待たせてしまった方々・・・ごめんなさい!
デュエルアカデミア・アルトセイム校、
沿岸都市アルトセイムの南側に位置する海を臨むこの学校の校庭に人だかりができている。
「アイシス~!危ないから下りて来いって!!」
一際高く育った木の太い枝の上に乗っている黒いショートヘアの少女に向け叫ぶ茶色いショートヘアの少年、その隣にいる腰まで届く銀髪の少女。
御剣トーマとリリィ・シュテンベルグは木に登っている少女の身を案じている。
「大丈夫!」
そんな2人を後目にその少女、アイシス・レイナードはそう返す。
その視線の先には、1匹の黒猫がいた。
この高さに恐怖し降りられなくなってしまったのか、その身体は微かに震えており、弱々しい鳴き声で鳴く。
「ほら、大丈夫だからね・・・わっ!!」
言ったそばからアイシスは枝から足を滑らせる。
『っ!!』
トーマとリリィが目を瞑り、周りの生徒からは悲鳴が聞こえる。
だが上を見てみれば、
「ぐ・・・この・・・!!」
枝にしがみつきよじ登っているアイシスの姿があった。
「アイシスー!!もうやめとけって!!先生呼んでくるから!!」
「大丈夫だって!!」
枝によじ登ったアイシスは今度は枝に跨る形の体制を取り猫に近づく。
そして猫の下へ辿り着いた。
「よかった・・・もう大丈夫だからね」
無事を確認したアイシスは大いに安堵する。
だが・・・
ギギギ・・・
「ふぇ?」
枝が軋む音が聞こえ出しアイシスが間抜けた声を上げ、そして、
バキッ!
「アイシスッ!!」
「きゃっ!!」
トーマが悲鳴に近い叫び声をあげ、リリィは両手でその惨事から背くように顔を覆う。
周りの生徒達からも悲鳴が飛び交うが、その心配は杞憂に終わる。
「ニャ~!」
元気そうな猫の鳴き声が響く。
落ちる寸前、アイシスが両手で黒猫をキャッチしており、落下する事を辛うじて避ける事ができたのだ。
その様子に生徒達から安堵の声が聞こえ出す。
「よかった・・・あれ?」
だが代わりに新たな問題が発生した。
「え?・・・ちょ、ちょっと!!」
アイシスのスカートのベルトが先程枝の折れた部分に引っかかってしまったのだ。
足をジタバタさせても外れる気配がない。
「わあ~!!お、下ろしてぇ~!!」
今度はアイシスが下りられなくなってしまったと言う事だ。
「あ~・・・トーマ、先生呼んでくるね?」
「ああ・・・頼むよ」
その様子を見かねたリリィは、トーマに一声かけ職員室に向かう。
「ニャ―ニャー!!」
それと入れ替わる形でトーマの足元に燃えるような赤い毛並みの猫が現れる。
彼はトーマの持つカード【焔猫 スカーレット】の精霊だ。
「どうした、スカーレット?」
「ニャー!!」
スカーレットが大急ぎで駆け出す。
何かあったのかと思い、トーマはその跡をつける。
校舎裏の少し急な坂を下り下にある道路を渡れば砂浜がある。
そこには緑色のマウンテンパーカーにジーンズ、顔にサングラスをかけた少年が倒れていた。
「なっ!?おい、大丈夫か!?」
トーマは少年に駆け寄る。
「しっかりしろ、目を開けてくれ!!」
「やめて!!」
少年、侑斗に近づくトーマを少女、ウィンダが止める
大声が聞こえるはずなのだが、まだ気絶しているためか、侑斗はピクリとも反応しない。
「・・・!!あなたは・・・」
トーマの顔を見てハッとなる。
目の色が異なるが、その顔立ちが敵、ファーブニルとそっくりなのだ。
「ファーブニル・・・!!よくも、よくもユウの目を!!!」
