夢を掴む、その瞬間まで・・・   作:成龍525

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大変長らくお待たせしてしまいましたあああ><。
楽しみにしていて下さった皆様、本当にごめんなさいでした。

リアルで色々あって、今もまだそれが解決したわけではないけれど……
何とか復活しましたです、はい!

そして、ついにやってきた初めての試合描写!!
自分では魅せ場を絞って書いたつもりですが、何故か予想を遙かに超える文量になってしまった(汗)

そんなこんなで読むの凄く大変かと思いますが……!


では、どうぞ!!!!


第7話~伝説の、その先へ~

「うんっ、やっと着いた!」

 

 自分が立ち去った後に起こった一波乱のことなどつゆ知らず、あおいの心配を余所にようやく目的地へと辿り着いた矢野。

その眼前に広がるのは頑張市(がんばるし)、その市が管理・運営している市民球場であった。

余談だが、矢野達の住む羽和古町(ぱわふるちょう)もこの頑張市内にあったりする。

 

 そう、頑張市民球場――。

 

 それは、つい昨年まではこの地区の高校野球や、社会人野球の大会がある時以外はあまり使用される機会の無かった場所。

だったのだが――今年からは少し事情が違っていた。

この球場はとあるプロ野球団のホームグラウンドに選ばれたのである。

昨年末、以前から報道等で危惧されていたプロ野球の人気低迷を打破するべく、NPB(日本野球機構)は試験的に球団数を増やす。という荒療治に打って出た。

セ・リーグに頑張パワフルズ、パ・リーグにはたんぽぽカイザースをそれぞれ、野球愛を胸に抱く地元企業数社がNPBからの支援を受け運営していくという形で今シーズンから新規参入。

そのうちのパワフルズがこの頑張市民球場を試合等で使用するため、必然的に昨年に比べれば使用率が高くなるからだ。

 

 そんなプロ球団の本拠地の球場を目の前にした矢野は、試合が始まる前だというのに高まる胸の鼓動を押さえられずにいた。

しかし、それは何も矢野一人に限った話ではない。

球場の周りで談笑している人達も、矢野と共に球場内へと入っていく人達も皆、心躍らせていた。

「凄いな……プロも使う球場なのに、超満員だよ、こりゃ」

場内は更に熱気に溢れ、その熱気たるや、パワフルズの試合のそれにどこか似ていて――。

あかつきの名を冠する中学校の試合だからなのか、それとも鈴が出る試合だからか、空席を探し出すにも一苦労。

そして人混みの中に空席を求めた矢野、少ししてやっとの思いで見つけた一席に腰を下ろす。

無意識のうちに張り詰めていた肩を撫で下ろしホッと一息、それから視線をグラウンドへと向けてみた。

「おっ、ちょうどよかった! 今からちょうどあかつき中のシートノックかっ」

矢野が座ったのは一塁側の内野席、その真正面にあるベンチにあかつき中学女子軟式野球部が入っていた。

ベンチ前に選手達が整列したところで、『後攻あかつき大学附属中学校、シートノックを始めてください』という場内アナウンスが流れ、それを合図に控えメンバーも含めた全選手がグラウンドへと勢いよく駆けていく。

 

 それぞれのポジションの守備位置に散り、まずは内野手間でのボール回し。

キャッチャーから始まりファースト、セカンドからショート、次にサードそしてピッチャーへと。

それを毎回違う順序で数回行い、その捕球から送球の一連の動作は、矢野から見てもおおよそ中学生らしからぬ滑らかさと精度を誇っていた。

「……そこらの同い年の男子よりも動きがいいかも、しれない」

続いて監督と思しき女性が、帽子からのぞかせる黒髪をなびかせ、木製のノックバットを振るっていく。

丁度良い高さにトスアップしたボールを力みのない水平なスイングで内野手陣へ、アッパー気味にも関わらずゆったりとした綺麗なスイングで外野陣へ、次々と行われていくノック――。

 

 この監督にしてこの野球部あり。

部員達の実力の高さは、監督の無駄のない一つ一つの動作、そこからもうかがい知ることが出来た。

流石はあかつきの名を冠した中学校、恐るべし――である。

 

 あかつきとパワフル、その両校の全生徒からなる応援団の声援と吹奏楽部が奏でる音色。

それらが織り重なって作られる試合直前の独特な場の雰囲気、その中においても鈴の存在はこのシートノックにおいても一際輝いていた。

「やっぱり凄いなぁ鈴ちゃんは……あんなノック、硬式の男子でも厳しい打球ばかりだ」

少なくとも矢野の目には、右投げのショートに負けていない。

いや、むしろ勝っている――そんな風にさえ映っていたのだ。

矢野が感心しているうちに『あかつき大学附属中学校、タイムアップです』と、流れてくる場内アナウンス

がシートノックの終わりを告げる。

 

「ラスト! キャッチャーフライ、いくよ!!」

 

