学園アリス If   作:榧師

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転入初日③

 学園に通うことになっても、蜜柑は相変わらず本部の部屋に住んでいる。まあカモフラージュのために寮にもシングル用の部屋をもらった。そこから瞬間移動で帰っている。できるだけ普通の生徒として暮らしたい。蜜柑の望みだった。

 瞬間移動のアリスは、まるで自分自身のアリスであるかのようになじむ。母親自身がそのアリスだったから、相性が良いのだろう。

 

「おかえり、蜜柑」

 

 蜜柑は初校長の部屋にいた。夕食を食べてから来たのだ。

 

「どうだったかい、入学初日は」

「楽しかった! みんな賑やかな子っちやなぁーB組は」

 

 久しぶりに同年代の子供と交流できて興奮しているのだろう、はしゃぎ気味に今日のことを話す。

 

「ウチ星階級シングルなんやね?」

「私からすればスペシャルでもいいが、それは望まないだろう?」

「だって目立つのはいややし。無効化だけやとおかしいやろうしね」

「あと、能力別クラスもあるが」

「なんやそれ」

 

 アリスを能力別に、潜在系、体質系、技術系、特力系、危力系に分けたクラスもあるらしい。無効化と盗み。分類的には特力に入るのだろうか?

 

「お前は危険能力系在籍にしてもらうよ」

 

 あ、今の初校長すこし黒い。要するにあまり混じらせたくないんだ。危険能力系、その裏は学園の裏仕事を行う生徒達の集まりであり、初校長が最も目を光らせることができるクラスなのだ。何度か見かけたことのある生徒は、みんな危力系だった。

 

「担当はペルソナだ」

「あー、ペルが? ならいいや。誰がおるん?」

「明日授業がある、そのときに紹介してもらえ。ああだが、初等部からは1人いる」

「誰や?」

「日向棗だ」

 

 あいつ危力やったんかい。どうりで二ヶ月前、病院にいたわけだ。あれは、任務でもなんでもやってできた傷だろう。

 

「まだ8歳やで?」

「あいつの能力は天下一品だ。大人に負けないほど強力で、きちんとコントロールできている。加えて、炎のアリスは任務向きだ」

 

 これ以上ないほどの優秀な人材だ、と初校長が笑う。

 

「さらに、あいつは私には逆らえないよ。彼には妹、それに親友がいる。この学園にね」

 

 教室での彼を思い出す。荒んだ目、誰も――流架以外信用していない目だった。あの年でも壊れていない彼は、強い精神をもっているのだろう。けれど決して、打撃を受けていないはずがないのだ。人質を取られて、任務をさせられて――

 

「無理はさせんといてな」

「同情か? ずいぶんと気に入ったのか」

「同じクラスやし、同い年やし。そら気になるやろ」

 

 初校長が手を伸ばして蜜柑の頬をなでた。蜜柑は拒まなかった。アリスを盗っても、逆成長した彼の身体はまだ子供の姿だ。これから、ゆっくりと時を戻していくのだろう。

 

「お前もそろそろ仕事をしようか」

 

 まるでお姫様にするみたいにエスコートをする。そう、お姫様。初校長は蜜柑に執着している。過去の事も、アリスのことも含めて。それ以外にも、3年間で積み重ねた情もあるのかもしれない。

 

「お前は決して、私の元を離れてはいけないよ」

 

 ああその、頼りない子供のような、ひとりぼっちの子供のような言葉。それに絡め取られる自分は愚かなのかも知れない。お人好しにもほどがあるだろう。

 でも。

 

「わかっとるよ」

 

 過去を知って、恨みも怒りも恐怖も感じて――それでも最後に残るのは、悲しみ、哀れみだった。彼は弱い。逆成長で、精神と身体にどんどん差異が生じて、そのストレスを発散する術を知らなくて。彼の精神はいびつなものになってしまったのだ。その事実は蜜柑しか知らない。ペルソナも月も、誰も知らない。

彼から離れられない。彼をおいていこうと思えない。

 

「ウチは、あんたを見捨てたりなんかせえへんよ」

 

 蜜柑が笑うと、初校長も微笑をこぼした。どうしてか、安堵の笑みに思えるのだった。

 




初校長がかなり捏造入っているかもしれない。
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