ご都合主義的な部分がありますのでご了承ください。
「う・・・」
傷だらけの男が路上に倒れこんでいる。
そしてその男の前には別の男がいる。
だが真夜中であるため顔は確認できない。
「まだだ・・・」
男がぽつりと呟き、ゆっくりとその場を後にする。
その男の手には、怪しく光る1枚のカードが握られていた。
とある家庭、
「~♪」
1人の少女とも呼べる緑髪の女性がキッチンで鼻歌を歌いながら朝食の準備をしている。
だがリビングの一角では真剣な趣の少年とも呼べる男性が携帯端末のような物で連絡している。
《すまないとは思っているが、お前に頼みたい事がある》
「僕にですか?」
携帯で連絡している少年、剣崎侑斗は自分に頼み事をしたいと言い出した相手、天城カイトの言葉に戸惑う。
《最近、デュエリストを狙った連続通り魔事件の事は知っているだろ?》
「はい、知ってます」
侑斗達が住んでいる街、ハートランドシティは中心にある遊園地ハートランドを核に広がる先進都市だ。
話は変わるが、最近この街でではデュエリストを狙った連続通り魔事件が頻発している。
《その件なんだが、また被害者が出た》
「・・・」
《そこで、お前に囮を頼みたい》
カイトの言葉に顔つきが険しくなる侑斗。
いきなり囮を頼みたいと言われれば誰でも嫌な反応はするだろう。
《勘違いしないでほしい。囮といってもデュエルでの時間稼ぎだ。その間に俺達が周囲を囲み取り押さえる》
「・・・分かりました。その役、買わせてもらいます」
《この埋め合わせは絶対にする》
カイトは最後にそう言うと通話を切る。
「ユウー!ご飯できたよー!」
「うん。今いくよウィンダ」
侑斗はウィンダと呼んだ少女の元へ向かう。
この先、壮絶な戦いが待っている事も知らずに。
真夜中のハートランドシティ、
昼間とは打って変わり、仕事帰りで帰宅する人が多い。
そしてその川沿いの河川敷に侑斗と朝食の時一緒にいた少女がいた。
「ユウ、本当に出てくるの?こんな時間に」
「カイトさんの調べだとそうだって言ってたけど・・・」
侑斗は隣にいる少女、【ガスタの巫女ウィンダ】の精霊ウィンダに今の自分が知っている事を話す。
待ち伏せから数分後、特に何も起きなかったので帰ろうとした瞬間、周囲の空気が凍りついたような感覚に襲われる。
「っ!?ウィンダ、危ない!!」
「きゃあっ!!」
侑斗がウィンダを押し倒す。
その瞬間、さっきまで侑斗達がいた場所で爆発が起こり爆風が2人を襲う。
「う・・・大丈夫?」
「うん。ありがとう、ユウ」
明らかに怯えている様子だが、今はそんな場合ではない。
侑斗は身体を起こし爆発があった場所を見つめる。
すると土煙の中から人影が現れ、侑斗達の前に姿を見せる
膝裏までの長さがある黒いフード付きのロングコートに同様に黒いカーゴパンツ、そして膝裏まで滑らかに伸びた赤髪の男。
「あなたは、何者ですか?」
「・・・」
侑斗の前に現れた男は答えないまま無言で侑斗を見据える。
「ユウ・・・」
ウィンダが震えながら侑斗の背中に隠れる。
「(僕の役目は、カイトさん達が来るまで時間を稼ぐこと。少しでも・・・)どうしてデュエリストを狙うんですか?」
「・・・」
男は無言で侑斗を見つめる。
2人の間に決闘の合図と言いたそうに風が吹き、男のフードを僅かながら持ち上げる。
その男の右目は・・・血その物とも言えるほどの鮮やかな赤。
「っ!!」
侑斗はその不気味な気迫に逃げだしそうになったが、理性で抑える。
「・・・デュエルしろ」
ふと目の前の男が呟くように言う。
「デュエル?」
「そうだ」
よく見れば男の男の左目にはD・ゲイザーが、左腕にはD・パッドが装着されていた。
「分かりました。僕は剣崎侑斗と言います」
「・・・教える義理はないが、ファーブニルだ」
(ファーブニル・・・)
ファーブニルと名乗った男に侑斗は妙な感覚を覚えたが、頭を振ってその考えを追いだしD・パッドとD・ゲイザーを装着し互いにデッキをセットする。
『デュエル!!』
侑斗
手札5
ライフ4000
ファーブニル
手札5
ライフ4000
「僕の先攻。ドロー!」
侑斗
手札5→6
「ユウ・・・この人怖い・・・」
「うん、僕もだよ・・・」
ファーブニルから放たれる全身が凍りつくようなプレッシャー。
もしも、ナンバーズを巡る戦いに参加していなければ、蛇に睨まれたカエルのような状態になっていただろう。
「僕は手札から【ガスタの静寂カーム】を召喚!」