 それを受けあかつき中学の監督は、シートノックの仕上げと言わんばかりに自身の真上へ……。

つまりは本塁上空へと、見事としか言いようのない打球を上げ、素早く落下点へ入ったキャッチャーもフライを危なげなく捕球。

こうしてあかつき中学の七分間のシートノックは終了した。

 

 続いて入れ替わりでパワフル中学のシートノックが始まり、今度は三塁側の観客席がどっと沸いた。

その声援に後押しもあってパワフル中野球部ははつらつと白球を追っていく。

あかつき中学と比べると一連の動きから手強そうな雰囲気は特に感じられなかった。

だが、強いて言えば手堅い。そういう意味ではここまで勝ち残ってきただけの確かな実力があるのだろう。

ミスらしいミスも無いままに、こちらも七分間経ちタイムアップとなり――。

 

 両校がベンチに戻ってから暫く、準備が調った両野球部は本塁前に整列。

「「よろしくお願いしますっ!!」」、

お互いにそう挨拶を交わして、一方はフィールドへ。また一方は三塁側ベンチへと、勇ましい足取りでそれぞれの向かうべき場所に駆けていった。

そして、あかつきナインが各ポジションの定位置についたのを確認し、再び場内アナウンスが流れ出す。

 

『1回の表を守りますあかつき大学附属中学校、守備位置の紹介でございます……ピッチャー千石さん』

アナウンスの中、のびのびと投球練習をしている千石というピッチャー、矢野は鈴から以前にこの女の子について話してくれたことを投球を眺めながら思い出していた。

「あの娘かな……鈴ちゃんが凄い一年生の投手が同じ野球部にいるんです! って言ってたうちの一人、千石澪央ちゃんかぁ」

千石澪央(せんごく みお)。その時の話によると――一年生の中では一つも二つも飛び抜けた、文字通り次元が違う実力の持ち主らしい。

彼女が背負っている“11”の背番号と、準決勝での先発はその期待の表れなのだろう。

 

 尚もアナウンスが続く――。

 

 そして、アナウンスが丁度鈴のところに差し掛かるころ。

まだプレイボールも告げられていないというのに、今日一番の歓声が球場全体から沸き起こっていた。

 

『ショート、猪狩さん』

 

 鈴の名前がコールされたその瞬間、球場全体から……

そう、一塁側も三塁側もない、そこかしこから上がる鈴への声援に球場内が包まれていたのだ。

三年間全打席ヒット達成。その瞬間が見れるかもしれない、それ故の大観衆、大声援なのだろう。

当の本人はというと、真剣な眼差しで自分の右手にはめられたグローブをただ一心に見つめていた。

そんな鈴を、矢野もまた真っ直ぐに見つめていた。

 

(矢野さんと約束したから……だから、絶対に打たなくちゃ…!)

(鈴ちゃん頑張れっ、鈴ちゃんなら絶対打てるよ!)

 

 アナウンス木霊する中、二人の思いと願いがゆっくりと、そして確かに交差していく。

だが、周囲の音は一切耳に入ってこなかった。

まるで、ほんの一瞬、僅かな間二人が二人だけの静寂の世界にいるかのように……。

 

 

「プレイボールっ!!」

 

主審が試合開始を告げたその時、矢野と鈴の世界に一斉に音という音がなだれ込んでくる。

熱戦を予感させるサイレントと、数多の歓声と、そして――。

キャッチャーミットを打つ、心地のいい音。

「――っ、ストラーイクッ!」

あかつき中学の先発である澪央が投じた初球は、二人が我に返った時には既にミットへと到達していた。

「凄い……中学一年でこのストレート」

あおいのとはまた違った、それでいてより地面近くから力強く白球を放つアンダースロー。

しかもこれで115キロ前後は優に出ていたのだから、矢野が驚くのも無理もない。

そのままの勢いでパワフル中の先頭打者である鈴木を三振に仕留めた澪央。

午後の日差しに照らされて輝く少しハネ気味な黒髪を手で整えつつ、マウンド上で軽くガッツポーズをとっていた。

 パワフル中学、二番目の打者は猛多梢(もうだ こずえ)、ここまで打率3割半ばほどと今大会当たっている右打者の一人。

そんな梢に対し澪央は内角高め、内角低めへとストレートを走らせ2ストライク。

早くも追い込み、3ストライク目を取ろうと矢継ぎ早に澪央が放ったのは……。

「絶好球! ……え!?」

自信に満ち溢れたスイング。しかし、力強く振り抜かれた梢のバットは何故か空を切る。

ど真ん中へのストレート、梢がそう判断し、事実ストレートと大差ない速度でボールは向かってきていた。

それでも梢が三振に倒れた理由、それはこの球種がストレートなどではなく、“カーブだった”からである。

しかもただのカーブではなく、打者手前で大きく減速して鋭く曲がり落ちる。魔球と言っても過言ではないレベルのものだった。

そして、盛大に空振った梢は悔しそうな表情を浮かべ、こう呟きながらベンチへと戻っていった。

「あんな神懸かり的な変化するカーブ、初めて見た……」と――。

 

