前の話とは毛色の違うコメディ回です。
「こんなに買っちゃった」
買い出し担当として買い物に出ていた風花は両手に大量の袋をぶら下げていた。
そのどれもがパンパンに詰まっており、いつ破けてもおかしくはない。しかもその重みで取っ手の部分が手のひらにくいこんでくるので時折袋を地面に置きながら休息をとる。
「凪ちゃんでも連れてくれば良かったな……」
長い橋をなんとか渡り切った風花は近くにあった公園のベンチに座りながらため息をついた。
「よし、買い出しじゃんけんだ」
いつものように修行を終えたあと、天晴が立ち上がった。
ニンニンジャーになって数ヶ月。久しぶりに家族の元に顔を見せた天晴との生活や、八雲や凪、霞たち親戚との初めての生活もすっかり当たり前のものになった。
洗濯も掃除もあまり経験がなかった風花だったが、それにもすっかり慣れていた。
ニンニンジャーが拠点とする屋敷の掃除は各自持ち回りで行い、買い物はその時外出している者であったり、逆に何も用事がなく屋敷に残っている者が担うことになっていた。
そして時々はこうしてじゃんけんで買い出しに行く者を決めるのだ。大体二人になるまで続け、ペアで行くことが多いのだが、この日は、
「じゃんけんぽん!」
「あ……」
風花が一人負けしてしまったのだった。
「昨日も私。一昨日もやっくんと私。……私もしかしてじゃんけんも弱いの?」
風花はベンチで顔をしかめる。
その時、向こうから橋を渡ってくる男の話し声が耳に入った。
「おい、本当にこのあたりに忍者はいるのか」
「はい! このあたりで暮らしているらしいです!」
忍者? もしかしてあの二人組の男性は私たちのことを探しているのだろうか。風花は二人の顔を眺めてみる。
一人は茶髪で、語尾に必ずビックリマークがついていそうな話し方をする青年。それほど身長が小さいわけではないが、隣の男と並ぶと少し小さく見える。
そんな高身長の男は背だけではなく髪の毛も長く、背中のほうで髪を束ねている。風花はもちろん、霞よりも圧倒的に長い。また、彼が着ているジャケットは真っ青でやや奇抜に見えた。目つきも軍隊に所属していたのかと思うほど鋭い。
要するに面倒くさそうな人と怖そうな人、がこちらへ歩いてくるのである。しかももしかしたら自分のことを探しているかもしれないのだ。
関わらないほうが良さそうだな。そう思って申し訳程度に身体を丸めてみる。どうか通り過ぎてくれますように。
「おい、ちょっといいか」
……気のせいだよね。
「……おい」
「ちょっと待ってください。言葉遣いがキツいから怯えているじゃないですか。すみません、ちょっとお聞きしたいんですが!」
あぁ、私に向かって言っている。風花は観念した。
「なんですか」
「この辺に忍者さんの住んでいる屋敷はありませんか?」
意外と常識はわきまえているらしい茶髪の男の質問に素直に答えるべきか迷う風花。悪い人には見えないが。いや、隣の青い人は怖いけど……。
「あ、私がその忍者ですけど」
結局素直に答えることにした。
「え?」
風花がそう答えると、茶髪の男だけではなく青い男まで不思議そうな顔をした。まぁ、忍者を探していると言う質問もどうかと思うが、その質問に自分より若い女が名乗りでれば驚くのも無理はない。
「えっと……」
茶髪の男が何やら考えこんでしまった。どうやら向こうも変な人と会ったと思っているようだった。せっかく本当のことを答えたのにも関わらず面倒くさがられるのは風花も癪だった。
「私が手裏剣戦隊ニンニンジャーのシロニンジャーです」
今度は堂々と胸を張って答えた。それでも二人の頭のクエスチョンマークは消えそうもない。
「なんなら変身してみせましょうか」
風花は腰に差した忍者一番刀を見せようと、手を脇にあてた。
「いや、結構だ」
「はい?」
手を脇に持ってきた風花だったが、その手を青い男に制止されてしまった。
「悪いな。邪魔をした」
青い男は風花と目を合わせず茶髪の男とともに踵を返して行ってしまった。
二人が立ち去ったあと、忍者一番刀を抜いた風花は彼らに向かってブンブン振ってみるが、二人が振り向くことはなかった。
「なによ、あれ」
家に帰ったら霞ちゃんに愚痴ってやるんだから。そう思って買い物袋を持ち上げ、男たちとは逆方向へ歩き始めた。しばらく座っていたせいか、それともちょっと怒ったせいか、買い物袋は少し軽く感じた。
「あの女、本当に忍者だったと思うか。鎧」
青い男が呟く。
「うーん。違うと思いますよ。さ、また別のところで聞きこみしましょう。ジョーさん」
風花の耳にも彼らの名前が聞こえてきたが、彼女が二人の正体に気付くことはなかった。
彼女と彼らは再会することになるのだが、それはまた別の話である。
レジェンドさんと風花が出会うなら、と思って考えてみました。
戦隊と出会うレジェンドといったらこの戦隊しかいないですよね。
また別の話、とは書きましたが僕は書く予定がないので、戦隊ファンの皆さんがそれぞれ頭の中で考えてみると面白いですよね。
実際にはあり得ないかもしれない出逢い。それも想像できるのがスーパー戦隊シリーズの良さなのかなと思います。
次はニンニンジャーの放送分っぽいエピソードを書く予定ですが、まだ構想も練っていないので相当投稿間隔があきそうですが、また見ていただければ嬉しいです。