夢を掴む、その瞬間まで・・・   作:成龍525

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皆様こんばんは!
前回から二週間弱経ってしまいましたけど、やっと更新することができましたーっ(≧∀≦)
いやはや、休みの日ならともかくも仕事終わってからだと本当に捗りませんね…orz
しかしそんな泣き言言ってる余裕は自分にはおそらくないので、なるべく毎日、例え一文のみになったとしても書く! というのを少し習慣づけねばなと。


さてさて、いよいよ決勝戦も残すところ後僅か……!
今回は試合よりもそれ以外のとこに力入れたので(試合のところを手抜きした訳では決してないですが)、そちらも楽しみに読んで頂ければ幸いです><。

では、始まります!


第9話~涙の、その先に~

 超満員の観客が、その全ての人達が見守るような視線を送っていたのはただ一点。

ネクストバッターズサークルで静かに佇んでいた一人のバッターへと注がれていた。

そして、静寂と喧噪、相反するその二つが時を刻む中、決意と勇気を胸にゆっくりと打席へと向かっていく。

 

『3番ショート、猪狩さん』

 

 7回表、ワンナウトランナー一二塁。

ヒットが出れば良くて同点、悪くても次のバッターへ満塁チャンスを繋げられるこの場面、マウンドを護る者にとっては一番対峙したくないバッターがそこには居た。

 

 そう、打席に入るのは三年間の通算打率1.00の――猪狩鈴。

 

 この回の先頭バッターである真央がかぐやの幻惑の投球術に意地で食らい付き、その打球はマウンド上のかぐやを強襲。

懸命に捕ろうとしたもののグローブの先で弾いてしまい、結局その弾かれた打球はセカンドを守る天子の後方へ落ちるラッキーヒットとなった。

打順は一巡し1番八代、彼女もまたチームの1番バッターとして、三年生としての責任を果たすべく詰まらされる可能性が大きくあるかぐや独特のドロップ。

それではなく外角へと逃げていく遅めのシュートに狙い球を定め、何球か後のシュートをイメージ通りにライト前へと打ち返してみせた。

 続く綾小路、ノーアウトということもあり得意のバントでランナー達を送ろうとしたが、内角高めのボールゾーンから懐をえぐるようにして入ってくるドロップには当てられず。

ツーストライクと追い込まれヒッティングを余儀なくされた綾小路は100キロにも達していないストレート、いや、それよりも遅い変化球を見せられていたためか、ストレートも数値以上に速く感じていたに違いない。

その結果、自身のリズムやタイミングが崩され、バットは虚しくも空を切ってしまう。

 

 この一打同点、勝ち越しすらも狙える、第4打席。

おそらく鈴にとって延長戦でもない限り、これが中学野球での最後の打席となるのだろう。

あかつき中学の全選手、一塁側の応援団、そしてこの球場に居る全ての人達が――。

何よりも矢野や鈴本人もこの打席が最後だと、そう思っていた。

放つであろうヒットが勝利を呼び込むものになると、確信に似た何かを感じていた。

 

(――うん、大丈夫! 矢野さんが応援してくれているんだもん……絶対に、打てるっ!!)

(……鈴ちゃん、頑張れっ!!)

 

 鈴はかぐやとの勝負に集中していた。と言えば嘘になるのかもしれない。

優勝――三年間全打席ヒット――そして、矢野との約束。

そのどれもがこの打席で決まるのだから、色んなものが心の中で渦巻いていく。

今まで誰一人として受けたことのないような、言葉では到底言い表せないプレッシャーを、その小さな背中に背負って打席に立っていた鈴。

そのプレッシャーはかぐやが投げる度に増していき、更に重く鈴の体と心に重く、重くのし掛かっていく。

すると今まで鈴の打席に大声援を送り続けていた応援団にも、声援や拍手を送っていてくれていた観客達にもそれは伝わっていった。

当然、矢野にもそれは伝わっていて、だがしかしこの球場内の誰よりも鈴の感じているプレッシャーそのものを矢野は感じていたのだった。

 

 それ故にこの瞬間を見守っていた全ての人達は、固唾と言葉を呑み込んで。

 ただ、ただひたすら、祈ることしかできない――――。

 

 

「いつもより慎重に見てる……」

そうぽつりと呟いた矢野は静寂に支配された空間で、鈴へ届くようにと強く念じながら心の中で鈴を応援するしか出来なかった。

 

 

――――そして、フルカウントになってもまだ決着は付かず。

左右高低に投げ分けて緩急すらも自由に操ってくるかぐやのピッチング。

鈴は感覚を極限まで研ぎ澄ませて、並のバッターでは掠らせることも困難な際どいコースへのドロップなどにも反応し、決まれば間違いなくアウトという一球を何度となくカットしていた。

 

 だが、長く続いていたこの第4打席も間もなく終焉の時。

はやぶさ中学のバッテリーも、あかつき中学側のベンチも、鈴も、次の一球に全てを込める。

そう心を決めていた。

 

(流石にやるではないか。が、勝つのは……我らじゃ!)