 チーム内でも屈指の好打率を誇る梢がいとも簡単に三振する姿と、あの神懸かったカーブをネクストバッターズサークルで目撃していたのは遠藤藍(えんどう あい)

先ほどの梢とは同期の一年生で、打率でいえば梢には及ばないもののミートの巧さを買われてスタメン入りを果たしていた。

「どどどどーしよ……梢ちゃんが打てなかったのに私が打てるわけ……」

打席内でも戦々恐々としていた藍の様子を察したあかつき中のバッテリー、二人が考えていた藍に対する次なる一球は一致。

 

(ミート力に定評があるこの娘、澪央のあのカーブ見て完全に動揺してる。なら……)

(初球はこれ、ですね)

 

 背筋をぴんっと張ったノーワインドアップのポジション、そこから投球モーションに入り力強く振られた右腕は地面近くを通っていく。

親指に弾かれるようにして放たれたその球は右打者である藍の胸元付近目掛けて直進。次の瞬間、凄まじいブレーキが掛かり曲がりながら落ちていく――。

その刹那、グラウンドに響く鈍い打球音。

「あわわわわっ」

幸か不幸か……藍は錯乱状態に陥りながらも持ち前のミート力でバットにあのカーブを当て、しかも無意識のうちに打球をショート後方落としポテンヒットにしていた。

際どい当たりだったとはいえ、懸命に一塁を駆け抜けた藍はセーフになる。とこの試合を観ている人々の多くが思ったに違いない。

しかし――。

 

「ア、アウト!!」

(鈴ちゃんっ、ナイスフィールディング!)

 

 目の前に広がる結果は違っていた。

あまりの出来事に矢野は言葉を出せずにいたのだが……。

ダイレクトキャッチは難しいと判断した鈴は打球の落下地点に三塁側から回り込み、勢い無く転がる打球を左手で捕球。そこから前方に数歩ステップしながら、外野手のようなレーザービームを繰り出し藍をアウトにしていたのだ。

「鈴先輩ありがとうございます! 助かりましたっ」

「澪央ちゃんこそナイスピッチング!」

拍手と歓声が巻き起こる中、パワフル中学の初回の攻撃を見事に封じ込めた澪央。後ろから駆け寄り笑顔で声を掛けてくれた鈴と、そして他のチームメイトと共に喜々としてベンチへと戻っていく。

 

 瞬く間に1回の表が終了し、その裏あかつき中学の攻撃。

場内アナウンスによるパワフル中の投球練習中に行われていた守備位置の紹介が終了し、あかつき中の先頭打者が左の打席内でマウンドの小柄なピッチャーを見据える。

『1回の裏あかつき大学附属中学校の攻撃は、1番センター、八代さん、背番号8』

対するパワフル中学の先発は皇凰花(すめらぎ おうか)。こちらも澪緒と同じく一年生。

燃えるような闘志が宿っていそうな赤毛の凰花、キャッチャーのサインに納得いったのか、一つ小さく頷き、両腕を大きく上げ振りかぶる。

前方に踏み出した左足の着地から少し遅れて、体のほぼ真横から右腕を鞭のようにしならせていった。

打席からは見えにくい位置、そこからリリースされたボールは外角低めでストライクゾーンからボール一個分外れている。

だが、ストレートよりも低速だったボールに掛かっていたのは、通常よりも緩めのスライド回転。

八代は一瞬ピクッと反応したものの、微妙なコースだったためにスイングしかけた腕を止めた。

「ボール!」

「……外れた!?」

主審の判定はボール。この試合での第1球だったとはいえ、コーナーに遅めのスライダーを決めきれずにちょっと自身で納得いかない感じの凰花。

軽く快晴の空を仰ぎ、一呼吸おいた後、今度は内角真ん中のストライクゾーン縦ラインギリギリへのストレートを投じた。

しかし、八代は十分に引きつけてからヒッティングし、流れに逆らわずに飛ばされた打球はといえばレフトの頭上を越え、80m少し手前に設けられていた防球フェンスに直撃。

その間に八代はレフトの守備の乱れもあって、二塁へと到達していた。

 

 ランナーを二塁に置き、次のバッターは綾小路。セカンドとして鈴と二遊間のコンビを組んでいる。

そんな彼女に対する真ん中高めへの初球、ストレートに体ごとぶつかっていくような感じで果敢にバント。

ここは手堅く送りバント――かと思いきや、一塁へのベースカバーで手薄になっていたセカンドの定位置辺りに転がした綾小路は、インパクトの瞬間既に走り出していた。

バントと同時に一歩目を踏み出していたこと、それを見ていた八代も三塁へ進塁するスタートを切っていたこと。それにより二人ともセーフという結果に。

 