「えっ!?ちょっと待て!!何があったか知らないけど誤解だ!!俺はファーブニルって奴じゃない!!」
「ニャニャニャッ!!」
いきなり別人扱いされ戸惑うトーマを弁護するかのようにスカーレットが首をブンブン横に振る。
トーマはやっていないと伝えたいのだろう。
「嘘よ!だって、こんなにそっくりな人いないもん!!あなたには・・・ユウに手出しはさせない!!」
侑斗のD・パッドをデッキ毎取り、左腕に装着する。
冷静さを欠いているウィンダにはトーマの言葉が嘘にしか聞こえないようだ。
「絶対に勝って、ユウの視力を取り戻す!!」
「ホントに違うって!!」
トーマ本人からすればとんでもない迷惑だ。
《デュエルモード・スタンバイ》
だがトーマのデュエルディスクは既に臨戦態勢だ。
「あ~・・・ったく!!誰だこんな事態招いたの!!」
悪態をつきながらデッキを取り出しデュエルディスクにセットし、手札を5枚ドローする。
『デュエル!!』
トーマ
手札5
ライフ4000
ウィンダ
手札5
ライフ4000
「俺の先攻。ドロー!」
トーマ
手札5→6
「(ここは他のみんなに説得してもらうしか・・・!)こいつは手札のモンスター1体を墓地へ送ることで、レベル4モンスターとして特殊召喚できる。【ムーンライト・シンガー】を特殊召喚!」
手札から墓地へ送られたカード
・ムーンライト・バタフライ
トーマの場に白いセーラー服を纏い、マイク付きヘッドホンを付けエレキギターを持った銀髪ショートヘアの少女が現れる。
ムーンライト・シンガー レベル2→4 攻撃1000
「そして、【ムーンライト・ウィッチ】を通常召喚!ユキ、頼む!」
「はいっ!」
ムーンライト・ウィッチ レベル3 攻撃1200(チューナー)
「こいつの召喚に成功した時、墓地のレベル3以下のモンスター1体を効果を無効にして守備力を0にすることで、表側守備表示で特殊召喚できる。墓地の【ムーンライト・バタフライ】を特殊召喚!」
「はあぁぁぁ!!」
ユキの持つ三日月の杖から月の光が放出され、その光の中から両羽根に三日月の模様をあしらった白い蝶が舞う。
ムーンライト・バタフライ レベル1 守備0
「ムーンライト・・・??」
トーマが召喚したモンスターを見て、困惑する。
彼のデッキがファーブニルの使用していたデッキとはコンセプトが異なるからだ。
(もしかして、本当にファーブニルじゃない・・・?ううん、違う!!きっと、対策されないようにデッキを・・・)
「待ってください!ご主人様は本当に人を襲うような事は絶対にしません!!」
トーマから事情を聴いた【ムーンライト・ウィッチ】の精霊ユキが弁護に入る。
「ええ・・・!?精霊まで味方につけてるの??」
「信じてください!!」
「はあ・・・」
ウィンダの反応を見る限り、他の精霊達でも説得できないほど冷静さを欠いているようだ。
こうなればトーマの取る手段は1つしかない。
「(あの勘違い女を打ち負かす!)ユキ、もういい。こうなれば常套手段だ!」
「で、ですが・・・」
「言いたい事は分かるけど仕方ない」
「・・・はい・・・」
諦めたのか声のトーンが下がったユキがフィールドに向き直る。
「レベル4になった【ムーンライト・シンガー】と、レベル1の【ムーンライト・バタフライ】に、レベル3の【ムーンライト・ウィッチ】をチューニング!!
「はあぁぁぁぁぁっ!!」
聖なる月の力を宿し竜よ、今こそ古の誓いに従い、我が手に力を!!