ガスタの静寂カーム レベル4 攻撃1700
「更に手札から魔法カード【ガスタの最前線】を発動!手札からレベル4以下のガスタモンスター1体を特殊召喚できる。僕は【ガスタの神官ムスト】を召喚!」
ガスタの神官ムスト レベル4 攻撃1800
「レベル4の〈カーム〉と〈ムスト〉でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!来い、【No.00 ガスタの魔剣士ユウ】!!」
No.00 ガスタの魔剣士ユウ ランク4 攻撃2500
「僕はカードを1枚伏せてターンエンド」
侑斗
手札6→2
ライフ4000
場 No.00 ガスタの魔剣士ユウ(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2500
伏せカード1枚
「・・・俺のターン」
ファーブニル
手札5→6
「相手フィールドにのみモンスターが存在する時、手札の【聖刻龍‐トフェニドラゴン】はリリースなしで特殊召喚できる」
聖刻龍‐トフェニドラゴン レベル6 攻撃2100
(聖刻龍デッキ・・・ドラゴン族主体のデッキか・・・)
蓮やミザエルとのデュエルが脳裏に浮かぶ。
1度に大量展開するというコンセプトを【激流葬】などで突けば、一気に丸裸にできるだろう。
侑斗はデッキに眠る【激流葬】のカードが手札に来る事を願う。
「更に〈トフェニドラゴン〉をリリース。【聖刻龍‐シユウドラゴン】を特殊召喚」
聖刻龍‐シユウドラゴン レベル6 攻撃2200
「リリースされた〈トフェニドラゴン〉の効果発動。このカードがリリースされた時、手札・デッキ・墓地からドラゴン族通常モンスター1体を攻撃力・守備力を0にして、特殊召喚できる。デッキからレベル6【エレキテルドラゴン】を特殊召喚」
エレキテルドラゴン レベル6 守備1000→0
「レベル6の〈シユウドラゴン〉と【エレキテルドラゴン】でオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。現れろ、【聖刻龍王‐アトゥムス】」
聖刻龍王‐アトゥムス ランク6 攻撃2400
「更に〈アトゥムス〉の効果発動。1ターンに1度オーバーレイユニットを1つ取り除き、このターンこのカードの攻撃を放棄する事で、デッキからドラゴン族モンスター1体を攻撃力・守備力を0にして、特殊召喚できる」
聖刻龍王‐アトゥムス オーバーレイユニット2→1
ファーブニルのD・パッドにセットされているデッキから1枚のカードが自動排出され、彼の赤い右目が一瞬だが強く光る。
「現れろ・・・銀河を宿し光の竜・・・【銀河眼の光子竜】!」
銀河眼の光子竜 レベル8 攻撃3000→0
「【銀河眼の光子竜】!!?」
「それは・・・カイトさんのカードのはず!?どうして!!?」
まさかのモンスターの登場に2人は驚きを隠せずにいる。
当然だ。【銀河眼の光子竜】はこの世に1枚しか存在せず、仮に作れるとしてもそれができる人物は1人しかいない。
ファーブニルは2人の反応に特に気にした様子を見せず、淡々とプレイングを続ける。
「更に速効魔法【地獄の暴走召喚】を発動。攻撃力1500以下のモンスターの特殊召喚に成功した時、そのカードと同名モンスター手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する。この時相手は相手自身の表側表示モンスター1体を選択し、そのカードと同名モンスターを手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚できるが」
「〈ガスタの魔剣士ユウ〉はエクシーズモンスター。エクストラデッキから召喚されたモンスターには対応しない・・・」
銀河眼の光子竜 レベル8 攻撃3000 ×2
「同じモンスターが3体も・・・」
侑斗は目の前に立ちはだかる3体の【銀河眼の光子竜】の存在に戸惑いを隠せない。
「レベル8の〈銀河眼〉3体でオーバーレイ!」
「レベル8のモンスターを3体!?」
3体の【銀河眼の光子竜】が次元の渦に入り銀河が生まれる。
そしてファーブニルの赤い右目が強く光り出す。
「3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。
漆黒の銀河より生まれし、愚鈍なる運命に抗いし反逆の光、今こそその姿を示せ!