「初打席でツーベースヒット、そしてドラッグバント、マジかよ……二人とも来年ウチに入学してくれないかな」

只今絶賛部員不足中のため練習試合すらままならない、切実な現状を嘆く矢野の思いが不意に口をつく。

そんな矢野の心からのぼやきを余所に球場中が一斉に盛り上がり始めた。

 

「ガンバ、ガンバりーーんっ! ガンバ、ガンバ、りーーーんっ!!」

 

あかつき中学の応援団はもとより、一般観客からも次々と声が上がっていた。

その全ては、ただ一人のために――。

グラウンド上のとある選手のために――。

この先制点を得る大事な場面で打席に立つ、夢を掴もうと頑張っている一人の少女のために。

「おっ、鈴ちゃんだ! 頑張れーっ鈴ちゃーん!!」

矢野もまた周りの声援に負けないように精一杯声を張り上げた。

「……あっ!」

左打席に立っていた鈴は聞き慣れた声を耳にし、チラリと一塁側の観客席に目を向けてみた。

 

(やっぱり矢野さんだ! 来て、くれたんだ……!)

 

 絶対に打ってみせる。

矢野の存在に気付き一瞬安堵の表情を浮かべる鈴だったが、すぐまた真剣な眼差しに戻る。

むしろ鈴の集中力は矢野の応援を受けて高まっていく――それを鈴本人も感じていた。

自然とグリップを握る手にも力が入る、力がみなぎっていく。

「ヒット1本で先制点……正直、ランナーいる場面でこの人を相手にしたくないけれど…」

凰花がそう思ってしまうのも無理もない。

中学三年間ここまでの通算打率1.00。つまりは鈴が打席に入れば良くて四球、悪くてヒット、そのどちらか。得点圏にランナーがいようものなら最悪の場合、失点すらも覚悟しなければならないのだから……ピッチャーにとってこういう場面では最も対峙したくないバッターと言えよう。

 

様々な声や音が反響する中、鈴と凰花の周囲だけ静寂な時が流れゆく――――。

 

暫くしてキャッチャーとの意思疎通を終えた凰花が、鈴に立て続けに投じてきたのは外角高め、内角低め、それぞれのコーナーギリギリへのストレートとカーブだった。

そして外角低めにスライダーを投じるも、いずれも僅かに外れてカウントはノーストライクスリーボール。

どうやら鈴へは際どいコースで攻め、勝負は次のバッターでする。あわよくば打ち損じを狙う作戦らしい。

(初回だし、思ったほど微妙なコントロールが効いてないかも……なら次は――)

ここまでの3球、いや、正確には前のバッターである八代への2球をベンチから、綾小路への1球をネクストバッターズサークルからずっと観察していたのを含めると6球。それらの投球内容から冷静に次の相手バッテリーの配球を考えていく。

鈴は再びバットを構え直し、サインの確認のために前屈みになっていた凰花もセットアップポジションの姿勢へと完全に移行。お互いの覚悟は決まった。

 初回とは思えぬ緊迫感と緊張感、この試合が準決勝だということを差し引いても余りある重圧が二人にのし掛かる。

そして勝負の時――。

凰花は自らの右腕を力の限り振るい、しならせ、渾身の一球をミット目掛けて放った。

その一球こそが凰花の持ち球であり、鈴にとっての待ち球。そう――。

 

「スライダー、きたっ!!」

 

 ストライクゾーンからボールゾーンへ、鈴の懐に食い込ませるようにして迫ってくる遅めのスライダー。

しかし、パワフル中学のバッテリーの意に反してスライダーの変化は小さく、それを鈴は見逃すはずもなかった。逆らわず弾くようにして右中間へ綺麗に打ち返していく。

この一打で八代は無事帰還、綾小路も鈴が打った瞬間にヒットコースだと判断し一塁から快足を飛ばして本塁に滑り込み、こちらもギリギリのタイミングでセーフとなった。

0対2、鈴の一振りによりあかつき中学は先制点を上げることに成功。

 

「ナイスバッティンっ!!」

「矢野さん……えへへ」

鈴が先制点を上げたことであかつき中学の応援団や吹奏楽部からの声援、そして球場全体から一斉に歓声が沸き上がる。その大音量に負けじと矢野も身を乗り出して鈴へ大きく手を振ってみせた。

今が試合中だということもあり、鈴は矢野へ視線を移すも誰にも気付かれないようにして軽く照れ笑いを浮かべた。

矢野にしかその意味が伝わらない、そんな照れ笑いを――。

 

 この流れに乗って一気にパワフル中学を突き放したいあかつき中学。

が、続く4番草薙と5番山田、そして6番レイが共に凰花の気迫のこもった投球の前に沈黙。

三人連続で内野ゴロに倒れてしまう。

こうして初回の、長い攻撃が終わった。

 

 以降、両校の一歩も引かない、譲らない攻防がこの超満員の球場で繰り広げられていくことになる。

 