シンクロ召喚!!翔来せよ、【シルバームーン・ドラゴン】!!」
「はあぁぁぁぁぁっ!!」
シルバームーン・ドラゴン レベル8 攻撃2700
「【シルバームーン・ドラゴン】!?あれが・・・??」
雑誌やテレビで見た事ある竜だが、こうして間近で見るのは初めてだ。
他のモンスターには感じられない、不思議な感覚を覚える。
「マスター?」
「ごめんユウキ、なんか知らないけどあいつに勘違いされてる」
トーマはユウキに今の状況を説明する。
何故か他人に間違われこのような状態になっている事を。
「え!?ちょ、ちょっと待ってよ!!マスターは絶対にそんな事しないよ!!」
ユウキはウィンダに弁解するが、もう無駄だという事はトーマは重々理解している。
「でも・・・負けない!!ユウを守らないと!!」
トーマが思っている通り、ウィンダの態度に変化はない。
「そんな・・・」
「カードを1枚伏せて、ターンエンド」
トーマ
手札6→2
ライフ4000
場 シルバームーン・ドラゴン レベル8 攻撃2700
伏せカード1枚
「私のターン、ドロー!」
ウィンダ
手札5→6
「私はモンスターを裏守備表示で召喚!カードを2枚伏せて、ターンエンド!」
ウィンダ
手札6→3
ライフ4000
場 裏守備モンスター1
伏せカード2枚
「(裏守備モンスターか。エミルがよく取ってた手だ・・・となると、あのデッキは・・・)俺のターン!」
トーマ
手札2→3
「手札から【ムーンライト・ハウンドドッグ】を召喚!」
トーマの場に白い体毛に覆われ、額に三日月の模様を付けた狼のようなモンスターが現れる。
ムーンライト・ハウンドドッグ レベル4 攻撃1800
「こいつの召喚に成功し、俺の墓地にムーンライトモンスターが3体以上存在する時、こいつを召喚したターン俺達は伏せカードを発動できない!」
【ムーンライト・ハウンドドッグ】が空に向けて咆哮すると、トーマとウィンダの伏せカードが白い不思議は光に覆われ使用不能になる。
ムーンライト・ハウンドドッグ
獣族 光属性 レベル4 攻撃力1800 守備力1500
自分の墓地に「ムーンライトと名の付いたモンスターが3体以上存在する時にこのカードの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、このカードを召喚したターン、お互いのプレイヤーはセットされた魔法・罠カードを発動する事はできない。
「あうう・・・」
白い光に覆われた伏せカードをウィンダは悔しそうに見つめる。
「バトル・・・といきたいけど、お前のデッキ、ひょっとしてガスタデッキだろ?」
これはトーマの経験からの推測だ。
子供の頃にエミルとデュエルした時にエミルがよく使っていた手段だからという簡単な事だが。
「そうだよ・・・これはユウのデッキ!!ユウのデッキでファーブニル、あなたを倒す!!」
「だから俺は違うって!!・・・あんまり使いたくないけど、バトルフェイズ前に装備魔法【
【ムーンライト・ハウンドドッグ】の効果対象はセットされた魔法・罠カードであるため、手札から発動される魔法カードには影響が無いのだ。
ユウキの背中に2本のキャノン砲とゲームに出てくる戦闘機のような形状のジェットバーニア、両手・両足にロボットを模したような装甲が装着される。
シルバームーン・ドラゴン 攻撃力2700→3500
「攻撃力3500の貫通ダメージ付き!!?」
「そしてバトル!裏守備モンスター・・・おそらく【ガスタ・ガルド】!そいつに攻撃!フォトン・スパイラル・ブラスター!!」
「はあぁぁぁぁぁ!!」
ユウキの口から銀色のブレスが放たれると同時に2本のキャノン砲から収束された銀色の光線が放たれ放たれた3つの銀色の光線が合体し裏守備状態のモンスターを飲み込む。
「ピーーーー!!」
光線を受けたモンスター、【ガスタ・ガルド】が消えていく。
「ガルドーーー!!ファーブニル、よくもガルドを!!」
裏守備モンスター
・ガスタ・ガルド レベル3 守備500
ウィンダ
ライフ4000→1000
「ガルドの効果発動!このカードがフィールドから墓地へ送られた時、デッキからレベル2以下のガスタモンスター1体を特殊召喚できる。お願い、私の分身!」
