手裏剣戦隊ニンニンジャー Another   作:小坂凛

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仲間のために -4-

 街では未だムジナが暴れ続けていた。その隣には霞をはじめとした操られた人々もいる。

 彼らは人々を無差別に襲い始める。意味も分からず襲われて転倒して怪我をする人や逃げ惑う人。そして愛のような小さな子供とそれを守る両親など。

「助けて」

 その時強い風が吹いた。顔をそらした子供が再び元の方向を見るとそこには大きな縄で身動きがとれないように縛られている操られた人々と装束の忍者が四人立っていた。

「今のうちに逃げて」

 風花が促すと両親はお礼を言って子供を連れて走って去っていった。これでこの辺の操られた人々は全て身動きを止めた。

「痛いかもしれないけど、すぐにほどきますから」

操られた人に声をかける風花。これで他の人に危害が及ぶ心配はない。ただ一人、霞を除いて。

 

 風花は静かに忍者一番刀を取り出した。そして後ろに迫っていた霞を背に、白い変化忍シュリケンをはめこみ、(変)のボタンを押す。

「シュリケン変化」

 すると装束の上から戦闘用スーツが彼女を覆った。そして最後に頭に手裏剣のような形のパーツが印象的なマスクが現れ、風花の顔をすっぽり覆う。これがニンニンジャーの一人シロニンジャーとなった風花の姿だった。

 霞も無表情のまま桃色のシュリケンで同じように変化する。彼女が変化したのはモモニンジャーである。

 

 風花は冷静に周りを見回す。自分の元へニンニンジャー出現に気付いたムジナがヒトカラゲを送り込んできてもおかしくない状況であったが、天晴、八雲、凪がそれぞれヒトカラゲを抑えてくれている。自分の気持ちを汲んでくれた協力に胸が熱くなる。そんな彼らのためにも必ず霞を元に戻さなければならない。

「絶対助けるからね。霞ちゃん」

 そしてシロニンジャーとモモニンジャーの対決が始まった。変化することで忍術をより使いこなせるようになるため変化してからの失敗は少ない。風花は土の術を繰り出す。

 しかし変化してパワーアップするのは操られた霞と同じで、水の術で風花の術を受け流し、更なる攻撃を仕掛けてくる。

 

 手数の多い霞の攻撃に次第に追い込まれていく風花。じりじりと後退させられていた。その時脳裏に愛の姿が浮かんだ。愛だけではない。他の操られた人々にも悲しんでいる家族がきっといるのだ。その人たちを泣かせるわけにはいかない。彼らに涙を流させない。それが出来るのは、今は私だけだ。

 覚悟を決めた風花は火炎の術を繰りだし、霞の視界から姿を消した。しかし霞も焦ることなく水流でそれをかき消す。風花が連続して遠くから攻撃してくると考えていた霞だったが、目の前の光景に少し目を見開く。

 風花が勢いよく自分の元へ突っ込んでくるのだ。どうしてそんな単純な攻撃に移ったのかはわからないが、考える必要などなかった。霞は躊躇せずに様々な術を繰り出していく。

 

「逃げるわけにはいかない」

 風花はそう呟きながら、ひたすら前へ前へと進んでいく。ニンニンジャーの戦闘服がボロボロになるが風花はなんとか耐え続けていた。

 もちろん痛くないわけはない。ほんの数ヶ月前まで、忍者の子孫とはいえ、ろくな修行もしていなかったのだ。今まで経験したことのない痛みであることは間違いない。

 それでも進み続けるのはもっと辛い痛みがあるからだった。それは霞が元に戻らないことであり、人々が笑顔を失うこと。だから風花は前へ進み続ける。

 術だけでは展開が変わらないと考えた霞はガマガマ銃を取りだし、風花に向けた。一瞬ひるんだ風花だったが、それでも足は止まらなかった。

 

 霞の銃撃は何発か風花に命中した。風花のスピードも徐々に遅くなっていく。そしてとうとう戦闘服が衝撃に耐えきれず変化解除されてしまった。つまり、風花は生身の姿に戻ってしまっていた。それでも止まらない。あともう一歩。

 ガマガマ銃の攻撃が風花の頬をかすめ、一筋の傷が頬に出来たその瞬間、風花はようやく霞にたどりついた。風花は霞の肩をがっちりつかむ。霞は抵抗しようとするが風花は絶対に離そうとはしない。

「霞ちゃんは私のことを助けてくれた。今度は私が霞ちゃんを助ける。それが私にできることだから!」

 

 もしかしたら私は落ちこぼれかもしれない。それでも前向きでいることはできる。仲間を想うことはできる。みんなが辛い時でも悲しい時でも一生懸命私だけでも前を向いていればきっといつかは明るい未来が待っている。いつも笑顔、元気でいること。それが私の取り柄なのだ、きっと。

 私は霞ちゃんと一緒に強くなりたい。

 