 そんな拮抗した試合が動き出したのは6回、その流れを掴んだのはパワフル中学の方だった。

あかつき中学はここまでに鈴が打ったのを含め何本がヒットぱ出ていたものの、打線が繋がらず。パワフル中学の先発凰花にゴロとフライの山を築かされていた。

鈴以外に唯一奮闘していたのは一年生にして先発を任されていた澪央。5回終わって打者16人に対して2被安打4奪三振1四球と、4回までは毎回打者三人でパワフル中学の攻撃をシャットダウンしていた。

しかし、スタミナが切れてきた終盤6回表、澪央に訪れていたのは今日初めてのピンチ。

パワフル中学の8番ショート磯野、9番凰花に連続して四球を与えてしまっていたのだ。

三巡目の打席となる一番鈴木からなんとか三振を奪うも、尚もワンナウトランナー一塁、二塁。

そしてこの場面で迎えるバッターは、初打席こそ三振を喫するもここまで澪央から2安打している梢。

 

「あの神懸かりカーブ見た時は戦意失っちゃったけど……疲労状態の今なら、打てる!」

「カーブ曲がらなくなってきてるし、私には他に変化球ないし、でもここで打たれるわけには……いかない!」

 

 ストレートも、得意のカーブも制球定まらないままボールカウントばかりが増えていく――。

初めは力強かった投球フォームも今では疲労と、何より目の前のバッターを抑えなければという焦りで乱れ、たった今放った一球にも勢いが無かった。

「もらったーっ!」

当然そんなボールでは梢を抑えられるはずもなく、梢の放った打球はセンター前に落ち、その間にセカンドランナー磯野がホームに帰ってきて1対2。

打たれた、失点してしまったショックから澪央はマウンド上で何やら小声で呟き始めていた。

 

(点を取られてしまった、どうしよう……どうしよう、どうしたらいいの…?)

 

 一打同点の芽も出てきたパワフル中学、次のバッターは藍。今日はショートへのゴロに併殺と、全くいいところ無し。

そんな藍ならば今の澪央でも抑えられる、と考えたあかつき中学は澪緒にここを任せた。のだが――。

肝心の澪央の様子が何やらおかしい。纏っている雰囲気みたいなものが微妙に変わっていく。

「澪央ちゃん? まさか、また…?」

後方でショートを守っていた鈴もどうやらその変化に気付いたらしい。

「あたしにこの場面、抑えられるのかなぁ……」

先ほどまであった焦りは感じられない。けれどもそれとはまた別の何か、怯えのようなものが澪央の中に広がっていく。

その変化は投球という形でバッターの藍にも伝わってくるほど大きいものであり、投げられた数球からは疲労も感じられなくなっていたが、勢いが無い。というよりかどこか頼りない。

「……あれ? なにこれ、球筋が前の二打席とはまるで違う??」

球筋が違う――そう、まるで違うピッチャーと対戦しているような、そんな感じを藍は感じていた。

直前まで乱れていた制球力は戻り、現に藍は何気に追い込まれていて、今の内角真ん中へのストレートでツーストライク。

そして次の一球に、鈴が気付いた、藍が感じた変化の片鱗が現れる。

「ちょ、え? なにこれ、シンカー??」

内角寄りの真ん中から沈み込んでくるシンカー――いや、落ちてくるスクリュー、と言った方が正しいかもしれない。澪央はここまで投げてこなかった、投げられるはずのなかったスクリューをこの土壇場で放ったのだ。

右投げピッチャーの利き手側に変化してきたことから藍はシンカーだと勘違いしたのだが、この一球に無我夢中で出したバットの先端が当たってしまう。

一度あったことは二度目も有り得る、とはよく言ったもの……藍の放った打球は偶然にも右中間へ落ち、セカンドランナーの凰花が果敢な走塁で本塁を落とし、梢も三塁へ。

パワフル中学、藍のラッキーヒットで試合終盤にしてようやくあかつき中学に追いついた。

 

 同点にされた上にランナー一塁、三塁で迎えるバッターは4番の天道焔(てんどう ほむら)――。

彼女もまた一年生であるのだが、長打力が光る打撃センスを持っている。そのため前の試合の最中に負傷した同じポジションの三年生に代わり急遽4番に座ることになり、今日はヒット1本放っている。

 

「タイム!」

 

 この局面に堪らずあかつき中学の監督はタイムを掛け、静かに澪央に歩み寄る。

今の一撃でいつもの雰囲気に戻っていた澪央の右肩に監督は優しく手を添え、こう告げた。

「澪央、ここまでよく抑えてくれたね。後はベンチでゆっくり休みなさい」

「かあっ――か、監督、すみませんでした……」

言いかけた言葉をつぐみ、それでも何とか言葉を繋いだ澪央は監督と共にベンチへと戻っていった。

 

『あかつき大学附属中学校、投手の交代をお伝えします――千石さんに代わりまして、夜野さん』

場内アナウンスが流れる中、マウンドに上がったのは三年生の夜野月代(よるの つくよ)だった。

月代が数球の投球練習を終えるとあかつき中学の内野陣が集まってきて、各々思い思いのエールを月代に伝えていく。

「澪央ちゃんが作ってくれたこの試合、絶対勝とう? 大丈夫っ、つっきーなら後続を抑えられるよ!」

「うん、ありがとう……! いかりんも後ろお願いねっ」

そう力強く、勇気に満ちた笑顔で語り掛けてくるのは意外にも鈴であった。

というのも、月代は鈴がこの野球部に入部してから初めてできた親友であり、今では“つっきー”“いかりん”と互いに愛称で呼び合うほどの仲良しだったりする。

 

(ここは抑えてみせる。いかりんやみんなのために、絶対に――!)