ガスタの巫女 ウィンダ レベル2 守備400
「【ムーンライト・ハウンドドッグ】で追撃!ムーンアサルト・クロー!!」
トーマの命令を受けた【ムーンライト・ハウンドドッグ】が咆哮を上げ、【ガスタの巫女 ウィンダ】にその前足の爪を立てる。
「うう、分身でも自分が倒されるのを見るのは変な感じだなぁ・・・。このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊された時、デッキからガスタと名の付くチューナーモンスターを特殊召喚できる!今度は【ガスタ・イグル】を特殊召喚!」
ガスタ・イグル レベル1 攻撃200(チューナー)
「ターンエンド!エンドフェイズと同時に、【ムーンライト・ハウンドドッグ】の効果で使えなかった伏せカードは元に戻る」
トーマのエンドフェイズ宣言と同時にトーマとウィンダの伏せカードを覆っていた白い光が消える。
トーマ
手札3→1
ライフ4000
場 シルバームーン・ドラゴン(【暴竜装甲-イカルガ-】装備) レベル8 攻撃3500
ムーンライト・ハウンドドッグ レベル4 攻撃1800
伏せカード1枚
「私のターン、ドロー!」
ウィンダ
手札3→4
「私は手札から【ガスタの神裔 ピリカ】を召喚!」
ガスタの神裔 ピリカ レベル3 攻撃1000
(あれは確か墓地の風属性チューナーを蘇生できる奴・・・シンクロ狙いか?)
「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、墓地から風属性チューナーモンスター1体を守備表示で特殊召喚できるよ!私は〈ガルド〉を特殊召喚!」
「ピーー!」
ガスタ・ガルド レベル3 守備300(チューナー)
「さらにこのカードは私のフィールドにガスタモンスターが2体以上存在する時、手札から特殊召喚できるよ!【ガスタの武器職人 セイ】を特殊召喚!」
ガスタの武器職人 セイ レベル4 攻撃1900
「私はレベル3の〈ピリカ〉にレベル3の〈ガルド〉をチューニング!シンクロ召喚!来て、【ダイガスタ・スフィアード】!!」
ダイガスタ・スフィアード レベル6 攻撃2000
「やっぱり来たな・・・【ダイガスタ・スフィアード】!!」
トーマは目の前に登場した女戦士に敵意剥き出しだ。
過去にエミルとのデュエルで散々苦しめられたモンスターだ。
「【ダイガスタ・スフィアード】の効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功した時、墓地からガスタモンスター1体を手札に戻す!私は〈ピリカ〉を手札に!そして手札から魔法カード【ギャラクシー・サイクロン】を発動!フィールド上にセットされた魔法・罠カード1枚を破壊するよ!」
「く!!」
カードから発生した竜巻がトーマの伏せカードを飲み込む。
破壊されたカード
・くず鉄のかかし
「バトル!〈スフィアード〉で【シルバームーン・ドラゴン】を攻撃!!」
【ダイガスタ・スフィアード】が風を纏った杖をユウキに叩きつける。
「手札の【ムーンライト・フォーゲル】の効果発動!俺の場のモンスターが攻撃された時にこいつを特殊召喚でき、このターン、モンスターとの戦闘で俺が受ける戦闘ダメージを半分にする!!」
トーマの場に白い羽毛で額に三日月の模様を付けたモンスターが現れ、トーマと彼のモンスター達にバリアを張る、
ムーンライト・フォーゲル レベル3 守備900
【ダイガスタ・スフィアード】の持つ杖から暴風のスフィアが放たれ、ユウキの身体をすり抜けトーマに向かう。
だが【ムーンライト・フォーゲル】が張ったバリアにより風の威力が弱まり、通り抜けた風のスフィアがトーマに命中する。
トーマ
ライフ4000→3250
「今度は〈イグル〉で【シルバームーン・ドラゴン】を攻撃!」
【ガスタ・イグル】がユウキに向けて羽根の弾丸を飛ばすと、すぐにフィールドから下がる。
ユウキに羽根の弾丸が当たり跳ね返るが、その瞬間【ダイガスタ・スフィアード】の杖から暴風のスフィアが放たれる。
そしてそれを【ムーンライト・フォーゲル】のバリアがその威力を弱める。
しかし今回は攻撃力の差が大きい為、バリアがあってもその威力はかなりの物だ。
