ミサイルは片翼2基、計4基あるエンジンをご丁寧に左右の内側1基ずつを撃ち抜いた。
どうにか飛ぶことはできているが、それも時間の問題である。心臓を貫かれた物が、そう長く生きていられるわけがないことは自明の理である。
また、機長、副機長その両名ともに操縦することができないという嫌な要素が重なり、更に絶望的な状況に加速をかけているのだった。
そんな状況の中、乗客の大半がすぐ傍まで迫っている死神の鎌に震えあがり、身を縮める。そのため、諦めることなくこの状況に立ち向かう者の姿を見た者はいなかった。
キンジとアリアは操縦権を取り戻していた。
理子を取り逃した兼一ができることはこの場にない。故に部屋に戻り、大人しく経過を待つだけである。
この先は神のみぞ知る領域であるが、キンジとアリアの二人ならばこの状況でさえもどうにかしてくれるという根拠のない確信を兼一は持っていた。そしてそれは現実のものとなる。
「さすがキンジくんだ。彼のためにここまでやってくれる友達がいるんだから」
窓の外に広がる闇に光が灯り始めた。その光は誘導灯となり、着陸を導いている。
ベルト着用サインが点灯する。
『これより着陸を行う。知っての通りエンジントラブルがあったため、非常に困難な着陸になる』
キンジの声が機内放送でそう伝える。
そして、機体が『空き地島』に降り立つ。
「とまれぇ―――――!!」
操縦室に逆噴射をかけたアリアの声がこだまする。それに合わせて、キンジは地上走行用のステアリングホイルを操作し、機体をカーブさせる。
風速41メートルに向かってエンジン2基のB737-350が、着陸に必要とする滑走距離はおよそ2050メートル。それに対して、今着陸を行っている『空き地島』の対角線の長さはは2061メートル。計算上はぎりぎりで着陸可能である。
しかし、今の雨で濡れている『空き地島』では違う。キンジはそれを理解していてなお止める手段があるとして、この場所を選んだのだ。
風力発電の風車に翼をぶつけて、引っかけて、機体を回し停止させる。それがキンジの考えだ。
そして目論み通り、機体は風車の柱に翼を引っかけ、回りだす。だが、いまだに停まり切らない。
「くそっ」
もみくちゃにされながらそう漏らした時、けたたましい音ともに機体が大きく揺れ、止まった。
その原因は、やはりというべきかケンイチだった。
「いやー、危なかったな」
飛行機の外にいる兼一は呟いた。
キンジが何をするのかを理解した時、このまま中にいてはちょっとした惨事に巻き込まれそうだと感じた兼一は、風車にぶつかる直前壁に穴をあけ外に出た。
そして、弧を描く機体が思いの外速かったため、横から殴りつけるという力技で止めたのだ。当然その時の衝撃は凄まじかったが、ベルトをしっかりと身に着け衝撃を覚悟していた乗客たちには然程被害がなかった。
操縦室の法に回り2人がとりあえず無事であることを確認した兼一は、人が集まってくる前にその場を風のように立ち去るのだった。