(ウチらにはあまり余力は残されていない。だから猪狩、頼んだよ?)

(矢野さん、私……打ってみせます!)

(鈴ちゃん、俺……打てるって信じる!)

 

 それぞれが、それぞれの想いを胸に秘め――。

 勝利を掴み取るめに、そして約束を果たすために。

 今、思い描いた未来へと向かうために動き出す。

 

 打席とマウンド上、二人の視線が交差する。

かぐやの曇りのない瞳の中の鈴は、静かにバットを構えていた。

鈴の真っ直ぐな瞳の中のかぐやは、クイックモーションで投球を開始していく。

 だが、素早い動作であるはずが鈴にはその動きがゆっくりに見えていた。

まるで映像をスロー再生しているようだった。

左足が地面を離れ、背中の方へとしならせた右腕はいっぱいまで引き絞られた弦のよう、やがて左足は力強く地面を捉え、足のつま先から順々に伝えられてきたエネルギーは右腕へ。

そして振り抜かれる右腕から一閃が放たれていく。

 鈴の瞳に意志のこもったボールが勢いよく迫ってきた。

迫り来るボールに合わせて体を捻り、捻りながらも体の軸は真っ直ぐに保ったまま、右足を振り子のようにして前へと踏み込んでいく。

空気を斬るようにしてスイングしたバットがボールを捉え、体全体を使って生み出された捻りの力により押し返されたボールは空へ――。

 

 渾身のピッチングであり、魂のスイングだった。

 

 金属音を残してセンター方向へと飛んでいく打球、鈴を含めた全ランナーは打球を確認した直後監督の指示通りにスタートを切っていた。

打球は失速し始め、センターの頭上を越えたところに落ちていく。

センターの瀬川は懸命に追い掛け手を伸ばすが、届かない。

このままではヒットになる――そう一瞬のうちに判断を下した瀬川、天然芝の地面を蹴り左腕を伸ばしながら落下地点へと飛び込んでいった。

 

「「落ちるなあぁーーーーっ!!」」

 

 無音の世界で疾走する鈴と見守る矢野、二人は同じ言葉を無意識のうちに叫んでいた。

真央が三塁を回り、八代も二塁ベースを蹴り……。

 

 

「わあああああーーーーっ!!」

 

 無音だった世界に音が響き渡る。

歓声とも、悲鳴とも言えない。

そんな音が――。

 かぐやの渾身のドロップ、それを打ち返した鈴の打球はセンター瀬川の体を張ったファインプレーに阻まれてしまったのだ。

捕った瀬川はすかさずフォローに来たライトの比嘉へグラブトス、比嘉は一瞬の判断の下セカンドへ送球。

観客席から聞こえていた声の異変に気付いた真央も慌てて二塁へ戻ろうとしたが間に合わず、八代も到底一塁への帰塁は間に合わない。

あっという間の出来事だった。

 

「り、鈴ちゃんはっ!?」

 

 どよめき立つ観客席の中で矢野は慌てて鈴の姿を探す。

鈴は一二塁間で動けないでいた。セカンドベースを見つめたまま。

膝から崩れ落ち、立ち上がれずにいた。

「鈴先輩……ナイスバッティングでしたっ…!」

「やっぱ凄いよ、鈴は。ワタシらだけじゃどうにもしてあげられない重圧背負ってたのにさ…でも、ありがとう」

駆け寄ってきた真央や八代に励まされ、支えられるようにしてようやく立ち上がることが出来た鈴。

しかし二人の言葉に小さく頷いてはいたが、まだ俯いたまま、そのまま真央に手を引かれるようにして本塁前の列に加わった。

 

「「ありがとうございました!!」」

 

 両校の選手達は挨拶を終え、それぞれのベンチへと帰っていく。

一方で笑顔弾け、もう一方では涙溢れさせながら――。

 