エクシーズ召喚!現れろ・・・【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】!!」
銀河の中心から巨大なドラゴンの右手らしきものが地面をとらえ、銀河から黒い装甲を纏い赤い光で構成され瞳に銀河を宿した巨大な竜が姿を見せる。
ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン ランク8 攻撃3500
「【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】・・・」
【No.62 銀河眼の光子竜皇】に酷似したそのモンスターに侑斗は戦慄する。
ヌメロン・ドラゴンとのデュエルでそのカードを使用したが、モンスターから放たれるプレッシャーは段違いだ。
心無しか、その瞳からは侑斗への静かな怒りが湧きあがっているように感じられる。
「〈リべリオン・フォトン〉の効果発動。1ターンに1度オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手の表側ひょじモンスター1体の効果を無効にし、攻撃力を半分にする。更にダウンさせた攻撃力の数値分〈リべリオン・フォトン〉の攻撃力をアップする」
「そんな・・・!!」
あまりにも強力な効果の説明に侑斗は絶句する。
「お前の場には〈ガスタの魔剣士ユウ〉のみ。その力、狩らせてもらう!トリーズン・リべレーション!!」
ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン オーバーレイユニット3→2
オーバーレイユニットを体内に取り込んだ【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】の翼から強大な魔力の雷撃が放たれ、【No.00 ガスタの魔剣士ユウ】の効果と力を奪う。
力を奪われた【No.00 ガスタの魔剣士ユウ】は魔剣を地面に刺し片膝立ちになる。
No.00 ガスタの魔剣士ユウ 攻撃力2500→1250
ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン 攻撃力3500→4750
ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン
ドラゴン族 光属性 エクシーズ ランク8 攻撃力3500 守備力3000
ドラゴン族のレベル8モンスター×3
1ターンに1度このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの効果を無効にし、攻撃力を半分にする。
また、変化した攻撃力の数値分このカードの攻撃力をアップする。
このカードが「銀河眼の光子竜」を素材としている場合、以下の効果を適応する。
(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃を行う事ができる。
(2):このカードは相手の魔法・罠カードの効果では破壊されない。
「っ!!」
【No.00 ガスタの魔剣士ユウ】が【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】の効果を受けた瞬間、侑斗の両目に激痛が奔る。
「ユウ!?」
「あぁぁぁぁっ!!」
あまりの痛みに両手で顔を覆う。
「・・・え・・・?」
両手を離した瞬間、侑斗は困惑する。
視界が真っ暗になっており、先程まで覆っていた両手が見えなくなっているのだ。
「ど、どうしたんだ・・・僕は・・・目が・・・目が見えない!!」
何度も瞬きをし、自分の手を目の前にかざす。
しかし、見えるのは光の無い闇ばかりで侑斗の心に絶望が襲いかかる。
「ユウ!!」
「ウィン・・・ダ・・・?」
侑斗はウィンダの声を聞き辺りを見回す。
しかし見えるのは暗闇ばかりだ。
「ユウ・・・?」
「ウィンダ・・・どこ、どこにいるの・・・?」
「ユウ、いるよ!!ちゃんと隣にいるよ、ユウ・・・どうしたの!?」
「ごめん・・・目が見えないんだ・・・」
「そんな・・・」
信じられない事を聞きウィンダは絶句する。
ハッとしたウィンダはファーブニルの方を向く。
「ユウに何をしたの!!?」
だが、ファーブニルはウィンダの怒号に答えない。