「く!!」
トーマ
ライフ3250→1600
「イグルの効果発動!このカードが戦闘で破壊された時、チューナー以外のレベル4以下のガスタモンスター1体を特殊召喚できるよ!今度は〈カムイ〉を特殊召喚!」
ガスタの希望 カムイ レベル2 攻撃200
「最後に〈カムイ〉で攻撃すれば、1ターンキル成立!!お願い、〈カムイ〉!」
【ガスタの希望 カムイ】が呪文を唱え、小さな突風を起こす。
「墓地の【ムーンライト・シンガー】の効果発動!!」
トーマの場に透明な状態の【ムーンライト・シンガー】が現れる。
「ライフ2000以下で相手モンスターが攻撃してきた時、墓地のこいつと他のムーンライトモンスター1体を除外する事で、その攻撃を無効にしてバトルフェイズを強制終了させる!!」
墓地から除外したカード
・ムーンライト・シンガー
・ムーンライト・バタフライ
【ムーンライト・シンガー】が持っているエレキギターを弾き出すと、そこから不思議な波紋が放たれ【ガスタの希望 カムイ】が放った突風を打消し、さらに攻撃宣言を行っていない【ガスタの武器職人 セイ】が演奏に目を奪われる。
ムーンライト・シンガー
魔法使い族 光属性 レベル2 攻撃力400 守備力600
(1):手札のモンスターカード1枚を手札から墓地へ送る事で、このカードはレベル4モンスターとして手札から特殊召喚できる。
(2):自分のライフが2000の時、相手モンスターの攻撃宣言時、墓地のこのカードとこのカード以外の「ムーンライト」と名の付いたモンスター1体をゲームから除外する事で発動できる。その攻撃を無効にしバトルフェイズを終了させる。
「嘘・・・!?じゃあ、私はカードを1枚伏せてターンエンド!」
ウィンダ
手札4→1(【ガスタの神裔 ピリカ】)
ライフ1000
場 ダイガスタ・スフィアード レベル6 攻撃2000
ガスタの武器職人 セイ レベル4 攻撃1900
ガスタの希望 カムイ レベル2 攻撃200
伏せカード3枚
「俺のターン!」
トーマ
手札0→1
トーマがドローした瞬間、彼のエクストラデッキのカードの1枚が光り出す。
「!?」
トーマはその光るカードを見る
それは昨晩アルトセイムに来た遊星から受け取った何も書かれていない黒いカードだ。
そのカードに徐々にカード名・イラスト・テキストが描かれていく。
「これは・・・!!」
その光を見た瞬間、トーマの頭に膨大な情報が入ってくる。
「・・・俺は、【ムーンライト・ホーリーベル】を召喚!」
トーマの場に右手に金色のハンドベルを持った光の人間が現れる。
ムーンライト・ホーリーベル レベル1 攻撃0(チューナー)
「【ムーンライト・ホーリーベル】は1ターンに1度、俺の場か墓地のムーンライトモンスターを選択してその力を発揮できる。1つは場のモンスターと同じレベルになる効果、もう1つは元々のレベルと墓地の仲間のレベルを足す効果。俺は場の【ムーンライト・ハウンドドッグ】とこいつとを同じレベルにする!」
【ムーンライト・ホーリーベル】がそのハンドベルを鳴らすと、【ムーンライト・ハウンドドッグ】と自身が白い光に包まれる。
ムーンライト・ホーリーベル レベル1→4
ムーンライト・ホーリーベル
天使族 光属性 チューナー レベル1 攻撃力0 守備力0
1ターンに1度、以下の効果のいずれか1つを発動できる。
(1):自分フィールド上に表側表示で存在するこのカード以外の「ムーンライト」と名の付いたモンスター1体を選択して発動できる。このカードのレベルはターン終了時まで選択したモンスターのレベルと同じになる。
(2):自分の墓地の「ムーンライト」と名の付いたモンスター1体を選択して発動できる。ターン終了時までこのカードのレベルは選択したモンスターのレベルとこのカードの元々のレベルの合計となる。
「レベル4に変化した!?もしかして・・・」
「レベル4の【ムーンライト・ハウンドドッグ】と【ムーンライト・ホーリーベル】で、オーバーレイ!!」
2体のモンスターが次元の渦に入り銀河が誕生する。
「2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!