左対左となる勝負、普通に考えれば明らかにバッターの方が不利で、この焔も例外ではなかった。月代の信念のこもったボールが次々とミットに収まっていく。

それでも焔は粘ってカウントツーツー。

そして月代が投げたのは外角低めへのチェンジアップ、それを焔は詰まりながらもセンターに打ち上げる。

打球に勢いはなかったが、パワフル中学にとってそれで十分だった。

月代の思いが勝り、焔の実力がそれに及ばず、だが野球は最後まで何が起こるか分からない。

これによりパワフル中学は勝ち越し点を得た。

 

 野球は時として残酷な一面をのぞかせる。どんなに力や技術で勝っていても、思いや気持ちがこめられていても、それが結果に結びつかないこともある。

でもだからこそ、最後まで何が起こるか予測出来ないからこそ選手達は頑張れるのだろう。目の前の一球、一投一打に己の全てをぶつけて、その先に待っているものを信じて――。

 

 月代は悔しかった。後輩が守っていたものを守り通せず、親友の期待に応えられず。だからこそ思いっきり左腕を振るった。この目の前のバッターを打ち取るために。

勝ち越し点を許してしまったものの、その後月代は6回最後のアウトをピッチャーゴロで取った。

最終回もバッター三人できっちり終わらせた。

そして、力投終えてベンチに戻ってきた月代は一言「ごめん……」と。

でも、そんな月代を咎める者は誰一人としていなく、それどころか見渡してみると周りは皆笑顔だった。

 

「月代先輩がダメなら私はもっとダメです。もとはと言えば私が招いてしまったピンチでしたし……」

「そうだよつっきー! 澪央ちゃんやつっきーの力があったから1点差で済んだんだよ?」

 

 周りからも月代を励ます声が上がる、月代の頬からは幾筋もの光の雫。

目をまともに開けられなくなっていた月代のその隣で、鈴はバットを手に取り立ち上がる。

「つっきー、私次の打席も必ず打ってみせるから」

一つ深く深呼吸して、周りを見渡すようにして鈴は言葉を続ける。

「みんなもお願い、私に力を貸してほしいの……!」

勇気と力強さと、そして何より優しさ溢れる眼差しに、ベンチに居る全員が頷いた。

ここからが本当の反撃なんだと……。

 

そして7回裏、あかつき中学最後の攻撃が始まった。

 

 先頭バッターである那須はピッチャーゴロに倒れはしたが、疲れの色を隠せない凰花から6球も粘ってみせた。続く月代もピッチングでの悔しさを晴らさんばかりに変化しなくなっていた遅めのスライダーを一、二塁間へ弾き返す。9番音山も繋ぐ意識を持ってファーストの頭を越えるヒットを放った。

ここでパワフル中学はあかつき中学の追撃の勢いを止めたいと、先発の凰花を三年の田村と交代。

しかし、それでも今のあかつき中学の勢いは止められず……打順が一回りして1番八代、交代したばかりのピッチャーの初球をためらうことなく打ち抜きセンター前ヒット。だが2番の綾小路は三振に倒れてしまう。

 

 ツーアウト、満塁。

ヒットが出れば同点、当たりによっては逆転サヨナラも有り得るこの場面。、

一塁側ベンチと球場全体から、今日一番の声援を受けた一人のバッターが打席へと入る。

 

『3番ショート、猪狩さん――』

 

 

チームメイト達と、この試合を観ている全ての期待をその小さな背中に背負い、左打席に立つ鈴。

先ほどまで沸いていた観客席が静まり返り、吹奏楽部の応援曲と応援団の声だけが鳴り響いていた。

「鈴ちゃん……」

矢野もこの球場を包んでいる言いようのない雰囲気に呑まれ、それ以上の声を出せないでいた。きっと、誰しもがそうなのだろう。

そんな一種独特な緊張感の中で、鈴はマウンド上のピッチャーだけを見据えていた。

 

(打つ……つっきーが流した涙と、矢野さんとの約束のためにも!!)

