スワンで移動する間、蛍が簡潔に事情を説明してくれた。
「Zの侵入なんて嘘よ」
どうやら、学園が外で捕まえたZの人間を護送してきたらしい。外出禁止令は余計な騒ぎが起きないための対策だったらしいが裏目に出てしまい、中等部から噂が流れる羽目となった。
「ほら、あれよ」
護送車が移動しているのが見えた。
森の中へとスワンを着陸させ、護送車が止まるのを待つことにした。ずっと空中にいるのも疲れるし、見つかる危険も増す。今やっていることが教師達から説教どころか謹慎を食らうレベルの大事だと、2人とも理解していた。それでもやっているのは、親しい友人が巻き込まれているからだ。
どんな組織も、お偉方は大事な情報は隠蔽するものだ。混乱を避けるため、というのもあるだろう。だけど、何も知らないならまだしも、嘘を言われるのはまっぴらだ。
「護送車から出てきた容疑者に盗聴器をつける。それで彼らの話を聞こうってわけ」
蛍が取り出したのは、米粒くらいに小さな機械だった。どうやったのか蛍の手の周りをぶんぶんと飛び回る。その様子はまあ、『蚊』と訳したくなるのもわからなくない・・・・・・かもしれない。
蛍はさらに状況把握のため別の盗聴器を取り出す。本部などに取り付けてある機械につながっているやつだ。容疑者が運び込まれるより前に、移動する。蜜柑も邪魔にならないよう、黙りこくっている。
不意に、爆音が響き渡った。地面がぐらぐらと揺れた。
「――何?」
蜜柑が耳を押さえ周りを見回す。蛍もいっそう盗聴に集中しようとしたが、それをするまでもなかった。
まず聞こえたのは、銃声。それから怒濤のごとく流れてくる切迫した声音。
容疑者の護送中門前で爆破事故発生
騒ぎに乗じ2名の侵入者乱入、それにより容疑者が脱走、
うち男性と思われる方は様々なアリスを使用している――
――どういうこと?
たった今聞いたばかりの情報が、蛍の頭の中をぐるぐると巡る。突然の侵入者という異常事態も驚きだったが、何より3種類以上のアリスを持つ者なんて、聞いたことがない。そんなこと。
「蛍」
「戻るわよ。これは私たちの手に負えない」
決断したときの蛍の行動は素早い。蜜柑も親友の様子に、戸惑いながらも立ち上がった。今は一刻も早く教師達に見つけてもらい、戻らなければ。
動き出そうとしたとき、急に新しい気配が増えた。2人同時に振り返って、固まった。それは相手も――zの人間も同じだった。
「こんなところになんでガキが・・・・・・?」
膠着する時間。ふと蜜柑はzの一人と目があった。女性。
目を見開いた。うそだ、そんなまさか。
「おか」
「――いたぞ!」
蜜柑の小声を新たな声がかき消した。そしてそれは、止まっていた時間をも溶かした。はっとしたzが応戦の構えをする。その一人が自分たちにも銃を向けるのに、蛍は気づいた。銃口の先には、蜜柑がいる。
「――蜜柑ッ!」
蛍が叫んだ。蜜柑が地面に押し倒されたのと銃声が響いたのはほぼ同時。思いの外近くでした不吉な音に、蜜柑はひるんだ。覆い被さっている蛍の身体が、重い。
銃声は唐突にぱたりと途絶えた。
「逃げたか・・・・・・」
学園の人間が舌打ちをする。銃で応戦している間に、女が何らかのアリスを使ったのだろう。Zの者は忽然と姿を消した。
「君たち、どうしてこんなところへ」
少女2人へと駆け寄る。男は彼女らの異変に気づいた。
「蛍・・・・・・?」
蜜柑の手は、赤かった。それは彼女の血ではない。
蛍のものだ。
更新遅れて申し訳ありません!文章崩れているかも・・・・・・
次話は時間があれば明日あたりに上げられると思います。