問題児が異世界で白夜叉とラブコメするそうですよ?   作:竜葵 時雨

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第3話

「ジン坊っちゃーン! 新しい方を連れてきましたよー!」

 

「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性二人が?」

 

「はいな、こちらの御四人様が――」

 

 クルリ、と振り返る黒ウサギ。

 

 カチン、と固まる黒ウサギ。

 

「・・・・・・え、あれ? もうお二人いませんでしたっけ? 全身から〝俺問題児!〟ってオーラを放ってくる殿方と、比較的問題児ではない殿方が」

 

「ああ、十六夜君と白亜君のこと? 彼らなら十六夜君が『ちょっと世界の果てまで見てくるぜ!』と言って駆け出して行ったわ。白亜君は十六夜君に捕まって一緒に連れて行ったわ。あっちの方に」

 

 街道の真ん中で呆然となった黒ウサギは、ウサ耳を逆立てて二人に問いただす。

 

「な、なんで止めてくれなかったんですか!?」

 

「『止めてくれるなよ』と言われたもの」

 

「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったんですか!?」

 

「『黒ウサギには言うなよ』と言われたから」

 

「嘘です、絶対嘘です! 実は面倒くさかっただけでしょう御二人さん!」

 

「「うん」」

 

 ガクリ、と前のめりに倒れる。

 

 新たな人材に胸を躍らせていた数時間前の自分が妬ましい

 

 まさかこんな問題児ばかり掴まされるなんて嫌がらせにも程がある。

 

「た、大変です! 〝世界の果て〟にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が」

 

「幻獣?」

 

「は、はい。ギフトゲームを持った獣を指す言葉で、特に〝世界の果て〟付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」

 

 黒ウサギはため息を吐きつつ立ち上がった。

 

「はあ、ジン坊っちゃん。申し訳ありませんが、御二人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「わかった。黒ウサギはどうする?」

 

「問題児方々を捕まえに参ります。事のついでに――〝箱庭の貴族〟と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります」

 

 悲しみから立ち直った黒ウサギは怒りのオーラを全身から噴出させ、艶のある黒い髪を淡い緋色に染めていく。

 

「一刻程で戻ります! 皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能下さいませ!」

 

 黒ウサギは、淡い緋色の髪を戦慄かせ踏みしめた門柱に亀裂を入れる。全力で跳躍した黒ウサギは弾丸のように飛び去り、あっという間に三人の視界から消え去っていった。

 

「・・・・・・。箱庭の兎は随分速く跳べるのね。素直に感心するわ」

 

「ウサギ達は箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々なギフトのほかに特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが・・・・・・」

 

 三人はまだ土埃が舞う中、黒ウサギが跳び去った方向を見ていた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「ねえ、十六夜君」

 

「ん? なんだよ白亜・・・・・・てか、君って付けないで呼び捨てでいいぞ」

 

「うん、分かった。ところで、なんで僕まで世界の果てに連れてきたの?」

 

 そう、僕は十六夜君に捕まって世界の果てまで来ていた。

 

 前方にはあのイグアスの滝の数十倍、数百倍はありそうな馬鹿でかい大滝があった。

 

 下を覗き込んでも滝壺が見えなかった。

 

「そりゃあ、お前が面白そうだからな」

 

 その十六夜の言葉にガクリと肩が落ちた。

 

 面白そうだからって、どんな理由ですか・・・・・・

 

 まあ、薄々そうじゃないかなと思ってましたが。

 

 と、そんなことを喋っていると背後から――

 

「もう、十六夜さんに白亜さん! 一体何処まで来ているんですか!?」

 

 ――お怒りなウサギさんがいました。

 

「何処って、〝世界の果て〟まで来ているんですよ、っと。まあ、そんなに怒るなよ」

 

 そんな黒ウサギに十六夜君は小憎たらしい笑顔で答える。

 

「ともかく! 御二人が無事でよかったデス。早く帰りまs」

 

