問題児が異世界で白夜叉とラブコメするそうですよ?   作:竜葵 時雨

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第2話

 十六夜君は苛立たしげに言う。

 

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」

 

「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」

 

「・・・・・・。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」

 

「ホントにそうですよ。なんで、こんなに落ち着いているんですか・・・・・・」

 

「「「いや、あなた・お前も落ち着き過ぎだろ」」」

 

「あれぇ?」

 

 いや結構僕、混乱してますよ?

 

 なぜ、空から落ちてきたのか――とか。

 

 なぜ、箱庭のことを知っているのか――とか。

 

 まぁ、それはさておき、

 

「――でも、このままだとそこに隠れている人が登場できない(・・・・・・・・・・・・・・・・)じゃないですか」

 

 物陰に隠れていた人物はまるで心臓を掴まれたように飛び跳ねた。

 

「なんだ、貴方も気づいていたの?」

 

「もちろんですよ。さっきから視線感じてましたし。というより、十六夜君と春日部さんも気づいてましたよね?」

 

「当然、かくれんぼじゃ負けなしだぜ?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「・・・・・・へえ? 面白いなお前」

 

 春日部さんの答えに十六夜君は軽薄そうに笑うが目は笑っていない。

 

 僕を除いた三人は理不尽な召集を受けた腹いせに殺気の籠った冷ややかな視線を飛び出してきた人物に向ける。

 

 飛び出してきた人物はなんと黒ウサギ? だった。

 

 なぜに、ウサギ?

 

 しかも恰好がなぜかバニーガールのような服だった。そんな趣味があるのかな?

 

 しかし、その疑問もなぜかすぐに解けた。

 

「月の兎・・・・・・《箱庭の貴族》・・・・・・か」

 

「え? 望月さん、なんで月の兎のことをぉぉおおお!?」

 

 黒ウサギは僕のつぶやきに疑問を持ったのかこちらに詰め寄ろうとしてきたが、春日部さんが黒いウサ耳を根っこから鷲掴んだため、中断させられた。

 

 でも、個人的には話が中断したのは都合がよかった。

 

 だって、自分でもどうして月の兎のことを知っているのか分からなかったからどう答えたらいいのか分からない。

 

 一生懸命自分の記憶を探ってみたが、

 

 

 まるでその部分の記憶だけ鍵がかかっているような状態だった。

 

 

 僕は諦めて黒ウサギの方を向くと、そこには三人に耳を引っ張られて玩具と化している黒ウサギの姿があった。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! も、望月さん! 助けてください!」

 

「あぁ~まあ、頑張って?」

 

 僕は黒ウサギの助けを断った。

 

 だって、あの三人を止めるのは無理でしょう?

 

 その後黒ウサギは、言葉にならない悲鳴を上げ、その絶叫は近隣に木霊した。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「あ、あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」

 

「いいからさっさと進めろ」

 

 半ば本気の涙を見せながらも、黒ウサギは気を取り直して咳払いをし、両手を広げて、

 

「それではいいですか、御四人様。低例文で言いますよ? 言いますよ? さあ、言います!ようこそ、〝箱庭の世界〟へ! 我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚いたしました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです! 既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではございません! その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその〝恩恵〟を用いて競い合うためのゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できるために造られたステージなどでございますよ!」

 

 両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ。

 

 もちろん、その言葉に嘘はないのだろうが。

 

 どこか、焦っているような・・・・・・

 

 そんなことを思っていると、飛鳥さんが質問するために挙手した。

 

「まず初歩的な質問からしていい? 貴女の言う〝我々〟とは貴女を含めた誰かなの?」

 

「YES! 異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある〝コミュニティ〟に属していただきます♪」

 

「嫌だね」

 

「属していただきます! そして、『ギフトゲーム』の勝者はゲームの〝主催者(ホスト)〟が提示した賞品をゲットできるというとってもシンプルな構造になっております」

 

「・・・・・・〝主催者〟って誰?」

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが〝主催者〟が修羅神仏なだけあって、凶悪かつ難関なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。〝主催者〟次第ですが新たな〝恩恵(ギフト)〟を手にすることも夢ではありません。

 後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらはすべて〝主催者〟のコミュニティに寄贈されるシステムです」

 

「後者は結構俗物ね・・・・・・チップには何を?」

 

「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間・・・・・・そしてギフトを賭けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑むことも可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然――ご自身の才能も失われるのであしからず」

 

 黒ウサギは愛嬌たっぷりの笑顔に黒い影を見せる。

 

 挑発ともとれるその笑顔に、同じく挑発的な声音で飛鳥さんが問う。

 

「そう。なら最後にもう一つだけ質問させてもらっていいかしら?」

 

「どうそどうそ♪」

 

「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK! 商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 

 飛鳥さんは黒ウサギの発言に片眉をピクリとあげる。

 

「・・・・・・つまり『ギフトゲーム』とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

 お? と驚く黒ウサギ。

 

「ふふん? 中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などはもってのほか!そんな不逞(ふてい)な輩は(ことごと)く処罰します。――が、しかし! 『ギフトゲーム』の本質は全く逆! 一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だという事ですね」

 

「そう。中々野蛮ね」

 

「ごもっとも。しかし〝主催者〟はすべて自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」

 

 黒ウサギは一通りの説明を終えたのか、一枚の封書を取り出した。

 

「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが・・・・・・よろしいです?」

 

「待てよ。まだ俺と白亜が質問してないだろ」

 

 静聴していた十六夜が威圧的な声をあげて立つ。ずっと刻まれていた軽薄な笑顔がなくなっていることに気付いた黒ウサギは、構えるように聞き返した。

 

「・・・・・・どういった質問です?」

 

「俺からの質問は一つだ・・・・・・そうだ白亜、お前先に質問しろよ」

 

 十六夜君が僕に振ってくる。

 

 質問・・・・・・質問なら・・・・・・。

 

「んー・・・・・・多分、十六夜君と同じような質問だと思うよ」

 

「ふふっ・・・・・・お前はホント面白いやつだな、白亜。なら、改めて黒ウサギ。俺の質問だが……」

 

 十六夜君は視線を黒ウサギから外し、飛鳥さん、耀さん、そして僕を見まわし、巨大な天幕によって覆われた都市に向ける。

 

 彼は何もかも見下すような視線で一言、

 

 

この世界は(・・・・・)・・・・・・面白いか(・・・・)?」

 

 

 この一言に黒ウサギは――

 

「――YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は下界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 

 と、満面の笑みでそう答えた。

 





今回の話では、ようやく登場! 
皆に愛される弄られマスコット。黒ウサギ。

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