感じそちらを向くと、そこには淡い緋色の髪を戦慄かせ、怒りのオーラを振りまき、目からはハイライトが消えている。

 

 うん、この状態の黒ウサギとは敵対したくないな。

 

「あの問題児様方・・・・・・! 今度という今度は絶対に! 絶対に許さないのですよーッ!!」

 

 箱庭の北側で、ウサギが叫んだのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「見ィつけた――のですよおおおおおおおおお!」

 

 黒ウサギは境界壁の近くにある展望台にいた十六夜たちを見つけるや否や、俺とレティシアを置いて、全力で跳躍し、彼の目の前へ向かった。

 

 俺たちも後を追うように向かった。

 

 十六夜たちは案の定、突然現れた黒ウサギに驚いていたものの十六夜はすぐに持ち直し、逃げようとする。

 

「逃げるぞ!!」

 

「逃がすかぁ!」

 

「え、ちょっと、きゃっ」

 

 十六夜は近くにいた飛鳥を抱きかかえ、展望台から飛び降りる。耀も旋風を巻き上げて空へ逃げようとする。

 

 黒ウサギは十六夜を追いかけに行くが、寸前足を止め、こちらを振り返る。

 

「白亜さんは耀さんを捕まえてください! レティシア様は私と一緒に十六夜さんと飛鳥さんを追ってください!」

 

 そう言うと、こちらの返事を聞かずして、展望台を飛び下りる。

 

 そんな黒ウサギに俺とレティシアは苦笑を浮かべる。

 

「ははは、今回の黒ウサギは張り切ってるなぁ」

 

「そうだな。・・・・・・おっと、こうしてるうちにまた黒ウサギに何か言われそうだ。では、私は行く。ハクも頑張って」

 

「レティもな」

 

 俺たちは再び苦笑を浮かべ、レティシアは黒ウサギを追うべく、展望台を飛び下りる。

 

「さてと、さっさと捕まえますかね」

 

 ふと視線を上げ、彼女の背中をとらえる。

 

 そして、足に少し力を入れて、一気に彼女の眼前へと回り込む。

 

「さてと、捕まえた」

 

「え? わ、わわ・・・・・・!」

 

 

 眼前に回り込んだため、耀が俺の胸へ勢いよく飛び込んできた。まぁ、さほど痛くはないが。

 

 前から抱きしめるようにして捕まえた俺は、耀に言う。

 

「さて、多分、戻ってからたっぷりと黒ウサギのお説教が待ってると思うから。覚悟しておいた方が良いよ? あ、俺は何も助言はしないからね」

 

「う、わ、分かった・・・・・・」

 

 耀は黒ウサギの説教タイムを想像したのか嫌そうな表情をしながらも了解を示した。

 

 ふう、まあ何はともあれ、これで俺の仕事終わったかな。あとの二人は・・・・・・まぁ、何とかなるだろ。

 

 

 そんな事を思いながら、耀と共に展望台へ戻る。

 

 展望台には、先程も見かけたが、黒ウサギの勢いに流され言葉を交わせなかった白夜叉の姿があった。

 

「おぉ、戻ったかの。それにしてもやっぱり早く捕まったの」

 

「うん。白亜から逃げられる気がしない」

 

「うむ。私ですらハクからは逃げられる気がしないの」

 

「いや、白夜叉が本気で逃げたら誰でも捕まえられねぇよ」

 

 そんなことを喋っていると、少し落ち着いたせいか先程までそこまで気にならなかった熱気がやってきて、頬に汗を流す。

 

「それはそうと、白夜叉。ここ暑いからどこか涼しいところに移動しようぜ」

 

「そうれもそうだの。では、〝サウザンドアイズ〟の支店に移動しようかの。・・・・・・あ、あと、おんしに言いたいことがあるからの。それもそこで説明するとしよう」

 

 白夜叉は耀に向かってそんな事を言う。

 

 耀は白夜叉の言葉に首を傾げるが、少しばかり楽しそうな表情を垣間見せる。

 

 そんな耀を連れて、俺たちは支店へと入っていく。

 

 

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