史上最強の武偵   作:凡人さん

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お久しぶりです。
どうにかこうにか書き上げました。
それではどうぞ


白雪襲来

「キンジ、あんた頭だけじゃなくて舌もダメね」

 

「な、お前にはこのうなぎまんの美味さが分からんのか。ももまんなんて、ただのあんまんだろ」

 

「2人とも落ち着きなよ。そんなのどっちもどっちでしょ」

 

キンジとアリア、2人の争いに笑いながら火を加える兼一。どこにでもあるような光景だが、兼一が地蔵片手に天井に立っているということによって異常な光景に早変わりしている。

 

3人の奇妙な同居生活は、理子が捕まっていないから『武偵殺し』の事件はまだ終わっていないというアリアの屁理屈により続いている。

 

なんだかんだ言いつつも賑やかなのは楽しいのか、すぐにキンジも何も言わなくなった。

 

下らない争いに精を出しているそんな夜、キンジのポケットに入っている携帯からメールの着信音が上がった。

 

画面を見たキンジは固まった。

 

「キンジくんどうしたの?」

 

そう声をかける兼一に、震えながらその画面を見せる。

 

『現在の未読メール:25件。留守番電話サービス:録音9件』

 

この部屋はなぜか電波状況が悪く、メールの着信が遅れたり、後からまとめて受信することなどはよくある。しかし、これは異常だった。しかも全て同一人物からのものだ。

 

タイミングよく兼一の携帯からもメールの着信音が上がった。

 

「見なきゃダメかな」

 

困ったような笑顔を浮かべる兼一の携帯にも同様のことが起きていることは言うまでもない。

 

「け、兼一さん、どどど、どうしますか」

 

「とりあえず落ち着きなよ」

 

「2人ともどうしちゃったのよ」

 

慌てるキンジと、困り果てた兼一を余所に、何も知らないアリアはのんきにももまんを頬張っている。すると、マンションの廊下を何かが突進するような足音が聞こえてきた。

 

そして、

 

しゃきん!!

 

という音とともに玄関のドアが斬り開けられた。

 

「いやー白雪ちゃん、いつの間にか斬鉄できるようになったんだ」

 

そう言って拍手をする兼一の視線の先には、巫女装束に額金、たすき掛けという戦いに向かうための風貌で仁王立ちする白雪がいた。

 

「兼一さん、ここにいますよね? 神崎・H・アリア」

 

ここまで全速力で来たためか、息を切らしている白雪であったが、この質問には恐ろしいまでの何かが籠められていた。

 

「まあまあ、落ち着きなよ。疲れたでしょ? お茶でもどうぞ」

 

そう言っていつの間にか玄関先に茶会の準備がされていた。師の教えの賜物か、武術だけでなく様々な分野に関して深い教養を主に秋雨から身につけさせられた兼一。その中に当然茶道も含まれており、その腕前は当然達人級だ。

 

そして、兼一の茶も師である秋雨の物と同様にイヤでも相手を和ませることができるという代物である。

 

「あ、はい。いただきます」

 

勢いを削がれた白雪は兼一に促されるがままに、茶を口にする。

 

(あとはキンジくんがアリアちゃんをうまいことやってくれればいいんだけど)

 

だが、兼一のそんな思いは泡沫の夢となる。

 

「ケンイチ、なんなのさっきの音は」

 

「ま、待て、アリア。今は行ったら――」

 

そんな声とともに玄関先までアリアがやって来た。やって来てしまったのだ。

 

すると、ほんの数瞬前まで牙を抜かれていたはずの白雪が息を吹き返した。

 

「兼一さんどいてください。じゃないとそいつを。そいつをこ、切れない」

 

鈍い光を放つ日本刀を構えなおした白雪はそう言うと、一歩を踏み込む。

 

「白雪ちゃん、土足厳禁ね」

 

優しく諭すような兼一の声がした時には白雪の視界に天井と座ったまま体を入れかえた兼一が映っていた。

 

