問題児が異世界で白夜叉とラブコメするそうですよ? 作:竜葵 時雨
誠に遅れて申し訳ありません。
凍結しないようこれからも投稿していきますので、これからもよろしくお願いします!
では、第25話どうぞ!
柏手を打ったその瞬間、舞台が虚無に包まれる。そして闇が開けると、足元は樹木の上。否、ただの樹木ではない。上下左右、どこを見渡してもその全てが巨大な樹木の根に囲まれている大空洞である。
「わあー! 大きいですねぇ!」
「あのバカでかい樹の中がゲームの舞台ってわけか」
その様子を宙に浮く大きな球のようなものが映す。それを見ていたリリと十六夜は口を開く。
「うむ。はてさて、どんなゲームを見せてくれるのかのう。・・・・・・む? ハク、どこへ行くのだ? これからゲームが始まるというのに」
「いや、ちょっと忘れ物を思い出してな。どこにあるか忘れちまったが――――まぁ、探せば見つかるだろ」
そう言い、俺は席を立つ。すると、桜が声をかけた。
「あ、兄さん。私たちもついて行った方がいいですか?」
「んーそうだなぁ。・・・・・・じゃあ一緒に探してくれるか?」
「はい!」
桜はそう言うと、寝ているイリスを起こし、席を立つ。
「じゃあ行ってく・・・・・・る」
白夜叉に視線を向けると、こころばかしか寂しそうな視線を向けてくる。
「あ、その・・・・・・すぐ戻ってくるからな?」
そう言いつつ、白夜叉の頭に手を乗せ優しくなでる。
白夜叉は笑顔を見せるも、すぐ顔を赤くし視線を逸らす。
「わ、分かった。は、早く戻ってくるのだぞ?」
「分かった」
俺は肯定の言葉とともに、手に少し力を入れて髪をくしゃくしゃとしてから手を離す。そして、俺は忘れ物を取りにその場を去る。
・・・・・・その時、ニヤニヤしていた桜とイリスには軽く頭に拳骨をくらわせておく。
◇◇◇
〝
『ギフトゲーム名〝アンダーウッドの迷路〟
・勝利条件
一、プレイヤーが大樹の根の迷路より野外に出る。
二、対戦プレイヤーのギフトを破壊。
三、対戦プレイヤーが勝利条件を満たせなくなった場合(降参含む)
・敗北条件
一、対戦プレイヤーが勝利条件を一つ満たした場合。
二、上記の勝利条件を満たせなくなった場合。』
「――〝〟の名において。以上が両者不可侵であることを、御旗の下に契ります。お二人とも、どうか誇りある戦いを。此処に、ゲームの開始を宣言します」
黒ウサギの宣誓が終わる。それとともに、耀とアーシャ(とジャック)の両者が動きを見せる。
先に口を開いたのはアーシャ。
「ほら、早く行けよ。先手は譲ってやるぜ」
ツインテールを揺らしながら余裕の笑みを浮かべる。
耀は無表情でしばし考えるそぶりを見せ問いかける。
「貴女・・・・・・〝ウィル・オ・ウィスプ〟のリーダー?」
「え? あ、そう見える? なら嬉しいんだけどな♪ けどアーシャ様は、リーダーじゃないんだけどぉ。ゆくゆくはみんなあたしのいいなり♪」
リーダーに間違われたことが嬉しかったのか、頬に手を当て愛らしい笑みで質問に答えるアーシャ。だが、耀はリーダーじゃないことが分かるや否や、途中で会話をほっぽり出し、背後の通路に疾走していった。
「――って聞いてないし! 行っちゃうのかよ!?」
自分から投げかけたにも拘わらず話の途中で逃げ出した耀。アーシャは全身を戦慄かせ、怒りのまま叫び声を上げた。
「オォゥェゥウウケェェェェイ!! とことん馬鹿にしてくれるって訳かよ! そっちがその気ならもう容赦しねぇ! 行くぞジャック! 樹の根の迷路で
「YAHOHOHOHOhohoho~!!」
ジャックの背中に乗り、ツインテールを逆立てて猛追するアーシャ。
耀は背中を向けて迷路と思わしき樹の隙間を次々と登る。アーシャはその背中に向かって叫び声をあげた。
「背中がガラ空きだぜ! 焼き払えジャック!」
「YAッFUUUUUUuuuuu!!」
アーシャが左手を翳すと、ジャックの右手に掲げられたランタンとカボチャ頭から溢れた悪魔の業火は、瞬く間に樹の根を焼き払い、耀の背中を捉える。しかし耀は最低限の風を起こし、炎を誘導して避ける。
(避けた? いや、違う。今の風・・・・・・コレがコイツのギフトか!)