新天地に潜みし聖なる力を秘めし竜よ、今こそその力を解き放ち、新たなる道を切り拓け!!
エクシーズ召喚!!」
トーマの宣言と同時にカードの書き込みが完了した。
「来い!ランク4、【フロンティア・ドラゴン】!!」
銀河の中心から機械の翼を付け、黄と青のオッドアイの白い人型の竜が飛び出し、トーマの場に舞い降りる。
フロンティア・ドラゴン ランク4 攻撃2500
「攻撃力2500のエクシーズモンスター!?エクシーズモンスターって、その頃にはまだできてないんじゃ・・・」
まさかのエクシーズモンスターの登場にウィンダは驚きを隠せない。
エクシーズ召喚が普及していないと思っていた為だ。
事実として、侑斗達のいる時間から換算すると、エクシーズ召喚が出回るようになったのは5、6年前だ。
では何故トーマがそれを使えるのか?
「さあな、1つ言えるのは、こいつが俺を認めてくれた。そうだろ?」
トーマが【フロンティア・ドラゴン】に目を向けると、白竜はやる気十分と言いたげに唸り声を上げる。
「【フロンティア・ドラゴン】の効果発動!1ターンに1度オーバーレイユニットを1つ取り除く事で、俺の場のモンスター1体は攻撃力が半分になる代わりに相手にダイレクトアタックができる!ただし、この効果の対象モンスター以外のモンスター達は攻撃できない。俺はユウキを選択!ソウル・ディスチャージ!!」
【フロンティア・ドラゴン】が体内にオーバーレイユニットを取り込むと、胸部に埋め込まれている水晶から青白い光を放ちユウキを包み込む。
シルバームーン・ドラゴン 攻撃力3500→1750
フロンティア・ドラゴン
ドラゴン族 光属性 エクシーズ ランク4 攻撃2500 守備力2000
光属性のレベル4モンスター×2
このカードをエクシーズ召喚する時、エクシーズ素材となるモンスターのうち1体はチューナーモンスターでなければならない。
(1):1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターはターン終了時まで攻撃力が半分になり、相手プレイヤーに直接攻撃できる。この効果を使用したターン、選択したモンスター以外のカードは攻撃できない。
(2):エクシーズ素材のないこのカードが戦闘を行う時、お互いのプレイヤーが受ける戦闘ダメージは2倍になる。
「止めだ!ユウキで・・・」
ブオォォォォン!!