「霞ちゃんは私にとって大切な仲間なんだよ」

 そう言って風花が肩をゆさぶると、その衝撃で霞は手にしていたガマガマ銃を落としてしまう。風花はガマガマ銃に視線を運ぶ。そして霞に視線を戻すと、霞の目に光が戻っていたのがわかった。

「風ちゃん?」

 そこには幼い頃から変わらないあの優しいお姉ちゃんがいた。

「良かった。元に戻ったんだね!」

 風花は霞をぎゅっと抱きしめる。ボロボロになった身体がズキリと痛むが、痛みより喜びのほうが何倍も勝っていた。

 

「私は操られていたのですね」

 自分がムジナに操られていたことを思い出した霞は目の前で喜んでいる風花を見て微笑んだ。まだまだ子供だと思っていた風花に助けられた。

彼女もいつの間にか立派な忍者になっていたのですね。風ちゃん、あなたの良さは守りたい人のために一生懸命になれるその姿なのですよ。

「ん。霞ちゃんどうしたの」

 直接話しかけたわけではないので風花に今の言葉は伝わっていないが、雰囲気を感じた風花が顔を上げるが、霞は微笑むだけ。それを見て風花は首をかしげる。

「いえ。なんでもありませんよ」

 

 

 

「馬鹿な。俺の術が……」

 これに驚いたのはムジナである。自分の技を浴びたものは自分自身が倒されない限り、元に戻ることはないはずだった。つまり絶対に元に戻ることなどあり得ないのである。それを目の前にいるまだ少女とも呼べる女は破ってみせたのだ。

「忍タリティの違い、ではないでしょうか」

 霞は忍者一番刀を構えながら言った。

「風ちゃん、みなさんいきますよ」

 

 ヒトカラゲを一掃した天晴たちも駆けつけて五人は変化忍シュリケンを装着し変化する。

「暴れてあっぱれ! アカニンジャー」

「轟け八雲! アオニンジャー」

「きらめきの凪! キニンジャー」

「ひとひら風花! シロニンジャー」

「ゆらめく霞! モモニンジャー」

 それぞれが変化して一直線に並び口上を述べる。その光景は圧巻で、ムジナもしばらく黙って見守っていたくらいだった。

 

「忍ぶどころか暴れるぜ!」

 天晴の言葉を合図に五人は一斉にムジナにかかっていく。先ほど撤退したものの、今回はムジナの術も破っていたし、五人万全の状態で揃っている。元々戦闘タイプではないムジナが勝てるはずもなかった。

 残っていたヒトカラゲもあっさり倒され、残りは自分一人となったムジナ。一矢報いようと妖術を再び繰りだし霞を攻撃する。しかし、霞に同じ術は通用しなかった。あっさり撃ち落とされてしまう。

 

「なにぃ!?」

 たじろぐムジナにニンニンジャーの五人は変化忍シュリケンをそのままに今度は(技)ボタンを押す。変化忍シュリケンで繰り出せる技は手裏剣忍法の奥義である。

「忍烈斬」

 五人がムジナへ連続して斬撃を繰りだす。

「忍者一閃!!」

 そして最後にとどめとばかりに斬撃を加える。最後に決めたのは風花と霞であった。

 強力な斬撃を喰らったムジナは断末魔の叫びをあげて爆発してしまった。

 

 

 

 ムジナを倒すと縛られていた人たちは理性を取り戻し、風花が縛っていた縄も自然に解けた。何が起こったのかわからない人々はその場で考えたり、座り込んだりしている。

 そこに旋風と愛が現れた。愛は旋風に感謝をして母の元へ走っていく。

「ママ!」

 愛は母の胸に飛び込んだ。そして声をあげて泣いた。何故娘がこんなに嬉しそうに涙を流しているのか母親にはわからなかったが、本能か優しく頭を撫でてやるのだった。

 

 

 

 

 

 事件も解決し、屋敷で再び修行に励む風花や霞たち。実戦でコツを掴んだのか手裏剣忍法を生身の状態でも成功させていく風花。

「風ちゃんは強くなりましたね」

 先の戦いを思い出しながら霞は言う。

「そうかなぁ」

 ようやく忍術を使いこなせるようになってきた風花だったが、それでもまだ実感はわかない。

 

「まだまだだよな。風花は」

 話を聞いていた天晴が茶化すように風花の頭を叩く。

「もう。お兄ちゃんったら」

 逃げる天晴を追いかける風花だったが、誰が食べたのか、そもそも誰がこんな場所に捨てたのか。バナナの皮に滑って転んでしまった。

 いつもの兄妹喧嘩を笑って見ている凪に、呆れている八雲。すっかりいつもの見慣れた様子に戻ってしまった。

「やれやれ。確かにまだまだ、かもしれませんね」

 霞は誰にも聞こえない声でそう呟いた。




1話、と言えばいいんでしょうか。「仲間のために」終わりです。
ロボ戦は割愛です(笑)


まだ構想段階で何も書いてませんが、次のエピソードも書けたらいいなと思っています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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