「バトル。〈リべリオン・フォトン〉で〈ガスタの魔剣士ユウ〉を攻撃。反逆のフォトン・ディスオベイ!」
【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】の右手に赤い光の粒子が集まり始め、【No.00 ガスタの魔剣士ユウ】を粉砕すべくその拳を突き出す。
「く・・・罠カード発・・・」
見えないまま、必死にタッチパネルに表示されている自身の伏せカードを発動しようとする。
しかし、何度試しても正しい位置に指を置く事ができない。
「危ない!!罠カード【くず鉄のかかし】を発動!!」
【No.00 ガスタの魔剣士ユウ】に攻撃が当たるギリギリのところでウィンダが代わりに伏せカードを発動する。
【くず鉄のかかし】が彼らの代わりに赤き拳を受け止める。
攻撃を受け止められた【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】は悔しそうにファーブニルの場に戻るが、侑斗達はこのカードの真の恐怖を知らない。
「〈リべリオン・フォトン〉は〈銀河眼〉をオーバーレイユニットにしている時、1度のバトルフェイズに2回攻撃できる」
「2回・・・攻撃・・・?」
「【くず鉄のかかし】はもう発動できないよ!!」
侑斗とウィンダが動揺している間に【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】が攻撃態勢を取る。
「もう1度だ。〈リべリオン・フォトン〉で〈ガスタの魔剣士ユウ〉を攻撃。反逆のフォトン・ディスオベイ、セカンド・ストライク!!」
先程とは比べ物にならない光が【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】の右手に宿り、さっきのリベンジと言いたそうにその拳を振るう。
【No.00 ガスタの魔剣士ユウ】は2本の魔剣で拳を受け止めるが、その圧倒的な力に敵うはずもなく剣は砕け散る。
そしてそのまま輝きを放つ拳はその華奢な肉体を貫いていった。
「うわあぁぁぁぁぁ!!!」
「ユウーーーー!!」
侑斗
ライフ4000→500
「その程度か?・・・カードを1枚伏せ、ターンエンド」
ファーブニル
手札6→2
ライフ4000
場 ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク8 恋激4750
聖刻龍王‐アトゥムス(オーバーレイユニット1) ランク6 攻撃2400
伏せカード1枚
「僕の・・・ター・・・」
必死にデッキトップに指をかけようとするが、目が見えないせいで全くうまくいかない。
「ユウ・・・」
(駄目だ・・・このままだと足止めどころかウィンダを・・・)
「くそ!どこだ侑斗!!」
夜の街中、待ち伏せを任されている遊馬と凌牙は必死になって街中を駆けまわっている。
先程まで侑斗のD・パッドからの信号があったのだが、故障なのか急に反応が消えてしまったのだ。
「こんなとこでウロウロしてる場合じゃねえってのに!!」
遊馬は今の状態にイライラを隠せない。
すると、2人にカイトから通信が入る。
《遊馬、凌牙、南の河川敷で超大型の召喚エネルギーを確認した。おそらくそこだ。すぐに向かってくれ!》
「分かった!」
「ったく、手間掛けさせやがって・・・」
カイトから連絡を受けた2人はすぐにその場所へ向かう。
(侑斗・・・無事でいてくれよ・・・!)
「デッキ・・・デッキはどこに・・・!?」
焦りの色を隠せぬまま、手探りでデュエルディスクに触れる。
そして、それを気にしすぎたために手札を落としてしまう。
「カードが!!」
「ユウ、ここは私に任せて!!」
ウィンダはカードを拾うと、侑斗の代わりにカードをドローする。
侑斗
手札2→3
「ウィンダ・・・?」
「よくもユウを・・・絶対に許さない!!私は手札から魔法カード【死者蘇生】を発動!蘇って、〈ガスタの魔剣士ユウ〉!!」
No.00 ガスタの魔剣士ユウ ランク4 攻撃2500
「更に私はランク4の〈ユウ〉でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!現れて、【CNo.00 ガスタの魔剣士ユウ・暴風】!!」
2人のペンダントが緑色の光を放ち、【No.00 ガスタの魔剣士ユウ】にカオスの力を与えていく。
(うまくいった!!私でも、〈ユウ〉をカオス化できた!!)