『まだ・・・・・・まだ試練は終わってなぞ、小僧共ォ!』

 

 黒ウサギのセリフを遮るように、そんな叫び声が聞こえた。

 

 そちらを見ると、身の丈三〇尺強はある巨躯の大蛇がいた。

 

 こちらはさっきの黒ウサギ以上にお怒りだった。

 

「じゃ、蛇神・・・・・・この一帯を仕切る水神の眷属・・・・・・! って、どうやったらこんなに怒らせられるんですか!?」

 

「なんか偉そうに『試練を選べ』とかなんとか、上から目線で素敵な事を言ってくれたからよ。俺らを試せるかどうか試させてもらったのさ」

 

「十六夜、盛大にぶん殴ったよね」

 

「まあな――でもまあ結果は残念な奴だったが」

 

『貴様ら・・・・・・付け上がるな人間! 我がこの程度で倒れるか!』

 

 蛇神の甲高い咆哮が響き、牙と瞳を光らせる。巻き上がる風が水柱をあげて立ち昇る。

 

 あの水流に巻き込まれたら最後、普通なら人間の胴体など容赦なく千切れ飛ぶだろう。

 

「なあ、白亜」

 

「何? 十六夜」

 

 こんな状況の中、呑気な声音でこちらに話しかける十六夜。

 

「とどめはお前させよ。さっき俺ぶん殴ったし。なにより、お前の実力が知りたいし」

 

 十六夜はそんなことを言ってきた。

 

「え、僕が?」

 

「そう、お前が。それに、お前ならこいつくらい余裕だろ?」

 

 と、そんなこと言うと僕の背中を押し蛇神の正面へ。

 

 なんで僕がこんな目に・・・・・・でもやるしかないんだよね?

 

 うわぁ、改めてみるとでかいなあ。

 

『フン――貴様ら者共くたばるがいい!』

 

 蛇神の雄叫びに応えて嵐のように川の水が巻き上がる。竜巻のように渦を巻いた水柱は蛇神の丈よりも遥かに高く舞い上がり、何百トンもの水を吸い上げる。

 

 まるで生き物のように唸り、蛇のように襲い掛かる。

 

「は、白亜さん!」

 

 黒ウサギが後ろの方で叫ぶ。

 

 その黒ウサギに応えるように後ろに振り返り、微笑みながら答える。

 

「大丈夫だよ。黒ウサギ」

 

 

 そう答えると同時に、迫っていた水柱が消えた。

 

 

「「『・・・・・・へ?』」」

 

 黒ウサギと蛇神。それに十六夜までもが唖然としていた。

 

『ば、馬鹿な! 貴様一体何をした!?』

 

「いや、ただ単に創造(・・)しただけだよ。水柱が消えるという想像(・・)をね」

 

 僕は蛇神に歩み寄りながらそう答え、手を蛇神へ伸ばし、

 

 

「んじゃ、おやすみ(・・・・)蛇神(・・)

 

 

 蛇神に僕の手が触れた。

 

 すると、まるで眠るように蛇神は崩れ落ちた。

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

 ふと、二人を見ると固まっていた。

 

 心ここにあらず、といったところだろうか。

 

 そして、この膠着状態から先に脱したのは十六夜だった。

 

「おいおい、なんだ今のは・・・・・・めちゃくちゃすげぇじゃねぇか白亜!」

 

 と言いながら、僕の背中を叩いてくる。

 

 うん、すごい痛い。

 

「・・・・・・って、まだ固まってんのかよこの黒ウサギは」

 

 興奮冷めやらない様子の十六夜の言葉は黒ウサギには届いていなかった。

 

 余程驚いていたのかまだ石像と化していた。

 

「おい、どうした? ボーっとしてると胸とか脚とか揉むぞ?」

 

「え? なっ!? ば、おば、貴方はお馬鹿です!? 二百年守ってきた黒ウサギの貞操に傷をつけるおつもりですか!?」

 