しかし、白雪は諦めない。すぐに立ち上がると履物を脱ぎ、丁寧に揃えて玄関に置くと再びアリアの元に向かう。

 

だが、次の瞬間にはまたしても天井を見ていた。

 

「じゃ、邪魔をしないでください兼一さん」

 

「どうしよう」

 

正座をしたままふざけたようにそう答える。

 

白雪の気がつけば倒れているという現象は、明らかに兼一の仕業だ。

 

兼一は『居捕り』という技を用いて白雪を投げていたのだ。『居捕り』とは座った状態という最も無防備な状態であらゆる攻撃を無力化するために編み出された技である。

 

この技を見たある人物は「意味不明」という感想を漏らした。

 

まあしかし、ある意味では最も兼一に適した戦い方であるとも言える。

 

「私、どうしてもそこにいる泥棒猫……じゃなくてアリアと話さなくちゃいけないんです」

 

自分の行く手を阻むのは核シェルターの如く強固な壁。その壁は、白雪がどう足掻いたっところで突破することはできないものだ。故に、説得を試みる。

 

「う~ん。アリアちゃんだし、ま、いいか」

 

皆一様に目を見開いた。

 

当然である。キンジとアリアはどうにか追い返してくれるだろうと期待し、白雪は無理だと思いながら説得を試みたのだから。

 

兼一とて白雪の実力を知らないわけではない。また、今の白雪が普通でないことも分かっている。それでいて道を開けたのだ。

 

「あれ、行かないの?」

 

素っ頓狂な兼一の声が白雪を動かした。

 

弾丸のようにアリア接近すると刀を脳天に向かって振り下ろした。兼一がいるため峰打ちだ。

 

「ちょっ」

 

そんな声とともにアリアは白雪の刀を両の手で挟み止めた。真剣白羽取りである。

 

それを目にした兼一は感嘆の声とともに、称賛の拍手を送った。

 

「こ……の、バカ女」

 

その言葉を皮切りに二人の戦闘は激化する。

 

「キンジくん、隠れた方が身のためだよ」

 

そのことを敏感に感じ取ってか、兼一は言葉を送る。

 

「ええ、分かってますよ」

 

それに答えてキンジはベランダにある防弾物置に隠れた。

 

 

 

どれくらいの時が経った頃だろう、部屋に響き渡る銃弾の発射音やそれを弾く剣戟、鍔迫り合いの音が止んだのは。

 

部屋の中はどこの戦場跡だろうかという状態になっている。

 

「二人とも気が済んだかな」

 

いつもと変わらぬ声で床に転がる二人に声をかける兼一。当然のように無傷である。

 

疲労困憊の二人はそんな兼一に応える余裕すらない。

 

「いやー、それにしても中々良かったよ、二人とも」

 

「ケンイチさん何したんですか?」

 

部屋が静かになったのを確認したキンジは防弾物置から出てきて、そう尋ねる。

 

「あんまり危ないことになりそうだった時に、ちょっと妨害しただけだよ」

 

(絶対ちょっとじゃない)

 

兼一の答えを脳内で変換しなおしたキンジは二人に手を合わせる。

 

「それじゃ白雪ちゃん、悪いんだけどボクが送って行くよ」

 

そう言って答えを聞かずに白雪を背負うと、兼一は部屋を出るのだった。

 

「おーいアリア、生きてるか」

 

「ギリ……ギリ……生きてるわ」

 

「ももまん食うか?」

 

「うん」

 

兼一が白雪と言うある種の災害を外に連れ出したことで、安息が訪れたのだった。




というわけで、どうにか更新できました。
一巻のラストから二巻の頭です。
個人的に好きな技は、物まね技と居捕りです。あ、あとメオトーデもいいですね
原作でもっと活躍してほしかったなぁ

次の更新がいつになるかは分かりませんが、またよろしくお願いします。

感想の返信ができてなくてすいません。
そのくせになんでも質問版的な物作ってしまいました。
気になることがありましたら、活動報告にあります質問版まで。
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