 

 目を閉じ、親友と、大切な人のことを思う。そして深呼吸――。

次に目を開けた時、鈴の雰囲気が変わっていた。

曇りの、迷いのない瞳で真っ直ぐに見据えられたピッチャーの田村はたじろぎ、投げる。

しかし抑えてやろうという意志に欠けたボールは田村の意識とは関係なく、鈴から逃げるようにして自らストライクゾーンから逃げていた。

スリーボール。田村や彼女をリードするキャッチャー花澤に敬遠する気がないわけではない。

確かに、四球かヒットか……それしか選択肢がないほどのバッターを相手にするよりも、次の打者を打ち取る方がずっとリスクは低い。

だが、最終回で満塁。押し出せば同点という事実がその判断を迷わせる。

そんな迷いを持ったまま、田村は投げた。なるべく低めに、けれどボールにはならない程度のコースへ。

田村の、パワフル中学そのものの迷いを内包した球に、球威はない。それどころか思い描いていたコース

よりも上に球はいっていた。

 

明らかな失投だった――。

鈴の気迫と球場の雰囲気に呑まれた球を、鈴は振り抜いた。

金属音と共に全ランナーは力の限り走り出す。月代が帰り同点、そして音山も本塁に飛び込み、サヨナラ。

 

「ゲームセット!!」

 

逆転勝利のヒットを決めた鈴は、二塁上でさっきまでの張り詰めていた表情から一転、笑顔を弾けさせチームメイト達の下へと駆け寄った。もちろん月代の下へは真っ先に。

そして、両校の選手達は本塁前へ整列。

 

「「ありがとうございましたっ!!」」

 

そう言って頭を下げ、歩み寄り、お互いに握手を交わし、それぞれの健闘を称えていた。

パワフル中学が三塁側に帰っていき、あかつき中学もまた応援団に勝利の報告をしてベンチへ戻っていく。

試合の終わりを見届けた矢野もホッと一息。

「今なら鈴ちゃんに会えるかな、ひとまず下に降りるか」

激戦の中、チームを引っ張り頑張っていた鈴に会いに行くべく、矢野は席を立ちベンチ裏の通路へと急いだ。

 

 ベンチ裏まで来てみると、そこは意外と静かだった。ついさっきまで白熱した戦いが行われていた同じ球場内とはとても思えない。

鈴を探すため近辺を少し歩いていると、どこからか声がしたような気がして、矢野は声のした方を振り向いてみた。

「矢野さ~ん! こっちです、こっち!」

そう言って大きく手を振りながら駆け寄ってくるのは、やはり鈴だった。

試合直後だからか、額にはまだ汗が輝いていた。

「はぁはぁ、矢野さん、見に来てくれてたんですねっ」

「それはそうだよ、何てったって鈴ちゃんと約束したから! 球場に応援しに行くって」

顔の前で右手の親指を立てて、グッドのサインを鈴に送る矢野。

「……ぷっ、あははっ、矢野さんその笑顔反則ですーっ……あ、おかしくて矢野さんまともに見れないっ」

矢野は大真面目に決めたポーズだったのだが、思いの外鈴の笑いのツボにクリーンヒットしたようでお腹を抱えて笑い出す。

「何だか俺もおかしくなってきたかもしれない……はははははっ」

鈴のあまりの笑いっぷりに触発され、人の行き来が未だまばらなベンチ裏の通路で笑い合う二人。

 

 暫く笑っていると、ベンチ側の方から誰かがやって来るような気配を感じた鈴は、笑いつつも片目で気配のする方に視線を移す。

すると曲がり角から顔を覗かせたのは、鈴の見覚えある二人だった。

「あ、いましたよ月代先輩っ、それにしてもよく鈴先輩のいるところ分かりましたね?」

「それは私といかりんは付き合い長いからね。後は直感かな。ね、いかりん?」

矢野もそれとなく見てみるとその二人はあかつき中学のユニホームを着ていた。

「つっきーに、それに澪央ちゃん、どうしたの? 二人して」

「どうしたもこうしたも、休憩少し挟んですぐ決勝なのに気付いたらいなくなってたから」

「心配になって探しにきた、ですよね、月代先輩?」

一人この場の状況を理解しきれていない矢野へ、鈴は二人を紹介していく。

「そういえば私のチームメイトに会うのは初めてでしたもんね……こっちは今日先発してた千石澪央ちゃんっ。たまに別人かと思うくらい雰囲気変わってしまう時もあるんですが、実力は確かなのでウチの次期エース候補の一人だったりするんです」

と、何故だか嬉しそうに話している鈴。その話は尚も続く。

「それと、澪緒ちゃんにはウチの野球部に双子のお姉さんがいて、その娘にはよくスライダーやシュート打ちの特訓付き合ってもらってたんですよ」

きっと可愛い後輩達なんだなと矢野は感じ取った。

「そっか、君が前鈴ちゃんが話していた澪央ちゃんだったのか。俺は矢野武、よろしくっ」

「ど、どうもです。今日はたまたま向かい風だったのでカーブがよく変化してくれただけで……」

少し照れながら謙遜する澪緒は、出されていた矢野の手を握り返し握手。

だが、矢野は澪央について何かが引っかかるようで、顎の下に手をやりしばし思考を巡らす。

 