 いつの間にか黒ウサギの背後に移動し、腋下から豊満な胸に絡むように手を伸ばしていた十六夜を押しのけて飛び退く黒ウサギは叫んだ。

 

「二百年守った貞操? なにそれ超傷つけたい」

 

「お馬鹿様!? いいえ、お馬鹿様!!!」

 

 黒ウサギは何処から取り出したのか、ハリセンで十六夜の頭をスパァン! と叩いた。

 

「と、ところでお二人さん。その蛇神様はどうされます? というか生きてます? 白亜さん」

 

「うん、ただ気絶してるだけだよ。殺すのはそこまで好きじゃないから」

 

「そうですか。ならギフトだけでも戴いておきましょう。お二人はご本人を倒されましたから。きっと凄いものを戴けますよー。これで黒ウサギ達のコミュニティも今より力を付ける事が出来ます♪」

 

 黒ウサギが小躍りでもしそうな足取りで大蛇に近づく。

 

 どうやらいいギフトを貰えたようだ。本当に小躍りしている。

 

 そんな黒ウサギに十六夜が近づき――

 

「ところで黒ウサギ。少し聞きたいことがあるんだが」

 

「なんですか十六夜さん?」

 

「オマエ、なにか決定的な事をずっと隠してるよな?」

 

「っ!? な、なんのことです?」

 

 どうやら十六夜は僕と同じことを思っていたらしい。

 

 そして黒ウサギは瞳は揺らぎ、虚を突かれたように見つめ返す。

 

「これは俺の勘だが。黒ウサギのコミュニティは弱小のチームか、もしくは訳あって衰退しているチームか何かじゃねえのか? だから俺たちは組織を強化するために呼び出された。そう考えれば今までの行動や、俺がコミュニティに入るのを拒否したときに本気で怒ったことも合点がいく――どうよ? 一〇〇点満点だろ? なぁ、白亜?」

 

「う、うん。まぁ僕もそうじゃないかと思ってたよ。で、どうなの? 黒ウサギ」

 

「っ・・・・・・!」

 

 黒ウサギは内心で痛烈に舌打ちした。この時点でそれを知られてしまうのは余りにも手痛い。苦労の末に呼び出した超戦力、手放すことは絶対に避けたかった。

 

「・・・・・・」

 

「沈黙は是也、だぜ黒ウサギ」

 

 その言葉に黒ウサギは苦笑いを浮かべ、渋々といった様子で今のコミュニティの現状を説明した。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「私たちのコミュニティには名乗るべき〝名〟と誇りである〝旗印〟を奪われました」

 

「〝名〟と〝旗印〟っていうと、国旗のようなものか?」

 

「YES。そして、中核を成す仲間たちは一人も残っていません。さらに言えばゲームに参加できるだけのギフトを一二二人中、黒ウサギとジン坊っちゃんだけで、あとは十歳以下の子供たちだけなのですヨ!」

 

「もう崖っぷちだな!」

 

「ホントですね♪」

 

 十六夜の笑顔に誘われ同じく笑顔で返した黒ウサギ。

 

 しかし次の瞬間にはガクリと膝をついて項垂れる。

 

「ねぇ、黒ウサギ。さっき〝名〟と〝旗印〟を奪われたって言ったけど」

 

「YES。私たちのコミュニティは数年前までその旗印は東区画の至る所で見られ、それはそれは輝かしい栄光を誇っていました」

 

 それを聞いて、僕と十六夜は少し目を見開いた。

 

 東区画となると相当大きなコミュニティであったことが簡単に想像できる。

 

 しかし、そこで気になることが一つ。

 

 同じようなことを疑問に思ったのか十六夜はそれを質問する。

 

「黒ウサギ、その〝名〟と〝旗印〟をいったい誰に奪われた?」

 

 そう、そこなのだ。そんな大きなコミュニティなのだ。

 