CNo.00 ガスタの魔剣士ユウ・暴風 ランク4 攻撃2500
「〈ユウ・暴風〉の効果発動!1ターンに1度私のライフが1000以下の時、カオスオーバーレイユニットを1つ取り除くことで相手フィールドのモンスターの攻撃力・守備力を半分にするよ!アストレイ・ストーム!!」
CNo.00 ガスタの魔剣士ユウ・暴風 カオスオーバーレイユニット1→0
凝縮された暴風の球体がファーブニルのフィールドで炸裂する。
凄まじい勢いの風が起こす鎌鼬が【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】の肉体に傷を付けていく。
ファーブニルはその光景をただ見つめるが、【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】は大丈夫だと言いたげにその目を向ける。
ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン 攻撃力4750→2375
聖刻龍王‐アトゥムス 攻撃力2400→1200
「バトル!!〈ユウ・暴風〉で【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】を攻撃!!トライ・ストラッシュ!!」
「駄目だ・・・ウィンダ!!」
伏せカードの存在を覚えていた侑斗が静止するが時すでに遅し。
【CNo.00 ガスタの魔剣士ユウ・暴風】の2本の剣が巨竜に向け投擲される。
攻撃が通る寸前、ファーブニルの右手がD・パッドのタッチパネルに移動する。
「え・・・まさか・・・!?」
運命という物が存在するとすれば、それは今の侑斗達にとっては悪魔とでも言うべきだろう。
「罠発動。【聖なるバリア‐ミラーフォース】。相手モンスターの攻撃宣言時、相手の攻撃表示モンスターを全て破壊する」
【CNo.00 ガスタの魔剣士ユウ・暴風】が投擲した剣は突如現れた虹色のバリアに命中する。
そしてそのバリアが強い光を放つ。
「ああ・・・」
光が消えると、目の前にいた【CNo.00 ガスタの魔剣士ユウ・暴風】の姿が無かった。
「私は・・・モンスターを裏守備表示で召喚。カードを1枚伏せてターンエンド・・・」
侑斗
手札3→0
ライフ500
場 裏守備モンスター1体
伏せカード2枚(1枚は【くず鉄のかかし】)
「俺のターン」
ファーブニル
手札2→3
「・・・装備魔法【メテオ・ストライク】を〈リべリオン・フォトン〉に装備。これにより、〈リべリオン・フォトン〉は貫通効果を得る」
【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】の身体に先程とは違う光が纏わり始める。
(貫通効果・・・!?けど、さっき伏せた【聖なるバリア‐ミラーフォース】なら倒せる!!)
「バトルだ。〈リべリオン・フォトン〉で裏守備モンスターを攻撃。反逆のフォトン・ディスオベイ!」
【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】が再びその右手に赤き光を宿し侑斗達に襲いかかる。
「罠発動!【聖なるバリア‐ミラーフォース】!!これで相手の攻撃表示モンスターを全て破壊するよ!!」
現れた虹色のバリアが赤き拳を受け止めると、強い光を放つ。
その光が収まった後には【聖刻龍王‐アトゥムス】の姿は無かったが・・・
【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】は、自身にバリアを張った状態で存在していた。
「そ・・・んな・・・」
「どうしたの??〈リべリオン・フォトン〉は倒したんじゃないの??」
「なんで・・・なんで破壊されないの??」
「破壊されていない・・・?」
ウィンダの言葉に耳を疑うが、今の状態では侑斗に確認の術はない。
「〈リべリオン・フォトン〉は〈銀河眼〉をオーバーレイユニットにしている時、相手の魔法・罠カードの効果では破壊されない」
そう、これが【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】の真の恐ろしさだ。
【銀河眼の光子竜】を素材にすれば、高攻撃力の連続攻撃、破壊耐性などの強力な効果が発揮される。
その圧倒的な力はまさに「反逆者」の名に相応しい。
「破壊できないなら、除外かバウンスしかない・・・」
「〈ユウ・清風〉を使えばいいけど、今の手札にはRUMも蘇生カードも無いよ!」
破壊耐性の裏をかくための術はデッキに入っているが、今の手札にはない。
「〈リべリオン・フォトン〉が破壊されなかったため、バトルは続行だ」
【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】がバリアを解除し、再び右手に赤い粒子を纏わせ2人に襲いかかる。
「〈ホープ〉!!」
「〈アークナイト〉!!」
