手裏剣戦隊ニンニンジャー Another   作:小坂凛

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諦めない心 -3-

「妖怪に襲われた人々に何が起こっているのでしょうか」

 外傷がないのにも関わらず、俯き続けている人々を霞が見てまわる。

「やっくん、何をされたかわからないの」

 凪が八雲に問いかけるが、八雲は何をされたかわからないというように首を振る。考えることもできないようで、彼もまた人々と同じように俯いてしまった。

 

「わからないんだ」

 そうか、と落胆するニンニンジャーの面々。すると風花が何かに気付いた。

「あれ。さっきの男の子がいないよ」

 そう言われて辺りを見回す凪と霞。

「あれ、天晴くん。さきほどの子はどこへ行ったのですか?」

「……そういえば忘れてた」

 

 天晴は頭をかく。

「忘れてた。じゃないわよお兄ちゃん! まだ近くに妖怪がいるかもしれないんだから探さなきゃ」

 風花が天晴を小突くと、天晴は凪を引き連れて飛んでいった。風花もそれを後から追い掛ける。

「では私はここで引き続き、人々が奪われた力について調査しておきますね」

 そう言って霞は三人を見送った。その間、八雲は一度も顔を上げることはなかった。

 

 

 

 

 

 淳は走っていた。自分に何ができるのかはわからない。それでも走らずにはいられなかった。自分が動くことが出来なかったせいで、今度は八雲まで妖怪にやられてしまった。自分が弱いから。

 しばらく走り続けたが、疲れて立ち止まった。肩で息をする。息を整えていると、遠くからかすかに声が聞こえた。人通りの少ない地域だったので、耳を澄ませば会話の内容が伝わってくる。

 

「もっと気力を集めてね。気持ちを失った人間どもからは多くの怖れが奪えるからねえ」

 一方は女性のような声だが、少し毒があるというか怪しい、今まで聞いたことのないような嫌な声だった。

「わかっています。必ず牙鬼様の役に立ってまいります」

こちらの声はすぐにわかった。先ほどの妖怪だ。ということはもう一方の女性も妖怪なのだろうか。

 

それはそうと、妖怪が吸い込んでいたのが気力であることがわかった。これを誰かに伝えなければ。踵を返した淳だったが、そこで動きが止まった。

これは自分でなんとかしなければならないのではないか。

 もちろん、頭の中で無理だという考えが駆け巡った。それでも自分に何かできるのではないか。幸い、女性の妖怪は掃除機の妖怪に全てを任せて消えてしまったようで、相手も妖怪一人なら不意打ちを喰らわせることができればなんとかできるのではないか。淳は額に大粒の汗を浮かべた。

 

弱気になってはいけない。今こそ立ち上がるときなのではないか。

立ち向かうことができればきっとこの先何かが変わる。

「諦めなければいつか叶う」

 そう言った八雲の言葉を思い出した。

 そう。諦めない心があればきっと変われるはずだ。

 

 

 いこう。

 

 

 そう決意した淳は近くに落ちていた木の枝を掴み、走り出した。

「ちょっと待った」

 だが淳は目の前を男にふさがれた。天晴だった。

「お前、八雲や友達のために戦おうとしてるんだろ。その気持ち、俺たちがもらった。俺たちがお前の気持ちを預かって妖怪に勝ってやる」

 その言葉は決して淳を子供扱いしているわけではなかった。それが淳にもわかった。これは覚悟を持った者に対しての尊敬の言葉だった。

「淳、よく頑張ったな」

 振り返ると八雲もいた。八雲は霞に肩を抱かれ、本調子ではない様子だが、それでも淳が気がかりでここまでなんとか駆け付けたのだ。

 

「みなさん、わかりました。あの妖怪が吸い取っていたのは人々のやる気です」

「やる気?」

「あぁ。何もしたくなくなってしまうんだ」

「だから、みんな俯いていたんだね」

「それならさっき聞いたよ。気持ちをなくした人間からは怖れが奪いやすい、って」

 淳は先ほど聞いたことをニンニンジャーに伝えた。

「そうか。そんなことまで聞いていたのか」

 八雲は霞の手から離れてよろめきながら淳に近付くと、頭をぽんぽんと撫でた。

 

「淳がそこまで勇気をもって頑張ったのならば俺も頑張らなきゃならんな」

 すると八雲は忍者一番刀を取りだし、水の術を繰り出した。さながら滝のように流れてくるその水はピンポイントで八雲を濡らした。

「や、やっくん!?」

 濡れた顔を八雲はパチンと両手で叩いた。その音はとても響き、風花や凪が八雲を心配するほどだった。

 

「大丈夫か?」

 ニヤリと笑った天晴が問う。もう天晴にはいつもの八雲に戻ったことがわかっていた。

「あぁ。目が覚めた。行こう、みんな」

 もう八雲は俯いていなかった。自らの力でやる気を取り戻したのだ。

 やはりこの人は凄い。淳は思った。そして、妖怪の元へ走っていく五人を目に焼き付けるようにじっと見送った。

 

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