「せんごく、千石……ん? 千石?? ……あーーーーーっ!!」

 

「どど、とうしたんですか? 澪央ちゃんがどうかしたんです?」

いきなりの大声に少しびっくりした鈴だったが、その驚きぶりが普通ではなかったためその理由を聞いてみた。

「ご、ごめん、いきなり叫んじゃって……あのさ、確かあかつき高校の監督の名前って千石さん、だったような気がするんですけど……もしかして、関係者?」

「ああ、そのことでしたか。それでしたら関係者も関係者、千石忠は私達の父ですよ?」

「ちなみに、あかつき中学の女子軟式野球部の監督は澪央ちゃんのお母さんだったりして」

澪央の口から驚きの新事実が矢野に告げられ、鈴が付け加えた補足説明にも矢野は目をぱちくり。

「あのサングラスの監督が澪央ちゃんの……あの節はどうもお世話になりまして」

「え、どの節ですか?」

そう言って軽くお辞儀をした矢野だったが、澪央にはその意味がさっぱり。真面目に受け応えてしまった。

「ごめんごめん、いやね? ちょっと前のことを思い出してただけだよ」

矢野は少し前のことを話そうとしたが、鈴達との話の腰を折るのもあれだからと、それ以上それについて話すのを止めた。

 

「あのー、私は放置ですかー――」

 

「……つっきー、ごめん。澪央ちゃんとのやり取りがおもしろくてつい、ね」

完全に忘れ去られていたことに拗ねる月代に手のひらを合わせて謝る鈴。

このまま鈴を困らせるわけにもいかないかなと、月代は自ら自己紹介を始めた。

「えっと、私は夜野月代です。いかりんとは中学入ってすぐ仲良くなったんです」

「入ってすぐ、か。それじゃあ俺よりも鈴ちゃんのこと詳しいんだね」

その問いに若干不敵な笑みを浮かべたように矢野には見えたが、親しみやすい笑顔で月代は語る。

「それはもうっ、いかりんのあんなことや、そんなことも!」

「つ、つっきー! そそそれは今どうだっていいことじゃない!?」

鈴は顔を真っ赤にして月代の話を遮ろうと必死に両腕を振り回して抗議の意思表明。

「冗談よ、じょ・う・だ・ん♪――って、それよりも、時間!」

「そういえば私達、鈴先輩を呼び戻しに来たんでした」

そんな折り、本来の目的を思い出した二人、途端に言動が忙しないものに。

「一応いかりんには時間の件伝えたし……私達は一旦戻ろうか」

月代は何かに気付いたのか、鈴に意味深なウインクを残し、来た方へと澪央を引っ張っていった。

 

 通路に取り残された鈴と矢野。

「楽しそうな二人だったね」

「はい、つっきーはあんな感じだから初対面だと誤解されやすいですけど、根は優しい娘なんです」

先ほどまで賑やかな空間だったが、また元の静けさを取り戻していたことに何故だか苦笑いしたくなった。

「そういえば鈴ちゃん、これから決勝戦があるんだよね。大丈夫?」

矢野が心配している理由、それは同じ日に準決勝と決勝があることへの体力的疲労のことだった。

「ウチがシード校ということもあるんですが、雨とかで日程延びてたりして。疲れてないって言ったら嘘になっちゃいますけど……でも」

そこで一旦言葉を句切った鈴は、矢野を見つめる。

その眼差しは試合中のそれと同じく真剣そのもので――矢野もそんな鈴の瞳をただ見つめ返すことしか出来なかった。

矢野の目を見据えて鈴は言葉を紡いでいく。

「でも、矢野さんが観ていてくれたら私……だからもう一試合、観ていてくれますか?」

「もちろんっ、俺最後まで応援してるから! だから、頑張れ鈴ちゃん! でも、あまり気負わないで」

矢野はそう言うと無意識のうちにガッツポーズをとっていた。

その言葉を矢野から聞けたことが、鈴は何より嬉しかったのだろう。励まされたのだろう。

瞳が潤みそうになりながら小さく頷いた。

「矢野さん、ありがとうございます! もうベンチに戻ってお昼食べなきゃです。じゃあ、いってきますっ」

「うん、いってらっしゃい!!」

 

 鈴はその胸を勇気で満たし、頬をほころばせながらベンチの方へと駆けていく。

(矢野さんとの約束、絶対に守ってみせます……絶対に!)

 

 矢野も強く、そして優しい笑顔で決戦へと赴く鈴を見送ったのだった。

 




――はい!

ここまで読んで下さった全ての方々、ほんっっっとうに!ありがとうございました♪

今回試合を書くにあたって関連映像や資料を色々調べたので、臨場感とか出せてたら嬉しいですっ。

そして、割と前回から間開けてしまったにも関わらず、評価やお気に入りして下った皆様方、重ね重ねではありますが、ありがとうございました!!

これからも消えずに頑張っていきたいと思います☆

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