【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】が2人に止めを刺そうとした瞬間、どこからか白い鎧を纏った戦士が【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】に剣を振り下ろし、上下二股に分かれた戦艦の様なモンスターが【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】に向け白い光線を放つ。
「〈ホープ〉と〈Ark knight〉!?」
「まさか・・・遊馬君と凌牙君が・・・??」
2体のモンスターの名前を聞き、即座に2人の友人の名前が頭に浮かぶ。
「おい!大丈夫か!?」
遊馬と凌牙が土手から滑り降り、侑斗達の下に向かう。
「カイトから聞いてすっ飛んできたけど・・・何なんだよあのモンスターは!!」
遊馬は初めて見た【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】に驚きを隠せない。
「あれは【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】っていうモンスターなの・・・とっても強くて、【くず鉄のかかし】でも〈ミラーフォース〉でも凌げなかったの!!」
「逃げるんだ・・・きっと、今の僕たちじゃ勝てない・・・!!」
「く・・・!!」
遊馬は悔しそうに【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】とそれを操るファーブニルの方を向く。
「遊馬、ここは危険だ・すぐに退け!」
「アストラル!?」
遊馬の隣に浮いているアストラルからの指示も侑斗と同じだ。
「どうしてだよアストラル!!このまま尻尾巻いて逃げろってのか!?」
「あのモンスターは私も見た事がない。対策がとれない以上ここは退くべきだ!」
「くそ・・・!!」
「グズグズすんな!!走れ!!」
凌牙からの怒号が飛ぶ。
遊馬は親の敵のようにファーブニルを睨んだ後やむを得ず撤退し、その行動を見た【No.39 希望皇ホープ】と【No.101 S・H・Ark knight】も撤退する。
その動きを見た【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】が追撃に入ろうとするが、
「よせ、〈リベリオン〉」
ファーブニルに止められ悔しそうに侑斗達を見つめる。
するとファーブニルが【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】の背中に乗る。
「もうこの世界でやる事はない。行くぞ」
ファーブニルの命令を聞き、【ギャラクシーアイズ・リべリオン・フォトン・ドラゴン】はファーブニルを乗せたまま遠い空へ消えた。
「そうか・・・俺達の知らない〈ギャラクシーアイズ〉を使っている奴が通り魔事件の・・・」
ハートの塔に逃げ込んだ侑斗達から事情を聴いたカイトが解析をしながらそう口にする。
「ああ、そいつが侑斗の・・・」
「・・・」
侑斗の、という言葉に一同が沈黙する。
今の侑斗はウィンダに支えられなければ動くことすらできないのだ。
「ごめん・・・僕のせいで・・・」
侑斗は心底落ち込んでいる。
実際には目は開いているが、この状態でも何も見る事はできない。
今の侑斗ははっきり言ってしまえば、ただの足手まといだ。
「いや・・・もっと早く俺達が到着していれば・・・」
「今は攻め合っている場合ではない。問題は次に奴がどこへ出現するのか、そして目の治療だ」
オービタル7とオボミ、そして彼らの3人の子供もフル動員してファーブニルの居場所の特定を急ぐ。
「カイト様、例のモンスターの召喚反応を検知しました!!」
「何!?どこだ!?」
「西暦2040年、アルトセイム中心街です!!」
「2040年!?10年も前じゃねえか!!」
まさかの結果に遊馬は驚きを隠せない。
「2040年 20時21分51秒 アルトセイム港湾倉庫街。そこから奴の反応を確認した」
「だが、見つけたとしてどうやって10年前へタイムスリップする?これではなす術ないも同然だ」
「それについては心配いらないよ」
ドアが開き、バイロンが入ってくる。
そして、机の上には見た事のない金属でできた時計がある。
「これはアストライトとバリアライトの混合物、ヌメロンライトだ。バリアライトの数倍以上のエネルギーがある。これがあるとあるいは・・・」
「バイロン、ヌメロンライトのエネルギーを利用すれば、時間移動も可能なのか?」
「時間移動・・・?」
カイトからの言葉を受け、しばらく考えるとゆっくりと答える。
「理論的には可能だ。ただし・・・アストラル世界や精霊世界、バリアン世界へ移動するよりも大量のエネルギーが必要になる。だから、この鉱石1つだけでは片道で1回しかできないだろう。そして、今手に入っているヌメロンライトは1つしかない」