「マスター!!」
「なっ!?」
トーマの攻撃宣言前に1台のDホイールがジャンプし乱入する。
その着地先にはウィンダがいる
考えるより先にトーマの身体が動き、
「伏せろ!!」
ウィンダを突き飛ばす。
「キャア!!」
突き飛ばされたウィンダをガルドが受け止める。
「ピィ?」
そんな中、いつの間にか出てきたフォーチュンがスカーレットと話をしている。
「ニャ!?」
トーマとウィンダの事態を見たスカーレットが主人であるトーマの元にすっ飛んでくる。
「ペッペッ!!ったく、砂飲んじまった・・・」
「ニャー!!」
乱入してきたDホイールには1人の男が乗っているが、膝裏まで滑らかに伸びた赤髪とヘルメットのバイザー越しからでも分かる赤い右目はウィンダにとって因縁深い相手の物だった。
「え、えぇーーーーー!!?ファーブニル!?」
「う・・・ん・・・」
ようやく侑斗が目を覚まし、起き上がろうとする。
「・・・」
「おい!いきなりなんだお前!?」
トーマが男、ファーブニルに突っかかる。
「・・・俺も貴様に聞きたい事がある」
ファーブニルからトーマに声が発せられるが、そのトーンには怒気が籠っているように感じられる。
「・・・ソフィをどうした?」
「ソフィ?」
知らない名前の人物を問われ困惑するトーマ。
「ソ・・・フィ・・・?」
「ユウ!大丈夫・・・??」
ウィンダの手を借りて、侑斗は起き上がる。
そして、彼の言葉を自らの口で再生する。
「ソフィ・・・誰のことを・・・?」
「ソフィって誰だ!お前は一体・・・」
「ふざけるな!!ではなぜ貴様がそのカードを・・・【フロンティア・ドラゴン】のカードを持っている!!」
「!!?」
ファーブニルの言葉を聞き、トーマはデュエルディスクにセットされたままの【フロンティア・ドラゴン】のカードを見る。
『トーマ!!』
するとトーマの下にリリィとアイシスが駆け寄ってくる。
「ふぇぇぇ・・・ト、トーマ!?」
ウィンダはすっかりトーマの名前を聞くのを忘れていた。
もしすぐに名前を聞いていれば、勘違いする事がなかっただろう。
今の状況を見て流石に分が悪いと思ったのか、ファーブニルは舌打ちした後、Dホイールを発進させる。
「待て!!」
トーマの叫び声に答えずファーブニルは去っていく。
「これは・・・一体・・・??」
目が見えず、気がついてばかりの侑斗には何が何だか分からない。
「ピィピィ!」
「フォーチュン・・・」
フォーチュンが侑斗の指の上に乗り、鳴き声で侑斗に詳細を説明する。
「ピィー!」
トーマの下にも【ムーンライト・フォーゲル】の精霊フリードが姿を見せる。
「フリード・・・」
「トーマ!何があったの!?」
駆け寄ってきたリリィがトーマに聞く。
「あぁ、あの緑髪の女の子になんか知らないけどさっきの奴に間違われた」
「ご・・・ごめんなさい!!!」
トーマの言葉を聞いた後、地面に頭をぶつけるくらいの勢いでウィンダが頭を下げる。
「どういう事?」
今度はアイシスがトーマに聞く。
「人が倒れてたから声をかけたんだけど近寄るなって・・・」
「何それ!?あんたトーマの助けを断るって・・・
「アイシス!!」
ウィンダに詰め寄るアイシスをリリィが止める。
「止めないでリリィ!!1発でも殴ってやらないと・・・!!」
トーマの事が余程頭に来たのか、アイシスは完全に周りが見えなくなっている。
「ごめん・・・」
「ユ、ユウ!!」
侑斗が声が聞こえる方向へ頭を下げる。
「彼女は・・・ただ、僕を守ろうとしただけなんだ。気が済むまで僕を殴ってほしい。それで・・・彼女を許してくれないかな?」
「・・・アイシス、ストップ」
「え!?」
まさかトーマも止めに入ると思ってなかったのか戸惑うアイシス。
「あの子だって悪気があってやった訳じゃないんだ。今回は見逃してやろうぜ?」
「うぅ~・・・」
「でも、これで誤解解けたでしょ?」
トーマに論され縮こまるアイシスを後目に、精霊モードのユウキが出てくる。
「ピィピィ!!」
フォーチュンがユウキの前まで飛んでいき、お辞儀をする。
「ピィー!」
「こちらこそ、よろしくね」
フリードとユウキもフォーチュンに挨拶し返す。