 試合結果のアナウンスだけが虚しく、切なく木霊する。

矢野の周りでは落ち込む人、苦笑いを浮かべる人、呆気に取られる人、色んな感情が溢れていた。

三年間全打席ヒット、打率1.00という偉業がたったの一本、最後の一本アウトになっただけで達成されない。

その事実が人々の心に影を落とし、球場内には熱気を醒ますかのように涼しい風が吹き抜けていく。

「鈴ちゃん、まだ俯いたままだった……下に、下に降りなきゃ!」

風の冷たさのせいなのか、それとも目の前の残酷な現実を受け止めるのが怖かったからか、全身の震えを止めれないでいた矢野。

目にした鈴も同じように震えていた。それがどうしても心配になり、前回と同じくあかつき中学側の、一塁側のベンチ裏通路へと気付けば走っていた。

 

 階段を駆け下り、曲がり角を過ぎ、通路に入る。

準決勝が終わった時よりも人はいた。まだ閉会式が行われる前だったが、大方鈴へのインタビュー待ちなのだろう。

だか、今の矢野には周囲に見える人達を気にしている余裕はなかった。

一心不乱に走り抜け、そのまま通路の奥へ――。

そして、鈴は前回と同じ場所にいた。背を向けたまま、俯いたまま、壁に力無くもたれかかっていた。

「はぁ、はぁ……鈴、ちゃん……」

全力で走ってきた荒い息の中、矢野は言葉を懸命に絞り出す。

「――!?」

その言葉に、聞き覚えのある声に、一瞬ビクッとなりながらも振り向いた鈴は――。

泣いていた。

頬を伝う幾筋もの跡が鈴がどれだけ涙を流していたか物語っている。

きっと、セカンドベースを見つめていたあの時からずっと泣いていたのかもしれない。

「や、矢野――さん……!」

ほんの僅かな間、二人の間に流れる沈黙。

それとは対照的に矢野の後ろ側が少しずつ賑わっていく。

震える唇で矢野の名前を口にし、その後掠れた声で何かを呟くように鈴は叫んだ。

「ご、めん、なさい…ごめん、なさい……ごめんなさいっ!!」

「りっ――」

矢野の言葉を聞き終える前に矢野の横を駆け抜け、どこかへ去っていく。

光る雫をその場に残して。

 

「きっと、きっとあの、約束のせいだ」

 

 その時に見た鈴の顔が矢野の心に一瞬にして刻まれる。

痛いほどに、苦しいほどに、今まで一度も見たことのない鈴の涙が矢野の心の奥底まで染みていく。

「ちく、しょう……ちくしょうッ!」

通路に取り残された矢野は唇を噛み、両拳を痛々しい音が鳴るくらい強く握っていた。

「……なんで今まで気がついてやれなかったんだ!!」

近くの壁を握った右手の側面で殴りつけた。

痛みなど感じなかった――いや、感じなかったのではない、心の痛みがそれを上回っていただけだった。

そして矢野は体を反転させて走り出した。

何も考えずに駆け出していた。

鈴がどこに行ったのか、分からないままに。

だが、矢野は感じていた。

 

「きっと……あそこだ!!」

 確信めいた直感を信じ、矢野は頑張市民球場を後にする。

 

 

 

 

 一体、どれだけの距離を走って来たのだろうか――。

無我夢中で球場から飛び出してきた鈴は、気付けば“いつものあの場所”へと来ていた。

淡く茜色に染まる空を一人ぽつんと見つめていた。

空を見つめていたのか、そこを流れていく雲を見ていたのか。

もう、それすら鈴自身には分からなかった。

見るもの全てが涙目で霞んでいたから――。

ならばと鈴は無理矢理耳を澄ましてみた。

唯一聞こえてくるのは水の音、静かに流れる川のせせらぎ。

だが、今の鈴にはその音が、怖く感じて仕方がなかった。

鈴の楽しかった思い出の中でも聞こえていた音だったから――。

 

 そして、鈴は瞳に映る空も、耳に伝わる水の音も、鼻に届く草花の香りも、肌に触れる風も、口の中が渇いていく味も、大好きになっていた人への想いも。

全ての感覚を……閉じた。

 

――閉じる寸前だった。

 

