学園アリス If   作:榧師

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蛍の転入①

 学園に通い始めて二年が経った。

 相変わらず初校長の保護下にいるものの、前よりずっと楽しい。始めはまとまりのなかったクラスだったが、ドッヂやら鬼ごっこやら(蜜柑発案)を繰り返すうちに、みんなうち解けてきた。流架はあのいじりやすく愛らしい性格になったし、棗の雰囲気も丸くなった。と思う。

 

「前はパーマが寄ったらすぐに威嚇しよったのになぁー」

「今も避けられてるけどね」

 

 心読みが指さすところに二人がいる。懲りずに飛びかかるパーマを、棗は遠慮なく蹴って髪を燃やした。ギャーギャーうるさい。ある意味パーマの根性は恐ろしいと思う。

 

「なになに~? 『うざい、失せろ、どっか行け』手厳しい三拍子だね」

「今度はルカぴょんにいっておるよ」

 

 パーマが賢くなっとる。犬猫体質で耳とヒゲ、尻尾を生やし飛びかかっているのだ。動物フェロモンの流架はそのアリスに違わず動物好きである。反応している、怯えながらも耳や尻尾に釘付けだ。その隙に飛びつかれた。

 

「や、やめろっ」

 

 ルカぴょん、真っ赤な顔で言っても説得力ありまへんよ? さらにさらに、耳を触っていちゃあ。ほらパーマがもっと興奮している。

 心読みがげらげら笑っている。「あ、パーマ馬鹿だー」と指を指したとき、また彼女の髪に火が付いた。 

 なにはともあれ、B組は騒がしくも平和な日々を過ごしています。

 

 

 

 蛍が来たのはそんな春の最中だった。

 

「はいみなさーん! 本日は――」

「転入生が来る!」

「――あらら。もう知られちゃった?」

 

 鳴海が頭を搔く。委員長が迎えに行った上、超聴力のアリスの子が朝からみんなに報告済みだ。

 

「はいそれじゃあみんなこっち注目―! 転入生の今井蛍ちゃん、10歳です。蛍ちゃんは発明のアリスで、優秀なためダブルからの入学となります」

 

 少しざわめく。シングルを飛び越えてダブル。

 今井蛍。黒髪のショートカットの、クールそうな美少女だった。緊張している風もなく、自然体で教室にいる。大人しい、という印象ではなく、自分の意思を確固として持っている。蜜柑はそう見た。少し興味を持った。

 と、彼女が蜜柑を見た。一瞬だけ視線が合う。

 

「それじゃあ――蛍ちゃん、蜜柑ちゃんの隣へ座って」

 

 鳴海の指示に、蛍は蜜柑の左隣へと座った。ちなみに右は棗、さらに右は流架であった。

 

「ウチ佐倉蜜柑っていうねん。よろしくなー蛍ちゃん」

 

 佐倉蜜柑、と蛍が声に出さずつぶやいた。何を思ったのか。

 

「蛍で良いわ。よろしく」

「じゃあウチは蜜柑でええよ」

 

 簡単に自己紹介を済ませると、ホームルームが再開した。

 

 

 

 一言で言う――今井蛍は非常に変わっていた。

 ホームルームが終わると当然みんなわっと蛍を取り囲んだ。出身地やらアリスの詳細やら年齢やら。まあ蜜柑もたどった道だ。そのときは普通に見えた。

 しかし1時間目になったとき、いつの間にか蛍は不可思議なヘルメットを被っていた。目らしき二つの穴以外見えない、不気味なヘルメットである。

 

「どうしたん、それ?」

「バカ菌防止」

 

 いつの間につくったん、それ。というかどこから取り出したん。

 蛍は気づいたときにはいつも何か作っていたウィーン、ウィーン、と道具を操作してたまに電流をバチバチ飛ばす。あまりの集中力にみんな遠巻きに見ているしかない。そばで見ている蜜柑でも、何を作っているのかさっぱりだった。というのも、毎回見るたびに手にしているものが違うからだ。手にすっぽり収まるものかと思いきや、次は床に置くくらい大きなものを作っている。一日のうちに一体幾つ作ったのだろう。地味に気になる。

 次の日から、女子が蛍の情報網やら盗撮写真のために集まったり、流架が写真に抗議したり(当然効果はなかった)、棗が辟易して北の森に逃げたりなど、今までなかった騒動もあったが、それでもまあ面白いと、蜜柑は傍観を決め込んでいた。

 まさか、蛍が親友になるとは思っていなかった。

 




蛍さんご登場編です。もうしばらくすれば原作要素も入ってくるかと。
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