「さて、かなり周りくどくなっちまったけど改めて、俺はトーマ。御剣トーマ」
「リリィ・シュテンベルグです」
「・・・アイシス・レイナード」
トーマを勝手に勘違いした連中と馴れ合いたくないのか、アイシスの挨拶は不機嫌一色だ。
「僕は剣崎侑斗。それで、彼女が・・・」
「ウィンダだよ。その・・・改めてよろしくね?」
「ふん!」
ウィンダの挨拶にそっぽを向くアイシス。
やはりアイシスは侑斗達と馴れ合いたくないようだ。
「おい・・・ごめんよ、ホントはいい奴なんだけど・・・」
「あはは・・・」
「ニャー!」
アイシスの態度に苦笑いを浮かべるトーマ達に、自分の事も紹介してと言いたげにスカーレットが鳴く。
「こいつはスカーレット。俺のカードの精霊だ」
「ニャー!」
トーマの紹介の後、よろしくと言いたげに鳴くスカーレット。
『ピィ!』
フォーチュンとガルドがスカーレットの鳴き声に答える。
「それにしても、どうして君がエクシーズモンスターを?」
「いや・・・元々遊星からもらったんだけど、その時は何も書いてなかったんだ。あの時ドローしてから光り出したと思ったらどんどん中身が浮かび上がって、使い方が頭の中に流れ込んできたっつーか・・・」
何とも言えない感覚にトーマはどう説明すればいいのか分からないでいる。
「遊星さんからもらったカード?」
「あぁ、これ」
リリィに聞かれ、デュエルディスクから【フロンティア・ドラゴン】のカードを外し見せる。
「これが・・・【フロンティア・ドラゴン】・・・」
「ピー・・・」
(駄目だ・・・。目が見えないせいで、風の目で力を見ることができない!)
「ソフィのカードって・・・」
(何故貴様がソフィのカードを・・・【フロンティア・ドラゴン】のカードを持っている!!)
トーマは先程からファーブニルの言葉は引っかかっていた。
「そういえば・・・」
何かを思い出したかのようにトーマが侑斗に聞く。
「2人共、行く宛はあるのか?」
そう、トーマが思った事は侑斗達がこれからどこに行くのかという事だ。
いくら所持金を持っていようとも活動限界はある。
「ウィンダ、確かカイトさんからいくらかお金をもらってるよね?」
「うん、これだけのお金があればホテルに泊まることはできるけど・・・」
「問題は・・・アルトセイムについてあまり詳しくないことだね。それに・・・」
侑斗とウィンダはこの町の土地勘が無い。
更にホテルを見つけたとしても、自分達の住所がこの時代の物ではないため、ホテル側に疑われる可能性がある。
できるとすれば、野宿か誰かの家に転がり込むくらいだ。
「だったらさ、俺の家に来いよ」
「え!?」
トーマのまさかの発言にアイシスが驚く。
「ちょっと!!見ず知らずの人を家に上げる!?何考えてんの!?」
「仕方ねぇだろ?このまま死なれたら後味悪いし、母さんもOKしてくれるだろ?」
「う~・・・」
自分の経験からトーマの意見に押し黙ってしまうアイシス。
以前トーマの看病という事で自分もトーマの家に上げてもらった身なのだ。
その事からトーマの母親のリーネの懐の広さは実感している。
「・・・そうだね、じゃあお願いしようかな?」
「うん!それに・・・」
「ピピィー!」
「クリクリー!」
話している間にガルドとフォーチュン、更に勝手に飛び出した風クリボーがトーマの精霊達と話している。
「あの様子だ。一緒の方がいいだろ?」
「・・・」
アイシスは完全沈黙。
会話のペースは完全にトーマの方に流れている。
「リリィもユウキもいいよな?」
「もちろんだよ」
「うん!侑斗さん、ウィンダさん、よろしくお願いします!」
丁寧にお辞儀しながらリリィが挨拶する。
「ありがとう、トーマ君」
「じゃあ、よろしくお願いしまーす!」
笑顔でウィンダが挨拶していると、学校からチャイムの音が聞こえてくる。
「やっべ!!予鈴だ!!2人とも急げっ!!」
「え?あ、ちょ、ちょっと!!」
「わぁ~!!ま、待ってよぉ~!!」
「マ、マスター!置いてかないで!!」
「ニャー!!」
チャイムを聞いたトーマ達は猛ダッシュで学校の方に戻る。
この日の3人の次の授業は、遅れたら補修確実の数学なのだ。
2人の主人公が邂逅!
この時代に来たファーブニルの目的とは・・・?