「ということは・・・2度と帰ってこれないってことかよ!?」
「我々もできる限りの事はするつもりだ。とにかく、これからフェイカーと一緒に開発は行うつもりだ。そして、決心ができたら明日の朝9時にまたハートの塔へ来てくれ」
「ならば、私はヌメロンライトの調達に行こう。遊馬」
「ああ、頼んだぜ・・・アストラル!!」
アストラルは頷くと、皇の鍵が青い光を放つ。
光が消えると同時にアストラルも姿を消した。
皇の鍵はヌメロンライトのかけらを成分に混ぜた事で、アストラル単独という条件があるが、いつでも人間界とアストラル世界を行き来できるようになった。
「俺はドルべ達と連絡を取る。バリアンの力も少しは役に立つはずだ」
凌牙は連絡を取るためにハートの塔を出て、カイトはコンピュータにかじりつく。
「・・・」
夜の自室、侑斗は自分のデッキが置かれたテーブルの前で静かに座っている。
少しすると、ウィンダがカードボックスを持って入ってくる。
「ユウ、言っていたカードは全部集まったよ。あとはどうすればいいの?」
「じゃあ、これからデッキを改良しよう。今の僕のデッキに入ってるカードは全部覚えているから、僕が言うとおりにやってくれる?もちろん、ウィンダも自分の意見を言ってくれたらうれしいよ」
「うん!」
頷くと、ウィンダは代わりに侑斗のデッキをいじり始める。
「ユウ・・・」
「何?ウィンダ」
「ユウが行くって言うんだったら、一緒に行くからね!どんな時でも傍にいたいし!」
「ウィンダ・・・確かに、いつもウィンダは僕と一緒にいてくれるね」
WDCの時もバリアンとの戦いの時、そしてヌメロン・ドラゴンとの戦い。
いずれの戦いにおいても、ウィンダは侑斗の傍にいた。
どんなに危険だと分かっていても、傍にいる事をやめない。
たとえ今度の戦いが下手をすると2度とこの時間に戻る事ができないものだとしても。
「でも、蓮君達には何も言わなくていいの?」
「うん、もう会えないってわけじゃないから。それに・・・目が見えてないってことを知られたくないし」
「ユウ・・・」
「それにしても、目が見えないとこんなに不安になるんだって初めて分かったよ。・・・一瞬だけでもいい。ウィンダの笑顔が見たいな・・・。ちゃんと声は聞こえるけど、まるでウィンダが・・・」
遠くにいるみたいだと言う前に、侑斗の唇がふさがる。
甘くて柔らかい感覚から、そうしているのがウィンダの唇だということは分かった。
「おまじないだよ・・・ユウ」
「ウィンダ・・・」
そのまま抱きしめられた侑斗はそのまま彼女を抱きしめ返す。
(大丈夫・・・私がしっかりしないと!今度は私がユウを守るから・・・!)
翌日の朝、ハートの塔・・・。
コンピュータ室の中には侑斗とウィンダ、カイト、バイロン、Dr.フェイカーがいる。
侑斗とウィンダの左腕にはヌメロンライトが埋め込まれたブレスレットがあり、2人は手をつないでいる。
「侑斗・・・もう1度言うが、1度その時間へ行ったら、簡単には戻ることはできない。分かっているな」
「はい、大丈夫です。必ず・・・僕達はこの時間に戻ってきます」
「そうか・・・」
これ以上確認する事をやめたカイトは侑斗に黒いサングラスをかける。
「これは・・・?」
「お守りとでも思ってとっておけ。これで目を隠すことはできる」
「あんまり、僕には似合わない気がしますが・・・」
「カイト、そろそろ始めるぞ」
「ああ・・・分かっているよ、父さん」
Dr.フェイカーがコンピュータにパスワードを入力すると、ブレスレットが光り始める。
それと共に、侑斗とウィンダの身体を緑色の光が包み込む。
「侑斗、例のカードはちゃんとデッキに入れているね?」
「はい。ウィンダがちゃんと・・・」
「それはよかった・・・。じゃあ、武運を祈ってるよ」
「はい・・・」
「いってきまーす!」
2人が光に包まれて消えていく。
光が消えると、彼らがいた場所はまるで最初から誰もいなかったかのような状態になっていた。
「バイロン、侑斗に渡したカードというのは?」
バイロンの言葉の中にあった例のカードに疑問を持ったカイトが尋ねる。
彼の事だから、不審な物は入れてはいないと信じてはいるものの、確認のために聞きたいと思ったのだ。
「対策だよ、きっと2人にとって大きな助けになる・・・」
「うーん・・・」
しばらくして、気を失っていたウィンダが目を覚ます。
ブレスレットの光はすでに消えていて、目の前に広がるのはハートランドシティほどではないが先進的な乗り物や建造物が立ち並んだ街だ。
背後にあるのは青い海で、朝早いためか漁船が何隻か見える。
「ユウ・・・?」
隣を見ると、まだ気を失っている侑斗がウィンダの手を握っている。
「ユウ、着いたよ。アルトセイムに・・・」
時間と空間をさかのぼって、やってきましたヒーローが!!
と言う訳で第1話、お楽しみいただけましたか?
感想あればぜひお願いします!
では!