「はぁ、はぁ、やっぱりここに……来てたんだ」

閉じようとしたその瞬間、背中越しに何かを感じて閉じることができなかった。

温かくて優しい、懐かしい声が鈴の閉じかけていた感覚を呼び戻していく。

その声が誰のものなのか、振り返らなくても鈴には分かっていた。

それ故に今はその声が温かければ温かいほど、優しければ優しいほど辛かった。

辛すぎるのと、これ以上近くにいたら大好きな人を傷付けてしまうからと……。

 

 声の主は矢野だった。

あれから我を忘れて走り続けていた矢野は、自宅近くの河川敷へと何とか辿り着いていた。

自分達が初めて巡り逢えたこの場所に鈴はきっと来ている、そう感じていたのだ。

背中越しに矢野の存在を感じる、決勝戦の前まではそれはとても嬉しいことだった。

しかし、今は無限の勇気を与えてくれていたその存在の近くに自分は居てはいけない。

そう思いこの場から逃げ出そうと横に飛び出そうとした、その瞬間――。

「待ってくれ鈴ちゃん! 俺の、俺の話を聞いてよっ!!」

飛び出そうとしたがその言葉が背中に突き刺さり、結局は振り返ることも出来ずに立ち尽くす形となってしまった。

 しばらく無言の時が続いたが、震える心と唇を必死の思いで鈴は動かしていく。

「矢野、さん……私、私――約束、守れなかった」

それが鈴の精一杯の言葉だった。

尚も背を向けたままの鈴、その表情は見えない。

矢野はその小さな背から鈴の悲しみや絶望を感じ、一瞬ではあったが目を伏せてしまう。

だが次の瞬間、再び視線を上げ真っ直ぐ鈴を見つめ、今度は矢野が思いを口にした。

「そうかも、そうかもしれないけど……最後の瞬間もあれだけ頑張ったじゃないか! だから、俺との約束で悲しまないでっ!?」

「――矢野さんの、矢野さんのせいじゃ……ないよ!!」

大好きな人の、矢野からのその言葉に鈴は思わず反応してしまい、大声でそれを否定した。

「俺のせいじゃないって、そう言ってくれて嬉しいよ……でも、でもやっぱり俺のせいなんだッ!!」

矢野は浅く早く息を吸い込み、更に言葉を続ける。

「俺は、俺はあの約束以外にも鈴ちゃんにいっぱい、プレッシャーを与えてしまってたんだと思う。出会ってから鈴ちゃんだって分かった時、ずっと注目してた、憧れてたって……そんなことばかり言って、だから鈴ちゃんはそんな俺のためにずっと、憧れの存在じゃなきゃいけないって!」

 

 いつもの河川敷に吹く一陣の風。

その風に掻き消され、堤防を歩いていた人達には矢野の言葉は聞こえない。

でも、鈴には矢野の想いがはっきりと聞こえていた。

 

「ぁぁ……っ」

 

 心がズキンとした。

 全部、当たっていた。

 それだけに、何も言えなかった――。

 

「鈴ちゃんと一緒に今までここで練習できたこと、俺……もの凄く楽しかった! だから、俺のためにしてくれた約束で――俺の鈴ちゃんを想う気持ちで、鈴ちゃんを縛りたくないんだっ!!」

そう言い切ると矢野は、それっきり言葉を発することはなかった。

きっと、鈴の答えを待っていたのだろう。

それが今自分に出来る唯一のことだと、そう思ったから。

 

「………」

鈴は長く――静かに深呼吸した。

そして、何故だか今まで重く感じていた唇を、今度は少し柔らかく動かせそうだった。

「矢野さん、約束を守れなかった、こんな私だけど……期待を裏切ってしまった私だけど、もう一度矢野さんのこと……見てもかまいませんか?」

 何故だろうか、鈴は不思議な感覚に包まれていた。

あんなに暗く沈んでいた気持ちが、矢野の声を聞くだけで何てことのない問題に変わっていく。

「うん、構わないとも! 俺も、その……鈴ちゃんの顔を見ながらじゃないと話しづらいし、さ」

 

 あぁ、そうか。

初めて矢野とここで練習した時と、今同じ気持ちを感じているんだ……。

矢野と居ると楽しい! 矢野と居ると、どんなに辛くても苦しくっても、元気になれる! 頑張れると。

そう、鈴は思い、胸いっぱいにその想いを抱きしめる。

 