 それを負かすなど容易なことではない。

 

 だが、十六夜の質問に対し答えた黒ウサギの言葉に衝撃を受けた。

 

「・・・・・・私たちは敵に回してはいけないものに目をつけられました。そして、たった一夜にして壊滅させられました。箱庭を襲う最大の天災――〝魔王〟によって」

 

「ま、マオウ!? 魔王だって!? 超カッケーじゃねえか! 箱庭にはそんな素敵ネームで呼ばれている奴らがいるのか!?」

 

「へぇ、魔王か・・・・・・」

 

 テンションが見るからに上がった十六夜に対し、僕は比較的大人しいリアクションだった。

 

「魔王は〝主催者権限(ホストマスター)〟という箱庭における特権階級を持つ修羅神仏。挑まれたら最後、誰も断ることが出来ません」

 

 ということは、黒ウサギのコミュニティはギフトゲームに強制参加され敗北した。

 

 そして、コミュニティとして活動する必要最低限のその地位も名誉も仲間も、全て奪われた。

 

 残るは空地だらけの廃墟と子供たち。

 

「魔王の力は強大でした。ギフトゲームに敗れた私たちのコミュニティは〝名〟と〝旗印〟を奪われ、〝ノーネーム〟となったのです」

 

「〝名無し〟ってことか」

 

「けど名前も旗印もないというのは不便だよね・・・・・・。新しくは作れないの?」

 

 名前と旗印がないという事は縄張りを主張できず、周囲に組織として認められないという事。

 

 ならば、全てリセットしてやり直せばいい。

 

 そう考え、黒ウサギに問う。

 

「可能です。ですが改名はコミュニティの完全解散を意味します。しかし、それでは駄目なのです! 私たちは何よりも・・・・・・帰ってくる場所を守りたいですから・・・・・・」

 

 仲間の場所を守りたい。それは黒ウサギが初めて口にした。偽りのない本心だった。

 

「茨の道ではあります。けど私達は仲間が帰る場所を守りつつ、コミュニティを再建し・・・・・・いつの日か、コミュニティの名と旗印を取り戻して揚げたいのです。そのためには十六夜さんや白亜さんのような強大な力を持つプレイヤーを頼るほかありません! どうかその強大な力、我々のコミュニティに貸していただけないでしょうか・・・・・・!?」

 

 そう言うと黒ウサギは僕たちのそばに駆け寄り必死な表情で頭を下げた。

 

「ふぅん・・・・・・〝魔王〟から誇りを取り戻す、ねぇ」

 

 十六夜はそう言い、考えるように手を顎に持っていく。

 

 そして、たっぷり三分間黙り込んだ後、

 

「いいな、それ」

 

「・・・・・・は?」

 

「『は?』じゃねえよ。協力するって言ったんだ。魔王相手に〝旗〟と〝誇り〟を取り戻す。あぁ・・・・・・ソイツはロマンがある。協力する理由としては上等の部類だ。なぁ白亜?」

 

「うん。それに、そんな話を聞いたら協力するに決まってますよ」

 

「え、あ、え?・・・・・・」

 

 その言葉に呆然と立ち尽くす黒ウサギ。

 

「精々、期待してろよ黒ウサギ」

 

「だから、もっと喜んでください、黒ウサギ」

 

 僕たちがそういうと、パァッと髪の色が緋色に変わる。

 

 へぇ、こうして髪の色が変わっていくんだ。

 

「ありがとう・・・・・・ございます・・・・・・」

 

 嬉しそうに眼に涙を浮かべる黒ウサギ。

 

「それじゃあ、白亜に黒ウサギ。箱庭に行くか」

 

「うん」

 

「はい!」

 





どんどん白亜君のチートっぽさがにじみ出てきましたね。

薄々感じていいただいている通り、白亜君のギフトは『思ってることが実際に起こる』といった風のギフトです。


はたして白亜君はどのような実力・秘密を隠しているのか。
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