アーシャはジャックの業火の軌道が逸れたことに舌打ちする。
「ぬうぅ! 生意気な! ほらジャック!」
「YAッFUUUUUUuuuuu!!」
ジャックは次から次へと炎を繰り出す。
対して、その炎を躱す耀はすでにジャック・オー・ランタンの秘密に気が付き始めていた。
(あの炎・・・・・・ジンの話していた〝ウィル・オ・ウィスプ〟のお話通りだ)
――
前者の伝承は、無人の場所で突如、青白い炎が生まれる現象。いわゆる鬼火と云われるもの。
後者の伝承は、彷徨う死者の魂が形骸化された逸話。いわゆる幽鬼と云われるもの。
この二つの伝承には、それぞれに共通した逸話が少なからず残っている。
その一つに『二度の生を受けた大罪人の魂に、名もなき悪魔がかがり火を与えた』という点である。
コミュニティ〝ウィル・オ・ウィスプ〟のリーダーは『生と死の境界に現れた悪魔』。
もし仮にアーシャの正体が、生と死の境界を行き来できるほどの力を持つ悪魔だったのであれば、耀には勝ち目はなかった。
(だけど・・・・・・彼女はリーダーじゃない。なら違う悪魔か種族のはず)
ゲームが始めの質問はこれを確かめる意味が込められていた。
そして、今まで繰り出されてきた業火の様子を見て、耀はその業火の正体、即ち〝ウィル・オ・ウィスプ〟のかがり火の正体を確信する。
(やっぱり。あの炎は、ジャックが出してるんじゃない。あの子の手で、可燃性のガスや燐をまき散らしてるんだ)
〝ウィル・オ・ウィスプ〟の伝承の正体とは、大地から溢れた出た、メタンガスなどの可燃性のガスや物質が自然発火したものである。
本来は無味無臭の天然ガスだが、嗅覚が人間の数万倍の感覚を持つ耀はその違和感を感じ取っていた。このツンとした臭いは、恐らくリンの類いだろうと思われる。
鷲獅子のギフトで炎の軌道を曲げれたのは、噴出したガスやリンを発火前に霧散させていたからである。
そしてさらにその感覚により、外に通じる穴からの気道を感じ取り、すでに出口は分かっている。耀は勝利を半ば確信する。
アーシャは種が見破られたことを察し、歯がみする。
「くそ、やべぇぞジャック・・・・・・! このままじゃ逃げられる」
「Yaho・・・・・・!」
走力では俄然、耀が勝っていた。
アーシャはジャックの背中から降り、その離れていく背中を見つめ――――諦めたようにため息を吐いた。
「・・・・・・くそったれ。悔しいが後はアンタに任せるよ。本気でやっちゃって、
「・・・・・・
え? と耀が後ろを振り返る。遙か後方にいたジャックの姿はなく、耀のすぐ前方に姿を現した。巨大なカボチャの影を前にした耀は、驚愕して思わず足を止める。
「嘘・・・・・・」
「嘘ではありません。失礼、お嬢さん」
ジャックの大きく真っ白な手が、強烈な音とともに耀をなぎ払う。
樹の根の壁に叩きつけられた耀は、意識が飛びそうになるほどの衝撃を受けて軽く嘔吐感をもよおし咳を吐く。
「ケホッ・・・・・・っ!?」
「さ、早く行きなさいアーシャ。このお嬢さんは私が足止めします」
「悪いねジャックさん。本当は私の力で優勝したかったんだけど・・・・・・」
「それは貴女の怠慢と油断が原因です。反省し、このお嬢さんのゲームメイクを少しは見習いなさい」
「う~・・・・・・了解しました」
アーシャは返事した後、耀を一瞥もせず走り抜ける。耀は慌ててその手に縋り付く。
「ま、待っ」
「待ちません。貴女は此処でゲームオーバーです」
しかしジャックがその前に立ち塞がり、ランタンからかがり火を零す。
そのわずかな火は樹の根を瞬く間に呑みこみ、轟々と燃えさかる炎の壁になった。先ほどまでとは比にならない圧倒的な熱量と密度に、耀は息をのみジャックを見る。
「・・・・・・まさか貴方は」
「はい。貴女のご想像はおそらく正しいでしょう。私はアーシャ=イグニファトゥス作のジャック・オー・ランタンではありません。貴女が最も警戒していた存在――――生と死の境界に顕現せし大悪魔! ウィラ=ザ=イグニファトゥス製作の大傑作!! それが私、世界最古のカボチャお化け・・・・・・ジャック・オー・ランタンでございます♪」
ヤホホ~♪ と笑うジャックだが、その奥の瞳には明確な意思と魂。そして圧倒的な威圧感。ふざけたその口調と仕草に反して、一分の隙もない。
というわけでギフトゲームの前半部分が終わりました!
と・こ・ろ・で!!
今日、4/1でこの作品が1周年を迎えることになります!!
これも読んでくださった読者の皆さんだと思っております。
では、次話をお楽しみに!