 その想いと共に、鈴はゆっくりと振り返った。

「矢野、さん? どうしてそんなに笑顔で……怒って、ないんですか??」

すると、そこにはいつも通りの矢野が居て、いつも通りの笑顔もそこにはあった。

少しぐらいは怒ってるかもしれない。

そういう杞憂があっただけに矢野のその笑顔が、鈴の全てを照らしてくれていた。

そんな感じさえした。

「怒る理由なんてないよ。裏切られたって失望もしてないよっ」

「それって……じゃあ――」

今まで止むことのなかった鈴の涙も、矢野の優しい温もりを受けて今はもう止んでいた。

「うん、ただの思い過ごしっ。……でも、そうなっちゃったのには俺にも責任あるんだし、おあいこだと思うんだけど、それじゃあダメ、かな?」

それを聞いた鈴は今までずっと突っ張っていた肩をそっと、撫で下ろす。

「ほんとうに……ごめんなさいっ!」

そして自分の中で何かが吹っ切れた気がした。

「約束守れなかったこと。それと矢野さんを、信じきれなかったこと」

 

 全ては矢野の言う通りだった。

 矢野の気持ちが嬉しくて、ずっと憧れの存在でいたかった。

 最後の最後で思いもよらない結果になって、どこか怖くなっていた。

 約束を果たすことが出来ず、憧れの存在で無くなってしまったのではないかと――。

 

「鈴ちゃん」

鈴の名前を呼んだ矢野の表情はやっぱり、いつもと変わらない笑顔。

その笑顔につられて鈴も笑顔になっていく。

 お互い笑顔で何も言葉を交わすことなく向き合っていた二人。

時が少し流れ、今度は鈴から話し始める。

どうしても矢野に聞いてみたいことが鈴にはあったからだ。

「矢野さん、私は今日で中学の野球は引退しちゃいますけど、また一緒に……ここで練習できますか?」

初めて二人が出逢ったあの日、その夜に交わした絆から二人の全てが始まった。

「喜んでっ、こちらこそお願いするよ! ウチの野球部、来年まで時間に余裕あるからねっ」

あの日、月の光の下で交わった二人の未来。

今日改めて、茜色の空の下で重なっていく。

 

「んじゃ、明日からまた頑張ろー!!」

「ハイ! お願いしますっ!!」

 

 どちらからともなく小指を差し出していた。

 矢野と鈴、二人の小指が絡み合い、その接点を夕陽が淡く照らし出す。

 一度は解けかけた絆が今再び固く、そして優しく結ばれていく。

 もう解けることのない――いや、解けることがないようにと。

 

 短いけれど、小さいけれど。

 矢野との練習の時間が一番の幸せ。

 小さくても、短くても幸せな時間。

 出来ることならば、ずっとそうしていたい。

 しかし、鈴という存在には“ずっと”はないかもしれない。

 

 それどころか、後どれくらい――――。

 でも、今はただ矢野との時間を大切にしたい。

 そう強く、鈴は願わずにはいられなかった。

 




はい!
野球のルールって難しいですね(;~;)
実はこのあかつき側の最終回攻撃、鈴ちゃんの打撃結果がお話内と変わらなくとも同点のチャンスがあった……と、ルール調べてたら気付きました←気付いたというよりは、その可能性もあるかもしれない、ぐらいの程度です。

ワンナウト一二塁での二塁の”塁の占有権”は、二塁ランナーの真央ちゃんに実はあり、一塁ランナーの八代さんが一塁に送球されるか直接タッチされてアウトになる前に真央ちゃんがそのままホームを踏み、且つはやぶさ中学側がそれに対してアピールアウトにしないと、実は得点として認められる。

――らしいのですが、そういう解釈で合ってるのでしょうか。
ちょっと自信ない。

それが野球をプレイする者であれば、高校生ともなれば大抵知っている。らしいので(驚
野球出来る人は素直に凄いなって思います!

自分の小説内に対する野球論は…
現実:理想が4:6くらいなのかな? って思うので、野球経験者から見て自分の野球論、及び描写はどこかずれてるのかもしれませんが、そこはどうかご容赦して頂ければと……


さてさて、今回で一先ず大きな流れの一部の区切りとなりましたので、次回からはまた気持ち新たに頑張りたいです!


最後となりましたが、継続して読んで下さっている皆様方、本当にありがとうございますっ。
そして、最近読み始めて下さった、評価をして下さった方々もありがとうございますっ!
これからも何卒、このマイペース小説をお願い致します(*´∀`*)ノ

尚、そろそろ表紙絵や挿絵の作成もしたいと思いますので、次回の更新はちょっと遅れるかもしれないです><

その前に画像のアップロードの仕方が説明読んでも分かりません…!(←今ここ)

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